こんにちは、サイボウズの吉原です。
業務でAIを使おうとしたとき、こんな経験をしたことはないでしょうか。
「社内のルールについて質問したら、的外れな回答が返ってきた」
「最近のニュースについて聞いたら、なんか古い話をされた」
これらは、AIの"仕組み上の特性"から来ている話で、決してAIの出来が悪いわけではありません。そしてその特性を補う技術として「RAG(検索拡張生成)」というものがあります。
今回は、ビジネス職向けAI用語解説シリーズの第1回として、このRAGという言葉について解説します。厳密な技術解説よりも「なんとなく大まかにわかる」「次に詳しく調べるときの補助になる」ことを目指して書いていますので、AI初学者の方もお気軽にご一読ください。
この記事でわかること
- AIが最新情報・社内情報に答えにくい理由(知識のカットオフとは何か)
- RAG(検索拡張生成)の意味と、3ステップで理解できる仕組み
- 社内FAQチャットボットを例にしたRAGの業務活用イメージ
- kintoneの「検索AI」機能とRAGの関係
※本記事は、技術的な正確性よりも「大まかな理解の補助」を優先してまとめています
AIが「最新情報」や「社内情報」に答えられないのはなぜ?
AIサービスを使っていると、どこかで「あれ、なんだか変な回答だな?」という場面に出くわすことがあります。その主な原因は2つあります。
知識のカットオフ
AIは「学習」によって賢くなっていますが、その学習はいつか終わります。たとえば「2025年1月までのデータをもとに学習しました」というAIは、2025年2月以降の出来事については前提として知らない状態です。これを知識のカットオフと呼びます。
カットオフ以降の話題を質問すると、AIは正しい情報を知らないまま回答しようとするため、古い情報を答えたり、存在しない事実を生成してしまったりすることがあります。
社内情報を持っていないという根本的な制約
もうひとつの問題は、AIが「あなたの会社の情報」を持っていないことです。例えば、就業規則、社内手続き、過去の問い合わせ履歴といった情報はインターネットには存在しません。そのため、AIはそれらを学習できておらず、社内に関する具体的な相談に答えることが難しくなるわけです。
つまり、どちらの問題も、AIが「自分が知っていることの範囲でしか答えられない」という性質から来ています。この制約をうまく補う技術がRAGなのです。
RAG(検索拡張生成)とは何か
RAGの正式名称と日本語訳
RAGは Retrieval-Augmented Generation(リトリーバル・オーギュメンテッド・ジェネレーション) の略で、日本語では検索拡張生成と訳されます。ChatGPT、GeminiといったAIサービスの「種類」ではなく、そうしたAIサービスが追加の情報を調べて答えるための「技術」の名称です。
「検索(Retrieval)」「拡張(Augmented)」「生成(Generation)」それぞれの頭文字を取ったものですが、この3つの単語がそのままRAGの動き方を表しています。
RAGが動くしくみ:検索→拡張→生成の流れ

RAGの動き方を順番に整理するとこうなります。
- 検索する:ユーザーが質問を送ると、AIはまず外部のデータを検索します。ここでいう「外部」とは「インターネット上のデータ」はもちろん、そのAIが社内のシステムにつながっている場合は「社内データ」も含まれます。AIがすでに事前学習している知識の「外側」にある情報全般を指します
- 拡張する:検索してきた情報を「追加の参考情報」として取り込みます。AIが元々持っている知識に、検索結果を"上乗せ"するイメージです
- 生成する:拡張した情報をもとに、ユーザーへの回答を生成します
つまり、RAGは「外部のデータベース(ウェブや社内データなど)と接続し、そこで検索した情報も踏まえて回答してくれる技術」と言えます。検索してきた情報で知識を補ってから答えるので、カットオフ以降の情報や社内固有の情報にも対応しやすくなるわけです。
ChatGPTやGeminiなどの主要なAIサービスを使っていると、自律的にウェブ検索をした上で最新情報を回答してくれることがあります。これもRAGの技術が実践されているシーンの1つです。ユーザーの指示を見て、「事前の知識だけで回答せず、最新の情報をウェブで調べた方がよさそうだ」と判断した場合に、このように対応してくれるのです。

