岡山大学病院 様の導入事例

岡山大学病院

【業務内容】
臨床研究・治験・橋渡し研究・医療機器創出のための各種研究支援
【利用用途】
案件管理や見積もり管理
  • 医師主導治験をはじめとした研究支援事業を強力にバックアップ
  • 業務基盤をkintoneにすることで年間1億円を超える規模の案件管理が可能に

岡山に位置し地域医療の中心的役割を果たしている岡山大学病院は、国の定める「臨床研究中核病院」として、革新的な医薬品・医療機器の創出と医療の発展に貢献することを目的に掲げ、日夜研究開発を行っている。同病院は2010年に新医療研究開発センターを発足させ、臨床研究・治験・橋渡し研究・医療機器創出のための各種研究支援依頼から支援業務管理、支援費用請求までの基盤システムとしてkintoneを活用しているが、その開発から実際の運用に至るまでの経緯について新医療研究開発センター 准教授 櫻井 淳氏および同センター 江端 真祐美氏にお話を伺った。

【課題】研究支援事業に関する依頼数の急増で管理体制の強化が必要に

アナログ的な案件管理や情報管理手法に限界を感じる

同センターは2016年に学内及び外部研究機関への研究支援業務の提供を開始した。当初は年間10件ほどの案件だったものが、サービスに応じた料金表の外部公開や2018年に施行された臨床研究法の影響で、年間170件を超える規模にまで案件数が急増することに。
「支援依頼件数の少ない開始当初はメールや電話、紙でのやり取りで対応できていましたが、2018年4月からの臨床研究法施行の影響もあってアナログ的な管理手法では限界に達してしまうことが目に見えていた。何かシステムを導入することで、案件の進捗管理や請求関連の業務を効率的に行う必要が出てきたのです」と櫻井氏は当時を振り返る。なかでも困っていたのが、案件に必要なドキュメントを中心とした情報の共有だった。枝分かれした情報が個別に改変されたり、最終的な納品物の版管理ができていなかったりなど、情報管理における課題が顕在化していたのだ。
以前はExcelで進捗を管理していましたが、メールの履歴を追いかける必要があるだけでなく、自分がccに含まれていない場合は把握できないこともあったのです」と語るのは江端氏だ。支援業務のなかでは費用も発生することから、見積から請求までのプロセス管理についても徹底する必要があったという。

新医療研究開発センター 准教授 櫻井 淳氏

同センター 江端 真祐美氏

【選定】属人化した仕組みを回避、自分たちだけで運営できる仕組みづくりに最適

無料お試し期間を有効利用、自分たちでも開発・運用できることを実感

同病院では、以前から部門システムとして導入するものは病院の許可を得た上で、部門内で予算を持って維持管理することが前提となっており、櫻井氏は、センターの新たな基盤づくりでは同センターが独自に運用する部門システムとしての導入を検討した。そこで、情報およびプロセス管理に必要な基盤として注目したのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「ある研究会での知人との話題のなかで、簡単にデータベースとして活用できる仕組みとしてkintoneを聞いたのがきっかけです。kintoneの製品サイトを見たところ、システム開発の経験がない私でも作れそうだと考え、30日の無償体験期間に簡単なデータベースを作成してみました。1時間ほど触ってみましたが、これなら十分開発・運用できると実感したのです」と櫻井氏。

豊富なプラグインも大きな魅力、自分たちだけで継続運営できる仕組みを高く評価

実は当初から、外部に開発を委託するのではなく、ある程度自前で作り込めるものが求められていた。「臨床研究の支援をしている他大学では、オンプレミスで独自に作り込んでいるところもありますが、システムに詳しい方が常駐して運用しているケースがほとんど。私が懸念したのは、その人がいなくなったらどう運営していくのかがということでした。我々のセンターでは、限られた予算の中で継続してシステム管理専従者を雇うことが難しいこともあり、属人化したシステムではなく、誰でも継続的に運営していける仕組みが必要でした。それがkintoneであれば実現できると考えたのです」と櫻井氏は評価する。

豊富なプラグインも同社が望む環境にマッチしていた。「いまだに紙文化が多く残る病院だけに、帳票出力などもプラグインを使えば簡単に実施できる点はとても魅力的です。豊富なプラグインを組み合わせることで、自分たちでも必要な機能が実装できる点は大きい」と櫻井氏。実際には治験者に向けてのアンケートフォーム作成や支援依頼者とのやり取りを円滑に行うために役立つメールワイズ連携など、必要な機能が後から実装できる点も魅力の1つだと評価する。

