kintone×AIで社内問い合わせを減らすには|マニュアルが散在していても始められるナレッジ検索の進め方
社内ルールや必要な申請がわからず、「詳しい人に聞いたほうが早い」と担当者にチャットした経験はありませんか?
自分で情報を探しても見つからず、結局は社内の詳しい人に問い合わせ、返事を待つことになる。一方、聞かれる側は本来の業務を中断して回答しなければなりません。こうしたやり取りが毎日のように繰り返され、双方に大きな負担となっています。
この状況から抜け出すには、社員が疑問を自己解決できる状態を目指すのが理想です。この記事では、kintone×AIで構築できる社内ナレッジ検索の仕組みを、実際の製品画面とともに紹介します。
1. 結論:社内ナレッジ検索の仕組みづくりは、「よく聞かれる業務から小さく始めて、使いながら育てる」こと
社内ナレッジ検索にAIを使うと聞くと、「社内の文書を全部そろえて、きれいに整理しなければ...」と考える人もいるでしょう。しかし社内の文書は膨大で、部署ごとに管理場所もフォーマットもバラバラ。すべてを整えてから始めようとすると、いつまでも着手できません。
まずは担当者への個別問い合わせが集中している業務を一つ選びましょう。それなら関わる文書は限られるため、最新版に整える手間を最小に抑えつつ、精度を担保することができます。まずはその範囲で「聞けば返ってくる」状態を作り、運用をはじめてみる。その運用効果をもとに、次の業務へ広げていくのがおすすめです。
もう一つ、前提としてお伝えしたいのは、AIで検索するには「文書を一か所に集める必要がある」とは限らない、という点です。kintoneの検索AIはkintone内のデータを対象としますが、パートナーAIサービスと連携すれば、SharePointやファイルサーバーに置いたままの文書も横断的に検索できます。
ではここからは、よくある課題の深掘りと、kintone×AIによる具体的な社内ナレッジ検索実現方法の紹介に進みましょう。
2. よくある課題:情報が複数システムやファイルサーバーに散らばり、結局「詳しい人に聞く」しかなくなる
例えば出張後の経費精算、「この交通費は支給対象になるか」「どの申請フォーマットを使えばよいか」が分からない。社内ポータルや共有フォルダーを探しても、複数のマニュアルや似たような名前のファイルがあって適切なものを判断できず、結局総務担当者にチャットすることになります。
チャットがきた総務担当者は今やっていた作業を中断し、規程と過去の申請例を確認、「今回は支給対象です。こちらの様式を使ってください」と返信する。実は総務には、このような質問が毎日寄せられているのです。
情報が散在していると、現場の従業員は「そもそも何を見れば良いのか」さえ分かりません。その結果、何でも詳しそうな総務や情シスなどの管理部門に、本来その部署の担当ではない質問まで集まります。特に、利用頻度の低いルールやシステムに関する質問は多くなりがちです。年に数回しか行かない出張だからこそ「あれ、申請どうやるんだっけ」となり、人に聞くことになるのです。
こうした状況の本質は、マニュアルがないことではなく、必要な情報にたどり着けないことにあります。マニュアルや規程自体は整備されている企業がほとんどです。しかし、就業規則や稟議規程はファイルサーバー、顧客情報や営業日報はkintone、提案書や報告書はSharePoint、というように文書が分散している。各部門が運用しやすい場所を選んだ結果、全社では散在した状態になっているのです。
各部門が管理している情報を横断的に検索し、情報に手間なくたどり着くことができる社内ナレッジ検索を実現することができれば、従業員本人が疑問を自己解決でき、情シスや総務担当者に集まる質問も削減できるでしょう。
3. 具体例で見る kintone×AI の実現方法
ここからは、社内ナレッジ検索の実現方法について、kintone AIとパートナーAIサービスの使い分けも踏まえてご紹介します。
3-1. 情報がkintone内にあるなら検索AIで完結する
まず押さえたいのは、kintoneだけで実現できる範囲です。kintoneの「検索AI」は、kintoneの複数アプリを横断してAIが質問内容に沿った回答を生成することができます。回答とあわせて根拠となったレコードを参考情報として表示することもできるので、社内ルールやマニュアル、過去の申請事例がkintone内に集約されているなら、社内ナレッジ検索は検索AIで十分実現できます。まずはここから試してみましょう。
※ kintone AIを利用するための条件はこちらをご確認ください。なお、kintone AIの利用にはシステム管理者による有効化が必要です。
kintoneの検索AIは、複数アプリのデータを対象に自然文の質問へ回答できる
3-2. Safe AI Gatewayならkintone外の情報も横断して探せる
回答の根拠として必要な情報がkintoneの中にそろっておらず、これらをkintoneへ移行するのが難しい場合、パートナーAIサービスとの連携を検討してみましょう。
ここでは、株式会社ソフトクリエイトが提供する「Safe AI Gateway」を例に、実際の画面で見ていきます。Safe AI Gatewayなら、kintoneだけでなく、自社のファイルやデータ、システムとシームレスに連携して学習し、kintone環境の外からも利用できる自社専用のチャットボットを通じて、社内ナレッジを手軽に検索できます。
文書をkintoneに移さず、複数の情報源を一つのチャットから検索
