朝日新聞 様の導入事例

朝日新聞

【業務内容】
日刊新聞の発行ほか
【利用用途】
企業間のやり取り、業務ポータル(お知らせ)、アンケート、e-shop、営業日報
  • 5,000人が利用する販売情報共有システムをクラウドにて刷新
  • kintoneで双方向コミュニケーションが可能な基盤を構築

 株式会社朝日新聞社では、2001年より展開してきた、本社、新聞販売所(ASA)、グループ会社をつなぐ「ASAネットシステム」の刷新を計画し、その基盤としてkintoneを採用している。kintone採用に至った経緯や今後の展望について、朝日新聞東京本社 販売局 販売管理部 システム担当部長※ 西村 哲氏、同部 システム担当次長※ 高野 昌範氏、そして情報技術本部 情報企画部 次長※ 斎藤 真氏にお話を伺った。
(※役職は当時のものを記載)

【課題】新たな時代に求められる情報共有基盤の刷新を計画

既存の業務を踏襲しつつ、現状抱えている課題解消も視野に
プロジェクトが始動

 1879年1月に大阪で創刊した朝日新聞第一号にて産声を上げた株式会社朝日新聞社。今では朝刊発行部数で約600万部の発行部数を誇る全国紙「朝日新聞」の発行をはじめ、芸術展・展覧会の主催や各種コンクール、スポーツ大会の開催など文化的な活動も積極的に展開している。『ともに考え、ともにつくる』という企業理念を掲げ、国内外に300を超える拠点を展開しており、スポーツ新聞などの新聞社、雑誌や書籍の出版社、文化活動を支援するカルチャーセンター、広告エージェンシー、印刷・発送関連、旅行、不動産・ビル管理、人材サービス、各地の放送局など、数多くのグループ会社を傘下に有している。

 そんな同社では、本社、ASAと呼ばれる新聞販売所、そしてグループ会社をつなぐ「ASAネットシステム」を2001年より展開。全国の販売局社員や協力紙、新聞販売事業をサポートするグループ会社も含め、多様な利用者がアクセスする販売情報共有システムを長年運用してきた。販売局が主体となって構築したこのASAネットシステムだが、稼働してからすでに15年以上が経過し、老朽化を迎えることに。そこで、既存業務を踏襲しながら新たな時代に求められる情報共有基盤へと成長させるべく、システム刷新のプロジェクトがスタートした。

双方向コミュニケーションが可能な基盤を
目指す

 ASAネットシステムを刷新するにあたり、「まずは、現場へのアンケートやヒアリングを通じて課題を整理していきました。その上で、目指したのは、双方向でのコミュニケーションが可能なものへの刷新です。同時に、FAXを減らすことも念頭に新たな基盤を検討しました。」と高野氏は語る。以前のASAネットシステムでは、本社からASAへの連絡は電子掲示板で行っていたが、メールないしFAXも併用されており、情報のやり取りは双方向ではなく一方通行になりがちだった。また、FAX送付には多大なコストがかかっており、コスト削減の観点からもシステム上でコミュニケーションしやすい情報共有基盤が求められていた。

 また、基幹システムとの連携にも課題があったという。「以前の仕組みでは、システム部門が介在していなかったことで、基幹システムとの連携が十分に行われておらず、マスターデータの確認をはじめ、人手を介した非効率な作業が発生していました。」と西村氏は当時の状況を振り返る。

 その他にも、必要に応じて機能を追加してきたことでインターフェースが統一されておらず、必要な情報にアクセスしづらい状況にもなっていた。保守メンテナンスの観点からも、老朽化に伴う障害対応に時間とコストがかかっており課題が顕在化していたという。

販売局 販売管理部 システム担当部長 西村 哲氏

販売局 販売管理部 システム担当次長 高野 昌範氏

【導入】コスト面や開発のしやすさ、エコシステムが大きな魅力に

情報の受け手側の視点に立って選定要件を整理

新たな基盤を選定するにあたっては、抽出した課題をベースにまずは以下を重視した。

1.システム上で双方向コミュニケーションが効率的にできること

2.既存のASAネットシステムの機能を踏襲できること(アンケート機能や請求書配付機能など)

3.基幹システムとスムーズに連携できること(認証も含む)

