Local Power 様の導入事例

Local Power

【業務内容】
化学製品事業、シェアリング事業、DX推進事業
【利用用途】
受発注管理、各種申請業務など
  • 受注から在庫管理、請求まで業務の中心となる基幹システムを自社にて構築
  • 新たな事業への柔軟な対応と関連企業のDX推進の支援に貢献するkintone

除菌消臭水を中心とした化学製品事業を軸に事業を展開している株式会社Local Powerでは、自社も含めたパートナー企業のDX推進を図るべく、受発注システムから会計連携に至る基幹システムの刷新においてサイボウズのkintoneを採用している。その経緯について、代表取締役 寺田 耕也氏およびソリューション事業部 DX推進室 室長 棚谷 健一氏にお話を伺った。

【課題】パッケージ化された仕組みでは蓄積された情報が生かせず、外部連動性も乏しい

地方の時代を牽引するローカルビジネス工場をつくるべく、秋田に眠る人材や技術、地域資源を掘り起こすことで社会貢献できるソリューションを創出するなど、さまざまな事業を展開している株式会社Local Power。全国15000を超える店舗に展開する、アルコールを使わない除菌消臭水「iPOSH(アイポッシュ)」をはじめとした化学製品としてのメーカー事業や体育館やレストラン、キャンピングカーなどのシェアリング事業、企業のIT化支援によるDX推進事業を手掛けている。特に知的財産となる特許を数多く保有している同社は、県外の各種研究機関と連携しながら新製品開発を行っており、他社製品ブランドの商品企画や設計、製造も手掛けるなど、高度な技術力を武器に事業を拡大させている。

そんな新たな事業を次々と創出している同社では、物流や製造に強い県内のパートナー企業との協業を通じてビジネスを拡大させている。そのため、自社はもちろん、パートナー企業も含めた地域企業全体のDX化を進めることは、同社のビジネス拡大にとって重要な施策となってくる。「我々だけがDXを推進するのではなく、パートナー支援を通じて全体のDX化を推し進めていく必要があります。そこで、我々がこれまで運用してきた基幹システムを新たな環境に刷新し、そこで得た知見を地域企業に還元していこうと考えたのです」と寺田氏は説明する。

代表取締役 寺田 耕也氏

Excelを中心に業務フローを運用していた時から、 受発注から入金処理、顧客管理、販売分析などの機能を持つパッケージ製品を導入し、運用を続けてきた経緯がある。「パッケージを導入したことで、確かにExcelに比べて二重入力の手間は大きく削減できました。しかし、せっかく蓄積した情報をシンプルにCSVで出力できない、他システムとの連動性が乏しいなど課題が顕在化していました。毎年新たな商品やサービスを生み出している我々だけに、変化に応じて柔軟に変更できる、カスタムできる環境が求められてきたのです」と寺田氏。既存パッケージに対して大規模改修を行うと数千万単位の費用が発生するため、カスタム性が高く、かつコストパフォーマンスのいい仕組みを模索することになったと振り返る。

【選定】カスタム性も高く汎用性もある、アンチkintoneを180度変えることに成功

そこで、受発注から会計システムまで連動できる受発注システム構築を目指し、新たな選択肢を模索した寺田氏。そこで出会ったのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「いろいろ情報収集を進めるなかでkintoneに出会いました。クラウドサービスだけにどこからでもアクセスできますし、外部システムとの連携性も十分。一から作成するという意味では難易度が高いものの、kintoneはカスタム性も高く汎用性がある。お客さまへの展開も含めた可能性を感じて、ぜひ活用してみようと考えたのです」。実際には、他のソリューションもトライアルを実施したこともあったが、ある程度の型が決まってしまっており、同社が望む柔軟な環境づくりには適していなかったという。「型が決まってしまっていると、事業の拡張に応じたステージ移行が難しい印象でした」

「直接サイボウズに伺って話を聞いたとき、自身が期待する機能のロードマップやパートナー企業の取り組みなども紹介いただき、将来的に広がりのあるソリューションだと認識したのです」と寺田氏は語る。もともとkintoneだけで完結させるつもりがなく、kintoneを入り口に必要なサービスと柔軟に連携できる点が、同社が描くシステムづくりにマッチしたのだ。

