「ベテランの経験則」に頼った発注管理から脱却 ー kintone×AIで過去データを読み解き、未来を予測する

「ベテランの経験則」に頼った発注管理から脱却 ー kintone×AIで過去データを読み解き、未来を予測する

はじめに

ベテラン担当者の経験則に頼った発注判断をしている製造現場は少なくありません。当のベテランにとっては自然な感覚でも、属人化した発注判断はリスクを孕んでいます。
かといって「データを使って改善しよう」と思っても、どこから手をつければいいかわからない----そんな声もよく聞かれます。
本記事では、kintoneに蓄積された発注・受注・在庫データをAIで活用するための具体的なアプローチを紹介します。

目次

1. 発注判断の属人化を、kintone×AIで補完する
2. 在庫の過多・不足はなぜ繰り返されるのか?発注担当者が直面するあるある課題
3. 具体例で見るkintone×AIの実現方法
4. まずはここから
5. さいごに
6. よくある質問

1. 発注判断の属人化を、kintone×AIで補完する

発注判断の属人化という課題を解決するために、kintone×AIで実現できることは大きく2段階あります。

Step 1:kintone AIで「傾向を読む」

蓄積された発注・受注・在庫データから、過去の傾向や季節変動、発注と受注のズレなどをAIが整理・可視化する。

Step 2:AIntone+で「数値で予測する」

kintoneと連携するAIサービス「AIntone+」を使い、来月この品目がどれだけ必要か、未来の受注や需要を数値として算出する。
これらができることで、ベテランの経験則に頼り切っていた発注判断をデータとAIで補完できるようになり、担当者が変わっても安定した発注業務を維持でき、在庫の過多・不足によるムダとリスクを減らしていくことができます。

2. 在庫の過多・不足はなぜ繰り返されるのか?発注担当者が直面するあるある課題

発注判断が「ベテランの経験則」頼みになっている

長年の経験から身についた感覚は貴重です。しかし、その判断が特定の担当者にしか再現できない状態になっていると、さまざまな問題が生じます。
・担当者ごとに発注量がばらつき、安定した調達ができない
・ベテランが異動・退職したときに、ノウハウが引き継がれず業務が不安定になる
・「なぜその量を発注したか」を説明できない
こうした「発注判断の属人化」は、多くの製造業の現場で顕在化しています。

    適正発注ができないと「ムダ」と「ムラ」が蓄積する

    属人的な判断による発注が続くと、急な需要変動や市場トレンドの変化が起きたときに対応が間に合わず、在庫の過多・不足が慢性化します。
    在庫過多になれば保管コストが膨らみ、廃棄ロスが発生します。逆に在庫不足に陥れば、欠品による販売機会の損失や生産ラインへの支障につながります。どちらに振れても利益を削る方向に働き、「なんとなく発注してきた」状態を放置するコストは、気づかないうちに積み上がっています

    月次の振り返りが「数字を確認するだけ」になっている

    月次で前月比・前年比を確認し、受注や在庫の状況を報告する----この取り組み自体は重要です。しかし「数字を確認するだけ」に留まり、「なぜそうなったのか」「来月どう動くか」まで踏み込めていないケースが多くあります。
    振り返りの質が上がれば、翌月の発注精度が変わります。データ活用の第一歩は、この「なぜそうなったのか」「来月どう動くか」を考える際に、AIを味方につけることです。

    3. 具体例で見るkintone×AIの実現方法

    まずはkintone AIで「データの傾向を読む」

    特別なツールを導入する前に、kintoneに蓄積されたデータをAIで読む習慣をつくることから始めましょう。kintoneには、生成AIを活用した「kintone AI」の機能があり、kintoneをご契約中であれば、追加費用なしで現在の契約の中で始められます。
    ※ kintone AIを利用するための条件はこちらをご確認ください。なお、kintone AIの利用にはシステム管理者による有効化が必要です。

    「数字の羅列」を「傾向の言葉」に変える

    kintone AIの「レコード一覧分析AI」は、発注・受注・在庫データがkintoneアプリにあればすぐに活用でき、それらのレコード一覧をAIが読み込み、要約・傾向分析・次のアクション提案を行います。基本的な設定は短時間で完了し、データ分析の専門知識がなくても利用を始められます。
    たとえば、「過去3ヶ月で発注量と受注実績のズレが大きかった品目を抽出し、それぞれの傾向と考えられる要因を教えて」と質問すれば、AIが「品目Cは受注が増加傾向にもかかわらず発注が追いついておらず、欠品リスクがある」「品目Dは発注量が受注実績を継続的に上回っており、在庫過多の状態にある」といった具合に、これまで担当者が経験と勘により「なんとなく感じていた傾向」を、AIがデータに基づいて整理・言語化してくれます。
    レコード一覧分析AIの実行画面

