エブリイ
- 【業務内容】
- 小売業(スーパーマーケット)
- 【利用用途】
- 企業間でのやりとり(衛生管理、発注管理)、備品管理、ポイントカードや商品券管理、社員情報管理、売上日報、残金確認
福山や広島、岡山を中心にスーパーマーケット事業を展開する株式会社エブリイでは、電話やメール、Excelなどを用いて店舗と本部間での情報管理を行ってきた業務プロセスをkintoneにて刷新し、衛生管理などさまざまな管理業務を行いながら外部パートナーとのコミュニケーション手段としても活用している。小売業において発生する煩雑な管理業務を効率化するべくkintoneを採用した経緯について、システム物流部 IT統括課 システム企画担当 和田 学氏および店舗部 衛生指導担当 高橋 美帆氏、総務部 マネージャー 徳山 勝彦氏、財務経理部 経理担当 宗政 志宜氏、財務経理部 経理担当 三河 良介氏、瀬戸店 総務 岡田 絵美子氏、そして店舗の衛生管理を手掛けているイカリ消毒株式会社の濱田 浩史氏にお話を伺った。
1979年に設立された有限会社ヨシケイ福山が前身となり、1989年にスーパーマーケット第1号オープンを機に創業した株式会社エブリイ。広島・岡山県を中心に展開するスーパーマーケット事業を中核に、夕食材料宅配事業や外食・給食事業、農業法人、料亭・居酒屋事業、障がい者支援事業など、食の総合プロデュースグループとして多様な販売チャネルを展開。産地と売場、生産者と顧客をつなぎあわせる仕組みをグループ全体で循環させることで、これまでにはない価値の創造や新たな流通の形を模索し続けている。なかでも商品アイテムを絞るなど競合他社とは異なる特徴的な販売戦略によって、日本に類のないスーパーマーケットを目指している。
そんな同社がこれまで以上に事業拡大を進めていくためには、従来行われてきた人海戦術での業務を効率化することが必要だったと和田氏は当時を振り返る。「新たな仕組みを導入することで、属人化された業務から脱却していく必要があったのです」。
具体的には、店舗での運営状況を把握するために、総務部や財務経理部をはじめ本部の担当者が店舗にさまざまなフォーマットの帳票を毎月送り、店舗にて入力してもらっている。これら報告書は電話やメール、Excelなどそれぞれ異なる方法でやり取りされており、なかには返信忘れの書類が出てくるケースもあるなど、確認作業も含めて煩雑な運用が続いていたのだ。しかも、40近い店舗からの戻りを受けて、本部側では手作業にて集計を行うことになり、その作業だけに何時間もかけていたという。
「業務の足場をスピーディに固めていける何かが必要だと感じたのです。ただし、店舗の担当者ごとにリテラシの差が当然あるため、使い勝手のいい仕組みが必要でした」と和田氏。
店舗における衛生管理の面からも、課題は山積していたと語るのは高橋氏だ。「私が衛生管理の仕事を引き継いだ段階では、過去の履歴も含めて情報がきちんと管理できていませんでした。せっかくの改善報告書が生かし切れておらず、衛生管理に関する課題が店舗から寄せられても、その都度イカリ消毒さんに確認せざるを得ない状況だったのです」。
そこで、Excelをベースにフォーマットを作成し、店舗での改善点が記された報告書や改善箇所の対応履歴など衛生管理に関わる情報を管理し始めた高橋氏。それでも、他の店舗に情報が共有できないばかりか、改善が行われたかどうか本部から随時確認しなければならない状況が続いており、「何かいい手段がないかと上司に相談していたのです」と当時の状況を語る。
ただし、業務改善に割けるリソースは和田氏本人しかない状況だったこともあり、できる限り簡単に、そして応用が利く仕組みを検討したという。「属人化した業務を解消したいのに、私自身に属人化した仕組みになってしまっては意味がありません。自分で作成するにしても、現場に運用を落とすにしても、応用の利くものが必要でした」。外資系の大手企業が提供するソリューションを検討したこともあったというが、改善すべき業務が多く画一的なフォーマットでは対応できないため、自由にアプリケーションが作成できるものが必要だったと和田氏。
「確かにカスタマイズできる製品ではありましたが、外部にお願いせざるを得ないものでした。これではとても柔軟に運用できないと判断したのです」。
そこで紹介されたのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「わずか3分で業務アプリが作成できるという話でしたが、即座に“簡単に作ったアプリが、業務にマッチして使い物になる訳がない”と当初は半信半疑でした。しかし調べてみると、多くの企業が自社でアプリを作成している記事を目にしたのです。また、kintoneはカスタマイズも可能で、作り込めば様々な用途で活用できることを知りました。まさに私が求めているものでした」。特に和田氏が評価したのは、画面を意識せずにアプリ作成できる点だ。「Web制作の経験があるだけに、HTMLを意識することなく業務アプリが作成できるのは大きな工数削減につながると考えました」。また、社内向けのWebアプリケーション開発の経験も持つ和田氏にとって、JavaScriptにてカスタマイズできる点もポイントの1つだったという。
