関西電力株式会社 様の導入事例

関西電力株式会社

【業務内容】
エネルギー事業、送配電事業、情報通信事業、生活・ビジネスソリューション事業など
【利用用途】
顧客情報管理、予約管理、タスク管理、会計業務など
  • 社内スタートアップの業務システム&会計に kintone × freeeを採用
  • バックオフィスの労力を軽減し、事業に注力できる環境づくりに成功

エネルギー事業や送配電事業、情報通信事業を展開している関西電力株式会社では、エネルギー分野に限らず新たな領域での価値創造を目指すべく、イノベーションラボが中心となって社内スタートアップの設置など新たな事業への展開を図っている。そんな社内スタートアップにおけるバックオフィス業務を支援し、コーポレート側で事業の状況を適切に把握するための情報管理システムとして、サイボウズのkintoneを活用している。その経緯について、経営企画室 イノベーションラボ 和田山 嗣倫氏、同室 北澤 弘樹氏、IT開発を支援する尾上 怜子氏、そして社内ベンチャーとして設立されているTRAPOL合同会社 経理部 佐藤 亜弓氏および株式会社猫舌堂 取締役 三宅 達彦氏にお話を伺った。

新規事業創出に向けた迅速なバックオフィス業務の支援が必要に

関西地域を中心にエネルギー事業を展開、送配電事業や情報通信事業、生活・ビジネスソリューションを中核事業に据え、それぞれが重なる領域において新たな価値創出を積極的に行っている関西電力株式会社。同社では、以前から新たな価値創出に向けたイノベーションを積極的に推進しており、事業者との相互の強みを生かしたオープンイノベーションの拡大・深化を図りながら、新事業アイデア募集やビジネスコンテスト制度などを通じて顧客志向の組織風土醸成やイノベーション人材の創出を進めている。

そんな活動の中心にあるのが、2019年に発足したイノベーションラボだ。エネルギー分野で新たなチャレンジはもちろん、農業・食料や社会インフラ、ライフデザイン、文化・エンタメなど非エネルギー分野での新たな事業を生み出す活動を推進。2022年3月現在、イノベーションラボが中心となって新たに発足した社内スタートアップは5社で、今後も新たな社内スタートアップの立ち上げを計画している。

そんなイノベーションラボでは、次のような課題感があった。「発足当初から、様々な事業が立ち上がっても、迅速に対応できる環境整備が求められてきました。また、少数精鋭で多くの事業を推進していくためには、バックオフィス系を中心としたコーポレート業務を横ぐしで一元管理できる仕組みづくりも必要不可欠だったのです」と和田山氏は説明する。バックオフィスにかかる労力をできる限り軽減し、それぞれの事業に注力できる環境づくりが必要だったわけだ。

経営企画室 イノベーションラボ 和田山 嗣倫氏

決め手は会計ソフトfreeeとの連携しやすさと独自ビジネスに対応できる柔軟性

新たな環境づくりに向けてはまず、経理知識の有無に関わらず使いやすいクラウド会計ソフトfreeeを導入。

現場で利用する業務システムには、freeeとシームレスにデータ連携ができること、使い勝手のいいクラウドサービスであること、そして自社独自のビジネスモデルに対応できる柔軟性をもつことを重視。そこにkintoneが条件を満たしていたため採用することに。「グループで導入する仕組みのため、当然ながらセキュリティポリシーなど社内要件に合致する必要があります。他部署でもkintoneの採用実績があったことも大きな後押しになりました」と和田山氏は当時を振り返る。

社内スタートアップの1社である旅行会社『TRAPOL』で経理を行っている佐藤氏は、「これまで旅行業に特化したパッケージ製品を顧客情報管理に利用していましたが、弊社独自のビジネスモデルに仕様を合わせることができない点が多々ありました。会計ソフトfreeeとデータ連携ができないことで、二重三重に転記や突合作業が発生するなど手作業も多い状況。kintoneであれば弊社のビジネスモデルに柔軟に対応でき、必要なデータも出しやすく、さらにfreeeともデータ連携が可能と聞き、とても便利になると考えたのです」と語る。