    発注在庫管理アプリのレコード一覧に対して、AIに分析を指示している画面です。質問を入力すると、AIが該当レコードを読み込み、要約や傾向分析、次のアクション提案を回答として返してくれます。

    AIへの指示は具体的なほど精度が上がります。「要約して」より「先月の発注量が受注実績を大きく上回った品目を抽出し、背景として考えられる傾向を教えて」のように、知りたいことを絞って聞くのがポイントです。
    

    月次の振り返り会議で、議論の出発点が変わる

    レコード一覧分析AIを使うと、月次の振り返り会議の景色が変わります。
    これまでは、担当者がExcelで集計した数字を見ながら「先月はAが減って、Bが増えていますね」と数字の確認に時間を使っていた会議が、AIが事前に整理した「傾向と要因の仮説」をもとに、より本質的な議論から始められるようになります。「なぜAが減ったのか」「Bの増加は今後も続くのか」といった、本来時間を使うべき議論に集中できる状態です。
    属人化解消の第一歩は、ベテランが頭の中で行ってきた「数字の解釈」を、誰でも引き出せる形にすることです。レコード一覧分析AIは、その入り口になります。
    「まだAIを触ったことがない」という方は、まずはここから始めて、データ活用の感覚をつかむのもよいでしょう。

    kintone のデータが、予測の根拠になる

    kintone AIで過去データの傾向を読めるようになると、次に出てくるのが「傾向はわかった。でも、来月この品目がどれくらい必要になるのか、数値として予測できないか?」という声です。kintone AIは要約・傾向把握が得意ですが、複数の変数を組み合わせた機械学習による数値予測は難しく、「AIntone+(アイントンプラス)」を活用することで、実現できます。
    AIntone+は、株式会社システムズナカシマが提供するkintone連携の予測AIサービスです。kintone上に蓄積された発注・受注・売上データを機械学習で学習し、予測結果を数値でkintone上で確認できます。

    発注判断にデータの根拠がつく

    これまで「なんとなくこれくらい」だった発注量の判断が、過去の発注・受注・在庫データをAIが学習した予測値をもとに決められるようになります。ベテランが異動しても、一定水準の判断を再現しやすい状態をつくれます。天候・曜日・季節性など複数の要因が絡む発注ならニューラルネットワークモデルで、品目別の受注傾向から来月の発注量を見立てたい場合は時系列モデルで----といった具合に、予測したいテーマに応じてAIntone+が最適なAIのモデルを自動で選択してくれるため、専門知識は必要ありません。
    AIntone+のAIモデル設定画面

    ここでAIモデルの設計図を作成します。どのkintoneアプリのデータを学習元にするか、どの項目を予測に使うか、結果をどこに出力するかといった設定をGUIで指定するだけで、モデルの構築準備が整います。

    
    
    kintoneの予測実行画面

    kintone画面上で商品と予測したい日付を入力し、「受注数を予測する」ボタンをクリックすると、AIモデルが予測値を算出して赤い背景色で結果を表示します。

    現場の担当者は、使い慣れたkintoneの画面から、普段の業務の流れのなかで「普段の操作に近い形」で予測結果を確認できるため、AIに不慣れな方でも抵抗なく使い始められます。
    

    「いつもの計画」をもう一段先へ。社内データ+外部要因で計画精度が上がる

    「いつもの計画」をもう一段先に進める鍵は、社内データだけでは見えてこない外部要因を計画に取り込むことです。kintoneに蓄積された実績データをAIで学習させ、外部データ(気象・市況など)と組み合わせることで、「気温が下がると特定製品の需要が上がる」という現場の感覚をデータとして再現できます。予測値と実績の差を振り返りながら学習を繰り返すことで、計画精度は少しずつ上がっていきます。
    AIntone+の設定画面

    降水量・平均気温・日射量・日照時間といった気象データを、予測の入力項目として設定している画面です。kintoneのデータと外部データを組み合わせる設定が、GUI上でそのまま完結します。

    ここまで見てきた使い方は、特別な条件がそろっている企業にしかできない話ではありません。kintoneにすでに蓄積されているデータを起点に、できる範囲から始めて、少しずつ判断の精度を上げていく----そんな第一歩から、始めてみませんか。