他にも、クラウドサービスである点も選択のポイントとして見逃せない。「当社では業務アプリケーションはオンプレミスの環境で構築しており、クラウドサービスはkintoneが初めての経験です。今でもクラウドに対してよい印象を持っていない人もいますが、パートナーとの情報共有も考慮すればクラウドが最適」と和田氏。ただし、初めてのクラウドサービス採用だっただけに、事前にハンズオンセミナーに決裁権のある上司とともに参加し、その良さを目の前で体感してもらったという。その結果、同社の業務基盤としてkintone採用が決定。実際には、本部と店舗のやり取りに使っているExcelの代替えとして活用すべく、使ってもらえそうな人とその業務を見極めたうえで現場へ展開していった。
「正直すべてのExcel業務を洗い出すだけで多くの時間がかかります。そうであれば、すぐに現場に触ってもらい、慣れていただきながらユーザー数を増やしていくことが重要だと考えたのです。本部とやり取りしている店舗の業務を少しでも楽にできれば、自然と全社的に広がっていくはず」と和田氏。
現状は、店舗にいる店長や事務員、そして本部スタッフ含めて270名あまりがkintoneを活用しており、運用している業務アプリは100を超えている状況だ。具体的には、店舗での返品・返金発生事由を管理するアプリをはじめ、外部への名刺発注アプリや衛生管理、備品管理、ポイントカードや商品券管理、健康診断管理、売上日報、残金確認など、その用途は多岐にわたっている。なかには、おせちの売れ行き状況を管理するようなアプリも作っているという。
衛生管理を例に挙げると、本部にいる衛生管理担当の高橋氏と各店舗、そしてパートナーであるイカリ消毒の3者での情報共有基盤としてkintoneを活用している状況だ。まずイカリ消毒が定期的に各店舗を回って報告書を作成し、その情報をkintoneにて本部の高橋氏に報告する。高橋氏が報告書をチェックし、改善ポイントがあれば改善までの締切日を指定したうえで店舗へ通知する。店舗はコメント機能を使って改善した内容を書き込むことで、現場の改善が図れるようになる。「わざわざ上長に報告せずとも、kintoneを見てもらえば状況がすぐわかるようになっています。以前は清掃マニュアルなどの書類も所在不明になってしまうこともありましたが、今はすべてkintone上で管理できるようになっています」と高橋氏。kintoneで環境整備する前は、本部や店舗、そしてパートナーとの間で電話のやり取りが頻繁に発生していたというが、今は電話そのものが激減している状況だ。今後は店舗で改善を行った様子を写真に撮って共有してもらうことで、他店にも参考にしてもらえるようにしたいという。また定期的な報告だけでなく、緊急連絡用のアプリも別途作成したいと高橋氏は意欲を見せる。
パートナーであるイカリ消毒の濱田氏もkintoneでの運用にメリットを感じている1人だ。「以前はメールにExcelデータを添付して、衛生担当の方に各店舗へ報告書を送ってもらっていましたが、そのレスポンスの管理だけでも大変。一方的な連絡だけでは現場の改善意欲も向上しませんが、kintoneなら報告書送付の通知が店舗にプッシュ型で届きます。他店舗の衛生管理情報も共有できるようになり、切磋琢磨できるようになっています」。また、40近い店舗すべてのExcelデータを集計して1つずつ項目チェックするのも大変な労力がかかっていたが、今ではkintone内で状況が直感的にわかり、情報の抜け漏れもなくなったという。「店舗から戻ってきたExcelを私のほうでチェックするのですが、以前は文章が勝手に変わっていたり写真が抜けていたりなど、情報の精度もばらばらでした。今は情報漏れがあればすぐ店舗に通知するだけで必要な情報が漏れなく管理できます」と高橋氏。報告書はスマートフォンでも閲覧でき、現場でも鮮明な画像で改善箇所がわかるようになっている。衛生管理における品質改善にも大きく貢献している状況だ。
