NECネッツエスアイ 様の導入事例

NECネッツエスアイ

【業務内容】
調達業務
【利用用途】
調達業務、取引先情報管理
  • kintoneで構築した見積依頼フローで2880時間の工数削減を実現
  • ベテランに偏るノウハウや業務負担を改善し、残業時間も大幅削減

企業や官公庁などさまざまな顧客に対して、情報通信システムのSIから施工・サービスまでを一貫して提供しているNECネッツエスアイ株式会社では、調達本部内での業務改善に向けてkintoneを活用し、調達業務の効率化を進めている。その経緯について、調達本部 インフラ改革グループ 田口 潤氏、野本 哲児氏、五味淵 寛子氏、およびソーシンググループ 風巻 宏氏にお話を伺った。

【課題】メールを中心に行われていた見積依頼フローにおける業務改善が急務に

調達業務の最適化とともに、新たな付加価値提供を目指す調達本部

1953年に電気通信工事会社としてNEC(日本電気)から独立、現在はコミュニケーション・システムインテグレーターとして、企業や官公庁含めた幅広い業界に対して情報通信システムを、SIから施工・サービスまで一貫して提供しているNECネッツエスアイ株式会社。業務に必要なICT環境を提供するデジタルソリューション事業をはじめ、最新の技術と高信頼性が求められるネットワークインフラのシステム構築やサービスを提供するネットワークインフラ事業、そして同社が提供するICTシステムおよびICTサービスに関する工事施工や運用保守、アウトソーシングサービスなどを手掛けるエンジニアリング&サポートサービス事業を展開している。

同社において、社内の各部門の事業活動向けに調達するネットワーク機器・ソフトウェアや、施工、保守、運用等を担う取引先の選定から発注、検収まで、各種調達業務を一手に担っているのが調達本部だ。各部門からの見積要求に対して取引先を選定し、見積の取得から発注、支払業務、そして取引先との価格調整による原価低減なども含めた調達業務の最適化を行っている。「単に各部門から指示されたモノを調達するのではなく、コンサルテーションを通じて付加価値を社内に提供するという調達プロセスの変革を強力に推し進めています」と田口氏は説明する。そのための、戦略的な調達業務を実現できる環境づくりやインフラ改革を推進しているのが、調達本部インフラ改革グループの位置づけだ。

調達本部インフラ改革グループ マネージャー 田口 潤 氏

経験豊富なメンバーに取引先情報やノウハウが属人化、業務の負担が大きくなっていた

そんな調達本部において課題となっていたのが、月600件にもおよぶ全社からの見積要求をソーシングループに所属するベテランバイヤーの風巻氏はじめ4人に多くの業務負担がかかっていたことだ。案件ごとに複数の取引先に複数のアイテムの見積依頼をかけ、在庫がなければ次の取引先に再度依頼をかけることを繰り返すケースもあり、より業務の負担も大きくなっていた。

また、特に見積要求が15時以降にメールで届くことが多く、少しでも早期に対応するためには残業せざるを得ない状況も続いていた。休暇を取得した翌日に出社した際の業務量は、大変な状況になっていたという。「調達したいものがいつ納品できるかで営業活動に大きく影響することから、できるだけ早期に見積回答できるかどうか、スピード感が最重視されます。ただし、見積要求の内容によっては、経験豊富なメンバーでないと見積依頼先がすぐに判断できないケースも。メールにて行われたこともあり、取引先情報やノウハウが属人化し、業務の負担が大きくなっていたのです」と風巻氏は説明する。

このメールを中心とした見積依頼の業務を見直す際にポイントとなったのが、過去の調達履歴や取引先ごとの特徴がきちんと反映できる「取引先データベース」を用意できる環境とともに、風巻氏が描くスピード感のある対応が可能な仕組みだった。「取引先情報をもとにノウハウが蓄積できることは、グループが目指す付加価値提供に欠かせないものでした。さらに、現場としてはメールを中心とした見積依頼業務の業務改善が早急に求められたわけです」と田口氏は当時を振り返る。

調達本部ソーシンググループ 主任 風巻 宏 氏

【選定】ローコードツールでAPIや外部システム連携も柔軟。技術者でなくてもすぐに改善できるkintoneを評価

コストパフォーマンスが高く、技術者でなくとも自前で改善活動が可能な点を評価

見積依頼フローの業務改善の手法として注目したのが、調達本部で導入を開始したkintoneだった。「調達業務で付加価値を発揮していくためには、将来的には外部とのシステム連携なども必要になってくる可能性は十分考えられます。コストはもちろん、APIも含めて柔軟に外部連携できるkintoneを高く評価しました」と田口氏。