 上記をベースにさらに要件の検討を重ねていった結果、『ユーザーが欲しい情報にアクセスしやすくなる検索機能を実装できること』、『スマートフォンに対応していること』などを新たに加えたという。「これまでは情報の出し手側の論理で要件を整理していましたが、受け手側の視点に立って要件を整理したところ、検索機能の充実やスマートフォン対応など、新たな要件が数多く見つかりました。そういった要件を踏まえてRFPを作成し、各社に提案を依頼しました。」と西村氏。

 そこで同社の目に留まったのが、サイボウズが提供する「kintone」だった。提示した要件を満たしたシステムであったのはもちろんのこと、コストパフォーマンスに優れていたのが決め手だったという。「実際には複数のソリューション(PaaS)が提案されましたが、数千人規模で利用する基盤となるだけに、コストパフォーマンスは大きな要素でした。値の張る海外のソリューションもある中で、kintoneであれば比較的安価に基盤づくりができると判断しました。」と西村氏。

わずか2週間で実業務に近いアプリを開発し、デモで披露したことが高評価に

 コストパフォーマンス以上にkintoneを大きく印象づけたのは、提案の段階で実際に動くアプリが提示されたことだと高野氏は言及する。「唯一サイボウズだけが実際に動くシステム画面を提示し、我々を含めた販売局の面々にデモをしてくれました。」と高野氏。デモの内容も、RFPの業務フローに沿った適切なものだったことで、業務理解の観点でもサイボウズを高く評価したとのこと。「我々が提示した要望をしっかりと理解してくれていました。しかも、RFPを出してからわずか2週間で実業務に近いアプリが提示されとても驚きました。」と斎藤氏は評価する。

 またkintoneを評価したポイントの1つに挙げられるのが、サイボウズがインテグレーターとの間に構築しているエコシステムだ。「コストの高止まりを避けるためにも、開発するインテグレーターが固定されない基盤が理想的でした。まさにプラットフォームの柔軟性という点でも、kintoneのエコシステムは評価できた。」と斎藤氏は語った。

情報技術本部 情報企画部 次長 斎藤 真氏

【効果】5,000人が利用する情報共有基盤がビジネスを強力に支援

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アンケート作成機能などkintoneが持つ開発のしやすさを生かした
仕組みを実装

 kintoneで構築したASAネットシステムは、名古屋本社を皮切りに、およそ5カ月かけて全ての本社に順次展開しており、専売店と呼ばれる朝日新聞をメインに取り扱うASAを中心に約5,000人もの関係者が活用する情報共有基盤となっている。その基盤には、メインとなる全体ポータルをはじめ、お知らせやアンケート、読者応答、区域検索、e-shop、営業日報など数多くのアプリが実装され、日々の業務を効率化する工夫が施してある。

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ASAネットポータル画面

 例えば、アンケート作成者が必要な情報をASAから収集できる「アンケートアプリ」では、アンケートフォームの作成から集計までがkintoneにて容易に実現可能だ。

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アンケート入力画面

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アンケート結果画面

 また、新聞の回収袋や配送時のバイクといった、ASAが営業上必要な物品が調達できる「e-shopアプリ」も実装されており、kintone 上で発注し、本社からの新聞代請求に含めて決済可能になっている。

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e-shopアプリ画面

 「読者応答アプリ」は本社に寄せられた購読者の方からの問い合わせを管理するアプリ。オペレーターが問い合わせを入力後、配達間違えといった地域のASAに連絡すべき内容の場合は、各ASAが担当する区域を検索できる「区域検索機能」を使いその購読者を担当するASAをひもづけ、ASA側に問い合わせ情報を通知することができるようになっている。通知に対してASAからの返答がない場合は、外部のFAXサービスと連携し、ASAに直接FAXする機能も実装されている。

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読者応答アプリ画面

 ASAネットシステムが新たに動き出したものの、現場から数多くの要望が寄せられており、PDCAを回しながら機能改善を継続的に続けていく計画だ。「システムのリリースが目的ではなく、ASAのビジネス拡大を支援することが最大の目的です。当初からシステム稼働がゴールではなくスタートだと考えていますので、これからさらに良いものに仕上げていきたいと思います。メンテナンスしやすいkintoneだからこそ、その改善にも柔軟に応えてくれると期待しています。」と斎藤氏は語る。

