「プロンプト」「コンテキスト」とは? AIと向き合う基本のコツを解説【ビジネス職向け AI用語解説シリーズ②】

「プロンプト」「コンテキスト」とは? AIと向き合う基本のコツを解説【ビジネス職向け AI用語解説シリーズ②】

こんにちは、サイボウズの吉原です。

AI活用のために記事や書籍を読んでみると、必ずといっていいほど出くわす言葉が「プロンプト」や「コンテキスト」。さらに調べて「プロンプトエンジニアリング」「Few-Shotプロンプティング」「ステップバイステップ」といった難しそうな言葉に遭遇してしまった人も多いかもしれません。

「プロンプトやコンテキストって、結局何なんだろう」
「なぜそんなに大事そうなんだろう」
「AIを使いこなすには、テクニックをたくさん覚えないといけないのかな」
結論から言うと、プロンプトは「AIを使いこなすための特別なもの」と考えすぎず、「人に対してもAIに対しても大事な、"指示・依頼・質問文"」程度に捉えるのがいいと思います。そう考えれば、その重要性も自ずと腹落ちしてくるはずです。

また、「コンテキスト」はすごくざっくり「AIに伝えてあげる背景情報や関連データ」と理解すればよいでしょう。

今回は、ビジネス職向け AI用語解説シリーズ第2回として、この「プロンプト」「コンテキスト」の意味や本質について改めて考えたいと思います。

※本記事は、技術的な正確性よりも「大まかな理解の補助」を優先してまとめています

この記事でわかること

  • 「プロンプト」「コンテキスト」などの言葉の意味
  • AIへの指示がうまくいかないときの最大の原因
  • ビジネス職がすぐ実践できる、AIへの情報の渡し方のコツ
  • Few-Shot プロンプティング、ステップバイステップなどのプロンプトのテクニックとその実態

プロンプトとは何か

プロンプトは日本語に直訳すると「指示」です。ChatGPTやClaude、Geminiなどのチャット型AIに送るテキスト全般を指します。

例:「議事録を書いて」「プロンプトって何?」

その内容が依頼であろうと質問であろうと、そういった区別は関係なく、AIに向けて入力するテキストをすべてプロンプトと呼びます。つまり「プロンプト」というカタカナがやや難しく感じやすいだけで、その内容はごく普通の「誰かとコミュニケーションするために発話する言葉」です。

what-is-prompt-context1.png これ(点線部分)がプロンプト

プロンプトエンジニアリングとは何か。難しいテクニックが必要なのか?

「プロンプト」と合わせてよく聞かれる「プロンプトエンジニアリング」とは、AIにとってわかりやすく、整理された形でプロンプトを書くための考え方や技術の総称です。

これまた「エンジニアリング」という言葉が小難しく聞こえますが、直訳すれば「技術」。本質的には「AIに伝わりやすい文章をどう書くか」という話に過ぎません。

「プロンプトエンジニアリング」と言うと、よく語られるのが例えば「ロールプロンプト」。これはプロンプトの冒頭などで「あなたは〇〇の専門家です」と役割を設定する手法を指します。こうしたテクニックらしいテクニックは、たしかに有効なノウハウです。しかし、1つ1つのテクニック論から入ると、AIを使うハードルを高く感じてしまう方は多いのではないでしょうか。

そこで、私がビジネス職の方にお伝えしたいのは、まずは「人に何かを伝える・依頼するときと同じ感覚」でプロンプトを考えてほしいということです。

例えば、社内の同僚や社外の関係会社の方にお願いや相談をするとき、
  • 相手にわかりやすいように整理して書く
  • 誤解が生まれないように、十分に正確に書く
  • 背景などの情報も過不足なく書く
といったことを意識して書きますよね。その感覚をAIにも向ければ、それが実は本質的にはプロンプトエンジニアリングになるわけです。

AIへの指示がうまくいかない原因の多くは「情報不足」にある

AIへの指示でつまずくポイントは、実は書き方のテクニックより「情報量の不足」であることが多いと私は見ています。

例えば、AIに下記のようなプロンプトを伝えたとします。

このプロジェクトの進捗報告メールを書いて
しかし、これだけだとAIはきっと困って、いい回答を返してこないことでしょう。なぜか。例えば、下記のようなことをAIは知らないからです。

  • 「このプロジェクト」とは何か
  • 進捗は実際どんな状態か
  • 誰に向けたメールか
これでは、いくらプロンプトの「書き方」が丁寧でも、前提情報が足りず、AIは「いい感じ」に書きようがありません。

