kintoneの検索AIで「発注前の見積もり金額チェック」をラクにした話
サイボウズの吉原です。最近はAIの話題が多くなっていますが、本業はプロモーション屋です。
さて、広告宣伝の仕事は、制作会社や広告代理店への発注が多くなります。案件ごとに見積書をいただくのですが、「この金額で発注して問題ないだろうか?」という金額チェックが、1件1件なかなか無視できない重さでした。この課題をkintoneの検索AIを使って改善した話を書きます。
結論から言うと、kintoneの検索AIを使って、過去の見積書・請求書データを参照できるAIチャットボットを作ったところ、見積もりの金額チェックがぐっと楽になりました。同じような課題をお持ちの方の参考になれば幸いです。
この記事でわかること
- kintoneの「検索AI」を使ってAIチャットボットを自作した具体的な事例
- 見積もりの金額チェックをAIで補助する仕組みの設計と運用のポイント
- 社内に蓄積した過去の見積書・請求書データをAIに活用させるプロンプトの考え方
- 若手メンバーの「相場感」習得に検索AIが果たした効果
「発注前の見積もり金額チェック」がなぜ難しかったのか
相場感は経験豊富な担当者にしか身につきづらい
見積もりの金額チェックには、過去の発注経験から来る"相場感"が不可欠です。「この作業内容でこの金額は適切か?」という判断は、似たような発注を何度もこなした経験がないと、時間がかかりやすいためです。
ベテランのプロモーション担当者は、過去の見積書とわざわざ照らし合わさなくても、「これは少し高いな」「いつもより安いな」と半ば感覚的に気づきやすい傾向にあります。しかしその感覚は、5〜10年単位の業務経験があってこそ身につくものです。入社してまだ日が浅いメンバーが同じ精度・スピードの判断力を身につけるには、これまでは相応の時間がかかるのが現実でした。
過去データはあるが、活用するのが大変だった
弊社では以前から、見積書・請求書のデータをkintoneアプリに蓄積していました。もともとは「費用の承認を上司にしてもらう」ことを目的としてつくられたアプリですが、結果としてそこには過去の発注金額・取引先・作業内容などの履歴も蓄積されていました。
このアプリを参照さえすれば、発注経験が多くないメンバーでも過去の実績と照らし合わせて、金額チェックをすること自体は可能ではありました。
しかし、「今回の発注に近い過去案件はどれだろう?」と手動で検索し、似たレコードを見つけ、照らし合わせる。この作業に、かなりの時間を費やしがちだったのが実情です。
データは貯まっている。しかし、活用するのは大変。このギャップを埋めてくれたのが、kintoneの検索AIでした。
kintoneの検索AIで「見積もり相談AIアシスタント」を作った
kintoneの「検索AI」で実現できること
今回活用したkintoneの検索AIは、kintoneに搭載されているAI機能です。アプリに蓄積されたレコードを踏まえて、ユーザーの質問に答えるチャットボットを作成できます。
検索AI | kintone AI | kintone(キントーン)
https://kintone.cybozu.co.jp/feature/kintone-ai/searchai/
今回この機能を使って作成したチャットボットが「見積もり相談AIアシスタント」です。私が所属するマーケティング本部の「支払い管理アプリ」に紐づけて作成しました。費用の標題・小計(税抜)・見積書・発注書・取引先の会社名などの情報が格納されているアプリです。
実際のアプリの画面はこんな感じ
このアプリに検索AIを設定し、会話形式で過去の実績を調べたり、見積もりの金額について相談したりできるチャットボットを使えるようにしました。
チャットボットの具体的な動き方
チャットボットを起動すると、特定のプロンプトを選択できるボタンが表示されます。
ここで「今もらっている見積もり金額の妥当性について相談したい」を選ぶと、AIが次のような質問を順に聞いてきます。
- どんな制作物やサービスに関する見積もりか
- 具体的な金額はいくらか
- どんな作業内容が含まれているか
- どの会社からの見積もりか
これらの質問に回答すると、検索AIが過去の類似レコードを自動で探し出し、「この金額は過去実績と近い水準です。例えばこの案件と比べると〜」「今回の作業内容のこの部分は不詳な点が見受けられるなので、先方に詳細を確認してみてもいいかもしれません」といったアドバイスをくれます。
さらに、AIが回答のために参照したレコードを示してくれるので、「ソースとなるレコードを実際に開いて確認する」という人間によるダブルチェックも併用できます。AIの判断だけに頼らず、根拠を自分の目でも確認できる設計になっている点が、実務での安心感につながっています。
