東京急行電鉄
- 【業務内容】
- 鉄軌道事業、都市開発事業、生活サービス事業、国際事業、ホテル・リゾート事業
- 【利用用途】
- 会員制サテライトシェアオフィス事業における利用実績データ収集及び請求システム連携
1922年9月2日に設立された目黒蒲田電鉄株式会社を出発点として、鉄軌道事業を中心に様々な事業を展開している東京急行電鉄株式会社。東急東横線など人気の高い路線を運行する鉄道事業をはじめ、沿線価値の向上を目指して渋谷や二子玉川エリアの再開発プロジェクトを数多く手掛けている都市開発事業など、魅力ある沿線づくりに向けた様々な事業を幅広く行っている。現在は2015年4月から始まった中期3か年経営計画「STEP TO THE NEXT STAGE」の真っただ中にあり、2022年に創立100周年を迎えるにあたって同社が目指すべき姿の実現に向けて様々な施策を展開している。
そんな同社では、次世代にわたって持続的成長を果たすべく2015年に社内起業家育成制度を創設、新たな事業の創出に注力してきた。そこで第一号案件として事業化された「サテライトシェアオフィス」での業務基盤としてkintoneが活用されている。その背景について、事業を起案した経営企画室 企画部 イノベーション推進課 サテライトシェアオフィス事業「NewWork」担当 プロジェクトリーダー 永塚 慎一氏とプロジェクトサブリーダー 野﨑 大裕氏、そして、社内起業家育成制度の事務局として事業化を支援してきた同課 課長補佐 梶浦 ゆみ氏にお話を伺った。
鉄道やバス、不動産などを手掛ける都市開発、生活サービスなど、魅力的な沿線づくりに貢献する様々な事業を展開する東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)では、中期3か年経営計画のビジョンにも掲げられた“東急沿線が「選ばれる沿線」であり続ける”ための様々な施策に取り組んでいるが、その一環として取り組まれているのが新規事業の創出だ。
先に挙げた社内起業家育成制度だけでなく、外部のベンチャー企業を対象とした事業共創プログラム「東急アクセラレートプログラム」を手掛けており、新たなビジネスの種を様々な形で発掘、支援している。
この取り組みの1つに挙げられるのが社内ベンチャーとしての第一号案件であるサテライトシェアオフィス事業「NewWork」だ。この事業は、主に法人顧客を対象として提携先も含め東急沿線のみならず全国に店舗を展開する計画だが、事業化を進めるにあたって必要だったのが、利用履歴をベースに請求を行う業務基盤の整備だった。
「NewWork」(サテライトシェアオフィス事業)を起案した永塚氏は、以前はテナント誘致をはじめとしたオフィス開発・運営事業に携わってきた経験を持つ。
「都心部の本社以外にも働ける場所を確保することで、テナント誘致の際の営業フックにつながる優位性になると考えたのです」とそのアイデアの種を説明する。
この「NewWork」は受付等が常駐しないで営業することが想定されており、そのためには利用者の利用履歴から請求につなげるまでの課金の仕組みが必要だったという。
特に人件費を抑えた分内装への投資を手厚く行い、居心地よく働きやすい空間を付加価値として提供することを目指したと説明するのは野﨑氏だ。
「都心にはシェアオフィスがたくさんありますが、我々は家の近くで働ける場所として「NewWork」を設置するのが特徴の1つです。また、起業家やフリーランサーではなく企業に勤めるサラリーマンをターゲットとしたスペースを目指しているのも、他のシェアオフィスとはコンセプトが異なります」。
そのため、他人に聞かれないように電話が可能なブースや貸し会議室など秘匿性を維持するためのクローズな空間作りにも力を入れている。企業でも安心して活用できるよう労働時間の把握など労務管理にも配慮した仕組みとするためには、ITによるシステム化が必須だったのだ。
基盤を構築する際に事務局として梶浦氏がこだわったのが、スピード感を持って事業を立ち上げるということだった。
「システムを発注する前に全体像から詳細まで作りこんだ仕様書を作成した上で見積もりを収受し、すべて決めたのちにシステム開発を始めるというのがこれまでのスタンダードであり、今でもそれは変わりません。しかし、この新規事業の制度がスタートした当時から、進め方については課題感を持っていました。次々と新規事業をスタートさせるには違うやり方が必要だと考えていたのです」と梶浦氏は当時を振り返る。
スピード感を持って進めていくためには、既存のサービスを有効活用しながら手を入れていけるもの、そして万一の失敗時でも撤退しやすいよう、クラウドサービスが最適だという結論に至ったという。 そこで様々なセミナーに参加するなど情報収集を行う過程で目に留まったのが、サイボウズが提供するkintoneだった。
「しっかりとしたサービス基盤であるということはもちろんですが、柔軟に対応可能な仕組みである点に注目しました」と梶浦氏。
実は当初は業務がしっかりと決まっておらず、ある程度業務を固めていきながらシステム開発を行っていくことが想定されており、できる限り柔軟に変更できる仕組みが不可欠だったという。「我々でも多少手を入れることができるというのは評価ポイントの1つです。仕様変更のたびに開発者に連絡するという方法ではなく、手を入れれば使いやすくできるというのはとても大きかった」と梶浦氏は評価する。
