なすの斎場グループ 様の導入事例

なすの斎場グループ

【業務内容】
葬祭業
【利用用途】
顧客管理、請求書作成、イベント管理など
  • 葬儀業界における“エンディングCRM”を構築
  • CTI連携したkintoneによって葬祭関連ビジネスを支える顧客管理基盤を整備

栃木県北部を中心に「なすの斎場」を運営している有限会社三誠では、「受注時入電」「葬儀相談」「アフターフォロー」「施行情報」等の様々な顧客情報の集約先としてkitoneを採用。営業機会がコントロールしづらい葬儀業において、重要となるCRMの基盤として活用している。また、蓄積したデータをCTIシステムと連携させることにより、顧客接点を一手に担うコンタクトセンターの顧客対応力向上に大いに活用し業績向上につなげている。そんな業務基盤にkintoneを採用した経緯について、代表取締役 関口 将仁氏、ディレクターチームリーダー 藤田 裕子氏および総務CRMグループマネージャー 大金 久美子氏に詳しくお話を伺った。

【課題】数十年前の顧客情報を保管し活用することの重要性が高い葬儀社

自身の祖母にしてあげたかったお葬式の形を具現化するべく関口氏が2002年に創業し、現在は栃木県の北部、那須塩原市や大田原市、那須町に「なすの斎場」として7つの直営会館を運営している有限会社三誠。物品販売、花輪や生花、盛り籠などの貸出まで含め、葬儀に関する事前相談から実際の葬儀運営、そして葬儀後のアフターフォローまで、葬祭に関するサービス全般を手掛けている。厚生労働省認定協会の葬祭ディレクターが多数在籍しており、家族葬や密葬、火葬式、直葬(直送式)を専門とする会館も運営するなど、故人や遺族の意向に寄り添って葬儀をプランニングし、マニュアルにとらわれない柔軟なサービスを提供。事前相談におけるフォローアップやインサイドセールスなどにも積極的に取り組んでいる。

特に葬儀という性質上、葬儀の様子などを何かしらの形でしっかりと残していくことが重要だと関口氏は語る。「葬儀の際には、30年前に行われた故人ゆかりの方はどんな葬儀だったのかを振り返る場面も多く、当時の様子や心情などを何らかの形で後世に伝えることが求められます。口頭ベースでは忘れてしまうこともあり、紙であっても30年も前の情報を保管しておくことも難しい。だからこそ、過去の情報をうまく保管し、いつでも参照できる仕組みが必要です」と関口氏は業界ならではの事情について語る。

代表取締役 関口 将仁氏

そんな同社では、創業当初から葬祭業務に特化した支援システムを活用し、日々の業務に活用してきた。ただし、顧客から葬儀の問い合わせがあった段階で、過去の情報がすぐに把握できる状況ではなかったという。「電話があった時点で“あのときの葬儀はこんな感じでしたね”と相手に伝えられるような環境を、創業当時から整備したいと長年考えてきました。たとえ当時の担当者が不在でも、詳しく当時の話が聞ければきっと感動につながるはず」。そこで、CTIを利用して葬祭業務支援システムと電話の仕組みを連携させ、電話番号から過去の状況が自動的にオペレータ画面に表示できるような仕組みの導入を決断。ただし、葬祭業務支援システム自体の柔軟性に課題があり、スプレッドシートなど別のツールを用いて必要な情報を管理せざるを得ない状況が続いていたという。そんな折、葬祭業務システムが稼働する環境の刷新が必要になり、顧客のニーズや市場の変化にも柔軟に対応できる、新たな業務基盤を模索することになったのだ。

【選定】営業プロセス管理よりも顧客情報の管理が求められた

新たな業務基盤を模索する過程で、自社に設置せずに利用できるクラウド環境を前提に、自社のフローに合わせて柔軟に機能が追加できるものが求められた。「専用ツールも考えましたが、初期費用で数百万もの費用を投資するのは難しい。できれば、少しずつ育てていけるようなものを希望したのです」と関口氏。実際には、Salesforceなどの基盤も検討したものの、コンセプトの違いが鮮明だったという。「お電話いただいた時点で葬儀を執り行うことがほぼ確定、つまりその時点で受注となるケースが一般的です。問い合わせから受注までの営業プロセスを中心に管理するツールでは、我々の業務には合わなかったのです」。確かにカスタマイズにて対応できる部分もあるが、ちょっとした変更であれば、自分たちで内製化できるものが必要だったと関口氏は語る。