ChatGPTに「kintoneの最新情報」を聞いた場合の例。回答するためにウェブサイトを検索してくれている様子が見えます
業務でRAGを使うとどうなるか(社内FAQチャットボットを例に)
業務におけるRAGの活用としてわかりやすい例が、社内データ対応のAIチャットボットです。
「就業規則を踏まえて◯◯について知りたい」「以前似たような問い合わせへの回答例を探したい」こうしたシーンは日常的に発生します。従来は担当者に問い合わせたり、社内の文書を自分で検索したりする必要がありました。
自社のデータと共にRAGが組み込まれたAIチャットボットがあれば、社内ドキュメントや過去の問い合わせデータをデータベースとして参照して、ユーザーの質問に対して追加情報を検索した上で回答します。担当者を介さず、チャット感覚で社内データを元にした情報を知れるため、問い合わせ対応の負荷を下げることにつながりそうです。
業務でのAI活用の文脈でRAGという言葉がよく登場するのは、RAGがこうした「社内情報・自社データを参照できるAI」を実現する技術として有用だからです。

kintoneの「検索AI」はRAGを手軽に実現する
kintoneにも、このRAGの技術を活用したAI機能があります。検索AIという機能です。
検索AI | kintone AI | kintone(キントーン)
https://kintone.cybozu.co.jp/feature/kintone-ai/searchai/
検索AIでは、kintoneで作ったアプリをデータソース(参照する情報源)としてあらかじめ設定します。設定された検索AIの画面上でユーザーがチャット形式で質問を送ると、検索AIがRAGの仕組みを使って指定されたkintoneアプリのデータを検索し、その結果をもとに回答を返します。
つまり、社内の情報をkintoneアプリに蓄積しておくことで、例えば社内FAQ対応のAIチャットボットをkintone上で構築できるようになります。専門的なAI開発の知識がなくても、データをkintone上に用意して設定するだけで動かせる点が特長です。
関連:kintoneの検索AIで「発注前の見積もり金額チェック」をラクにした話
https://kintone-sol.cybozu.co.jp/integrate/pickup/m008659.html
なお、kintoneの検索AIはkintoneアプリ内のデータを参照しても、そのデータをAIの学習・訓練に使うわけではありません。検索AIはデータを「回答のための参考情報」として一時的に使うだけです。社内の機密情報や個人情報が含まれるデータを扱う場合でも、「AIにデータを学習させてしまうのでは」という心配なく利用できます。
まとめ
- RAG(検索拡張生成)は、AIが回答を生成する前に外部データを検索し、その結果を踏まえて答える技術
- AIが最新情報や社内情報に弱いのは「知識のカットオフ」と「社内情報の未学習」という構造的な理由があるため
- RAGはこの制約を補うことで、最新情報や社内データに基づいて答えるAIチャットボットなどを実現できる
- kintoneの「検索AI」機能は、kintoneアプリをデータソースに指定して業務におけるRAG対応AIをかんたんに構築できる
- RAGは業務でAI活用を調べていくと頻繁に出てくる用語なので、大まかな仕組みを掴んでおくと理解が進みやすい
次回以降のシリーズでも、業務でのAI活用に関わるキーワードを解説していきます。
最終更新日:2026年6月22日
著者:吉原 寿樹(サイボウズ株式会社 kintoneプロモーション担当)
2017年の新卒入社からマーケターとして広告・セミナー・コンテンツ制作などを担当し、現在は部内のAI活用推進にも携わる。AIツールを日常業務に組み込む実践者として、非IT人材向けのAI活用ノウハウを発信中。