東急
- 【業務内容】
- ネットスーパーをはじめとしたショッピングサイトやハウスクリーニングおよび家事代行サービス、そして食品や日用品を自宅まで届ける宅配サービスなど
- 【利用用途】
- 受発注管理
東急線沿線に特化した家ナカサービスとして、東急グループが手掛けるホーム・コンビニエンスサービス「東急ベル」では、ショッピングサイトをはじめハウスクリーニングや家事代行、自宅までの配送サービスなど、便利な暮らしを支援するための各種サービスを提供しているが、従来アナログな手法で行ってきたEC事業における受発注の仕組みを刷新し、新たにkintoneにて業務基盤を整備。各種マスタの整備から受発注業務のシステム化を実現し、業務の効率化やサービス品質向上を図っている。そんな業務基盤にkintoneを採用した経緯について、東急株式会社 リテール事業部 東急ベルEC推進グループ EC推進担当 課長 須田 良昭氏、同グループ 課長補佐 矢島 綾子氏、および同グループ 萩原 綾乃氏にお話を伺った。
1922年に設立された目黒蒲田電鉄を起源に、現在は230を超える法人を抱える東急グループの中核企業として事業を展開している東急株式会社。
同社では、「東急ベル」ブランドで東急線沿線に特化した家ナカサービスを手掛けており、ネットスーパーをはじめとしたショッピングサイトやハウスクリーニングおよび家事代行サービス、そして食品や日用品を自宅まで届ける宅配サービスなど、沿線に住む方の生活を便利にするための各種サービスを提供している。そんな家ナカサービスの1つに挙げられるのが、東急線沿線の人気ショップの商品をはじめ、各ショップとタイアップしたオリジナル商品を自宅まで届ける「SALUS ONLINE MARKET」と呼ばれるEC事業だ。東急線沿線情報誌「SALUS」にて紹介さている魅力的な店舗で取り扱っている商品商品に加え、東急グループのネットワークを生かしてチョイスした旬の野菜やフルーツをはじめとした全国各地の名産品などもラインナップに加え、沿線に住んでいる利用者に喜んでもらえるような商品を数多く取り揃えている。
そんな「SALUS ONLINE MARKET」を運営する東急ベルでは、顧客からの注文に応じて取引先となる各ショップに発注し、家庭に届けるための業務を行っている。この受発注業務は、Excel を中心としたアナログな手法で進められていた。「各ショップが扱う商品情報をExcelで受け取り、手作業にてCSVに落とし込んだ後にシステムに取り込むといったことから、発注書・支払通知書の作成やメールでの送付手続きまで、全て人手を介して業務が行われていました。手作業での業務だけに、品質や業務効率の面で課題が散見されていたのです」と矢島氏は当時の状況を振り返る。
実際の業務を担当していた萩原氏も「発注書など複雑な計算式が組み込まれたExcelも多く、ファイルが壊れてしまうと修正が難しく、受発注業務に支障が出てしまうケースも。属人的な業務運用を強いられていたのです」と当時の課題を説明する。支払業務についても、取引先からの請求書をベースに行っていたことで、出荷履歴との付け合わせといったチェックが十分にルール化されていなかった。あらゆる業務がExcelを中心に行われており、情報更新や確認が全て手作業で行われるなど、受発注業務全体の統制が十分に図れていない状態が続いていたのだ。
日々アナログでの受発注業務のために現場では疲弊感が漂うなど、心理的なプレッシャーも高まっていたことで、早急にバックエンド業務にかかわる現場の負担を解消していくことが求められていた。「受発注業務ばかりにリソースを割いてしまうと、販促や売上拡大に向けた業務に注力する時間の確保も難しい。まとまった投資が難しい経済状況のなか、新たな仕組みづくりに向けて、打開先を模索することになったのです」と矢島氏は説明する。
当初は、入出荷で利用しているパッケージシステムを改修することを検討したものの、とても簡単な改修では課題解決に至らないと断念。「市販の受発注専用のシステムも見てみましたが、自社の運用に適した形に変更するような汎用的な仕組みではなかった。改修費用を考えても厳しいものがあったのです」と須田氏は語る。そんな折、業務改善のための仕組みを探していたところ、車内広告などで見知っていたkintoneに出会うことになる。「よく広告で見たことはありましたが、どんなことができるのかは理解していませんでした。業務改善に役立ちそうだとHP上で具体的な活用事例などを見たところ、我々が抱えている課題にも応えてくれるのではと考えたのです」と矢島氏。