そこで注目したのが、サイボウズが提供しているkintoneだった。これまで利用してきた専用の支援システムよりも柔軟な顧客管理が可能となり、過去の葬儀履歴も詳細に記録できる、関口氏が目指した「エンディングCRM」が実現できると考えたという。また使い勝手についての評価も高かった。「詳しく説明を受けたうえで、わずか10分ほどで簡単なアプリが作成できたのです。ある意味即決でした」と当時を振り返る。また、多くのスタッフが利用することになるため、できるだけ“メカメカしい”かっちりした画面よりも、使いやすそうな可愛らしいインターフェースを希望していた関口氏。「使いづらい印象だけでも、現場にはなかなか仕組みが根付いていきません。kintoneはほかのソリューションと比較してもずば抜けてデザインがよく、可愛らしい見た目も好印象。現場に受け入れてもらいやすいと直感しました」と評価する。

【使い方】情報活用の促進で業務の効率化を実現、自社でのアプリ開発も促進

■業務基盤として全社員で活用、アフターとしての売上が前年度200%越え

現在は、コンタクトセンターのオペレータだけでなく現場スタッフ含めた全社員が業務の基盤としてkintoneを活用している。具体的には、顧客管理を中心に、事前相談や葬祭にまつわる施行情報、見積請求、供物注文といったアプリが用意されている。顧客情報は、創業時から蓄積されてきた情報も含めて全て移行し、2018年12月にkintoneに出会ってから2019年2月に稼働するわずか3か月の間に9000件ほどがkintone上に登録されている。なお、昨年は一部改装のために営業できなかった斎場もあったが、売上規模では現状維持を達成し、顧客管理の徹底によってアフターフォローによる売上は前年度200%を超える規模にまで拡大させることに成功している。「アフターとして提案できるものは、仏壇や墓石、相続、香典返し、住宅解体、不動産管理、遺品整理などさまざまなものがありますが、体制づくりも含めて改善したことで大きな効果につながっています。きめ細かな情報管理のおかげでアフターの売上を伸ばすことができたという意味で、kintoneがその一助となっています」と関口氏は説明する。

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■事前相談も含めた顧客管理の徹底を実現、CTI連携にて対応の質を向上

顧客管理アプリでは、同社の会員や喪主、故人などの情報だけでなく、家族葬や樹木葬に関するハウツーといったイベントの参加者や事前相談など、同社へコンタクトした全ての履歴が顧客情報に登録されている。顧客ごとに電話や手紙などでの対応履歴が随時追加されており、それぞれの顧客情報が電話番号と紐づいて管理可能だ。「お客さまごとに情報が整理されており、受電した段階でCTIと連携し、詳細な情報がコンタクトセンター側の画面に表示できるようになっています」と関口氏。また、葬儀に関しての事前相談は、事前相談アプリから一覧で確認できるようになっており、同社から電話にて連絡することで新たに事前相談として登録するアウトバウンドコールの履歴も管理できるようになっている。

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■複雑な日程表作成も手作業から脱却、入力ミスや調整ミスの撲滅に貢献

施工情報アプリでは、故人の名前や喪主及び家族の情報、電話番号やSMSといった個人情報はもちろん、引継ぎ事項や葬儀に関するスケジュール、葬儀の様子なども全て詳細に記録されている。葬儀に関する見積書や当日の日程表は、kintoneプラグインである「RepotoneU」を利用して帳票出力しており、大枠のスケジュールや近所の方に配る組内用の日程表などもそれぞれ出力可能だ。「故人の遺志や喪主や親族、組内などの意向はもちろん、友引など暦注の関係や火葬場や会館の使用状況など、さまざまな要素を考慮したうえで葬儀日程を作成しなければなりません。以前はExcelでの手作業でしたが、今はkintoneから各種日程が出力できるため、入力ミスや調整ミスも大きく減らすことにつながっています」と藤田氏は評価する。ほかにも、供物注文アプリでは、1件の葬儀に対して多くの人から花輪や生花、盛籠、缶詰などの供物に関するオーダーが入るため、それらの注文および入金管理を行っている。

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■見積や請求含めたお金にまつわる管理をkintoneで実現

