ロジスティード 様の導入事例

ロジスティード

【業務内容】
物流事業・重量機工事業など
【利用用途】
プロジェクト管理、ワークフロー、発注管理
  • kintoneとRPAで330を超える拠点の業務改善を推進
  • 社内のDX推進におけるデジタル人材育成の入り口にも

物流業務の受託を通じて顧客の物流改革を推進するロジスティード株式会社では、現場オペレーションをDXする活動を行っているが、業務プロセス改革において情報基盤の整備やRPA導入を通じて業務時間の削減を目指している。その情報基盤として採用されているのが、サイボウズのkintoneだ。その導入の経緯について、経営戦略本部VCセンター 部長補佐 松本 和久氏および営業統括本部ロジスティクスソリューション開発本部スマートロジスティクス推進部 部長補佐 中澤 茂樹氏にお話を伺った。

【課題】RPAだけでは業務プロセスの変革は難しく、新たな業務基盤が必要に

 調達、生産から、販売や流通、アフターサービスまで、物流システムにおけるさまざまな業務を総合的に受託している物流事業をはじめ、重量機工事業、グローバル事業などを展開しているロジスティード。現在は、中期経営計画「LOGISTEED 2021」を通じ、デジタル事業基盤で業務の最適化を可能にする「SCDOS (Supply Chain Design & Optimization Services)」や、自動化・省人化のノウハウとデジタル技術を組み合わせて在庫保管や発送などをパッケージで提供する「スマートウエアハウス」など、さまざまなDX推進施策を手がけている。

 そのなかで、社内の業務プロセス改善を積極的に推し進めているのが、IT戦略本部 RPAI推進グループだ。「多くの拠点が点在しており、仕事の進め方も含めた業務の標準化が難しいのが我々も含めた物流業界の特徴です。そのなかで、RPAを中心とした各種デジタルツールを活用し、標準化を図りながら業務改善や生産性改革などを行うべく、社内のDXを支援しています」と松本氏は説明する。国内だけでも330を超える倉庫を持ち、海外にも数百か所の拠点を展開する同社だけに、標準化された基幹システム以外の現場業務については部分的に最適化された形で運用が行われていたという。

実際の現場では、多くの業務が紙やExcelなどでフローが整備され、一部はAccessなどを用いてシステム化が進んでいる拠点もあったが、システムの属人化も進むなかで多くの課題が顕在化していたという。「たとえば、内部統制の観点からセルフチェックを中心に監査を実施する際には、Excelデータが現場に飛び交ってしまっていました。本社への提出物もメールが現場と本社を何度も往復するなど、非効率なプロセスが多く残っていたのです」と松本氏は当時を振り返る。そこで、基幹システムの刷新に合わせ、個別に最適化された業務を取り込みながら周辺業務のプロセス改善を図るべく、RPAを中心に標準化を進めていたが、単なる自動化ソリューションだけでは業務プロセスを大きく変革することが難しい状況が続いていたという。

経営戦略本部VCセンター 部長補佐 松本 和久氏

【選定】口コミで現場に広がるローコード開発ツールとしてのkintoneに注目

先進的な取り組みを進める営業所が先行して活用していたkintone

 「標準的なロボットシステムを作っても、ここを直してくれないと使えないといった声が各現場から寄せられてしまう。なので、自分たちでカスタマイズできる自由度の高い環境も一緒に提供するべきだと考えたのです」と松本氏。RPAに向いている業務とそうでない業務をうまく切り分け、その中間を埋めてくれる仕組みが求められていたのだ。

 そんな折、ローコード開発ツールとして業務改善の支援に役立つkintoneを知った。「もともと業務改善を行うための組織に必要な人材を社内公募したところ、社内でもデジタルツールを駆使した先進的な取り組みを進めているある営業所から応募がありました。そこでkintoneを使った業務改善を進めている話を耳にしたのです」と松本氏。

