
東急バス
- 【業務内容】
- 自動車運送事業、不動産賃貸業、旅行業法に基づく旅行業
- 【利用用途】
- 健康情報管理
東急沿線地域の交通インフラとして80年以上の歴史を誇る東急バス株式会社では、健康診断の結果をはじめ、脳や心臓疾患の状態や無呼吸症候群に関する情報など、ドライバーを中心とした社員の健康情報を一元管理し、保健師による定期的な面談を実施し、産業医に情報を提供、適正な管理を行うことで、安全な輸送に向けた環境整備を行っている。この健康情報管理の基盤としてkintoneが採用されている。その経緯について経営企画室 総務・人事部 次長 坂本 嘉万氏、同部 社員サポート課 課長代理 村井 敏洋氏、同課 主事 吉田 圭一氏、および保健師 山崎 陽子氏にお話を伺った。
東京急行電鉄株式会社のバス部門が分社化することで1991年に誕生した東急バス株式会社。「ヒューマンに行こう」を社是とし、東急沿線地域における路線バスをはじめ、高速乗合バスや空港連絡バス、深夜急行バス、貸切バス、バスツアーなど、用途に応じたさまざまなバス事業を展開している。バスを利用する顧客に安全・安心な輸送環境を提供すべく、国土交通省が定める運輸安全マネジメント制度に基づき定めた安全管理規程に則り、“安全はすべてに優先”に代表される安全方針や重点施策を制定し、全社一丸となって輸送の安全・快適なサービスを提供するため、日々の業務にあたっている。
そんな同社では、徹底した社員の健康管理を実施している。「事故などの有事の際は迅速に社員の健康状態を示す情報を確認することが求められます。国土交通省からの通達はもちろんですが、バスの運行事業を手掛けている企業として、社員の健康管理はしっかり行う必要があります」と坂本氏は健康管理の在り方について説明する。
健康管理の内容についても、一般健康診断で定められた項目はもちろんのこと、脳や心臓疾患に関する検査、睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)のスクリーニング検査などを実施し、問題があれば受診勧奨やその後の改善経過を常に把握するなど、徹底した健康管理を行っている。
東急バス株式会社 経営企画室 総務・人事部 次長 兼 社員サポート課長 坂本 嘉万氏
ただし、検査の結果は紙の診断書やExcelに結果を転記する形で運用されていた。「社員がどんな状態なのか、受診しているのか、次はいつ病院に行くのかも含めて全てが手作業によって管理していました。持病の有無も含めた要管理者リストなども手作りで作成していたので、さすがにExcelでは限界を迎えていました」と語るのは村井氏だ。
有事の際には社員の健康管理情報を確認する必要が出てくるが、管理はしていても、迅速に情報提供できなかった事案も実際に起こっていたという。
東急バス株式会社 社員サポート課 課長代理 村井 敏洋氏
各営業所に出向いて健康状態に関する面談を行う保健師も、紙ベースで各診断結果を収集したうえで面談者ごとにその都度整理しなければならない状態が続いていた。「12ある営業所ごとに平均200人以上の社員が在籍していますが、毎月各営業所を回る必要があり、全ての情報が集まらないケースも。後日改めて連絡したり、その場で別の担当者に情報を確認したりするなど、面談前後のプロセスそのものにも多くの時間と手間がかかっていました」と山崎氏は振り返る。
しかも、多くの書類を持ち運ぶ手間がかかるだけでなく、個人情報の塊であるファイルを持ち運ぶことへの情報漏えいリスクもある。Excelを手入力することでの転記ミスも生じ得ることから、一日も早くセキュリティの高い情報基盤の整備が求められていた。
東急バス株式会社 社員サポート課 保健師 山崎 陽子氏
実は数年前から基盤となるシステムに関する情報収集を行ってきたと語るのは、今回プロジェクトを推進してきた吉田氏だ。「当初は健康診断を管理する専門のパッケージを検討していました。しかし、受診勧奨やその後の経過などプラスアルファの情報まで管理できるものではありませんでした。専門パッケージなだけに値段も高く、オーバースペックな面も。ある程度運用でカバーせざるを得ないことが分かったのです」。
そんな折、同業他社が運行関連業務にkintoneを利用していることを社内の情報システム部門から紹介を受けたという。「お話を伺ってkintoneを見せていただきましたが、業務部門を中心に自前で業務基盤を構築されたということでした。これだけの仕組みが自前で構築できるツールであれば、我々が課題としていた健康管理の基盤として活用できると最終的に社内決定しました。」と坂本氏は説明する。
東急バス株式会社 社員サポート課 主事 吉田 圭一氏
「さまざまなシステムやソフトウェアをクラウドサービス上で稼働させている実態から、クラウドの安全性は実証されていると社内の情報システム部門は認識していました。我々業務部門としても、サーバそのものの管理は避けたかったですし、メンテナンスも含めて外部にお願いしたいと考えていたのです」と吉田氏。基盤だけでなく、開発そのものも外部に委託することを前提にサイボウズへ相談し、アールスリーインスティテュートが開発パートナーとして紹介されたのだ。
実は、親会社である東京急行電鉄株式会社が新規事業の業務基盤をkintoneで構築したディベロッパーもアールスリーインスティテュートだった。「使用目的は全く異なりますが、非常に使い勝手がいいとグループ会社内でも評判でした。グループ会社内での採用実績が大きく背中を押してくれました」と吉田氏。
今回プロジェクトがスムーズに進んだ要因の1つに挙げているのが、ディベロッパーであるアールスリーインスティテュートの業務理解のスピードだと吉田氏は驚きを隠せない。「我々は現場での運用はわかっているつもりでも、具体的な部分では抜けている部分も正直あります。そんなところも含めて遥かに現場の業務を理解していただき、しかも全体像を見据えて提案に落とし込んでいただけたのは驚くべきこと。3次元で情報をとらえて、きちんと整理していただくことができました」と評価している。