東急グループ内でkintoneの活用実績があったことも幸いした。実は、その担当者と面識があったことで、どんなことができるのか直接ヒアリングできる機会を得たという。「運用しながら自分たちの形に変えて行けるので便利だとオススメされたのですが、開発経験のない我々にそれができるのか半信半疑な面も。それでも、聞いているとできそうな雰囲気を感じ取ることができ、すぐに課題解消に向けて動きたいと考えたのです」と矢島氏。
もともと改修のたびにコストが発生するスクラッチ開発は避けたいと考えていたものの、内製化についてはその段階で難しいと考えた矢島氏。「内製化までは至らずとも、柔軟に変更しやすいものが理想的でした。ただ、これまで社内では完成されたものが現場に展開されており、少しずつ作り上げていくアジャイル的なアプローチは、私自身も抵抗感があったのが正直なところです」。その意味でも、同社にとってkintoneは大きな挑戦だったと振り返る。チーム含めて周りを巻き込んでいけるか不安があり、迷いながら進めていったというのが本音だったという。それでも、ある程度決められた期間内にめどをつけることが必要だった。「正直言えば、1年ほどいろいろ検討を進めるなかでkintoneの話が出てきたこともあり、もしkintone以外で進めるなら、また次を探してこないといけない。時間も限られているなかで“それで進めちゃっていいよ”と思い切って決断をしたのです」と須田氏。
受発注業務のシステム化に向けたツール選びは大胆な決断をしたため、kintoneアプリを制作するパートナー選びは慎重に実施することに。実際には複数のkintoneディベロッパーから提案を受けたうえで、受発注システムを新たに整備する基盤していくことになった。
現在は、商品や取引先、ブランドといった各種マスタ情報を管理するアプリとともに、発注書や支払通知書を作成するための情報が集約されている受注明細管理アプリを中心に運用しており、発注書作成アプリや支払通知書作成アプリなどは個別に用意されている。また、東急線沿線以外の全国の顧客に宅配便にて配送する際に必要な伝票作成のための情報生成アプリなど、須田氏自身が作成しているアプリもある。なお、商品マスタとなる商品カルテアプリについては、Webフォーム入力が可能なプラグインであるフォームブリッジを使って取引先が直接Web入力を行い、情報参照のためのプラグインであるkViewerを活用している。現在は、SALUS ONLINE MARKETの推進メンバーとともに発注書作成を行う部署やシステム部門など5ユーザーほどでkintoneを活用している状況だ。
フォームブリッジを通して取引先が直接商品データを登録している。
上記で入力されたデータは下記のアプリに自動的に反映される。
ここでデータをチェックし、マスタにワンクリックで登録。
SALUS ONLINE MARKET上でオーダーが入った段階で、CSVにて出力された情報をファイル読み込みすることでkintoneに受注情報を取り込み、その情報をもとに取引先への発注書を作成、メール送信が可能なプラグインであるkMailerを使って取引先へ発注書を送付する運用だ。同社が管理する倉庫に商品が入荷する場合は、入荷完了フラグにチェックを行い、産地直送の商品はkViewerを見て取引先が伝票番号を直接入力、受注明細管理アプリに出荷実績が登録されることになる。支払いについては、入荷完了フラグや伝票番号の入力状況から判断し、支払通知書が作成される形だ。なお、在庫管理システムにデータ登録する場合は、現状はCSVにて抽出データを入れ込む運用となっている。
取引先はkviewrを通してWeb上からデータを確認、登録が可能。
kintoneを活用して受発注システムを構築したことで、転記ミスや登録ミスなどが回避できるようになり、業務品質の向上につながっている点は大きな効果の1つだという。また、支払通知書作成などがシステム化されたことで取引先への入金漏れなど根本的な課題が解消でき、請求書到着後の目検チェックといった無駄な作業が大きく削減できていると評価も高い。「以前は取引先からの請求タイミングがバラバラで、なかには数か月まとめた請求書のケースもあり、それぞれチェックするために多くの時間がかかっていました。今はkintone上に信頼できる情報が集約されており、ストレスなく効率的にチェックできるようになりました」と萩原氏は高く評価する。発注書作成にかかる時間も大きく削減でき、複雑な計算式が組み込まれたExcelから脱却できた点も効果として見逃せない。