営業統括本部ロジスティクスソリューション開発本部スマートロジスティクス推進部 部長補佐 中澤 茂樹氏

 もともとその営業所の現場でもExcelを中心に業務を回しており、情報共有が進まないなど非効率な業務が多く、現場主導で働き方改革を推進するべく、新たな環境を模索していた。

 「さらにIoT技術を推進する団体である『IoT推進コンソーシアム』に参加した多くの企業が、業務改善のツールとしてkintoneを活用していることを知り、我々の現場でも活用できそうだと考えたのがきっかけです」と当時その営業所に勤務していた中澤氏は振り返る。実は自分たちで開発できるよう、グループウェア的な別のローコード開発ツールを用いて10名ほどの規模で業務改善をトライアルで進めていたが、kintoneのほうが簡単かつ手軽にアプリが開発できたことに驚いたそう。それから、kintoneを中心に見積管理などの業務改善を進めていった。

現場の費用負担を軽減、展開のしやすさも魅力の1つ

 「kintoneを活用して業務改善を進めている他の部署の話も聞いていました。口コミで現場にkintoneが広がりつつあるという点から、多くの人が使いこなせるのではと判断しました」と松本氏。ノーコード/ローコード開発ツールへの期待は、単に現場の業務改善だけでなく、自分たちで要件定義できる、システム的な考え方が学べるなど、内製化を念頭にデジタル人材育成に向けた活動にも大きく役立つと判断したという。

 またコストの面も大きなポイントの1つだった。「仕組みを導入する各部署に費用負担が発生するため、初期コストが高騰してしまうと展開自体が難しい。オペレーションを運用しているのは各グループ会社で、本社側がこれを使って欲しいと言っても厳しい面もあります。できる限り導入しやすい環境が必要だったので、クラウド環境で安価に、そしてすぐにスタートできるkintoneは最適だったのです」と松本氏は評価する。IT統制の面でも、社内での業務効率化に関する環境づくりへの投資にも課題を感じており、kintoneをベースに統制を強化しながら業務効率化できる環境は理想的だったのだ。

【効果】330を超える拠点の業務改善にkintoneが大きく貢献、デジタル人材育成にも活用

事務管理系のアプリとともに現場のオペレーション改善に役立つ

 現在はグループ会社含めて600名ほどがkintoneを利用しており、利用者数は右肩上がりに増加している。330を超える拠点で共通に利用するアプリも用意されており、標準化・見える化・効率化をキーワードにさまざまなものが開発されており、アプリの開発申請によって誰でもアプリ作成が可能な運用となっている。

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 アプリ自体は、テレワークの日報など勤怠に関するものやPCの持ち出しなど情報機器の管理をはじめとした事務管理系を中心に作成、現場のオペレーション改善につながるものは現状2割ほどで、現場にkintoneを浸透させていきながら増やしていく計画だ。 

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 一例を挙げると、「作業支援者とりまとめアプリ」は、拠点で何か問題が発生した場合でも物流を止めないよう、本社や別倉庫のスタッフが倉庫へ応援に赴くことでBCP対策として機能するアプリだ。助け合いの精神が社風として根付いている同社だけでなく物流業界ではよくある運用で、アプリはシンプルなだけに短期間のうち構築できたという。「今はアプリ内に応援要請を書き込むと、支援者個人が現場に入れる日を入力することで、メンバー調整が容易になっています。わずか12時間の間に応援体制がきちんと整備できるようになっています」と松本氏は説明する。

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 他にも、「実績集計アプリ」では、RPAの稼働実績とともに事前に設定されたロジックに基づいた業務時間の削減効果が集計できるもので、現場にて作成されたkintoneアプリの棚卸時に業務効率化の数値も含めてグラフ化できるなど、業務改善の報告数字として活用されている。「見える化することで今後の活動の指針が決定できるため、非常に重要なアプリの1つ。Excelで進捗管理していた業務から、kintoneでアプリ化したことで業務効率化にも高く貢献していることが一目瞭然です」と松本氏は説明する。