一方で、書き方が多少雑でも、情報さえ揃っていればAIはある程度汲み取って動いてくれることが実は多いです。例えば、

  • 多少の誤字脱字
  • あまり整理されておらずダラダラと書かれた記述
などがあっても、AIは意外とうまく仕事してくれることでしょう。

一例ではありますが、下記のようなプロンプトでもAIはそれなりに期待した通りに仕事してくれると思います。

これは先週木曜の会議の議事録なんですけど、決定事項とネクストアクションだけ抜き出して表にしてほしいです。あと担当者も書いといてもらえると助かりまーす

(ここに議事録を貼る)
人間同士のやり取りでも同じですよね。「完璧な文章ではなかったけど、必要な情報はそろっていたので、同僚や関係会社の人が"いい感じ"に動いてくれた」という経験がある人は多いと思います。AIもそれと変わらないのです。

もちろん、プロンプトが整理されているに越したことはありません。整理されている方が、理解が早まったり、誤解が生じづらくなったりします。これもまた人間・AIを問わず、同じ話です。

ちなみに最近、AIを多用する人は、プロンプトを音声入力するケースも多いようです。文字起こしの精度や、そもそも「話し手が口頭で整理して話せるか」によって、テキストとしては綺麗でないプロンプトになりやすいですが、それでもAIは意外と理解できるということです。人間同士の会話だって、書き起こしてみると文法がめちゃくちゃだったりしますが、それでも通じ合うことがほとんどですもんね。

コンテキストとは? AIに何を渡せばよいのか

ここまで話してきた「情報」こそが「コンテキスト」です。特に、AIに渡す背景・文脈・経緯を指します。

例えば、依頼の背景や目的(なぜこの仕事が必要なのか)、対象(誰向けか・何のためか)、関連する既存情報(これまでのやり取りや議事録、Excelなどのファイルデータ、フォーマットなど)がコンテキストに当たります。また、こうした「AIに渡すコンテキストを設計・最適化する技術」をコンテキストエンジニアリングと呼びます。

前述した「このプロジェクトの進捗報告メールを書いて」という依頼なら、「このプロジェクト」の概要、現在の進捗状況、いつも使っている報告フォーマット、直近の会議メモなどを渡すと、AIはぐっと動きやすくなります。

うまくいかない原因は、情報不足(情報不足と情報ありの比較図)
情報が揃うほど、AIは動きやすい

繰り返しになりますが、完璧に整理されている必要はなく、多少荒削りな情報でも伝える価値があります。AIがうまく仕事してくれないなと感じたら、まずはコンテキストの不足を疑ってみましょう。

AIを「中途入社1日目の優秀な社員」と考えてみる

AIと会話するとき、私はよく「キャリア採用(中途採用)で入社したばかりの1日目の社員」を思い浮かべます。

この新しいAIという仲間は、世の中のさまざまな知識や経験を持っている非常に優秀なメンバーです。即戦力として活躍できるポテンシャルもあります。しかし、あなたの会社の社内情報や社内文化、進行中のプロジェクトなどの文脈は、まだ全然キャッチアップできていません。いくら優秀でも、必要な情報を知らなければ、フルパワーで成果を発揮してもらうことは難しいですよね。

そんな方に初日から仕事を任せたいとき、あなたはどうしますか? おそらく、関連する背景をざっくりとでも説明したり、過去の資料を渡したり、今どういう状況かを伝えてから依頼しますよね。

人に伝えるときもAIに伝えるときも、大事にすべきことは一緒(人間とAIへの情報の渡し方が同じであることを示す図)
人に伝えるときもAIに伝えるときも、大事にすべきことは一緒

AIとの仕事も、これと同じ発想をすれば考えやすいわけです。然るべきコンテキストを渡せば渡すほど、AIはあなたの期待に応えやすくなるのです。

プロンプトのテクニックの多くは「人への伝え方」と本質的に同じである

ここまで、プロンプトをうまく書くコツ(プロンプトエンジニアリング)に関して、まずは「人に何かを伝える・依頼するときと同じ感覚を持つこと」が大事、その上で特に「情報を揃えること」が大事と話してきました。

ここであえて、「プロンプトエンジニアリング」が語られるときによく取り上げられるテクニックを3つほど見てみましょう。いずれも難しそうな用語になっていますが、よく見ると、その本質は「誰かに何かを伝えるときに、情報を不足なく伝えるコツ」であることがわかるかと思います。