実はコロナの影響でSALUS ONLINE MARKETにおける売上が拡大しているが、受発注に関わる業務時間は3分の1ほどまでに短縮できているという。「受注が増えているなか、現状の体制で多くの注文を処理する必要があります。現状の人員でも負担なく受発注業務ができているのはkintoneで環境整備できたおかげです」と須田氏。時間短縮が可能になったことで、新たな業務にリソースを割くことも可能になった。「以前は張り付かざるを得なかった業務がシステム化されたことで、今では販促活動などに手が回るようになりました。空いた時間をうまく活用できています」と矢島氏はその変化を語る。
kintoneに関しては、開発経験がなくとも自らアプリ作成できるという意味での面白味を感じているという。「かっちりした仕組みになるのではと当初は思っていましたが、いろいろ話を聞くうちに自分たちで柔軟に作っていけることがわかってきました。確かに便利なものですが、それ以上に面白みを感じています」と須田氏は 。またチームの働き方が大きく変わったこともkintoneの魅力だという。「ある程度自分たちで直していけるため、時間とお金をかけざるを得ないというストレスがなくなったのは大きい。何よりも、注力すべきでないところに時間をかけずに済むようになり、売上を作っていく部分にしっかりメンバーが注力できるようになったことが一番うれしいポイントです」と矢島氏は力説する。
今回ディベロッパーとして株式会社ミューチュアル・グロースが提案から開発、運用支援までを行っているが、早期の展開に向けて現場の課題をシステムに落とし込み、自分たちでkintoneのアプリ開発などができるようになったのは同社のおかげだと矢島氏。「我々に知識のない状態から尽力いただき、今でも日々誠実にご対応いただいています。社内で“kintoneおじさん”と呼ばれている須田ですが、どんどん新しいアプリが作っていけるのも、何かあればミューチュアル・グロースが助けてくれるという安心感があるからこそ。本当に感謝しています」と高く評価する。
今後については、今でもExcelでの業務が残っているため、kintoneにて実装できるかどうか判断しながら、kintone側に取り込んでいきたいという。「我々の業務には、センターからの配送作業なども含まれているため、既存の在庫管理システムだけではシステム化できていない部分も残っています。その受け皿としてのkintoneに期待しています」と須田氏。また、SALUS ONLINE MARKET以外にも類似の業務を行っているため、共通の課題が山積している。その課題の解消に向けて、kintoneを生かしていきたいと力説する。「現状の業務をkintoneに置き換えるだけでは多少効率化するだけ。そもそも業務自体を見直し、自動化に向けて環境を整備するなど、より効果が出るように業務改善を進めていきたい」。矢島氏も「少なくとも東急ベル全体に展開していきたいという気持ちはありますが、今は不便さに慣れてしまっている現場も。業務を見直すには労力が必要で、そこをどう超えていけるのかが重要です。そのための手段としてのkintoneに、今後も期待をしています」と最後に語っていただいた。
・フォームブリッジ(トヨクモ株式会社)
・kViewer(トヨクモ株式会社)
・kMailer(トヨクモ株式会社)
・レポトン(株式会社ソウルウェア)
※プラグイン・連携サービスはkintoneスタンダードコース以上でご利用いただけます
お問い合わせ窓口:
セールスプロモーション部
Tel:03-5577-3037
E-mail:
info@mutual-growth.com
当社はkintoneを駆使し、コンサルティングから開発・運用までを安価な月額定額制サービスで提供しております。
サービス名はStrution。お客様のIT担当者として事業成長を支えます。
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