建設業の事務作業の負担を軽減|kintone×AIであらゆる報告書をデータ化する

建設業の事務作業の負担を軽減|kintone×AIであらゆる報告書をデータ化する

建設業のよくある課題として、現場作業に付随して発生する各種報告書管理の手間や、属人化が挙げられます。

建設現場では、施工記録・安全書類・作業日報・工事写真といった書類が現場ごとに発生します。現場から事務所に戻った後、それらをまとめて転記・整理するのに時間がかかり、担当者の負担になっているケースがよくあります。

本記事では、建設業や専門工事業の方々の業務負担低減を目的に、kintone×AIの活用方法をご紹介します。普段ITツールをあまり利用されない現場の方々にも活用いただけるようなポイントもあわせてお伝えします。

結論:報告書管理の業務改善の鍵は、現状のフォーマットを変えずにデータ化すること

施工現場の方が行っている各種報告書の管理を、ITツールを用いて業務改善しようとする際、新しいシステムや運用を浸透させるために、すでに現場の方が慣れている報告書のフォーマットや業務フローを大きく変えないことがポイントです。

具体的な方法として、写真や手書きの記入内容をkintoneのフィールドに変換できるAI-OCRサービスを活用し、運用の大きな変更なくデータ化を進めることができます。AI-OCRにより転記の工数が減り、書類対応が特定の担当者に依存しない状態に近づきます。また、kintoneにデータが揃うことで、同一施工会社・同一現場の記録を現場をまたいで検索・集計できるようになるなど、データ活用の幅が広がります。

よくある課題:各種報告の転記作業と属人化による非効率

各種報告の整理・転記作業の負担

現場から事務所に戻った後、日中に手書きで記入した作業日報や、スマートフォン等で撮影した黒板の写真を、まとめて転記・整理する時間が発生しているケースが多く見られます。複数現場を掛け持ちしていると転記作業も多くなり、担当者の負担になりやすいです。
たとえば公共工事においては、工事や業務委託の最終成果品(図面、写真、報告書など)を紙ではなく、国土交通省などが定める基準に沿った、電子データで提出することが求められます。その対応のなかでも写真の整理は、現場で撮ったものを1枚ずつ確認して手作業で分類・入力し、時間と手間がかかっている企業が多いです。

作業・判断の属人化

元請会社や現場ごとに、報告書の様式・記入ルールが異なるため、その現場に慣れていない人では対応しづらいという傾向があります。また、「どう記入すれば元請の確認が通るか」という判断基準が、特定のベテラン社員の経験則に依存しているため、書類の作成・チェックを特定の担当者しか対応できず、その担当者が不在の際に業務が滞りやすくなります。

システムが定着しにくい現場

一般的に、複雑な初期設定や専門用語を要する操作が必要なシステムは、現場担当者に馴染みがなく、ITツールによる業務改善を進めようとしても定着せずに終わってしまうケースも多いです。

以上のような状況が積み重なることで、長時間労働や人材育成がしづらい環境に繋がりかねません。逆に、日々の業務を効率化することができれば、働き手にとっても、業界全体にとっても良いサイクルが生まれるでしょう。

次から、kintoneとAIを使った業務効率化の例をご紹介します。

具体例で見る kintone×AI の実現方法

以下のような手順で、AI-OCRとkintoneを併用するのがおすすめです。

1. AI-OCRで画像や手書き文字をテキストデータ化し、kintoneのフィールドに格納する。
2. kintoneに格納されたデータを活用する

kintoneでは、文字情報を持たない画像データの内容を検索する機能はありません。そのため、まずOCRによって画像からテキストデータを抽出することが必要です。本記事では、AI-OCRのソリューションのなかでも、k&iソリューションズ株式会社が提供する「AI-OCRプラグイン for kintone」を例にご紹介します。

AI-OCRでデータ化する|現場のアナログな情報が「検索できる文字データ」に変わるまで

現場での手順

現場の方に新たに覚えていただく操作は、「写真をアップロード」「ボタンを押す」の2点です。

1. スマートフォンやタブレットで、黒板・工事写真等を撮影
2. kintoneアプリのレコード追加画面から、撮影した写真をアップロード
3. レコード保存後に表示される「AI-OCR実行」ボタンを押下
4. AIが画像を解析し、各種情報を自動で該当フィールドへ入力
現場での操作手順

現場での操作手順。シンプルな操作で完結できる。


操作は非常にシンプルですが、現場に新しいシステムを受け入れてもらうためにも「今使っている帳票のフォーマットを変える必要はない」ということを伝えることをおすすめします。そのうえでデモンストレーションをすることで、現場の抵抗感なく運用を浸透させることができるでしょう。