結果として、同病院が求めていた研究支援業務における業務基盤として、kintoneが採用されることになる。

【効果】急増した案件依頼にもスピーディーに対応可能な情報共有基盤を構築、大きく収益化に貢献

年間150を超える案件管理を含めた支援業務の情報基盤として活用

現在は、同センターに所属する職員の約7割に当たるおよそ50名がkintoneを使って案件の進捗管理や見積・請求書の作成などを行っており、別途契約関係や出納管理を行う事務部門のメンバーとともに臨床試験に関する支援業務を行っている。現在作成しているアプリは、主に800項目ほどある料金マスターとなるARO支援料金表コードアプリをはじめ、全体の案件進捗を管理するARO支援申請管理アプリ、依頼先への報告書作成アプリ、そして見積書作成アプリ、請求書作成アプリなどだ。年間およそ150を超えるプロジェクトが運用されており、コンサルタント業務として相談報告書を作成するといった1日で終わる案件から、研究の立ち上げから支援を行うような数年越しになる案件までさまざまだ。「kintoneによって案件進捗の管理が可能になり、継続的な案件でも過去の履歴も含めて情報共有できるため助かっています」と江端氏は評価する。

具体的な運用は、同センターが運営しているHP上からWeb登録された依頼情報をCSVにてkintoneに取り込むことで案件管理のレコードが作成され、それぞれ担当者が割り当てられる。担当者は見積作成を含めてやり取りを開始し、メール履歴の書き込みも含めて案件ごとの進捗履歴を加えていくことになる。最終的に支援活動が終わった段階で報告書作成アプリにて納品物となるドキュメントを作成したうえでExcelに出力し、依頼者に提出する。同時に請求書作成アプリにて請求書を発行し、支援が完了する流れだ。

なお、マウス操作だけで簡単にkintoneのカスタマイズが可能なサービス「gusuku Customine」を利用して案件の絞り込み検索の機能を実装している。

年間1億円を超える案件管理を実現、病院としての使命を果たす環境づくりに貢献

研究支援における業務基盤をkintoneにて構築したことで、支援業務における売上は飛躍的に伸びており、年間で1億円を超える規模にまで膨らんでいる。「管理業務の効率化を実現したことで、大きく収益化に貢献しています。また病院としての使命をメンバー一丸となって果たしていこうという雰囲気が醸成できたことも大きな効果」と櫻井氏は評価する。また、環境変化の激しい業務においても自ら改善できるカスタマイズ性の高さについても大きな魅力だという。「目まぐるしく変わる仕事において、必要な情報がその場で付加できる仕組みが必要です。個別に開発をお願いしていたら費用も期間もかかってしまう。kintoneであればテスト環境でプレ構築した機能のフィージビリティを確認後、速やかに本システムへ反映できるのは素晴らしい」。

支援業務に関する情報集約が可能となり、停滞させることなく案件が進められる

機能面では、案件ごとにメールでやり取りされていた情報がkintoneに備わっているコメント機能を使うことで集約でき、履歴を追っていくことができるようになったのは大きいと江端氏。「案件の進捗だけでなく、問い合わせなども全てコメント内で追いかけることができます。システム上でチャットの記録が残るようなイメージですね。センター内でやり取りされる様々な情報が、kintoneで集約できるようになって便利になりました。空いている時間に情報が確認できるため、電話のように追い立てられることもない。確認の意味も含めてエビデンスが残せるため助かっています」。SNSを使うように宛先指定で相手に連絡でき、しかもメール連携によってきちんと通知もできる点が便利だと評価する。

また、「見積書作成中」「支援実施中」といったステータス管理も行っており、今誰が案件に対してボールを持っているのかが明確化されたことで、案件自体が滞りなく進んでいる点も高評価だ。「自分の案件だけを一覧化してみることができ、案件終了のものは色分けされて表示されるなど、わかりやすく表現できています」と櫻井氏。

なお今回のプロジェクトでは、アプリの企画設計から開発、導入までをアールスリーインスティテュートが手掛けているが、同病院の立場に立ってやりたいことを素早く実装してくれる開発力を高く評価している。「やりたいことをすぐに理解して開発する力は素晴らしいものがあります。これからもカスタマイズが発生する場面があるときは、ぜひ一緒に開発していきたいと思っています」と櫻井氏。江端氏も「やりたいことが難しい場合でも、すぐに何かしらの代案を出していただき、こちらとしても検討する材料がいたただけるのはとても助かります。こちらも判断が早くなり、次のステップに進めやすい」と評価する。

 今後については、「どの部門がどれくらい売り上げているといった簡易的な情報は見ることができますが、業務分析などによって“この業務の売り上げが伸びているのでこんなスキルを持った人を採用するべき”といった情報を経営陣に伝えていくための分析基盤としても活用していきたい」と櫻井氏。また、働き方改革のなかで業務における工数管理がExcelにて行われているため、それをkintoneに展開することで業務ごとの工数の可視化を進めていきたいという。

【この事例の販売パートナー】
アールスリーインスティテュート

TEL:06-6271-3663 / 03-6869-3763
E-mail:info@r3it.com

多くの業務システム開発をしてきており、基幹システムとkintoneを組み合わせたシンプルで使いやすいシステムをご提供しております。