設定したシステムプロンプト
検索AIでは、AIの動作をシステムプロンプトでコントロールできます。今回作成した検索AIでは、下記のようなプロンプトを設定しました。
あなたは「マーケティング本部 支払い管理アプリ」というkintoneアプリに設定されたAIアシスタントです。ユーザーはレコードの検索や、過去レコードに基づいた「今もらっている見積もりの金額の妥当性の検討」などをあなたに依頼します。
レコードの検索結果を回答する際や、検索結果をもとに回答する場合、可能であればより期待する検索結果が得られそうな、代わりの検索キーワードも併せて提案してください
(例:「iPad」での検索をした場合 → 「タブレット」での検索再試行を提案する)。
提案する場合、「これらのキーワードで再度検索してみましょうか?」といった申し出もしてください。
その申し出に肯定的な返信が来た場合は、実際にそれらのキーワードでの検索をして、回答を検討してください。
「今もらっている見積もりの金額の妥当性の検討」を相談された場合には、どういった目的や制作物に関する費用なのかを確認した上で、類似の過去レコードを参照した上で、過去の実績金額を回答し、その妥当性についてアドバイスをしてください。
なお、四則演算や割合の計算はしないでください。
まず、見積もりの妥当性相談を受けた場合は、目的・制作物・金額などを必ず確認してから類似レコードを検索するよう指示しています。情報が不十分なまま回答を出してしまう可能性をできるだけ防ぐためです。
また、回答する際は、代替キーワードによる再検索も提案するように設定しています。たとえばイメージですが「iPad」で検索した場合には、より一般的な括りである「タブレット」でも探してみることを検討させるといった挙動を指示しています。こうすることで、より適切な検索を自律的に試行して、より良い回答をさせることを目指しています。
さらに、AIには計算をさせない方針を明示しています。四則演算や割合の計算を自身では行わず、金額の判断はあくまで過去実績として直接記載されている数値と単に比較する方向で指示しています。
※厳密には「比較」もまた計算の一種ではあるので、100%正しい回答を期待することはできませんが、計算ど真ん中よりは誤りが生じづらそうなので、最終的にはソースとして示されたレコードを人間が確認するのを前提とすることで許容しています
kintoneの検索AIを使って、見積もり確認はどう変わったか
効果1:見積もり確認の工数が減った
最も直接的な効果は、わたし自身の見積もりの金額チェックにかかる時間の短縮です。
以前は自分で過去レコードを探し、照らし合わせていた工程が、AIとの会話を軸にしたフローに置き換わりました。1件あたり15〜20分ほどかかっていた類似案件の検索・照合作業が、5分程度に収まるようになりました。
AIが参照したレコードを示してくれるので、「どのレコード(どの過去の見積もり・請求)と比較検討すればよさそうかを探して調べる時間」はほぼなくなりました。
効果2:若手メンバーの相場感習得が早まった(のではないか)
ベテランが長年の業務経験で身につける「相場感」の直感は、検索AIがあっても若手に直接移転することはできません。しかし、類似の過去実績をAIが瞬時に引いてきて「判断の補助線」を示してくれるようになったことで、経験が浅いメンバーでも早いスピードで判断できるようになりました。
実際、他のメンバーが「最初はこのAIの意義がよくわからなかったけど、しばらく経っていざ使ってみたら、便利さがわかった」と言っていたようです(又聞きではあるのですが)。
業務データをAIと組み合わせることで、若手やジュニアメンバーも活躍しやすくなる。これがAI活用の1つの大きな可能性だと実感しています。
おわりに
- kintoneの検索AIを使うと、蓄積した見積・請求データを参照して回答してくれるAIチャットボットをかんたんに作れる
- 膨大なデータからAIに補助線を示させることで、若手メンバーの判断力向上にも寄与する
関連記事
kintone「検索AI」と「レコード一覧分析AI」の違いと使い分け方 https://kintone-sol.cybozu.co.jp/integrate/pickup/m008653.htmlkintone MCPサーバーを設定して、AI(Claude)とkintoneを連携してみよう https://kintone-sol.cybozu.co.jp/integrate/pickup/m008637.html
「Claudeで議事録作成→kintoneにタスク登録」の半自動化がとても便利 https://note.com/yoshi_tos/n/n0931dd3fef3c