旅行業に最適なアプリをいくつも用意、自社独自のビジネスフローや管理項目も柔軟に反映可能

TRAPOLでは旅行の受注手配を行う仕組みと、freeeにて請求書を発行するための情報を管理する機能がkintoneにて実装されている。具体的には、顧客情報を管理する『個人顧客』アプリや予約情報を管理する『予約カルテ』アプリを中心に、フライトスケジュールを管理する『フライト』アプリや『タスク管理』アプリ、『請求書登録』や『仕入登録』『経費精算』などのアプリを用意している。

実際の業務フローでは、ホームページや電話などさまざまなチャネルを経由して予約が入ると、『個人顧客情報』アプリに顧客情報を登録し、詳細な予約情報を『予約カルテ』アプリに入力。その後、『タスク管理』アプリにて予約に関するTodoを登録し、飛行機の手配があれば『フライトスケジュール』アプリにて飛行機の手配管理を行う。さらに、ホテルや飛行機など新たな仕入先があれば、『仕入登録』アプリにてその情報を記載していく。全ての作業がkintone内で完結している状況だ。

昔は紙の台帳で旅行プランごとに手書きでバラバラ管理していたものを、今は全てkintone上で管理できています。kintoneに書き込めば、リアルタイムに情報が共有されるのもありがたいです。また、予約内容や作業内容について注釈などがあればアプリ内のコメント機能にて書き込んでおくことで、簡単に情報共有ができて便利です」と佐藤氏。220714_kintone 関西電力_図説_図説02.png

▼実際の予約カルテアプリ。旅行代理店業務に必要な項目を自由に設定できる。220725_kintone 関西電力_図説_画像 予約カルテ.png

▼実際のタスク管理アプリ。タスクの対応状況によって作業リストを絞り込むことができる。220725_kintone 関西電力_図説_画像 タスク管理.png

また、会計処理に関しては請求書情報をkintoneに登録すれば、アプリ画面内の発行ボタンを押すことでfreeeに自動で連携する流れだ。支払い側の処理については、仕入先からの請求書がクラウドサービス上でデータ化され、その情報を佐藤氏が確認して関電オフィスワークにfreeeへの入力依頼するワークフローが動き、支払登録が行われる。他にも、同社で働くインターン学生への交通費や通信費支給に関する経費精算アプリも運用しており、必要な情報をkintoneの請求書アプリに入力することでfreee側にシームレスに情報が展開できるようになっている

▼実際の請求書登録アプリとfreeeの画面。必要事項がワンクリックで転記できる。220725_kintone 関西電力_図説_画像 請求書登録.png

データ集計に関しても、売上計上や仕入計上を行う旅行業の特性に合わせて、旅行の出発日ベースで各種データが可視化できており、旅行分類別の売上高や月別の仕入額などが一目でわかるようなレポート画面を用意している。「kintoneの『予約カルテ』アプリにデータを入力しておけば、管理指標として必要な項目が全てアプリ上で自動的に表示できるようにしています」と和田山氏。予実管理なども各社共通の機能として実装予定で、実績を見ながらさまざまな施策に役立てていくことになるという。

小売業である「猫舌堂」については、受注管理や案件管理、在庫管理などのアプリがすでに実装されているが、運用はこれからの予定だ。案件管理については、顧客への提案内容などがステータスとともに管理されており、イノベーションラボ側で事業開発の状況をシェアするミーティング時に共有できるようになっている。

freee連携で入力の手間やミスも軽減、会計業務の大幅な効率化アップにつながった

kintoneを情報共有基盤にしたことで、日頃の業務効率化に加えてコーポレート側で定期的に行っている事業進捗のミーティング時に必要な資料作成が不要になり、いつでもリアルタイムに状況把握が可能になっているという。「各事業の進捗が容易に把握できるようになったことで、コーポレート側での判断も迅速になり、次の打ち手についても検討しやすい。売上の処理については、freeeと自動連携できるようになったことでて入力によるミスも大きく減り、締めの作業も早まっています。TRAPOLでいえば、チェックが3日ほどは早期にスタートでき、決算処理も3割ほどは効率化ができていると考えています」と北澤氏は高く評価する。

経営企画室 イノベーションラボ 北澤 弘樹氏

特に企業内で複数のスタートアップの業務を支援する関係上、コーポレート側の決算タイミングと連動させる必要がある。「タイミングによっては遅い時間まで作業せざるを得ない場面もありましたが、現在は、コーポレート側の処理にも柔軟に対応できるようになりました。複数のスタートアップを支援している我々にとってはとてもありがたい」と北澤氏。

