
日本エンジニアリング
- 【業務内容】
- 建設業(設備工事・プラントエンジニアリング)
- 【利用用途】
- 原価管理の脱Excel化



専門工事から高度なプラントエンジニアリングまでを手掛ける日本エンジニアリング株式会社。どんぶり勘定を避けるべくExcelで原価管理を開始したものの、変更履歴を通じて原価や発注の経緯を追跡するのは煩雑で困難だった。加えて、不要な発注を抑止する統制の仕組みも組み込めず、正確な原価管理の実現は早くも難航した。そこで、同社はkintoneで原価管理のシステムを設計し、納期30%短縮、原価は年間4,000万円削減などの成果を実現。職人優位の現場に定着させた工夫と導入効果を、代表取締役の能重裕介氏に聞いた。
「現場が回っていればいい、なんとなく儲かっているからいい」という感覚だけで経営をしてしまう「どんぶり勘定」が横行しがちな建設業界。こうした状況の中、日本エンジニアリング株式会社は収支管理を徹底して利益を確実に創出するため、Excelで案件の収支を管理していた。
しかし、Excel運用には限界があった。Excel特有の計算式の破損に加え、最終的な原価が当初想定した実行予算からいつの間にか大きく乖離してしまうなど、多くの困難に陥った。

代表取締役 能重 裕介 氏
「途中で材料の追加や追加の工数が出てくると、現場が管理シートの数字を直接変更してしまい、何をどう、なぜ変更したのかが外からはわからなくなってしまいました。変更履歴の記録機能も試しましたが、過去のバージョンが非常に煩雑な形で保存されることになってしまい、さすがにExcelでは管理できないことを悟ったのです」と能重氏は振り返る。
こうした混乱は、数字の整合を取るための確認や手戻りを増やし、担当者の残業を常態化させた。業務負荷の高まりは、現場の疲弊を加速させ、離職の引き金にもなったという。さらに、予算申請がないまま材料発注ができ、数字の付け替えも容易なExcelの仕様は、不正や横領の温床にもなりかねない。そこで同社は、原価の正確性に加えて、申請・承認のルートをシステムとして確保することも重視するようになった。「申請・承認が形だけにならず、確実に回る仕組みが必要でした。決めた業務フローをシステムで守れるようになれば、現場の判断で数字が変わることも防げます」と能重氏は話す。
こうした状況を受け、同社は建設業界に特化したパッケージ型の基幹システムも導入したものの、既存の業務フローをパッケージに合わせるのは難しかった。「自分たちの業務フローに合ったシステムが必要である」と判断し、見直しを進めることになったという。
加えて同社では、会計システムと連携し、入力した原価データを仕訳まで含めて一気通貫で扱えることも要件として掲げた。能重氏は、建設業における会計連携の重要性を次のように語る。
「建設業でシステム化が遅れている背景には、業務の複雑さに加え、会計仕訳の量が非常に多いことがあります。現場から入力されたデータを、仕訳データとして経営者が管理できる状態に自動的に持っていけるか。現場だけの部分最適で終わらず、会計システムとシームレスに連携でき、全体最適のシステム構築まで実現できるかを重視しました」。
こうした要件を満たすべく、メンバーから紹介を受けたのがノーコードツールのkintoneだった。ノーコードで業務システムを形にできる柔軟性に加え、変更履歴の管理や権限設定、申請・承認フローといった統制の仕組みを業務に合わせて実装できる点も、同社の課題に合致した。「会計を含むさまざまなシステムと連携していける点でも、kintoneの優位性を感じた」と当時を振り返る。
さらに、kintoneの採用を後押ししたのが構築支援パートナーの存在だ。原価管理システムの設計イメージはあったものの開発経験がなかった能重氏はYouTubeでの発信を見て、ペパコミ株式会社の小川氏に白羽の矢を立てた。「建設業の業務理解があり、こちらの意図を汲んで伴走してくれるパートナーの存在が、導入のアクセルになりました。特に小川さんは人としての相性もよさそうと同社のYouTubeの動画を見て感じることができました」。
能重氏はペパコミ社にコンタクトを取り、原価管理のフローを共有。約3か月で立ち上げたうえで、運用しながら自分たちで手直ししていくアプローチを選んだ。
現在、全社員55ユーザーが共通でkintoneを利用し、アプリは450本超にのぼる。営業・総務・工場など部署ごとにスペースを分けて整理しながら、とくに原価管理を中心に、現場業務を支えるアプリを幅広く展開している。
まず、実行予算との乖離が大きかった原価管理は、kintoneによって「過発注を事前に止める」仕組みへと変わった。取引先から原材料などの発注明細を含む見積書を受け取ったら、見積書PDFを添付し、申請フォームに金額など必要事項を入力して工事発注申請アプリから申請する。承認された申請内容だけが、工事台帳アプリの実行予算原価として反映される。
その後、取引先から請求書が届いたタイミングで工事台帳アプリの情報と照合することで、発注内容と実績のズレを早期に把握でき、過発注の抑止につなげている。申請・承認を通したデータだけが台帳に反映されるため、現場担当者による数値の上書きや根拠の追えない変更も起きにくい。
また会計面では、勘定科目単位でクラウド会計ソフトのfreee会計と連携。申請・承認で確定したデータを会計側にも連携できるようになり、集計や確認の手間も減ったという。
工事発注申請アプリ。見積書PDFを添付し、承認されたデータのみが工事台帳の実行予算原価へ反映される
同社は現場の負荷を増やさないため、業務を1つの巨大アプリに寄せず、用途ごとにアプリを分けて整備していった。だが、アプリが増えるほど「いま自分が何をすべきで、どのアプリを使うべきか」が分かりにくくなる。
そこで能重氏は、現場の職人が迷わずアプリを使い分けられるように、4×4の16項目で構成したポータル画面を設計した。縦軸に職制、横軸に「発生時」「着工前」「日次」「月次」といった利用タイミングを置き、必要なアプリと作業の割り振りを視覚的に把握できるようにしている。
「現場は忙しいんです。一つの画面・アプリで全ての業務を行わせようとすると、入力に30分かかってしまいます。これでは現場の仕事が止まってしまう。しかし、アプリを機能ごとに分けて単純化すれば、1回の入力は隙間時間の5分ずつで済みます。『説明書がいらないものにしよう」と意識し、視覚的に何をすればいいかが一目で分かるデザインを徹底しました」と語る。
4×4の16マスで構成されたポータル画面。縦軸に職制、横軸に利用タイミングを配置し、現場の職人が迷わずアプリを使い分けられる設計になっている
もうひとつ、同社ならではの工夫が表れているのが工数把握の仕組みだ。作業工数の把握は原価管理の精度を高めるためだけでなく、事故発生時に後追いで当時の状況を確認できるようにするなど、コンプライアンスの観点からも欠かせない。工数管理は一般的には日報アプリで運用するケースが多いが、同社が軸に据えたのは「KY(危険予知)シート」である。
kintone化されたKYシート。毎日の安全確認のついでに工数入力も完結できる設計で、現場の負担感を最小限に抑えている
建設現場において、毎日の作業前に安全確認を行うKY活動は必須のルーティンであり、職人は必ずこのシートを記入しなければならない。そこに目をつけ、既存のKYシートをkintone化する際、あわせて工数管理の機能も統合したのだ。「わざわざ日報を書く」のではなく「必須のKYシートのついでに入力する」という導線に変えたことで、現場の抵抗感を払拭した。

