
アイホン
- 【業務内容】
- インターホン専門メーカー
- 【利用用途】
- 稟議書、SFA
アイホン株式会社は1948年創業のインターホン専門メーカー。日本単体で社員数1,000人以上、連結では2,000人を超える大企業だ。同社の製品はマンションなどの住宅をはじめ、医療用ナースコールや高齢者施設まで、幅広い分野で利用され、世界70カ国以上に展開している。kintoneはSFAツールとして同社に2016年から導入された。しかしアプリが乱立するなど、多くの運用課題を抱えていた。課題山積の2017年に営業管理部でkintoneを担当することになった鈴浦氏はそれをどのように乗り越えたのか、話を伺った。
アイホン株式会社は全国に支店があるが、営業と顧客とのやりとりの履歴や資料が社内で共有されておらず、異動時の引き継ぎが課題となっていた。そこで2016年夏ごろからSFAの検討がスタート。kintoneの評判を聞きつけ試したところ、構築メンバーの中では好評。突貫で構築し、2017年4月正式に社内リリースした。
「当社では、新築マンション・マンションのリノベーション・病院・高齢者施設などいくつかの異なる市場ごとに案件が発生します。それらを一つのアプリにまとめるのは難しいということで、別々の案件管理アプリを構築していました。首都圏は市場別に営業部門が分かれているのですが、地方は異なる市場を掛け持ちで担当しているメンバーが多い。異なるアプリに入力が必要になり、それが地方メンバーの負担になっていました。いま思えば、構築の過程で現場へのヒアリングが不足していたのだと思います」(鈴浦氏)
社内リリースのタイミングで営業管理部に異動となった鈴浦氏は、構築の経緯をよく知らないまま、説明会で全国の拠点を行脚。説明会でクレームを受けることも少なくなかった。2018年2月ごろにアンケートを実施したところ、辛辣なコメントが大多数を占めた。翌年度に入るとさらにクレームが本格化する。
「全体を包括してみる責任者がいなかったため、アプリごとの最適化が進み、全体最適が置き去りになっていました。現場では会議のたびに複数のアプリを開かなければならない状況が発生していました。『そもそもどのアプリを見たらいいの?』『アプリのために仕事しているわけじゃないんだぞ』『やっぱりExcelがいい』と言われ続け、辛かったです。構築に直接携わっていなかった分、『自分が作ったわけじゃないのに…』という想いもあり、kintoneが本当に大嫌いでした」(鈴浦氏)
アイホン株式会社 鈴浦氏
改善しようにもプラグインやカスタマイズの費用がかかるケースもある。予算が限られている中で、寄せられる要望の対応には限界があり、断らざるを得ないことも少なくない。八方塞がり状態が続いたある日、鈴浦氏の元にとある支店長から連絡が入る。「kintoneは業務効率を悪くしている!」行き詰まっていた最中のとどめのひと言だった。
「こういった話は普段、上司を通じて届くのが通例でした。その日は上司が休みだったこともあり、営業部門のキーマンから直接言われたので精神的なダメージが大きくて…。それまで積み重なっていたストレスと重なって、完全にキレてしまいました。その日はもう仕事にならず、そのまま早退してしまいました」(鈴浦氏)
SFAの課題が続く中、別件で営業部門から「情報共有に利用しているExcelファイルが開けなかったり、読み取り専用になって編集できないのでなんとかしてほしい」という相談を受けた。
kintoneで解決できそうだと感じたが、みんなkintoneは使いにくいという。どう使いにくいのか、改めてヒアリングしていくと、使い慣れたExcelと見た目が違うこと、一覧画面から直接編集がスムーズにできず、詳細画面に切り替えなければならないところが特に不評なのだとわかった。なんとか解決する方法はないかと調べ、「krewSheet」(※グレープシティ株式会社が提供するkintone連携サービス)を使って、一覧画面からの直接編集を実現。営業メンバーにも非常に好評だった。これをきっかけに、鈴浦氏は諦めかけていたkintoneに可能性を見出していく。
2020年、コロナ禍で在宅勤務への対応が必要となる。同社の業務は「連絡書」を中心に回っていた。「稟議書」に近いもので、決裁が必要な場合のほか、報告のみの場合にも使用されていた。Excelで作成した「連絡書」をメールや紙で回覧・押印する。内容によっては隣の部署にも回覧するなど、フローも部署ごとにさまざまで、統一するのは難しい。「これをkintoneでハンコレスにできないか?」と上司から相談を受けた。
