トヨクモ 様の導入事例

トヨクモ

【業務内容】
安否確認サービス・kintone連携サービスの提供
【利用用途】
監査法人とのやりとり,経営情報管理,内部統制,請求管理,IR情報管理など
  • 上場前の内部統制の整備や監査法人とのやりとり、上場後のIR情報の提供まで
  • 会社規模の拡大とともに活用用途がスケールしていくkintone

安否確認サービスや豊富なkintone連携サービスを提供しているトヨクモ株式会社。2020年9月にマザーズ上場に向けた環境整備に際して、これまで業務基盤として活用してきたkintoneを駆使し、業務プロセスの可視化や監査法人をはじめとした外部機関とのやりとりなど柔軟な運用を実現している。業務基盤としてのkintoneをどう築いていったのか、また上場審査プロセスのなかでkintoneをどう活かしたのか、代表取締役社長 山本 裕次氏および取締役 経営管理本部長 石井 和彦氏にお話を伺った。

kintoneがすべての業務の基盤に
シンプルな業務設計で業務の効率化を実現

業務基盤の中核にkintoneを活用、シンプルな運用を心掛けている

「情報サービスをとおして、世界の豊かな社会生活の実現に貢献する」を企業理念に2010年8月に設立、現在は「かんたんトヨクモ!」をキーメッセージにさまざまなクラウドサービスを提供しているトヨクモ株式会社。CMでもお馴染みの「安否確認サービス2」をはじめ、「FormBridge(フォームブリッジ)」や「kViewer(ケービューアー)」などサイボウズが提供するkintoneを便利にする各種連携サービスを提供しており、IT初心者にも利用しやすいシンプルで分かりやすいソリューションを通じて、企業における情報化の第一歩を支援している。

同社は2010年の設立当初はサイボウズの100%子会社としてスタートした経緯がある。サイボウズスタートアップ株式会社という旧社名からもわかる通りサイボウズとの関係性が深い。その関係もあり、社内の業務基盤を整備する際も、プラットフォームとしてkintoneを積極的に活用している状況だ。

「基本的な業務は全てkintoneをベースに運用しています。ある程度割り切って業務をシンプルにしているのが1つの特徴です。kintoneで無理矢理環境を作り込むと複雑になってしまい、ボトルネックも発生しやすい。そのため、業務を1つずつシンプルに設計していくことで、結果的に業務の効率化を実現しています。社内で利用しているkintoneシステムが成熟していくにつれ、会社の規模もスケールしてきました」と山本氏は説明する。

代表取締役社長 山本 裕次氏

上場審査前の業務プロセス管理から上場後のIR情報の提供まですべてをkintoneで実現

専任者を置かずにわずか3名体制でスケジュール遅延もなく上場を実現 

事業を順調に拡大させてきたことで、同社は2020年9月にはマザーズ上場を実現しているが、この上場に向けた審査プロセスにおいてもkintoneが欠かせない。ただし、上場に向けて特別にアプリを作成したわけではないという。「以前から業務基盤としてkintoneを活用していました。普段の業務プロセスを上場に耐えうる形に持っていったと言うのが、正直なところです。必要な項目追加などを実施しながら、上場に向けた環境整備に取り組んできました」と石井氏。

一般的に、上場までの道のりでは、事業計画の策定から監査法人の会計監査、主幹事証券会社の決定、ガバナンス体制の構築・運用、そして、申請段階では主幹事証券会社や証券取引所による審査やIRサイトの作成などを経て、上場が実現することになる。「上場審査のプロセスから上場後の情報提供などの運用もkintoneで実現できました。監査法人や社労士、会計士などの外部機関からも、 kintoneを見れば必要な情報を得られると好評です。また、何か質問があれば“kintoneの共有スペースに情報をあげておきます”と連絡するだけ。わずか数名の兼任者だけで上場審査への対応が可能だったのは、kintoneでシンプルな運用を心掛けているからこそ」と石井氏。

結果として、社内に専任者を置かずにわずか3名体制で、スケジュールの遅延なく審査対応が実現できている。

もちろん、多くのフローをkintoneで実装しているものの、例えば内部統制に関するマニュアル整備や予実管理などに関してはExcelで行うなど、必要に応じてツールの使い分けも柔軟に行っている。「すべてをkintoneで実装しようとするとカスタマイズが必要になったり、管理が複雑になってしまいます。Excelの方がシンプルに管理できる場合は、潔くExcelを使っています。場面や用途によってkintoneとExcelを使い分け、併用して使っています」

取締役 経営管理本部長 石井 和彦氏

【具体的な活用】
情報のアクセス制御で、内部統制の整備から外部機関との情報連携が円滑に

内部統制に関わるIT業務処理統制の整備

上場に向けたプロセス整備について一例をあげると、反社会的勢力との取引が発生していないかどうかのチェック機能をkintoneで実装している。具体的には、以前から運用していた「契約管理アプリ」内にある顧客情報から顧客リストを作成し、この「顧客リストアプリ」のなかで、JavaScriptを駆使してボタン一つでGoogleの検索結果や外部の調査データなどが抽出できるようになっている。

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また、取締役会の議事録なども議題ごとに承認フローを設計し、承認プロセスの履歴がきちんと残るようにアプリを作成している。

上場審査のなかで議論になりやすい予算管理や労務管理に関してもkintoneで実装しているが、なかでも労務管理は標準機能だけで実現できているという。「有給休暇の申請や消化状況などのプロセス管理をkintoneで実現しています」と説明するのは石井氏だ。監査法人や証券会社からも特別な指摘もなく、無事に審査を通過したと説明する。内部統制におけるIT業務処理統制の整備についても、kintoneが大いに役立っている状況だ。