事業側の視点では、経理処理など内部的な処理に関しては大きく効率化できており、バックオフィス業務をkintoneとfreeeの連携がうまく支えている状況だ。「以前はfreeeと連携していなかったことで販売管理システムと会計システム間の金額の付け合わせなどに時間がかかっていました。今は入金情報との付け合わせも容易ですし、クラウド請求書受領サービスを経由して第三者チェックを行う関電オフィスワークをフローに組み込むことで、請求書から支払申請を行う負担も大きく軽減できています。おそらく従来に比べて内部的な処理は半分程度の工数で済むようになりました」と佐藤氏は評価する。 

1週間ほどかかるシステム開発が、わずか3時間ほどで実装可能に

kintoneでのアプリ作成は、TRAPOLについては2か月ほど、その後は現場の使用感をフィードバックしながら随時使いやすいように修正を繰り返すなど、迅速に業務基盤を整備することに成功している。「内部の協力やパートナーに尽力いただきながら、実質的には3か月ほどで基本的な業務基盤を整備していただけました。まさに柔軟に対応できるkintoneというプラットフォームがあってこそ」と北澤氏。佐藤氏も「『予約カルテ』のような重要なアプリの大枠はシステム担当者に作成していただき、足りない項目などがあれば私のようなITに詳しくない人間でも簡単にカスタマイズできます」と評価する。

もともとアプリ開発はパートナーを中心に実装しながら、将来的な内製化も考慮して尾上氏などITに長けたメンバーがアプリ開発に関わっている。kintoneに対しては「普段からコードを駆使してプログラミングしている立場からすると、開発経験のない現場の方にも簡単にアプリが作成でき、必要に応じた修正もかんたんな印象です。もともと我々はアジャイル開発を推進しているため、短期間で構築したものに対してフィードバックを経て改善していくプロセスには慣れていますが、コードを書くのであれば最低1週間ほどは欲しいところ。kintoneであれば3時間ぐらいあれば実装でき、要望があったその日に実装できてしまうほど」とアプリ作成をサポートした尾上氏は評価している。

kintoneで業務基盤の整備を加速させ、スタートアップ支援をさらに強化したい

コーポレート側の今後については、先行しているTRAPOLや猫舌堂以外の3社についても業務アプリの整備を進めながら、いち早く業務をkintoneに乗せていきたい考えだ。「在庫管理やfreee連携など、TRAPOLや猫舌堂で行っていることを他のスタートアップにも展開していきたい」と北澤氏。和田山氏も「我々が目指しているのは、いったん整備した環境をメンテナンスしながら、リアルタイムに近い方で経営を見える化すること。これまで以上に経営管理情報の可視化を推し進めていきたい」と力説する。

また、TRAPOLではコロナ禍の影響で団体旅行の案件が動いておらず、まだkintoneアプリが活用できてない部分も残されている。「単独のお客さまによる予約カルテとは異なり、ルーミング・リストの作成などグループ旅行ならではのオペレーションがあります。そのあたりの運用が始まれば、さらに便利になっていくはずです」と佐藤氏。

 最後に、大手企業で複数のスタートアップを支援する際に、kintoneのメリットは大きいと和田山氏は力説する。「どんな業態の事業が立ち上がったとしても対応できる基盤としての柔軟性は間違いなくあります。また、管理する側からすれば、シェアードサービスとしての会計だけでなく、事業を横ぐしで見ていくための管理会計に必要な補助科目を個別に用意しなければいません。その部分をkintoneがうまく吸収してくれる。我々が進める事業にマッチした仕組みづくりを、今後もkintoneで加速させていきたい」と今後について和田山氏に語っていただいた。

(2022年2月 取材)

【記事内で登場したプラグイン・連携サービス】

freee for kintoneフリー株式会社


※プラグイン・連携サービスはkintoneスタンダードコース以上でご利用いただけます

【この事例の販売パートナー】
smooth株式会社

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HP:https://www.smooth-n.com
E-mail:advisor@smooth-n.com

ミッションは「ローカルビジネスをスムーズに」。kintoneの構築では営業管理・受発注業務・クラウド会計ソフトへのAPI連携の開発を中心に行っており、企業のクラウドERP化をサポートいたします。バックオフィス業務の効率化、kintoneを活用したデータ活用で課題をお持ちの会社、その他の会社も気軽にお問い合わせください。