また、仕様を検討していくなかで膨らんでいく要件を、予算を前提に優先順位をつけ、カットオーバーまでの段階的な道筋もきちんとつけるというプロジェクト遂行能力にも評価の声が寄せられている。
今回の仕組みは、基本的な社員情報を人事システムからkintone内に取り込んだうえで、社員番号とは別に個人に紐づいたユニークな背番号を新たに設定し、この背番号を軸に健康診断情報や脳・心臓疾患、SASに関する検査結果を格納するアプリを作成。健康診断情報やSASに関する結果は病院からのExcelフォーマットで取り込み、脳や心臓に関する結果は手入力にてkintone上に格納される。
別途保健師が記録する面談アプリも作成し、全ての情報が保健師カルテと呼ばれる社員マスタアプリで可視化できるようになっている。新たに背番号を設定したのは、グループ企業内での転籍によって社員番号が変わった場合でも、過去の情報が引き継げるようにするためだ。
「保健師カルテ」で社員ごとの健康診断情報を管理
過去の健康診断情報を一元管理
他にも、受診勧奨を行う案内状が帳票出力できる“お手紙アプリ”を作成しており、手紙を送付した日付や医療機関を受診したかどうかの情報など、疾病に関する経過管理も可能になった。このお手紙アプリによる受診勧奨のための通知書の帳票作成や出力、そして添付ファイルも含めたバックアップについては、アールスリーインスティテュートが手掛けるkintone開発プラットフォーム「gusuku Deploit」が採用されており、帳票の柔軟な変更やステージング環境を本番環境以外に用意できるなど、日々の運用やメンテナンスの部分で大いに役立っている状況だ。
kintoneの「お手紙アプリ」から帳票出力した受診勧奨のための通知書
今回新たに健康管理の基盤を整備したことで、保健師が行ってきた面談時のカルテ準備や受診勧奨までつなげる一連のフローが大きく効率化できたという。「2700人を超える社員のカルテを作成するだけでも、従来は健診後1カ月以上かけてもExcelに全て転記するのは難しく、健康診断の結果を印字してカルテに貼り付ける作業も含めると膨大な時間がかかっていました。今は健康診断の結果は訪問前にすべてkintone上に格納されていますし、脳や心臓、SASの検査結果も健診後半年間でのフォローには十分間に合います。転記ミスも大きく削減できますし、そもそも転記されていないという事態も避けられます」と山崎氏は評価する。
また、面談時に必要な情報を探す手間がなくなり、画面を共有しながら面談者と話が進められるようになったことで、受ける側の納得感も以前に比べて高まっているはずと山崎氏は評価する。「過去5年分のデータをkintone上から見ることができるようになっています。検査結果の各数値の経年変化がその場でわかるだけでも参考になると面談者より評価をいただいております」(山崎氏)。
今後については、管理できてない項目も含めて拡張させていきたいという。「視機能検査や休業者リストである衛生月報など、まだkintone上で管理できていない項目は今後増やしていきたいです。また勤怠管理と連携することによる残業時間の可視化や、社員が服薬している薬の情報なども同じ基盤の中で管理できればと思っています」と吉田氏。 健康管理のなかでも、例えば心の問題に関連した話題など直接保健師に電話にて相談が寄せられるケースもある。「面談時に話になることもありますが、電話でも相談は寄せられます。コミュニケーション手段としてもkintoneに期待を寄せています」と山崎氏。
ほかにも、健康状態の可視化を通じて働きやすい環境づくりへの取り組みを見せていくことで、採用活動にも役立てたいという。「健康経営などがキーワードとなっており、社内で今まさに取り組み始めているところです。その1つに社員の健康管理が位置付けられています。kintoneは業務効率化に寄与するツールだからこそ、働き方改革にも大きく役立つもの。働きやすい職場づくりが、採用の面にもいい効果を生んでくれることを期待しています」と今後について坂本氏に語っていただいた。(2018年11月取材)
健康管理システム導入について
健康に起因する重大事故防止が、同業の中では大きな課題となっています。
当社では、従業員の健康を維持するための仕組みは、定期健康診断や産業医からの意見、3名の保健師等の活動により推進している一方で、管理者側ではBI・蓄積データの総合的な分析は困難でした。
併せて、個人医療情報管理という難しさも影響し、本社担当毎のファイル管理に頼り、有事対応等では、健康情報収集に膨大な時間と手間が掛かっていました。
この課題克服のためのソリューションとして2018年4月から導入した、クラウドシステム キントーンは、脳疾患・SAS・心臓病などの検査結果をエビデンスとして一元化し、今後も活用範囲の拡げられる有効なシステムだと確信しています。
東急バス株式会社 安全統括管理者
常務取締役 執行役員 坂本 織也
東急バス株式会社 安全統括管理者 常務取締役 執行役員 坂本 織也氏
多くの業務システム開発をしてきており、基幹システムとkintoneを組み合わせたシンプルで使いやすいシステムをご提供しております。
本事例では業務が固まっていないなか、お客様と話しながらシステム化していく「対面開発」が本領発揮しました。各種クラウドサービスを活用して素早くシステムを構築する「ハイスピードSI」の事例として皆様に公開できること、非常に嬉しく思います。
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禁止事項
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