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 新型コロナウイルス感染に関する「体調不良者管理アプリ」では、各拠点から日々寄せられるレポートをkintoneに集約し、RPAによって自動的にレポート化したうえで幹部に配信するような仕組みとなっており、RPAと連携した運用も実現している。他にも、kintone内の情報を活用し、毎月決まったタイミングでRPAにて見積書を自動送付するようなアプリも現場で運用されている状況だ。

基本的に標準機能では実現できないことは、ブラックボックス化しないようプラグインを積極的に活用する発想で進めている。外部から入力できるフォームブリッジやkintoneのカスタマイズを支援するgusuku CustomineExcelライクな入力からアプリ間の情報連携や情報のダッシュボード化が可能なkrewシリーズなど、さまざまなプラグインを活用している。

業務効率化に大きく貢献、監査ついでにSIをする経理担当者も現れる

 全社的な取り組みに広がりつつあるkintoneでの業務改善だが、実際の効果測定については、現在プロセスマイニングを通じて業務量に対する効果算定を進めている段階だ。「一気に全社展開にまでは至っていませんが、モデルとなる事業所を決めたうえで分析していき、改善プロセスを回していきながら、効果の高いものを他の営業所に横展開していくことを考えています。現時点では詳細に定量化できていませんが、kintoneが業務効率化に大きく貢献していることは間違いありません」と松本氏は高く評価する。 

 またデジタル人材の育成という視点でも、現場の課題に気づいて改善していける武器としてkintoneを高く評価している。「kintoneのようなツールを使うことでどんな改善ができるのかを考えられるのが重要です。ITの力で現場を変えていくというマインドが醸成できる有効なツールです」と松本氏。RPAは確かに便利ではあるものの、現場ではkintoneに対する期待が高く、社内で開催しているkintone講座を利用して多くのメンバーが学びを深めている状況にある。いまやデジタル人材育成に向けた環境づくりにkintoneが欠かせない存在となっているわけだ。

 実際の現場では、経理部門が現場に監査に赴く際に、一緒に現場の悩みを聞き出したうえで課題を解決して帰ってくる場面もあるほど。「監査を行う経理担当者が、現場の改善活動につながるSI活動をしていることになります。そんなメンバーが増えつつあり、まさに組織としてのDXだけでなく個人のDXが前に進んでいることを実感しています」と中澤氏は高く評価する。監査業務とSIという組み合わせが、草の根的な活動として広がっており、全社的なプロジェクトと掛け合わせることで、DX推進が着実に進められているわけだ。 

 kintoneはツールそのものだけでなく、トレーニング講座や学べる動画が多く、学びやすい環境づくりに関しての評価も高い。「社内でも教育プログラムを作っていますが、まずはkintoneのWebサイトで動画を見て不明点があれば問い合わせをしてもらうなど、効率的に学ぶ環境が現場に提供できています。ここまで学べる環境は、RPAを含めて他のベンダーではなかなかありません。教えてくれる環境がないとツールから離れてしまうことが過去もありましたが、kintoneの場合はそれがありません」と松本氏。

顧客向けのサービス基盤として期待、デジタル人材育成の入り口としてさらなる活用へ

 社内での活用については、kintoneが持つAPIをうまく活用しながら、外部システムとの連携も進めていきたいという。「基幹システムのSAPはもちろん、別のローコードツールと連携するなど、さらに利便性の高い環境づくりを進めていきたい。特に基幹システムでやるべきことを仕分けしたうえで、その周辺業務をうまくkintoneに取り込んでいければと考えています」と松本氏。

 ただし、全社的なプロジェクトとして基幹システムの刷新が大きかったため、まだkintone自体はマイナーな状況にある。「これからもkintoneの認知を進めていきながら、全社的な取り組みとしてさらに活用してもらえる環境を整備していく予定です。またデジタル人材育成の入り口となるツールだけに、できるだけ多くの人に触れてもらえる環境を整備していきたい。全社での認知度向上と個人のデジタルリテラシー向上の両面で、kintone展開を進めていければと考えています」と今後について松本氏に語っていただいた。

(2021年12月 取材)