kintone × AIで複数の日報を横断分析──埋もれた現場の声を経営のヒントに
多くの企業でルーティーン業務としてある日報。しかし、せっかく現場から集まっている情報を企業の資産として活かしきれていない、といったマネージャー層や、経営層の方々も多いのではないでしょうか?
この記事では、日報の情報を有効活用すべく、kintone × AIで日報を分析・レポート化する方法をご紹介します。
結論:日報はAIで要点をまとめ、レポート出力を仕組み化する
日報の情報を全社の資産として活かしていくには、膨大な情報量をAIで要点を抽出し、レポートとしてまとめ、それを決まったタイミングで出力させるといった仕組み化をすることがポイントです。
このような仕組み化をすることで生まれる効果は2つあります。1つは、マネージャーや経営者層の方が目を通す対象が、メンバー全員分の日報からレポート1本に変わり、業務負担の低減に繋がる点です。もう1つは、分析結果が蓄積されることで変化を追うことができ、経営課題の発見にも繋げやすい、という点です。
よくある課題:日報を読みきれない・日報の情報をナレッジとして展開できない
日報の提出は定着しているものの、大量の日報を消化し、情報を展開することにハードルを感じられている企業が多いようです。
量が多すぎて読みきれない
10名の部署でイメージすると、1日10件。これだけでも毎日読むとなると、上長は大変です。さらに月次の振り返りとなると、月20営業日で200件の日報。1回の振り返りで読む対象が100件を超えると、丁寧に目を通すのは難しいでしょう。また、現場の目線としても、上長からリアクションがない状態が続けば、提出さえすればいいものという意識に変わってしまう可能性もあります。それゆえに、日報の質の低下にも繋がりかねません。
部署を越えた共有がなされない
上長にとって日報はマネージメントの手がかりであり、全社的な課題を拾う手がかりではないことが多いです。そもそも他部門や経営層へ共有する設計がないため、例えば以下のような問題が発生することが考えられます。
・A事業部が突き止めた失注理由を、B事業部が知らずに同じ失敗を繰り返してしまう
・大口顧客の担当者変更や、リアクションが鈍くなっていることを共有できておらず、解約になってしまう
後から振り返れば情報は日報に書かれていたのに......ということが多々あるでしょう。書かれたものが共有される仕組みがないという点が本質的な課題です。
具体例で見る kintone × AI の実現方法
kintone AIやM-SOLUTIONS株式会社が提供する「Smart at AI for kintone Powered by GPT(以下、Smart at AI)」を使って、大量の日報から情報を集約し、部署外にも展開できる形に仕組み化していくことが可能です。まずはkintoneに搭載されているkintone AIでできる範囲をご紹介します。
「kintone AI」でできること:アプリのレコード一覧に表示された範囲を分析する
kintoneの「レコード一覧分析AI」は、アプリのレコード一覧で、画面に表示されている範囲のレコードの情報を分析します。表示中の日報レコードを横断検索して、要約レポートの作成や特徴およびトピック分析、注目レコードの抽出ができます。上長が自部署の週次の傾向を掴む用途としては、こちらで十分でしょう。

※ kintone AIを利用するための条件はこちらをご確認ください。なお、利用にはシステム管理者による有効化が必要です。
なお、レコード一覧分析AIの仕様上、以下の観点で運用しづらい場合は、パートナーサービスの活用も検討してみましょう。
・レコード件数の多さ
kintoneレコード一覧の1ページあたりの最大表示件数は100件です。そのため、それ以上の件数の日報を分析対象にする場合、画面にチャットを表示して問いかける方式では、その都度、人が分析の対象範囲を指定し続ける必要があり、限界があります。
・再現性
誰がどのように質問するかによって出力が変わるため、「毎週、同じ観点・同じ形式でレポートを出す」といった定型業務には向きません。
・結果の蓄積方法
対話の結果は基本的にその場限りのものであり、kintoneのフィールドに構造化されたデータとして蓄積されるわけではありません。そのため、後から集計したり、経営会議の資料として時系列で並べたりすることができません。
・起動方法
kintone AIは、人が思い立って画面を開いたときにしか動きません。「毎週月曜の朝までに、先週分のまとめができている」という状態は、対話型の仕組みでは実現できません。
Smart at AIでできること:分析データを週次でまとめ、レポートを仕組み化する
Smart at AIを使うと、要点の抽出から週次レポートの生成・通知までを、kintoneの画面上だけで完結させられます。
STEP1:一覧画面で分析対象を絞り込む
kintoneの一覧画面から、レコード絞り込み機能で「今週・営業部」のように分析する対象を絞ります。
STEP2:「日報を要約」ボタンを押す