情報が見つけやすく、コミュニケーションしやすい仕組みを構築

 今回のシステムは多社間での情報共有基盤であるため、情報の流通量が非常に多く、ユーザーが欲しい情報を見つけにくくなる懸念があった。その為、情報の検索性を高めるための工夫が随所に凝らしてある。例えば旧来のシステムではできなかった全文検索を実装したのは勿論のこと、ユーザーが「未読のもの」、「既読のもの」で情報を識別できたり、「所属部門別」、「目的別」などさまざまなタブで情報の絞り込みができたりと、ユーザーが欲しい情報にアクセスしやすい仕組みを採り入れている。

 また、kintoneのスペースを利用した部門ごとのポータルサイトを用意し、人事情報やミニコミに流用可能な原稿紹介など、部門ごとに発信したい情報を簡単に掲載できるようになっている。「開発しやすいkintone のおかげで、私や販売局のメンバーでも簡単にスペースを用意してあげることができます。」と高野氏は評価する。

 目指していた双方向コミュニケーションの基盤という観点では、お知らせの内容についてユーザー同士がコメントを書き込み合うなど、自発的にコミュニケーションを行うケースが増えてきているという。また、先程紹介した「区域検索機能」においては、kintoneのプロセス管理機能を使い、担当区域の修正をASAから本社のマスター管理者に依頼するといったコミュニケーションも生まれている。「修正依頼アプリでコメントに書き込むと、管理者からはアップデートする旨の連絡が来て、完了した段階で再びコメントで通知するなど、双方向でのやり取りが行われています。」と斎藤氏。

AWSとも柔軟に連携しながらkintoneで基盤を整備

 データの定期処理(バッチ処理)に関しては、AWS上でプログラムを実行し、kintoneのデータを登録・更新するようにしている。「請求処理では、基幹システムで作成した請求書(PDF)をZIP形式で登録すると、各ASAへの自動仕分けおよび配付処理がkintoneとAWS上で実行されます。」と斎藤氏は説明する。また、バッチ処理を柔軟に設定できるようにするため、プログラムの実行条件などをkintoneから操作できるようにしている。

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充実のサポートや連携ソリューションの豊富さなどでサイボウズを評価

 サポート面については、「パフォーマンス改善など開発面での工夫やkintoneそのもののバージョンアップ対応など、さまざまな形で支援いただき感謝しています。」と斎藤氏は評価する。また西村氏は、さまざまなソリューションと連携しやすい点を高く評価する。「例えばRepotoneUと組み合わせて帳票作成が容易になったり、メールを送るソリューションであるSendGridを使ってメール配信が可能になったりなど、連携ソリューションが豊富にあることが大きな魅力。」と評価する。プロジェクトを進める人材の観点から評価したのは高野氏だ。「お会いした時から印象が良く、結果として良い形で刷新することができました。開発担当パートナーを紹介するだけでなく、kintoneのメーカーとして会議に参画いただくなど、安心してプロジェクトを進めることができました。」と高野氏は振り返る。

スマートフォン機能のリリースや店着遅延時の通知機能などを拡充

 今後については、「まずは、kintoneで刷新したASAネットシステムの総括を行い、現時点で改善できる部分はブラッシュアップしていきます。その上で、既に実装が完了しているスマートフォン機能などを順次リリースし、新システムの活用の幅を広げていきたいです。」と高野氏。

 すでに次期開発の要件も具体的に進められているが、中でも改善が期待されているのが新聞の店着遅延が発生した際の通知機能だ。本社からASAに対して配送する新聞が遅延する場合は、通常のFAX機で通知を送っている。これをASAネットによる通知に移行できればFAX費用の削減になる。しかし、それはシステムを利用している専売店に限られるため、他紙も含めて取り扱う合売店などへの通知はFAXが中心となっている。「FAXサービス連動機能などASAネットシステムをうまく活用しながら、合売店などへもうまく通知できるような仕組み作りに取り組んでいきたい」と今後について高野氏に語っていただいた。

【この事例の販売パートナー】
 株式会社 富士通エフサス

富士通エフサス 総合窓口
 
TEL:0120-860-242
問い合わせフォーム:
https://www.fujitsu.com/jp/group/fsas/contact/service.html

富士通エフサスは、サイボウズが認定する「サイボウズ オフィシャル SI パートナー」として、kintoneはじめ、同社製品を活用したシステム構築や連携プログラムの開発を数多く手がけてきた実績があります。お気軽にお問い合わせください。