システム変更の履歴管理などIT全般統制にも効果的

内部統制のなかで議論になるIT全般統制に向けた環境整備についてもkintoneは効果的だと指摘する。アプリの変更履歴なども監査ログから簡単に調査できるようになっているためだ。「個別にツールを使って業務アプリを作り込むと、定期的なチェックにも膨大な工数が発生します。kintoneでまとめているからこそ、毎月変更履歴が簡単にチェックできます。IT全般統制に関してもうまくワークしている印象です」と山本氏。

情報管理という視点でも、kintoneで業務基盤を整備していることでシンプルにセキュアな環境が容易に実現できている。「手元のPC内で情報管理している方が運用していくのが大変で、PC紛失時の対策なども検討しなくてはなりません。我々はkintone上に情報を集約してIP制限によってアクセスを制御したうえで、データをダウンロードできないように制限をかけるだけ。クラウドサービスに不安を持つ方もいらっしゃいますが、セキュアアクセスの環境を作ってしまえば、クラウドの方が情報管理には向いているはず」と石井氏は指摘する。

外部機関との情報共有を円滑かつ効率的に行うゲストスペース活用

外部機関とやり取りする際にはメールを利用するケースが通例だが、同社ではkintoneのスペースやアプリ機能を活用している。アプリを作成して情報共有することで円滑なコミュニケーションが可能だ。「証券会社や東京証券取引所などとのやり取りに関しては、一般的なプロセスに則ってメールを中心としたやり取りで進める必要がありました。ただし、一部ファイルのチェックに関しては、「kViewer」で作成して認証設定したサイトに入ってもらい、kintoneのアプリに登録された情報をチェックしてもらうフローで許可いただけるなど、シーンに応じてkintoneが有効に活かされています。メールにファイルを添付した運用をしていると、最新ファイルがわかりづらくなり、”何時何分にお送りしたものが最新です“みたいなやりとりが発生してしまいますが、kViewerを使っていればその必要もありません」と山本氏。

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監査法人とはkintoneのゲストスペースを利用して連絡を取り合っている。来訪せずとも遠隔で事前に情報確認が可能なため、確認作業の効率化にも役立っていると好評だ。

他にも、外部の会計士や社労士それぞれに専用のゲストスペースを設けて情報共有するなど、効率的に業務を行うことが可能になっている。「メールだと情報管理に手間がかかりますが、スペースでやり取りすることで履歴が追いかけやすく、最終的なファイルの所在も双方で的確に把握できます。ゲストスペースに参加できるメンバーが限定できるため、情報管理という面では非常にやりやすい」と石井氏も評価する。ちょうど会計士が交代するタイミングがあったときも、過去のやり取りが全てスペース上から確認でき、引継ぎについてもスムーズに実施できたと会計士からも評価の声が寄せられている。

kintoneのスペースごとに情報整理とアクセス制御をして運用

社外だけでなく、社内での情報共有に関してもスペースを有効活用している。スペースごとにアクセス制限を行うことで、経営陣だけが知りうるインサイダー情報に類する情報が容易に共有できる。また逆に、経営陣も内容が把握できない監査役専用のスペース内で議論が行われており、その履歴もきちんと記録されている。社外のみならず内部の情報共有にも有効だと山本氏。

負担の大きな上場後のプロセスにもkintoneを活用

上場までのプロセスで役立つだけでなく、上場後の業務管理にもkintoneが大いに役立っているという。「上場までの作業はもちろん大変ですが、上場後の運用の方が実は負担が大きい。例えば上場後はIRを継続的に公開していく必要がありますが、IR用のスペースをkintoneで作成して必要な情報を集め、スケジュール設定したうえで『kViewer』を使って外部公開する運用を自動化しています。これは汎用的にどの会社でも応用が利く使い方ではないでしょうか」と山本氏。公開すべき情報は事前に確認プロセスを経て、承認された情報が時間指定で公開できるようになっている。人手が介在しないことで転記ミスなどの防止にも役立っている状況だ。

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IR情報が必要な方に向けては、「FormBridge」からIR情報提供の依頼を登録するとkintoneアプリに自動保存される。情報のメール配信については、kintoneアプリから「kMailer」を用いて行うことで、内部工数を割かずとも効率的な運用が可能になっている。

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 kintoneの魅力については、監査法人などから指摘が入る追加の要件にもすぐに対応できる点を挙げる。「例えば上場に向けた審査のなかで、必要なチェックがなされているかどうか指摘を受けると、その場で新たにフィールドを追加することで、審査基準に適用したフローがすぐに整備できます。上場に限った話ではありませんが、求められる環境に整備しやすいのは大きな魅力です」と石井氏は評価する。

今後もkintoneを活用し、業務基盤の整備を続ける

kintoneを業務基盤の中核として使いながら、標準機能では足りない「もうちょっとこうしたい」機能を連携サービスとして自ら開発し、サービスとして提供してきた同社。今後も業務に必要な環境を整備していきながら、連携サービスやプラグインを活用してさらに効率的な運用に向けた改善を続けていく予定だ。具体的には、銀行が提供するファームバンキングデータとkintoneを連携し、回収予定との入金消込を自動的に実施していくプロセスや、顧客ごとに「kViewer」でMyページを作成し、いつでも請求書のダウンロードや契約条件の確認が可能な環境を整備したいと、展望を語った。(2021年2月取材)