Few-shot プロンプティング

Few-shot プロンプティングとは、AIに仕事をお願いするときに「こんなイメージで回答してほしい」という具体例をいくつか(=few)示す方法です。

例えば、このような書き方です。

以下の議事録を要約してください。
フォーマットは下記の例2つを参考にしてください。

【例1】
決定事項:〇〇の方針を採用する
担当者:営業部 田中
期限:6月末

【例2】
決定事項:新サービスのローンチを7月に延期する
担当者:マーケ部 鈴木
期限:7月第1週まで

【今回の議事録】
(ここに本文を貼る)
いかがでしょう。「Few-shot プロンプティング」と聞くと難しそうな名前ですが、似たことは人間同士のやり取りでも当たり前に行われているのではないでしょうか。例えば、その仕事を初めてお願いする相手には「こんなイメージで進めてほしい」と具体例を添えると伝わりやすくなりますよね。

結局のところ、人間に対するそういった伝え方を、AIに対する実践手法としてまとめたのが「Few-shot プロンプティング」であるというだけです。

ちなみに、「One-Shot プロンプティング」というものもあります。これはその名の通り、One = 1つだけ例を示すプロンプトの書き方です。Few-Shot プロンプティングのように、例は必ずしも2つ以上必要ではなく、1つあるだけでもAIにとってはやるべきことが随分わかりやすくなるわけです。

ロールプロンプト

ロールプロンプトは、「あなたは〇〇(の専門家)です」と記述して、特定の役割をAIに与える書き方です。

例えば、下記のようなものです。

あなたは優秀なマーケターです。以下の課題に対して、プロの視点から具体的で実行可能な改善策を3つ提案してください。
ややAI向けの特別な書き方に見えてしまいそうですが、これもその本質は人間とのコミュニケーションと大差はありません。

前提として、AIは非常に広範囲の分野についてたくさん学習をしています。そのため、さまざまな職種の視点、あるいはジュニア社員からシニア社員の視点まで、幅広く備えています。職種を変えながら、幅広いキャリアを長年積み上げてきた歴戦のビジネスパーソンを想像するといいかもしれません。

そんな人によりよく相談をしようとすると?「お客様の目線に立って、率直な感想をお願いします」「経営者として、高い視座と広い視野でアドバイスをお願いします」など、期待する立場のイメージを伝えた方がより良い回答をもらえそうですよね。そんな感覚で捉えるといいのではないかと思います。

ステップバイステップ

ステップバイステップは、プロンプトの中で「手順1→手順2→手順3」のように作業の進め方を分解して伝える方法です。

例えば、下記のような書き方です。

以下の手順で、文字起こしから議事録を作成してください。
①フィラー(「あー」「えーと」)を除去する
②発言をテーマごとにまとめる
③決定事項とネクストアクションを抽出する
④担当者と期限をネクストアクションに付記する

【文字起こしテキスト】
(ここに貼る)
これも、「優秀だが、社内の業務にはまだ不慣れなメンバー」に、ゴールだけをざっくり伝えて依頼するのではなく、「まずこれをやって、次にこれを確認して、最後にここを仕上げてください」と手順を説明する感覚と変わりません。AIに対してもそのように伝えると、押さえるべきポイントを押さえてくれやすいというだけです。

このように、難しそうな専門用語らしく出てくるプロンプトのテクニックの多くは、ビジネス職として人と一緒に仕事をしてきた経験の中で、すでに実践してきたことと本質的には同じなのです。

まとめ:プロンプト・コンテキストへの向き合い方

  • プロンプトとは「AIへの指示文」のことで、特別な形式は不要
  • AIへの指示がうまくいかない最大の原因は、テクニックよりも「情報不足(コンテキスト不足)」にある
  • AIは世の中の知識は豊富だが、あなたの会社の社内情報・業務文脈は知らない
  • 背景・経緯・関連資料(議事録・データ・フォーマットなど)を渡すほど、AIは動きやすくなる
  • プロンプトエンジニアリングの主要なテクニックは、「人への伝え方」の延長として理解できる
ビジネス職の仕事は、社内外のさまざまな人と連携しながら進めることの連続です。その経験で培った「他の人への伝え方・情報の渡し方」の感覚は、AIへの指示にそのまま活かせます。特別なテクニックを学ぶ前に、まず「AIをキャリア採用初日の頭のいい仲間」として接してみてください。それだけで、AIとの仕事の仕方はより良く変わるはずです。

次回以降のシリーズでも、業務でのAI活用に関わるキーワードを解説していきます。

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著者:吉原 寿樹(サイボウズ株式会社 kintoneプロモーション担当)
2017年の新卒入社からマーケターとして広告・セミナー・コンテンツ制作などを担当し、現在は部内のAI活用推進にも携わる。AIツールを日常業務に組み込む実践者として、非IT人材向けのAI活用ノウハウを発信中。