東京ドーム 様の導入事例

東京ドーム

【業務内容】
東京ドーム、東京ドームシティの運営、イベント企画など
【利用用途】
出店者管理、拾得物管理
  • 従来のやり方を残しながら業務コスト9割削減
  • 「使う人の気持ちに寄り添うこと」を念頭に
  • 短期間でkintoneを浸透させた事例

日本を代表するドーム球場「東京ドーム」を中心に、東京ドームシティ内にあるさまざまなテナントやレジャー施設など幅広く運営する株式会社東京ドーム。事業の中心となる東京ドームは、野球やコンサート、スポーツイベントを中心に、年間を通じてドームを貸し出すことが多いが、毎年1月・2月には自社主催のイベントも実施している。
今回は東京ドームが主催するイベントの企画・運営を担当する望月秀吉氏にkintoneの画期的な活用方法についてお話を伺った。

約1,000社にものぼる出展者とのやり取りは全て「紙とFAX」
繁忙期にはチームの残業時間が全社的な問題になるほど膨れ上がった

株式会社東京ドームでは、毎年4つの自社主催イベントを開催している。総来場者数は約100万人、出店者はあわせて約1,000社と、広大なドームにふさわしい大規模なイベントだ。そんな自社主催イベントの企画・運営を担当する興行企画部の望月秀吉氏。大きなイベントの主催はやりがいがある仕事である一方、業務内容は多岐にわたり、社内だけでなく社外との調整も多い。さらにイベントの開催時期が1年のうち1〜2ヶ月に集中していることもあり、繁忙期はイベント関係に携わるメンバーの残業時間や休日出勤の長時間労働が深刻化していた。

「特に手間がかかっていたのは、約1,000社の出店者とのやり取りです。出店する際にはさまざまな申請が必要になりますが、その申請書は全て紙に手書きで記されたものでした。手書きだと誤字や文字が読み取れないケースがよくありましたし、パンフレットを作る際には手書きの文字をパソコンに打ち込む作業が発生します。そこで人的ミスが起きてしまうこともありました」(望月氏)

東京ドーム 望月 秀吉 氏

こういった非効率な業務は社内に留まらず、出店者側にも影響があったという。

「出店者側からすると、同じ書類に何度も同じことを手書きで記入して、FAXで送る作業が発生していました。きちんとFAXが届いているか不安に思われる方もいらっしゃるので、電話で確認されることもありますが、私達も2名の社員と数名のアルバイトだけで出店管理業務を回していたので書類が届いたのを確認するまでに時間が掛かってしまうことがほとんどです。とにかく必要な業務をこなすので精一杯でしたが、心のどこかで”この作業の時間が減ったらもっと出店者の皆さんと一緒にお客様に喜んでもらえるようなことを考える時間にあてられるのに”という気持ちはありました」(望月氏)

2018年には、部内の残業時間を減らすようにという指示があり、望月氏は本格的な業務改善の方法を模索し始めた。

偶然見つけたCybozu Daysでkintoneと運命的な出会い
設計を専門家に任せたことと「kintoneにこだわりすぎない」ことが成功の近道に

業務改善のツールを探していた時に、偶然インターネットでCybozu Days 2018のイベントページを見つけて、イベントに参加した望月氏。そこでkintoneと運命的な出会いを果たした。

「当時はkintoneの事もよく知らなかったのですが、説明を聞いたら"求めていたのはこれじゃないか?"という気持ちになって。帰ってから早速kintoneの無料試用を申し込んで色々と触ってみました。しかしいくらkintoneは簡単だといっても、限られた時間の中ですぐに目指す仕組みを作り上げるのは困難だと判断し、早い段階でプロにお願いすることを決めていました。そこでサイボウズに相談し、自社の要望や予算に見合ったパートナーを数多く紹介してもらいました。そして出会ったのがミューチュアル・グロース社です」(望月氏)