見積や請求に関するアプリでは、葬儀はもちろん、アフターや初盆といった各イベントや供物ごとなど、処理しやすいようアプリを個別に作成しており、明細ごとの帳票出力はもちろん、最終的にデータを集計することで月次の数字が集計可能だ。月次の処理は、kintoneからエクスポートしたデータを会計事務所に送る形で行われている。

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なお、葬儀に関連した費用はアクセス権を詳細に設定し、閲覧制限を行っている。「お葬式は秘匿すべきことが多いため、基本的にはブラインドをかけられるようにしています。情報セキュリティの観点からもkintoneがうまく機能しています」と関口氏。

また請求金額と銀行のFB情報を確認しながら、入金の消込処理も実施している。「消込処理を行うことで、月末の未入金状況が一覧で確認できます。実際の費用については、葬儀後の香典や保険から支払うなど分割での振り込みも少なくありません。手元にあるよりも先に支払うといった前受金の処理もあるため、細かく入金状況が管理できるような仕組みにしています」と大金氏は説明する。しかも、レコードごとにアプリを開いて入力すると多くの時間と手間がかかるため、一覧画面から入力できるようプラグインにて使いやすくカスタマイズを実施している状況だ。

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■変化にも柔軟に対応、顧客管理によって継続的な関係性の構築につながる

実際に現場を取り仕切っている藤田氏は「届いている供物の変更なども現場からでも確認できますし、開式時間や司会者の入り時間など詳細なスケジュールも紙で確認せずともkintoneにアクセスするだけで済みます。急な変更などにも対応しやすい」と評価する。事務仕事などオフィスで本来行うべき仕事が現場でも行えるようになり、残業を減らすことにもつながっているという。また、同社で開催している生花アレンジ教室や手作り数珠体験といった各種イベントの管理が容易になっている点も大きいという。「以前は十分に管理できていませんでしたが、今は顧客管理上に参加者の履歴が管理でき、さまざまな方と継続した関係性が築けるようになっています」と大金氏は評価する。なお、以前は限られた端末からしかアクセスできない環境だったため、入力のために順番待ちをせざるを得ないこともあったが、今では自分のペースで仕事ができるようになったと大金氏は新たな環境を喜んでいる。

今回コンタクトセンターにおけるCTI連携やkintoneにおける業務システムの構築を行ったのは、葬儀社向けに独自にカスタマイズした葬儀社専用システムとして「船井ファストシステム」を提供している船井総合研究所だ。「IT導入前からマーケティングコンサルティングを長年お願いしており、デジタルシフトについても強力に支援いただきました。葬儀という事業をしっかり理解いただいており、船井ファストシステムがあったからこそ現場へのデジタル化を進めることができました」と関口氏は評価する。

ディレクターチームリーダー 藤田 裕子氏

総務CRMグループマネージャー 大金 久美子氏

■業界ならではの運用にも対応できる仕組みづくりをさらに加速

現在は、必要な機能はほぼ実装できているものの、現場の要望に応じて新たな機能を追加していきたい考えだ。「我々の業界に限らず他社事例をもっと知ることで、現場の業務改善に役立てていきたい」と関口氏。また、現状一部の機能はインターネットFAXと連携して帳票をPDFにて送付できるようになっているが、当初の見積とは異なる数量での請求書発行が必要なケースも少なくない。「見積時点でお願いしていた数量よりも少ない場合、使用した分だけ請求するという形が一般的です。葬儀後でも柔軟に変更できるような形で請求書発送できるようにしたい」と業界ならではの運用への対応に藤田氏は期待を寄せている。他にも、コンタクトセンター側のツールに入力したものをkintoneに取り込めるようにするなど、使い勝手の向上につながる仕組みの改善を図っていきたいと最後に語っていただいた。

(2020年1月取材)


【この事例の販売パートナー】
船井総合研究所

中小・中堅企業を対象に、日本最大級の専門コンサルタントを擁する経営コンサルティング会社。業種・テーマ別に「月次支援」「経営研究会」を両輪で実施する独自の支援スタイルをとり、「成長実行支援」「人材開発支援」「企業価値向上支援」「DX(デジタルトランスフォーメーション)支援」を通じて、社会的価値の高い「グレートカンパニー」を多く創造することをミッションとする。その現場に密着し、経営者に寄り添った実践的コンサルティング活動は様々な業種・業界経営者から高い評価を得ている。