kintone×AIでアンケートの自由記述を分析する|顧客満足度の改善を"優先度つきの改善リスト"に変える方法
顧客アンケートやNPS調査を続けていると、お客様からのご意見は着実に貯まっていきます。しかし、報告や会議の振り返りでは、どうしても平均点やNPSのスコアが中心になりがちです。
お客様が時間を割いて書いてくれた自由記述は、改善のヒントが詰まった貴重な一次情報ですが、目は通しているけれど、件数が多く、一件ずつ読み込んで傾向をまとめるところまでは手が回らない。結局活かしきれないまま、打ち手が表面的な対応にとどまってしまう。こんな状態に心当たりはありませんか。
本記事では、kintone×AIでアンケート結果を分析し改善に繋げる方法を、設定画面のイメージまで含めて解説します。
結論:自由記述をAIに仕分けさせれば、「優先度付き改善リスト」ができる
アンケートの自由記述を活かすためにやるべきことは、アンケートをAIに読ませて仕分けすることです。
「ポジティブかネガティブか」「価格の話か、接客か、待ち時間か」「対応の優先度は高いのか低いのか」AIが1件ごとに判定し、その結果をkintoneに保存することで、絞り込みや集計・優先度の並べ替えができ、「ネガティブかつ優先度が高い声」を把握することができます。
これによって数百件の回答が、顧客満足度改善のための「優先度付き改善リスト」になります。しかも「A商品に関する指摘が何件」と件数がわかるので、個人の感覚ではなく、数字を根拠にしたものになります。
kintone AIだけでも、溜まった回答を元に傾向をつかむことはできます。ただしその結果はkintoneに残りません。判定を1件ずつkintoneに保存し、継続的に分析できる状態にできるのがパートナーサービスの領域です。本記事では、その両方を実際の画面で見ていきます。
よくある課題:自由記述に手が回らず、定量スコアだけで判断してしまう
まずはアンケートの自由記述の分析に対するよくある課題を見ていきます。アンケートを定常的に取っている企業なら思い当たる部分があるのではないでしょうか。1. 集めているが、自由記述が読まれていない
毎月数百件のアンケートが集まる。けれど平均点やNPSを報告するところで終わり、自由記述は見返されないまま次の回を迎える。集めること自体が目的化してしまいがちです。2. 良い声と悪い声の仕分けが手作業になる
ポジティブな意見かネガティブな意見かの判別は、アンケートを1件ずつ読むしかなく、件数が多くなるほど集計や傾向分析には時間がかかります。3. 自由記述に改善のヒントがあるのに、活かせない
自由記述には「どこをどう直せばよいか」のヒントが書かれています。ただしそこを読み解いて打ち手に落とし込むまでは手が回らず、改善の議論は、担当者の実感ベースで進みがちです。その感覚は当たっていることも多いのですが、裏づけとなる声が拾いきれていないと、改善の中身も感覚的なものになりがちです。4. 部署ごとにアンケートがバラバラで、横串の分析ができない
営業、サポート、店舗がそれぞれ独自にアンケートを取っていて、全社の傾向が見えない。同じ不満が複数の窓口に届いていても、誰も気づけません。
そして、特に影響が大きいのが静かに離れていく顧客の予兆を拾えないことです。大きなクレームは目立つので対応されます。
一方、見逃しやすいのは満足度の評価は5段階中4など決して悪くないのに、「ここは少し気になった」と引っ掛かりが自由記述には書かれている、というケースです。スコアだけみていると、こうした声は「満足している回答」として判断してしまい、スコアが下がってから動くことになり、対策は遅れてしまいます。
具体例で見るkintone×AIの実現方法
ここからは段階的に見ていきます。以下は美容サロンが顧客アンケートを集めている想定ですが、考え方はどの業種業務でも同じです。ステップ1:kintone AIで傾向をつかむ
kintone AIの「レコード一覧分析AI」を使えば、その場で質問を投げかけることで、溜まったアンケート回答を元に、AIが分析・要約を行ってくれます。
※ kintone AIを利用するための条件はこちらをご確認ください。なお、kintone AIの利用にはシステム管理者による有効化が必要です。
たとえば「どんな声が多く寄せられているか、傾向を3〜5つにまとめて教えてください」と聞いてみます。
一覧画面から「レコードを分析」を選び、質問を入力すると、AIが全40件の回答を読んで傾向を整理してくれる