    4. まずはここから

    大前提の心構え:「100%の精度」は求めない

    AIの予測は「100%当たるもの」ではなく、「意思決定を助ける目安」です。実際AIを活用している現場では、「100%の予測精度」を求めるケースはほとんどありません。むしろ多くの企業が「ある程度近い結果が出れば十分」というスタンスで、AIを"判断を助けるツール"として受け入れています。
    重要なのは、予測結果を目安として受け止めたうえで、繰り返し学習させ、運用内容を見直しながら、徐々に精度を上げていく姿勢です。この心構えがあれば、社内稟議でも「AIで失敗したらどうする?」という疑問に自信を持って答えられます。

    まずは3つの整理から始めてみる

    いきなり大きく動き出さなくても、次の3つを整理するだけで、社内での議論は一気に前に進みます。
    手元のデータの棚卸し
     kintone内のどのアプリに、どんな項目のデータが、どれくらいの期間分あるのかをリスト化する
    そのデータを使って何を予測したいかの明確化
     「商品別の月次受注数を予測したい」「特定製品の週次需要を見たい」など、予測対象と粒度を具体的に絞る
    複数データを組み合わせる場合は、結合データのイメージを描いておく
     別々のアプリに分散しているデータを予測に使いたい場合、どう結合すれば予測に使える形になるかを考える
    この3つが見えてくると、「自社でどこまでできて、どこから外部の支援が必要か」の判断もつきやすくなります。

    推進体制は少人数でOK、まず1つに絞って試す

    「大がかりなプロジェクトチームを組まないと始められないのでは」と身構える必要はありません。AI活用の現場では、実務担当者と決裁権のある方の少人数でスタートするケースが多いです。最初から多く求めず、一番解決したい課題1つに絞って小さく試すのが、成功への近道です。色々と試しながら確認していくことで、満足のいく結果に近づいていきます。

    5. さいごに

    AIの精度は一発で満足のいくレベルになることは稀で、色々と試しながら確認・調整していくプロセスが必要です。もし自社だけで進めるのが難しそうであれば、AIntone+のようなAIサービスを活用し、提供元のパートナー企業と一緒に進めていくのも有力な選択肢です。
    専門的な判断が必要な場面では、経験のあるパートナーが一緒に考えながら進めてくれるため、手探りで止まってしまうリスクを減らせます。予実管理の属人化や、過去データを活用した未来予測に課題感を持っている方は、ぜひ一度、自社のデータを棚卸しするところから始めてみてください。
    それだけでも、次の打ち手が見えてくるはずです。

    6. よくある質問

    外部データ(市場トレンドや天候など)はどのように集めてkintoneと連携すればよいですか?

    2つのアプローチがあります。
    1つは、そのデータを提供している外部サービスとAPI連携して、リアルタイムにデータを取り込み学習させる方法。もう1つは、販売されているデータをCSVでkintoneに取り込んで学習させる方法です。
    自社で予測したいテーマに応じて、必要なデータの種類や粒度は変わってくるため、まずは「どんな外部要因が自社の需要に影響していそうか」を洗い出すところから始めると、必要なデータの種類と入手方法が見えてきます。

    蓄積されているデータが少なくても、AI予測は始められますか?

    過去1年分程度のデータがあれば、まずは予測を試し始めることは可能です。もちろん、データが多いほど精度は上がりますが、「データが溜まってから」と待つ必要はありません。
    運用を始めてからも、定期的に学習を繰り返すことで予測精度は向上していきます。まずは手元のデータで始めて、育てていく発想を持つことが大切です。

    AIの予測が外れた場合、業務への影響をどう抑えればよいですか?

    予測値をそのまま実行値にしないことがポイントです。
    あらかじめ許容範囲(バッファ)を考慮した運用ルールを設計しておき、予測値を「参考値」として人間の最終判断と組み合わせることで、外れたときの影響を抑えられます。運用しながら予測精度を見ていき、許容範囲の設定や学習内容を見直すサイクルを回していくのが現実的です。

    監修パートナー

    松浦 伸悟

    株式会社システムズナカシマ NaFLA(ナカシマ未来研究所)

    執行役員 松浦 伸悟

    幅広いkintoneユーザー向けのアプリ開発や、画像認識AIとkintoneの連携など、kintoneの可能性を広げるための新しいアイデアを日々検討しています。その中で、「kintone上に蓄積されたデータをさらに拡張・活用できないか」という視点から生まれたサービスが『AIntone+』です。

    AIntone+について詳しく見る

    ※本記事の内容は、2026年5月時点での情報です。最新情報は各製品サイトをご確認ください。