ボタンを押すと、絞り込んだレコードが順に処理され、各レコードの「要点(AI)」「課題タグ(AI)」フィールドに結果が書き戻されます。
画面上部に「日報を要約」ボタンが表示されている。
実行前の日報レコード。本文だけが入力され、「要点(AI)」「課題タグ(AI)」は空の状態。
実行後のレコード。要点が3行に整理され、課題タグには「納期・調達, 顧客離反の兆候」と、そう判定した理由まで書き込まれている。
判定理由もセットで同じ画面に出力させることで、判定に間違いがあった時に、実際の内容を確認しながら出力結果のズレの要因を判断できます。
STEP3:「週次サマリを作成」ボタンを押す
ボタンを押すと、要点が揃ったレコード群を横断して集計し、「頻出課題トップ3」「部門横断の兆候」「好事例」「経営として検討すべき論点」を1本にまとめます。

STEP4:「週次サマリ」アプリにレコードとして登録される
書き込み先は日報アプリではなく、集約用の別アプリです。対象期間・対象部門とともに1レコードとして残るため、レポートが積み上がっていき、過去のレポートと並べて確認ができます。

週次サマリレコードの詳細画面。左に4構成のサマリ本文、右のコメント欄に管理者向けのアラートが自動投稿されている。
作り方の要点は、長い文章を一度に書かせないことです。①各日報の要点抽出を一括で回す → ②その結果を横断集計して別アプリに書き出すの2段構えにします。この分け方が、実運用での安定性と、結果がデータとして残ることの両方に効きます。
運用方法から見るSmart at AIのさらなる活用方法
活用を拡大していくには、以下の段階を踏むとよいでしょう。
・第1段階(1か月):1部門で要点抽出と課題タグの精度を確認する。
・第2段階(1か月):週次サマリを4週分生成し、会議で使えるかを検証する。型が固まったら自動実行と通知を設定する。
・第3段階:2〜3部門に広げ、「部門横断の兆候」が拾えるかを確認する。
・第4段階:半期のタイミングで、積み上がったサマリを再集約して振り返りに使う。
初回のレポートは物足りない出力になる場合もありますが、ここで作り込みに入ると運用サイクルを回していくのが遅れてしまいます。7割の出来でも毎週レポートを出し、社内の反応を見ながら直すほうが効率的です。
AIの出力は答えではなく、議論の起点としてご活用ください。出力したレポートから元の日報に辿れるようにしておけば、気になった箇所だけ一次情報に当たれます。日報を読み切れないという課題の解決として、これだけでも十分効果的です。
また、日報を書く側にメリットを提示することも重要です。分析結果を経営層にレポートするだけで現場に何もフィードバックがなければ、日報の記載も雑な内容になりかねません。充実したデータで日報活用が続けられるよう、現場にもフィードバックしましょう。
機能から見るSmart at AIのさらなる活用方法
・自動実行
毎日・毎週・毎月の指定日時に操作を自動実行できます。「毎週月曜7時に先週分のサマリを生成する」といった設定が可能で、複数の日時も登録できます。人が実行するのをスケジューリングしておく必要がなくなり、大変便利です。
※注意:実行時刻は指定通りではなく、原則1時間以内に実行されます。たとえば「朝9時の会議までにできていればよい」といった粒度で時間に余裕を持って設計してください。
エージェント実行の日時設定画面。「毎週 月曜日 07:00〜」を登録した状態。画面下部に「原則1時間以内に実行されます」との注記がある。
・通知
生成結果はレコードのコメントにも出力でき、メンション先を指定できます。たとえば「サマリができたら部門長に通知する」ほか、「解約の示唆」など、定めた条件に該当する記述が見つかった場合だけ管理者に投稿するといった設定も可能です。
・まとめ図の生成
サマリのテキストが揃ったあと、別のプロンプトで生成モードを画像生成に切り替えると、そのテキストを参照してまとめの図を作成することが可能です。会議等での資料にも活用できるでしょう。
週次サマリから生成したまとめ図。中央に今週の最重要トピック、周囲に5部門の傾向、左下に注意が必要な兆候、右下に好事例を配置。40件の日報がこの1枚になる。
なお、文章と画像を1つのプロンプトで同時に作ることはできません。①分析してテキストを作る → ②そのテキストを参照して画像を作るの2段階で設計します。数値の正確さは①で担保し、②は見せ方に専念させる、という分担がよいでしょう。
活用にあたっての注意:プロンプトを調整すべき点
・「頻出課題トップ3」のリストアップ条件
そのまま「頻出課題トップ3をリストアップする」といったプロンプトで実行すると、単純に記述数の多いテーマがリストアップされ、課題として需要度が高いものがリストアップされない場合があります。たとえば日報の場合は、勤務時間など経営課題とは関係のない報告も多く含まれているため、「日常的な定型業務の記述は除外する」「複数部門にまたがるものを優先する」といった条件を明示することをおすすめします。
週次サマリを作るプロンプトの設定画面。「件数の多さと重要度は一致しません」という優先順位のルールを明記している。