他にも、総務部では健康診断関係の取りまとめをはじめ、社会保険の適用拡大に伴う契約書変更手続きや給与証明、健康診断資料の請求、慶弔などの各種申請にkintoneを活用している。「例えば以前はExcelで労働者名簿を作成し、それぞれ健康診断が必要なのか任意なのかの確認を含めて、全店舗へ個別に通知していました。また、戻ってきたExcelを統合・集計して、医療機関に提出するという作業も必要でした。kintoneに変わったことで集計ミスが減り、メールで個別に通知していた作業も一度に作業できています」と徳山氏はその効果を実感する。各種申請に必要な連絡票のやり取りも以前はFAXで通知が届き、原本は別途郵送で来ていたが、それらを紐づける作業だけでも時間がかかっていた。「以前は連絡票を送ったかどうかの押し問答が始まるなんてこともありましたが、今ではkintone上で履歴が管理できており、やりとりもスムーズになりました」と評価する。
また財務経理部門でも、展開する外食店舗との間で、売上日報の報告やレジ内の残金確認、グループ商品券の回収などのアプリをkintoneにて作成している。「月末には店舗ごとに報告がきますが、kintoneであればすぐにExcelに落として並べ替えもできるため集計も容易です」と語るのは宗政氏だ。実は以前はExcelだけでなく、紙での郵送やFAXなど店舗ごとに通知する方法が異なっており、送信したかどうかの確認にも時間がかかっていたという。今は情報の抜け漏れもなく、リアルタイムに確認できるようになっていると評価も高い。
他にも、現金回収業者が行う作業結果がFAXで送られてくるが、この内容をkintoneで確認できるようインターネットFAXの仕組みと連携している。「kintoneに自動的に結果が表示されるため、店舗側でも現金残高の照合が容易になりました」と三河氏は評価する。今後については、店舗間で食材などの商品を移動した場合、現状は統括部門による移動処理手続きが必要だったが、店舗レベルで移動伝票の代わりに商品発送の情報を送り、受取ボタンを押せば集計表に反映される仕組みを実装する予定だという。また、いずれは入出金データや残高情報がkintone上で確認できるよう、会計システムとの連携などにも期待を寄せている。
店舗では、各種申請や報告書の提出など数十種類の業務をExcelや紙などを用いて行ってきたが、kintoneによって業務改善につながっていると岡田氏は評価する。「以前は入力したExcelを印刷してFAXで送るケースもありましたが、送信エラーなどで情報が本部に届かないことも。今はkintoneにさえ入力すればきちんと情報共有できます。直接入力から選択式に代わり、手間なく行うことができています」と岡田氏。今はさまざまな業務が随時kintoneに置き換わっていっているが、特定の業務をkintoneでの運用に切り替えたいと現場から要望が出ることもあるほど。「業務によって使うツールが異なるのは避けたいところ。全部kintoneで済むほうがありがたい」と岡田氏。一部契約書などはExcelシートごとに印字する必要があるものの、kintoneディベロッパーであるアールスリーインスティテュートが提供する開発運用支援サービス「gusuku」を利用することで、数百人単位の帳票も一気に出力できるようになっているという。
kintone導入の効果について和田氏は、「システムは改善できる、変えていけるということを現場に意識してもらえたことが大きい」と語る。「ウォーターフォール型でシステム構築してしまうと、設計当初から運用が変わってしまうと対応が難しいケースも。たとえ改善したいと声を上げても、なかなか変わらないと現場に思われていた節もあったようです。kintoneであれば、自ら関わっていくことで改善できるという結果をきちんと示すことができるようになったことが最大の効果です」。また高橋氏は、Excelで作られた報告書の修正や現場への確認などが日々発生していたが、「現状はほとんど作業は発生しておらず、月30時間程度の時間は削減できています。その時間で店舗に出向くこともできるようになり、店舗とのコミュニケーションが以前よりもしっかり行えるようになりました」と評価する。
今後については、グループ全体のみならず取引先も含めてkintoneで改善の輪を広げていきながら、現状の基幹システムとどう連携していくのかを模索していきたいと和田氏。また、外食事業において店舗間での顧客誘導といった店舗予約管理アプリを、宅配事業では車に取り付けたセンシングデバイスから情報を吸い上げてドライバーをサポートする安全運行を支援するアプリなど、具体的な取り組みも始まっている。「現状はさまざまな業務に浅く広く展開していく段階ですが、いずれは業務を掘り下げていく場面も。そんなときには外部ディベロッパーの力をお借りすることもでてくるはず」と今後について語る和田氏。最後にkintoneの一番の魅力については、「親しみやすさではないでしょうか。現場からは名前が可愛く、覚えやすいという声も。誰にでも親しみやすい仕組みであることがkintone最大の魅力」と評していただいた。
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