次に、現場での操作の前に必要な設定をご説明します。

抽出項目の設定

現場での操作の前に、画像の項目を読み取る設定をしておきます。従来のOCRは「この位置に氏名」「この位置に住所」と帳票ごとにレイアウトを設定する必要がありましたが、AI-OCRプラグイン for kintoneは抽出したい内容を自然な言葉で指定するだけで設定が完了します。そのため、様式が異なる帳票でも同じ設定のまま読み取ることが可能です。
工事現場の黒板であれば、「工事名を回答」「工種を回答」「施工者_氏名を回答」「撮影日を回答」といった書き方です。
抽出したい項目を日本語で書くだけで設定が完了

抽出したい項目を日本語で書くだけで設定が完了。帳票のレイアウトに沿った設定は不要。


また、単純な項目の抽出だけでなく、細かいデータの加工も指示文だけで対応可能です。建設業の場合、例えば施工者の会社名を抽出する際に、(株)(有)といった略式を正式名称に変換することが可能です。
読み取ったデータの加工も指示文で可能

読み取ったデータの加工も、指示文を書くことで可能。


以上のように、AI-OCRプラグイン for kintoneはデータ加工も容易なため、建設業の報告書のように独自ルールが多いケースと非常に相性の良いソリューションです。

読み取った内容の確認

AI-OCRの読み取り精度は高いものの、やはり内容の確認は必要です。

AI-OCRプラグイン for kintoneには、AIが読み取った内容をAIが再チェックし、誤字脱字や不自然な値を検出する機能があります。読み取り結果すべてを一件ずつ目視確認するのではなく、「AIが不自然と判定した項目」に絞って人が確認する運用が可能になります。

また、「誤字脱字を修正して回答する」のように指示をすれば、判読ミスや文脈上明らかな誤りを、その場で自然な文章に補正して登録できます。確認作業の負担を段階的に減らせます。
確認すべき箇所が示される画面

確認すべき箇所が示されるため、全件目視から「怪しいところだけ」に絞った確認ができる。


※ 強い逆光や蛍光灯の反射、斜めからの撮影による歪み、極端に崩れた手書き文字では読み取り精度が下がります。また、選択肢を「○」で囲む記述は読み取れません。そのため、AIによる自動化と手入力を組み合わせたハイブリットな運用をおすすめします。

応用:自動でデータ登録を実行する

1レコードずつ手動でOCRの実行をするだけでなく、Webhookを利用することで、レコードの登録をきっかけに自動でOCRを実行することも可能です。

これにより、現場で「AI-OCRを実行」というボタンを都度押す操作も不要になります。押し忘れでデータ化されないまま放置される、という運用上のミスも防げるため、IT操作に不安のある現場ほどこの組み合わせがおすすめです。

kintone でデータを活用する|現場をまたいで「探せる・まとまる」ようになる

以上で、情報がkintoneに集約されたため、様々なカットでデータ活用が可能になります。

実際に建設業でよく活用されている例をご紹介します。

「施工会社」「工事名」といった、AI-OCRで抽出した項目をキーに、kintoneの「関連レコード一覧」を使って同一の施工会社・同一現場の過去の写真や記録を一画面で確認できるようにする、といった構成です。

また、現場の黒板・日報から抽出した「工事名」を、案件連絡票(契約金額・工期・予算等を管理する帳票)から抽出した「工事名称」と突き合わせることで、1つの案件について、「契約・予算の情報」と「現場の記録」をkintone上で一体的に管理する構成も可能です。
kintoneにデータがまとまった状態

kintoneにデータがまとまることで、現場の記録から契約・予算の情報まで関連させて確認ができる。


さらに、kintoneに搭載されているAI機能「kintone AI」を利用することで、蓄積されたデータの要約や分析をkintone上で行えます。

建設業で使いやすいのが、「レコード一覧分析AI」です。アプリの一覧画面に表示されているレコードをAIが読み取り、要約や傾向の抽出を行います。次の3つのプロンプトボタンがあらかじめ用意されており、レポート等のアウトプットを簡単に得られることができます。

・要約レポート作成:作業日報や議事録のような長文をまとめる
・特徴およびトピック分析:自由記述から主要な特徴やトピックを抽出する
・注目レコード抽出:ほかと異なる傾向を示すレコードを見つけ出す