そこでkintone採用を決断し、当初は寺田氏自身がkintoneアプリを少しずつ作成。棚谷氏が同社にジョインしたことがきっかけで、社内業務のkintone化が一気に加速することになる。「スクラッチ開発を中心としたSIerにいた前職では、商習慣に合わせたビジネスを組み立てるにはスクラッチ開発が最適だと提案していた立場です。ある意味でアンチkintoneの人間で、スクラッチ開発がベストだという思いから、最初は一抹の不安を覚えたのが正直なところです」と棚谷氏は当時を振り返る。

ソリューション事業部 DX推進室 室長 棚谷 健一氏

しかし、実際にアプリ開発を進めるなかで、kintoneに対する考え方は180度変わったという。「知れば知るほど意外といろんなことができることが分かったのです。今ではプラグインを活用したり、社内のエンジニアがJavaScriptで機能を開発したりする場面が増えていますが、標準機能だけでも必要な機能の実現性が高い。SIer時代とは大きく考え方が変わりました」と棚谷氏。

結果としてkintoneをベースに基幹システムを独自に作り上げ、現在も同社の仕様にマッチした環境づくりを積極的に進めている状況だ。

【効果】DX化の第一歩に最適なkintoneが同社の事業拡大を強力に支援

EDI連携から在庫管理、申請承認フロー、RPA連携まで、あらゆる業務をkintone化

現在は、受注から請求書発行までの業務フローを全てkintoneにて実装しており、マスタ関連も含め460を超えるアプリが作成されている。

同社における受注処理の場合、医薬品卸やグループ調剤を展開する企業など400以上の取引先からの注文は、EDIFAXWebフォームなど複数のルートを通じて行われる。具体的には、JD-NETシステムと呼ばれる医薬品業界向けのEDIを中心に、顧客の発注システムから出力されたCSVの取り込み、Webフォーム(kintoneプラグインの「フォームブリッジ」を利用)を経由した受付などだ。これら全ての注文に対して受注番号がkintoneによって自動付与され、最終的には受注情報管理アプリに集約される。「JD-NETシステムは古いEDIシステムだけに、通常のシステムと連携させるのは難しい面もあり、なかなか使いこなせていませんでした。その連携部分をうまくkintoneで吸収したことで、JD-NETシステムの情報もうまく取り込めるようになりました」と棚谷氏。

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            「受注情報管理アプリ」のレコード一覧画面

商品在庫管理アプリでは、パートナーに委託している複数倉庫の在庫情報が把握できる。注文が入ると、その受注情報に従って、ピッキングアプリを通じて倉庫に対してピッキングリストとして出荷指示を出す。そして倉庫側では、ゲストスペースを使って出荷指示情報を把握、そのリストに応じて出荷することになる。出荷先に関しては、卸の倉庫から各店舗までさまざまな場所に配送することになり、kintone上には5000を超える出荷先がマスタとして登録されている。他にも、製造を起点に資材在庫などを見る製造在庫管理アプリも用意されている。

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              「商品在庫管理アプリ」の一覧画面        

また、社内の各種申請業務もアプリ化しており、大きくは費用申請と捺印申請、その他という3つにカテゴリ分けされている。部品調達、協賛寄付の依頼、契約書への捺印依頼など、さまざまな承認作業をすべてワークフロー化しており、kintone上で処理が可能だ。見積申請に関しては、他の申請に比べて詳細な情報が必要なため、個別アプリにて実装しており、最終的に見積書の出力も可能になっている。さらに、日報アプリにて日々の業務内容の報告からコメント機能を活用してコミュニケーションをkintoneに集約し、タスク管理もアプリ化して日々の業務に役立てている。他にも、出張申請から精算までを行うアプリや問い合わせ管理アプリ、販促物対応依頼アプリなど、あらゆる業務にkintoneを活用している状況だ。

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           「見積もり承認フローアプリ」のレコード詳細画面