・課題と好事例の記載バランス
ある企業での実際の運用で、課題を優先して表示する設定にしていたところ、若手から「バッドニュースばかりで気が滅入る」という声が挙がったため、好事例もあわせて出す形に改めたという事例があります。たとえば「課題を先に記載、ただし好事例も同数程度挙げる」という指定をすることで、より受け入れられやすいレポートに繋がります。
・個人を識別できる情報の扱い
全プロンプトに「特定の個人を識別できる形では記述しない」という指示を入れておくことを推奨しています。こちらも、AIでのデータ活用が現場に受け入れられるための配慮として、設定しておきましょう。
まずはここから
ツールの導入検討より先に、運用方法を整理しておくことが大切です。
・レポートを「誰がいつ読むか」を決める
たとえば「毎週月曜9時の部門長会議の冒頭で確認する」というところまで決めておくとよいでしょう。
・分析対象にする自由記述欄を1つに定める
全社で日報の全項目を統一する必要はありません。「所感」「気づき」「課題」など呼び名が違っても、分析対象にする欄を部門横断で1つ決め、設定すればサービスを利用することができます。
・目的を現場に説明し、個人名を出さない方針を明示する
監視と受け取られると、日報が当たり障りのない内容になりデータの質が下がってしまいます。全社課題の抽出が目的であると、活用前にアナウンスするのがおすすめです。
・最初に導入する部門を決める
日報の件数の多さではなく、自由記述が書かれている部門を選ぶとレポートの質が上がる傾向があります。
導入時に適当な規模としては1部門・20〜30名・直近1か月が目安です。20〜30名だと、そのままでは日報が読み切れないという量でありAI活用が意味を成す量でありながら、実際の日報データとAIの出力を突き合わせ、各設定の調整の根拠が持てる量でもあります。
よくある質問
Q1. 既存の日報アプリをそのまま使えますか? 作り直しが必要ですか?
既存のアプリに手を加えて、そのまま使えます。AIの出力先となるフィールドを数個追加し、プラグインを設定するだけで、データ移行も不要です。
ただし、AIが書き込む欄は、人が書く欄と分けてください。AI出力欄を人が直接直すと、次の一括実行で上書きされて消えます。修正用には「補足(人)」といった欄を別に設けるのが安全です。
Q2. 添付ファイルやテーブルで日報アプリを運用していますが、分析の対象になりますか?
Smart at AIでは、テーブル(サブテーブル)も分析できます。添付ファイルもデータを読ませること自体は可能です。ただしファイルの中身は絞り込み・集計の対象にならず、ファイルの中身の書式が部門ごとに違えば、AI出力の精度も安定しません。
過去分をすべて移行する必要はありませんが、文字列フィールドに入力する運用に変更するのがおすすめです。
Q3. 現場の日報の書き方は、AI活用のために変える必要がありますか?
特に変える必要はございません。文体も書式も、文章の上手さも問いません。箇条書きでも、ひと連なりの口語でも読み取れます。
ポイントは、事実と所感を両方書いてもらうことです。「A社訪問」では材料になりませんが、「A社訪問。担当者が変わってから反応が鈍い」まで記載があると、分析の際に有効な材料になります。
Q4. 日報の内容が外部に送信されることになりますか? セキュリティ面が心配です。
生成AIサービスへの連携は行われます。社内ポリシーをご確認ください。また、接続する生成AIサービスや利用環境の設定は管理者側で行うため、導入時に情報システム部門へ適宜確認をお願いいたします。また、個人名や顧客の情報を分析対象に含めない運用設計ともあわせてご検討ください。
Q5. 半年前まで遡った分析や、数値の集計もできますか?
遡っての分析も可能です。ただし半年分をそのまま読ませるのではなく、週次・月次のまとめを積み上げて再集約する形をおすすめします。1回の生成で扱える量に上限があるためです。
なお、「今月の訪問件数の合計」のような数値処理は、kintoneの集計機能やBIツールの領域で、Smart at AIが分析するのは自由記述のデータとなります。実行周期も毎日・毎週・毎月の単位なので、投稿直後の即時検知が必要な場合は、別の手段をご検討ください。
Q6. 分析対象は日報だけですか?
議事録、対応履歴、問い合わせ記録など、自由記述が蓄積されているkintoneアプリであれば用途を問わずご利用可能です。議事録作成から始めて週報のまとめ、半期の自己評価支援へと活用を広げられるケースもあります。
監修パートナー
M-SOLUTIONS株式会社
代表取締役社長CEO 植草 学
M-SOLUTIONSは、長年のSI技術と豊富なkintone開発実績を基盤に、kintone×AI連携サービス「Smart at AI」を展開。1,500件以上に利用されるサービスとして、安全かつ実践的なAI活用で、業務効率化とDX推進を支援しています。
※本記事の内容は、2026年8月時点の情報です。最新情報は各製品サイトをご確認ください。