kintoneを中心としたシステム全体構成図。工事発注申請・工事台帳・KYシートなど各アプリの連携関係を示している
こうしてkintoneで原価管理を徹底した結果、工事納期の30%短縮をはじめ、工事原価の年間4,000万円削減、残業時間は年間5,000時間削減など、従来のExcel中心の業務プロセスと比べて大きな効果を実感しているという。
能重氏は「これまでは予算申請をせずに材料を発注できていましたが、申請・承認フローを整備したことで『とりあえず発注しておく』といった曖昧な発注がなくなり、大幅なコスト削減につながっています」と評価する。
また、社員自身が「お金は有限である」という意識を持ち始めたことも大きな変化だ。以前は無尽蔵にあると思っていた会社の経費が、案件ごとの予算として可視化されたことで、どうすれば予算内で収まるかを考える「経営マインド」が現場に育ち始めているという。
さらに、業務の可視化によって現場の風通しが良くなる点も、経営面でのメリットとして挙げる。能重氏は「現場の困りごとを経営側から早く拾えて、判断もスムーズになります。誰が何を抱えているかが分かるので、無理が偏りにくく、結果としてトラブルや損害も起きにくい。現場にとっても納得感のある運用につながっていると思います」と語る。
職人優位の建設業界で、現場の感情に寄り添った活用を貫いたからこそ、原価管理は定着し、大きな効果へとつながった。同社のkintone導入を伴走したペパコミ社の小川氏は、この導入成功の要因を次のように語った。
「能重社長の中には、最初から『日本エンジニアリング流の原価管理』の明確な完成図がありました。それを通常のシステム開発では考えられない短期間で実装するというオーダーでしたが、社長自身が『自分がやる、責任を持つ』というスタンスで開発に入り込んでくださった。ベンダー任せにせず、当事者として牽引されたことが、このスピード導入の最大の勝因です」
なお、この取り組みを通じて得られた知見は、社内に閉じず、同業他社の改善にも活かされはじめている。 ペパコミ社が提供を始めた「建設業完全網羅パッケージ」には、日本エンジニアリング社の実践知が詰まっているというのだ。「もちろんパッケージ化にあたっては、いろいろなアプリを追加したり調整したりはしているのですが、特に中核要素は日本エンジニアリング社の開発内容をベースにしています」と小川氏。 原価管理の運用が回らない——そんな悩みを抱える建設業の現場にとって、同社の取り組みは広く改善のヒントになりそうだ。
(2025年12月 取材)
kintoneの導入支援・内製化支援に特化した会社です。お客様社内にkintone改修が出来るスペシャリスト育成を目標に提案・サポート致します。
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・CyPN Report 2026 セールス部門 2つ星獲得
・CyPN Report 2026 インテグレーション部門 2つ星獲得
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