周辺システムとの連携については、会計サービスのfreeeと連携しており、財務会計的な仕訳情報よりも管理会計に対する科目情報をfreeeに受け渡す際に活用しているという。また、請求先と送り先が違う場合があるため、kintoneからCSV出力した送り先情報を宅配業者の伝票発行システムと連携させ、出荷伝票を自動出力している。「kintone内の情報がCSVで柔軟に出力できるため、外部システムとの連携もスムーズに実現できています」と棚谷氏。

RPAkintone連携も行われている。一例を挙げると、在庫量を計算するアプリや拠点ごとの在庫情報を確認するアプリ内の情報をRPAにて取得し、バッチ処理にて最終的に全体在庫を管理するアプリに反映するといった使い方だ。また、受注登録後に全てのレコードを更新するタイミングで、RPAによってレコード更新処理やJavaScriptの起動などを行うなど、人力では手間のかかる処理にRPAが生かされている状況にある。

残業時間を減らしながら売上4倍、間口の広さと奥深さを備えているkintone

kintoneにて業務基盤を整備したことで、過去の情報含めて振り返りが容易になり、業務効率化の効果も高いという。「受注業務を担当しているメンバーからは、6割ほどの業務効率化が実現できているという声が寄せられています。新型コロナの影響もあり売上が4倍ほどに拡大していますが、メンバーの残業時間を減らしながら同様のリソースで業務が回せているのはkintoneがあるからこそ」と寺田氏は高く評価する。

kintoneについては、シンプルかつ複雑な処理にも対応できる点が大きな魅力だと棚谷氏。「インターフェースがシンプルで顧客に紹介しやすく、エンジニア目線でもシンプルながら豊富なプラグインでカスタマイズ性能が高い。間口の広さと奥深さを兼ね備えている印象です」と評価する。フィールドの項目名など現場の業務にマッチした変更が可能なだけでなく、現場からの要望にすぐに応えられるなど、業務効率を高めるべくアジャイル開発的に運用していける点が大きなメリットだと力説する。しかも、Excelと違って属人化させずにアプリが作成でき、新たなメンバーにもシェアしやすいことも大きいと寺田氏。「kintoneだけでは補えない部分があれば、うまく外部のサービスと連携させることでより使いやすくなる。Slackに通知するなど、これまでバラバラだった仕組みをうまく束ねてくれるという効果も見逃せない」

今回社内でkintoneを活用した業務基盤を整備したことで、同社のパートナーに向けたDX支援に向けた活動も進んでおり、顧客向けに案件管理や顧客管理などの基盤づくりをkintoneにて行っている。「拡張性が高い仕組みなだけに、小さく始めて大きく広げていくことができる。まさにDX化の第一歩にkintoneは最適です」と寺田氏は力説する。またkintoneは高度なITスキルを必要としないため、文系人材をDX化のキーマンに育て上げることも可能だという。同社ではフルリモートで入社したITスキルのないメンバーに対して教育を行い、その社員は今ではkintoneRPAの構築、さらには外部への提案までできる人材へと成長している。

DX支援を通じて頼りにされるパートナーへ、AI OCRやデータ活用など新たな展開も

「現状の業務については、多くの領域をkintoneによってシステム化できているが、今後はAI OCRなどを用いて入力業務を省力化していくなど、業務効率化を高めていくためのさまざまな施策に取り組んでいきたい」と棚谷氏は語る。さらに、多くの顧客から業務システムやWebサービスの相談など、デジタル化に関連した相談事が寄せられていることから、顧客のDX推進を支援する事業をさらに拡充していき、頼りにされるパートナーとしての存在感を高めていきたいと意欲的だ。

新たな事業としては、今後化粧品事業への参入を計画しており、製造ロットのトレースが必要不可欠になる。そこで、kintoneを活用してトレーサビリティ管理の徹底を強化していきたいという。「従来行ってきた在庫管理についても、単なる数量管理だけでなく期限管理も含めた機能のさらなる拡充を図っていきたい。また、kintoneに蓄積されたデータを活用し、需要予測など新たな領域へのチャレンジについても念頭に置いて、新たな付加価値を生み出せるような活動を続けていくつもりです」と今後について寺田氏に語っていただいた。

(2021年12月取材)