実際にプロンプトボタンを使った例をご紹介します。

・要約レポート作成
作業日報アプリで、一覧を対象現場・対象期間に絞り込んだうえで「要約レポート作成」を実行すれば、元請への週次報告や社内共有のたたき台が得られます。
「要約レポート作成」の例

「要約レポート作成」の例。kintoneに報告データを溜めておけば、kintone AIで用意されたボタンを押すだけで簡単にレポートが出力される。


・特徴およびトピック分析

ヒヤリハットや安全パトロールの記録のように、件数の集計だけでは傾向の見えないデータには「特徴およびトピック分析」が適しています。
「特徴およびトピック分析」の例

「特徴およびトピック分析」の例。すぐに問題の兆候を把握でき、迅速な対策が可能に。


・注目レコード抽出

工事案件の一覧から注意すべき現場を拾い出す場面には「注目レコード抽出」が適しています。「協力会社ごとに指摘事項を整理してください」のように、指示文を自分で入力することもできます。
「注目レコード抽出」の例

「注目レコード抽出」の例。報告書の山に埋もれがちな注意すべき状況を拾い出してくれる。


なお、複数のアプリを横断して過去の類似案件や施工記録を探す用途には「検索AI」など、kintone AIには用途の異なる機能が用意されています。

まずはここから

どの帳票から始めるか決める

最初から全帳票・全項目を自動化しようとせず、まずは一部の帳票・項目に絞り、精度や運用のイメージを掴んでから対象を広げることがおすすめです。優先順位の基準は以下の3つです。

・発生頻度が高く、転記作業の負担が大きい帳票から着手する
・様式が比較的統一されている帳票(設定の負担が軽い)から始め、その後で様式がバラバラな帳票へ広げる
・複数の担当者が関わる帳票(属人化の解消効果が出やすい)を優先する

活用の広がりのよくある例としては、現場の黒板・工事写真から作業日報・安全書類へ、さらに案件連絡票や発注書といった現場発生系ではない社内帳票へ、という流れが一般的です。例えば、材料メーカーが発行する品質証明書(ミルシート)をデータ化している事例もあります。

読み取り結果の確認者を決める

人による確認作業自体がなくなるわけではないため、「読み取り結果の確認は誰が行うか」を導入前に決めておくことがおすすめです。

建設業を取り巻く現状として、BIM/CIMの対応など電子データ化の波がありますが、いきなりBIM/CIMの対応は不要であったり、難しい企業の方々も多いでしょう。今回ご紹介したkintone×AIの活用は、BIM/CIMが進んでも残り続ける現場の紙業務を救うという位置づけで、検討してみてはいかがでしょうか。

よくある質問

導入・運用にどのくらいの費用がかかりますか?

「AI-OCRプラグイン for kintone」 は、年額6万円(税抜)から利用できます。料金は年間の読み取りページ数に応じたプラン制で、プランごとの機能差はありません。OCRエンジンや生成AIの利用料も含まれるため、別途AIサービスを契約する必要がなく、費用を見積もりやすいのもポイントです。kintoneの価格については料金ページをご確認ください。

AI-OCRプラグイン for kintoneで読み取ったデータのセキュリティはどのような規定ですか?

お客様のデータが外部に残らない仕様でご提供しております。具体的には以下の通りです。
・AI-OCRプラグイン for kintoneが利用するAIエンジンでは、リクエストされたデータは自動的に削除され、AIのトレーニング等には利用されません。
・OCR処理を行うサーバーは東京にあり、国外へデータの越境移転もありません。
・AIエンジン提供元とは個別のオプトアウト契約を締結しており、人によるデータ閲覧・監視の対象からも除外されています。

システム導入の効果をどのように測ればいいですか?

次の指標を参考にすると、どれだけ業務改善につながっているかが見えるでしょう。

・1帳票あたりの確認工数(手入力にかかっていた時間との比較)
・項目別の修正率(AIが自動入力した項目のうち、人が修正した割合)
・帳票処理全体のリードタイム(受領からkintone登録完了までの時間)

これらを試用期間の1ヶ月程度計測すれば、具体的な効果を把握できます。

監修パートナー

村上 啓一

k&iソリューションズ株式会社

代表取締役 村上 啓一

kintone連携ソリューションの企画・開発を手掛ける。AI-OCRプラグイン for kintoneをはじめ、生成AIやOCR、電子契約を活用した業務効率化・データ活用支援を推進。自治体や民間企業における帳票業務のデジタル化・自動化に取り組んでいる。

▶ サービスについて詳しく見る

※本記事の内容は、2026年9月時点での情報です。最新情報は各製品サイトをご確認ください。