ミューチュアル・グロース社の担当である澤田氏は、なんと学生時代に東京ドームでイベントのアルバイトをしていた経験があった。そのため、イベント出展に関するフローや内情に詳しく、解決策を共に考えてくれる最良のパートナーであったのだ。望月氏はここでも運命的な出会いを果たしていた。

申請類のほとんどをkintoneで電子化し、出店者からも好評だ

出店者からの申請は、kintoneを基盤にしてフォームブリッジkViewerを使ってパソコンやスマートフォンから申請・確認ができるような仕組みにした。kintoneに溜まった情報はRepotoneUを使って帳票出力できるようにするなど、今まで手間がかかっていた手書きの申請類の作業の6割~9割をkintoneで電子化することに成功した。このスムーズなkintoneの導入について、望月氏は「すべてをkintoneにしない、こだわりすぎない」というスタンスを取ったことも成功の秘訣だったと語る。

「多くの申請類はkintoneでの電子化ができましたが、今までどおり紙とFAXのやり方を希望する出店者には以前の申請方法でも受付を行うようにしました。しかし全体で見ると紙での申請は数社のみ、ほとんどの出店者は電子化に前向きで、実際に申請類が電子化してとても便利になったとご好評の声を数多く頂いています。無理に全て電子化するのではなく、以前のやり方も残したことで軋礫が生じることなく、スムーズに導入を進められた秘訣だと思っています」(望月氏)

落とし物は赤色のアプリ

はじめは出店の申請や管理のためにkintoneを導入したが、社内のアイデアでイベント中の拾得物管理も紙の書類からkintoneへ移行したという。

「会場で落とし物が発生した際に、落とし物をした人と落とし物を拾った人の2パターンが存在します。今までは同様の書類に手書きで記入する方式でしたが、kintoneでは落とし物をした人は赤い画面、拾った人は青い画面と直感的に記入する場所がわかる仕組みにしました。これは現場からのアイデアで、非常に好評です。さらにお客様から直接問い合わせを受けるインフォメーションスタッフからも、紙に比べて検索性が上がったと喜ばれました」(望月氏)

拾い物は青いアプリ。視覚的にも分かりやすく工夫されている。

問題視されていた長時間労働を規定内におさめることに成功
新しい事業や他部署にもkintoneの活用が広がる兆しが見えた

一番の問題であった部署内の長時間労働は、kintone導入後に作業が効率化され、繁忙期でも規定時間内に作業を終えることができるようになったという。

しかし2020年、新型コロナウイルスの発生により緊急事態宣言が発令され、さまざまなイベントが中止となる事態が起きた。東京ドームも痛手ではあったが、出店社の多くも店舗の営業ができなくなるなど困窮していた。そこでイベントの出店者の商品を対象に「ふるさと祭り東京おとりよせネット」というECサイトを立ち上げることになった。

「私たちはECサイトの立ち上げと、注文の管理の部分を担っています。ECサイトで申し込みがあった注文情報を各社ごとにまとめて送信し、その情報を元に出店者さんは物品を発送するという仕組みです。最初は紙やExcel、メールなどを使って、徐々にkintone に作業を移行していくつもりでしたが、実際に作業をしてみるとかなりのエ数が掛かってしまい、kintoneによる作業軽減が急務となりました。しかしすでに私自身もkintoneを使った業務改善の経験があるので、簡単なアプリなら自分自身で作れることや、身近に相談できるパートナーがいることが幸いして、すぐにkintoneを使った改善策に着手することができました」(望月氏)

その結果、初日は3人で6時間かかっていた注文管理業務が、1週間後にはなんと1人で1時間弱あればこなせるようになったという。この改善のプロセスにも望月氏なりの「できることから少しずつkintoneに」という考えがあったため、無理なくスムーズ現場に投入することができたといえるだろう。最後に「自分もあくまでkintoneを利用するユーザーのひとり。利用者の気持ちに沿って、無理な開発はしないと決めていたことが成功の秘訣」と話す望月氏。

kintone導入に際して一番大切なことは、技術や利便性だけではなく、使う人の気持ちを第ーに考えることなのかもしれない。