左から傍島氏と鈴浦氏
鈴浦氏は「gusuku Customine」(※アールスリーインスティテュートが提供するkintone連携サービス)を使って、最小限の操作で使いやすく、承認フローを自由に設定・通知できるカスタマイズを実現。さらに「プリントクリエイター」(※株式会社トヨクモ社が提供するkintone連携サービス)を使ってアプリの見た目をExcelの「連絡書」と同じにする工夫をした。8月に営業本部で運用が始まると非常に好評で3ヶ月を経過する頃には全社に展開された。「連絡書アプリ」は全社で320時間の業務時間を削減するなど大きな成果を上げる。さらにアプリになったことで、コメント欄の活用が進んだ。「これは具体的にどういうこと?」「実際にはこういうことです」など、申請者と決裁者の間でコミュニケーションが生まれ、その上で的確な決裁が行われるようになった。現場からも「やっとハンコレスになったよ」「リマインドメールが助かる」など嬉しいコメントが数多く寄せられた。
「自分で作ったアプリが評価されたのは初めての経験でした。ユーザーが満足してくれるということは、抱えていた困りごとが解決されるということなのだと気づいたんです。そして大嫌いだったkintoneがだんだん好きになっていきました」(鈴浦氏)
鈴浦氏はkintoneと向き合う自信が高まってきた。社内のkintoneに対する苦手意識も徐々に払拭され、懸案だったSFAの改善に再挑戦できる土壌ができてきた。SFAの再構築を上申し、ついに認められたのだ。
「あった方がいいのでは?」という声が積み重なり、膨大に増えてしまった項目を簡素化するため、鈴浦氏は1万にも及ぶレコードを全て目視で確認・解析。周囲からは驚かれたが、その項目が本当に必要かどうか、根拠を持って判断・説明できるようになった。このようにして項目を簡素化し、案件情報と活動履歴を一つの画面に表示できるようになった。販売先別にアプリが異なる問題は、表示したい項目が異なることがそもそもの原因だった。鈴浦氏は、「gusuku Customine」を使って項目の表示・非表示を調整し、1つのアプリへの統合を成し遂げた。
再構築の過程で鈴浦氏は、「こうしたい」という要望に対して、「それを何に使いたいのか」「最終的にどういうグラフを表示したいのか」など、要望の先に達成したいゴールイメージを理解できるまで、質問を繰り返した。
「手段だけ共有しても、ゴールを共有しておかないと全然違うものが出来上がってしまいます。言い方がきついので質問される方は嫌だったかもしれません。(笑)そういう意味では要望する方もやみくもに要望を伝えるのではなく、覚悟を持って伝えてくれるようになっていったと思います」(鈴浦氏)
いまでは開発依頼が来ると、まずは要望とゴールイメージをじっくり共有する。そして鈴浦氏がアプリの仕様を検討し「こういうアプリにしたらどうでしょう」とゴールイメージに対して最適な提案をしている。言われた要望のままに作ることはほとんどないという。そして実際にアプリを作り、運用しながらフィードバックを受け、さらに改善することができている。そんな鈴浦氏にkintone運用のコツを聞いた。
「押し付けないこと、困っていることを解決すること、管理者はkintoneの推進担当者や開発担当者任せにせずフォローをすること、アプリへの評価は確認してすぐ対応することの4点を大切にしています」(鈴浦氏)
最近はアプリの開発依頼が増えてきた。現状の2人体制では全て対応しきれないので、kintoneや「gusuku Customine」などを使える人材を育成していきたいという。
「最近kintoneをやってみたいという新入社員がいたんです。いざ教えようとなると何を話したらいいか悩んだので、一緒にハンズオンセミナーに参加してみようかなと思っています。」(鈴浦氏)
そう語る鈴浦氏の目は生き生きとしていた。
・krewSheet(メシウス株式会社)
・gusuku Customine(アールスリーインスティテュート)
※プラグイン・連携サービスはkintoneスタンダードコース以上でご利用いただけます
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