また、技術者ではない調達部門のメンバーであってもアプリ開発ができることも重要なポイントだった。「フィールド追加などちょっとした変更だけで数か月の期間とコストがかかるような従来の仕組みでは、改善する意欲も冷めてしまっていたのが正直なところです。kintoneであれば我々のような素人でもちょっとした改善のための修正も容易ですし、変更したいという思いに応えることで業務の質がアップしていくはず。その意味でもkintoneは最適でした」と野本氏は評価する。

調達本部インフラ改革グループ 主任 野本 哲児 氏

外販する部門が社内にあったことで社内でのクラウド利用要件もクリア

社内のクラウド利用要件も、kintoneは満たしていたという。「いくつかローコードツールは検討しましたが、例えばログの保存期間が不足していたり、権限設定が十分でなかったりなど、社内的なクラウド活用要件が満たせないものばかり。kintoneであれば、社内でのクラウド利用規約上も問題なく、安心して利用できるものでした」と五味淵氏。

「kintoneであれば、取引先データベースとしての利用だけでなく、今までメールで行われていた見積依頼フローにおける課題も解決できるのではと考えたのです」。(田口氏)そして、同グループの利用要件を満たしたkintoneは調達業務のワークフローを担うプラットフォームとして進化していくこととなる。

調達本部インフラ改革グループ 主任 五味淵 寛子 氏

【効果】一大ムーブメントを巻き起こすkintone、全社的な展開へと発展

kintoneで構築した見積依頼フローでナレッジ共有が容易に

現在は、地方拠点のバイヤーも含めて8名ほどがkintoneを活用して見積依頼業務を行っている。インフラ改革グループを中心にkintoneで構築した見積依頼フォームを“たのみつ”と命名して運用。導入後わずか3か月ほどで、従来行っていたメールによる社内からの見積要求をkintoneに切り替えている。

<社内の各部門からの見積要求〜回答までのフロー>

nesic_img6.png

主なフローとしては、外部のWebフォームからkintoneに情報登録できるkintone連携サービスの「フォームブリッジ」を利用して部門からの見積要求を受け付ける。そして、調達本部が持つ“秘伝のたれ”となる取引先ごとの特徴が詳しく記された情報を「取引先アプリ」から選択、見積依頼を行うという運用だ。「600件ほどの取引先レコードが登録されたアプリがナレッジベースとなり、経験豊富なベテランであっても新人であっても最適な取引先が選択できるようになっています」と野本氏。取引先アプリがあることで、テレワーク環境においても、口頭でナレッジを共有していたオフィス環境同様、最適な取引先へのアプローチが容易になっているという。さらに各バイヤーが業務の中で得たノウハウを「取引先アプリ」に情報更新することで、より精度の高い見積依頼を行うことも可能となった。

<各部門の依頼者はkintone連携サービス「フォームブリッジ」でつくった専用フォーム(通称たのみつ)
から見積要求を依頼。フォームから登録された情報はkintoneアプリに自動保存され調達本部に通知される>

nesic_img6.png

<見積要求に対して、複数の取引先へ見積依頼をかける。
経験の差に関わらず誰でも最適な見積依頼先を選定できる「取引先アプリ」>

nesic_img7.png

取引先を選択すると、取引先担当者宛の見積依頼メールが自動的にセットされる仕組みとなっており、複数の取引先候補がある場合も、一斉に見積依頼メールを送信できるようになっている。その後、メールを受け取った取引先はフォームブリッジを経由して見積回答をする運用となっており、各バイヤーと見積要求をした部門担当者に回答内容が送付されるようになっている。「取引先への見積依頼は、連携サービスのkMailerを使って自動メール送信できるようにしています。以前は一件ずつ手動でメールにて送っていましたが、今では送付忘れやコピペミスなども減らすこともできるようになりました」と田口氏は評価する。

2880時間の工数削減、新たな付加価値創造の時間に割り当てることができる

kintoneによって見積依頼および回答のフローを整備したことで、1案件あたり4割ほどの工数が改善されている。またkintoneのワークフローが社内に浸透したことにより、調達本部への見積要求件数も4割ほど増加しているが、効率化効果により人員を増やすことなく対応できている。月600件ほどの依頼を前提に考えると2880時間ほどの工数削減に貢献していると試算されている。「今は見積要求を受けてから取引先に見積依頼するまでの時間が大幅に短縮できています。体感的には残業時間が半分ほどになっている印象です。空いた時間を新たな調達の付加価値を生み出す時間に割り振ることができるなど、大きな効果を生んでいます」と風巻氏は高く評価する。メールで見積要求が来ていた時は、担当者によって情報がバラバラで、見積に必要な情報が不足していたこともあったが、今では見積フォームから必要事項を選択するだけで見積取得に欠かせない情報が過不足なく入手できる。各部門への問い合わせなども不要となるなど、無駄なやり取りに時間を割かずに済むようになっている点も見逃せない。