Safe AI Gatewayの利用者は、情報がどこに保管されているかを意識する必要がありません。kintone、SharePoint、Box、ファイルサーバーなど複数の情報源に対して、一つのチャットボット画面から自然文で問い合わせができます。
基本的には、まず「社内勤務規程」「経費精算規程」などマニュアルや業務ユニットごとに専門チャットボットを作成します。そうすることで、チャットボットごとに担当者を分けることができ、管理しやすくなります。
そして、ユーザー目線では、勤務規程も経費精算も同じチャットボットから質問できるよう、複数チャットボットを横断した「社内問い合わせチャットボット」を作ることで、窓口を1か所にまとめることができます。
以下の画面は、有給休暇について質問した例です。画面下部には、この回答が複数の専門チャットボットを参照して生成されたことが表示されており、裏側では複数の情報源が横断的に参照されていることがわかります。これにより問い合わせ窓口を一本化でき、自己解決の促進、問い合わせを受ける側の負荷軽減につながります。
また、回答時に根拠となった文書のURLも併記できます。有給休暇の取り方と申請フローの回答に加え、参照元として就業規則の条文番号と、社内規程が置かれている場所のURLが明示されています。kintoneの外にある文書が根拠になった場合も、その保管場所までたどれるため、原本を確認したいときにすぐ開けます。
有給休暇について質問した回答例。参照元がチャットボット別に示され、就業規則の該当条文や社内規程のURLまで確認できる
運用しながら育てる仕組み
また、Safe AI Gatewayには、利用者が回答を気軽に評価できるフィードバック機能があります。管理者はその評価をもとに、対象データや回答ルールを見直せます。特に、「悪い評価」へのコメントや回答内容への振り返りを実施することで、回答精度を高められます。
どの回答が支持され、どこに課題があるのかを数字で把握できれば、限られた人員でも改善のポイントを絞り込めます。導入して終わりではなく、現場の問い合わせ内容に合わせて育てていく運用が可能です。
チャットボット評価画面。チャットボットごとに「良い評価」「悪い評価」の件数が集計され、見直すべき対象を把握できる
4. まずはここから
対象業務のマニュアルや規程を整理する
まずは対象の業務を決め、それに関わるマニュアルや規程を最新の状態に整えましょう。この整理そのものにも、Safe AI Gatewayを使うことができます。一般的な生成AIと同様に、マニュアルが存在しない場合はドラフトを作成させることができますし、既存の規程やマニュアルをもとに、修正案の作成や文体の統一、分かりにくい表現の洗い出しと書き直しにも利用できます。文書整備を全て人手で進めるよりも、着手のハードルを下げられます。Safe AI Gatewayは企業利用を前提としており、情報漏洩や意図せず学習データに使われてしまうリスクが限りなく低いため、社内文書の扱いにも適しています。
なお、注意したいのは対象業務を広げるタイミングです。回答精度が追いつかないまま利用範囲を広げると、ユーザーが「使えない」と感じ、離れてしまいます。一度その印象がつくと、利用を戻すのは簡単ではありません。まずは最初に決めた対象業務について、実運用が問題なく回る精度まで高めることに注力するのがおすすめです。
効果は「回答率」ではなく業務の変化で見る
対象業務を広げる判断をする上で、どのように効果測定をするかも考えておきましょう。全ての質問にAIが答えられているかではなく、「問い合わせを受けていた担当者の負荷が下がったか」「自己解決できる問い合わせが増えたか」など業務の変化を確認し、判断の軸とするのがおすすめです。
社内問い合わせを減らす第一歩として、まずは問い合わせの多い一つの業務から、kintone×AIによる自己解決の仕組みを目指してみましょう。
5. よくある質問
Q1. 人員が少ない情シスや総務部門でも、導入・運用・精度改善は回していけますか?
はい。問い合わせが特定の担当者に集中しやすい少人数体制に適しており、実際に多くのお客様が1〜数名規模の情シス・総務部門で導入から運用、改善まで進めています。Safe AI Gatewayは直感的なUIでチャットボットを作成できるため、総務向けのチャットボットは総務担当が作るなど分担も可能です。
Q2. kintoneとSafe AI Gatewayの連携はどのように実装すれば良いですか?
kintoneとSafe AI Gatewayの連携方式にはRAGとMCPの2つがありますが、kintone上の業務データを活用する今回のようなケースではMCP連携を推奨します。RAGは登録済みの情報を検索して回答するのに対し、MCPは必要なタイミングでkintoneから最新のレコード情報を取得して回答するため、案件状況や申請ステータスなど「最新の状態を参照したい」業務データと相性がよく、運用後のメンテナンス負荷も抑えやすくなります。設定はGUI画面とマニュアルが用意されており、ユーザー自身で設定が可能です。
監修者プロフィール

株式会社ソフトクリエイト 事業推進本部 製品開発部
副部長 佐々木 博巳
長年にわたり、kintoneを活用した業務改善・DX推進を支援。2024年からはAI分野にも活動領域を広げ、企業向け生成AIサービス「Safe AI Gateway」の企画・事業推進に従事。kintoneや生成AIの活用・導入支援を通じて、多くの企業の業務改革や生産性向上を支援している。
▶ 紹介したサービス:Safe AI Gateway(株式会社ソフトクリエイト)
※本記事の内容は、2026年10月時点での情報です。最新情報は各製品サイトをご確認ください。