実際にサイボウズのオフィスでデモを見たことで、自分たちでもチューニングできそうだと実感したという。「その場で言ったことが目の前の画面ですぐに実現できる様は、まるでテレビゲームみたいな感じ」と永塚氏は振り返る。
なお、今回はアールスリーインスティテュート(以下、R3 institute)が対面式で直接ミーティングをしながらシステム開発を行ったが、この対面開発できるパートナーの存在も重要だったと梶浦氏。
今回システム化したのは、入退出管理及び利用実績の可視化、そして請求へとつなげる一連のシステムだ。
まずはkintoneの画面上からサービスの利用登録を行い、事前に契約者へライセンスカードが配布される。このライセンスカードを「NewWork」への入退出時にかざすことで情報が収集され、利用者ごとに利用時間を計算、kintoneにその結果が返される。
また請求システムと連携し、利用実績に基づいた請求処理を契約企業に対して行うことができるようデータ連携する形になっている。kintone上では、管理する運営者が状況確認できることはもちろん、契約企業の担当部署向けに利用状況が可視化できるアプリも提供し、kintone上で確認できるようになっている。
「請求金額は毎日計算しており、月の途中でも利用金額の推移が可視化できるようになっています」と野﨑氏。入退出管理の仕組みや実績の収集から計算までをすべてAWS上で展開し、管理者および契約企業へのインターフェースをkintoneが提供するという形でシステムが開発されている。
ほかにも、段階を踏んで開発する計画があり、現状の座席数と利用者の状況から混雑状況がWebで分かるような仕組みをはじめ、直営店舗ではない提携先を利用する際の利用料精算支払の出力機能などもすでに検討されている。
さらに、現在は法人をターゲットにしているが、フリーランスや小規模事業者、個人に向けたクレジット請求機能の実装も現在計画されている。これらの機能は段階を踏んで順次スタートしていく予定だ。
今回導入した仕組みについて野﨑氏は「柔軟に変更、拡張できるのはkintoneの大きな魅力です。使いながらリバイスしていける点はとてもよかった。簡単なものであれば私でも変更できるはずです」と評価する。
また、今回のようなスタートアップにはとても適した環境だと永塚氏も力説する。
「その場でイメージを伝えて、それが形にできるのが素晴らしい。こういったスタートアップの場合、対面開発で業務を詰めていくというのは適しています。それができる仕組みはとてもありがたい」。
今回の仕組みでは店舗の稼働実績がリアルに把握できるため、どの店舗がどの程度使われているのか一目瞭然だ。「集めたデータから、次の店舗を出店計画の参考にするなど、事業計画へのデータ活用も可能です」と永塚氏は評価する。
今回のプロジェクトに関わらず、これから新たな事業立ち上げを行っていく事務局としての立場である梶浦氏は、今後もkintoneおよび対面開発を行ったR3 instituteの組み合わせを成功事例として、適したものがあれば引き継いでいきたいと語る。
今後については、まずは直営店舗や提携先を増やしていきながら、リゾートや地方の出張時にも利用できるよう国内外問わず働ける場所として利用できる拠点を増やしていく計画だ。
「日本中どこにでもオフィスがあって働ける、という環境をあたりまえのものに。NewWorkが変えていきます」と永塚氏はその意気込みを語る。
kintoneを今回導入したことで、他部門の様々な業務に応用できる可能性を感じていると永塚氏。
「オフィスビルの賃料管理や契約書管理など、必要な情報をリアルタイムに共有できるようなインフラとして他部門で使う場面は多いのではないでしょうか」。現状では数字の集計やグラフによる可視化は手作業で行われており、時間がかかるだけでなく正確性の面でも新たインフラの検討は必要だ。
「今はExcelに実績を転記してグラフ化するといった、とにかく手間と時間がかかる作業が社内にたくさんあります。応用できる可能性は高い」と野﨑氏。今回の案件を新しいやり方として広く社内に広めていきたいと今後について語っていただいた。
なおkintoneについて永塚氏は「ビジュアル的にわかりやすい仕組みで、詳しくない人でも伝わりやすいもの」と表現する。
また野﨑氏は「Web上で共有できる多機能Excelといったイメージです。プラス拡張性が高く、請求書などいろんなものをくっつけていける優れもの」、梶浦氏は「チームでの仕事を最大限やりやすくしてくれる道具」という言葉でkintoneを表現してくれた。
多くの業務システム開発をしてきており、基幹システムとkintoneを組み合わせたシンプルで使いやすいシステムをご提供しております。
本事例では業務が固まっていないなか、お客様と話しながらシステム化していく「対面開発」が本領発揮しました。各種クラウドサービスを活用して素早くシステムを構築する「ハイスピードSI」の事例として皆様に公開できること、非常に嬉しく思います。
本動画に関する著作権をはじめとする一切の知的財産権は、サイボウズ株式会社に帰属します。
kintoneを学習する際、個人や社内での勉強会のコンテンツとしてご利用ください。
データを変形 ・加工せず、そのままご使用ください。
禁止事項
ビジネス資料や広告・販促資料での利用など
商用での利用は許可しておりません。