<各部門からきた見積要求の件数推移をグラフで見える化できる>

nesic_img8.png

<よくある問合せを公開し、はじめての人でも迷わず見積要求できるよう工夫している>

nesic_img9.png

また、見積要求に対して、調達側の対応ステータスを自動でメール通知できるようにした結果、依頼者側にきちんと要求が伝わっていることの安心感を提供できるようになったという。「以前は依頼事項が届いているのか確認の電話やメールを受けることもありましたが、今はその心配もありません。進捗状況確認の問い合わせに対応する必要がなくなり、我々も調達業務に専念できるようになっています」と風巻氏。この依頼者への通知機能は、使い勝手をよくするための改善活動の一環として新たに追加されており、すぐに改善を反映できるkintoneならでは。「単に見積依頼をメールからkintoneに変更しただけでなく、取引先の意見も聞きながら、改善をお願いするとすぐにインフラ改革グループ側で対応いただけています。システム部門に依頼すると期間も予算も必要だと言われるものが、kintoneであれば調達本部内で解決できるため、とても助かっています」と風巻氏。

なお、さらなる見積業務の高付加価値化を目指し、100万件を超える価格データが蓄積されている見積査定システムとの連携もスタートを迎えている。kintoneと見積査定システムの連携が図られることで、見積業務の効率化と精度の高い査定活動の両立が期待される。

メールの署名にて徹底的に通知、kintone活用動画で現場への浸透を促す

連結で7000人を超える社員のいる同社だけに、多くの社員が調達本部へ見積要求を行っている。そのため、メールによる見積要求からkintoneに移行してもらうべく、調達本部内でさまざまなアイデアを出し、kintoneを浸透させるための活動を継続的に行っている。「今でも私個人宛てで見積要求をする人もいますが、kintoneでないと受付しないことをその都度知らせるなど、徹底的にkintoneを使ってもらえるように誘導しています」と風巻氏。

また、現場での活用イメージが伝わりやすい説明会やkintone活用につながる動画制作などなどさまざまな方法を駆使して、各部門への啓発活動を継続的に行っている状況だ。

調達本部内にkintoneを普及させる際には、kintone活用のアイデアをユーザー同士で共有するkintone hive(※サイボウズ主催のユーザーズイベント)を参考にしたイベント“kintone甲子園”を調達本部内で企画し、kintoneを利用した業務改善の意識向上につなげていく活動も行なっている。「以前から社内でkintone勉強会を進めており、調達本部内での活用も広がってきていました。そこで、それぞれの実際の活用を発表してもらう場を設け、ナレッジを広く共有できるようなイベントを企画しました。本部内浸透のための勉強会やイベントのおかげもあり、作成されたアプリは100件を超えています。調達本部内で一大ムーブメントとしてkintoneが広がっています」と五味淵氏。関係会社の調達部門も含め、kintoneを利用するメンバーや、アプリを積極的に作成するメンバーは増え続けている状況だ。

<調達本部内にkintoneを普及させる際に行われた、
kintone活用のアイデアをユーザー同士で共有する「kintone甲子園」の様子>

nesic_img12.png

検収業務へのkintone適用と他部門への展開で新たな付加価値創造へ

現在は、調達本部の大きな業務の1つである見積依頼のフローがkintone化されているが、他業務へのkintone化の検討も進んでいる。一例としては取引先に対する検収業務についてもkintoneを応用していきたいという。「発注した後の検収業務に関しては、コロナの影響で書類などの受け取りが困難になり、納品確証書類を電子メールで受領するフローへの変更を行いました。さらにkintoneを活用した検収業務ワークフローを立ち上げ、より業務効率を加速させました。また、発注につなげるための基幹システムとのAPI連携を進めていくことで、業務負担の軽減にも役立てることが目標です」と野本氏は力説する。(2021年11月取材)

現在は特定部門内でのkintone活用にとどまっているが、すでに同社の経理部門がkintoneの導入を決断するなど、全社的な業務改善のツールとしてkintoneが認知されつつある。「調達本部の導入事例を聞いて他部門が導入する動きにつながっており、それが広がってくれば部門間連携も加速してくることに。今でも工数をかけて部門間で帳票を回しているような事例も多く、そのあたりの無駄を劇的に解消していける可能性もあります。kintoneを使った様々なワークフロー改革を軸に、他部門とのデータ連携まで実現することができれば、調達部門が目指していた付加価値を生み出すことにも大きくつながるはず」と田口氏は今後について期待を寄せて語っていた。