料金・費用に関する説明不足、予約時間・施術時間に関するトラブル、仕上がりのクオリティへの不安。といった形で、40件の回答が数個のテーマに整理されました。それぞれに該当するレコード番号も示されるため、気になったテーマの元の声をその場で確認できます。まず現状を把握するには、これでも十分です。
ただし、分析結果はkintoneに残らないため、知りたいことがあるたびに質問をする必要があります。
ステップ2:AIの判定結果をkintoneに残す
株式会社コムデックが提供する「コムデック 生成AI for kintone」を活用することで、「分類軸で貯めて、継続的に追える仕組み」ができます。
1回答ごとに感情傾向・カテゴリ・抽出課題・対応優先度をAIが自動で判定し、その結果をkintoneの各フィールドに書き込みます。レコードの詳細画面では、お客様が書いた自由記述のすぐ下に、AIの判定結果が入った状態で表示されるので、全文に目を通さずとも、その回答が何についての、どんなトーンの声なのかがひと目でつかめます。
アンケート回答の内容をもとにAIが解析を行い、「カテゴリ」「対応優先度」「感情傾向」「抽出課題」が自動で格納される
上の例では、NPSスコアは7と決して低くありません。文面も「担当の中村さんはいつも丁寧で」と好意的に始まります。しかしAIは、土曜午前の受付混雑と長い待ち時間が繰り返し発生していることを読み取り、感情傾向を「ネガティブ」、対応優先度を「高」と判定しています。スコアだけを見ていたら見逃していた声です。
この判定結果がkintoneに保存されているからこそ、一覧画面での絞り込み・並べ替えが可能になります。
AIが付与した感情傾向・対応優先度・カテゴリで絞り込みやソートができるため、数百件の中から「今見るべき声」だけを抽出できる
「感情傾向=ネガティブ」「対応優先度=高」で絞り込み、カテゴリごとに並べれば、待ち時間の指摘が何件、接客が何件、と件数で語れます。「最近こういう声が多い気がする」という体感が、根拠のある報告に変わるのです。
なお、表示している項目(感情・カテゴリ・課題・優先度)はあくまで一例です。何を判定させ、どんなカテゴリで振り分けるかは、自社に合わせて変更できます。
AIに何をどう判定させるのか
「コムデック 生成AI for kintone」で分析するために必要な設定は、おおよそ次の4つです。
- 分析対象の指定:どのアプリの、どのフィールドを分析するか
- 分類軸・カテゴリの定義:どんなカテゴリに分類したいか(例:価格/接客/品質/納期 など)
- AIへの指示(プロンプト):感情の判定基準や、抽出したい観点を文章で指定
- 出力先フィールドの指定:判定結果をどのフィールドに書き戻すか
参照するアプリとフィールドを指定し、自社にあわせた分類軸やカテゴリの定義をプロンプトとして記述する
画面下部のプロンプト欄が、この仕組みで特に重要です。上の例では「カテゴリは価格・接客・品質・待ち時間・清潔感・その他の6択」「優先度は高・中・低で、判定基準はこう」といったルールを文章で定義しています。
続いて、判定結果の書き戻し先を指定します。
AIの判定結果をどのフィールドに格納するか、どのような出力ルールとするかを設定する
ステップ3:分析結果を対応と効果検証につなぐ
判定結果がkintoneに保存されているので、「対応状況」「担当者」「対応期限」等の項目を追加し、kintoneのプロセス管理と組み合わせれば、「未対応→対応中→完了」のステータス管理まで同じアプリ上で完結します。
分析からアクション、その追跡までが一本の線でつながるのが、結果をkintoneに残す最大のメリットです。
さらに、施策を打ったあとに取り直したアンケートを同じ基盤に貯めていけば、「該当カテゴリのネガティブな声は減ったか」という効果検証にも使えます。
まずはここから:完璧を目指す前に「残す・決める・集める」
まず持っておきたいのは「完璧な分析をいきなり目指さない」というマインドセットです。そのうえで着手すべきは、次の3つです。- 残す:自由記述を必ず1つのフィールドにテキストで残す設計にする
選択肢だけで完結させず、自由に書ける欄を1つ用意する。この欄のテキストが、AI分析の元データになります。 - 決める:社内で見たい分類軸を3〜5個に絞って言語化する
価格/接客/品質/待ち時間、といった粒度で十分です。運用しながら育てられるので、初期は粗くて構いません。 - 集める:すでにある回答をkintoneに集約する
Excel/CSVに散在しているデータやフォームサービスに溜まったままの回答を、1レコード=1回答の形で集めます。
つまずきやすいポイント
最初はやらない方がよいこともあります。- いきなり細かすぎる分類軸を設定する(20個以上など):振り分けがブレやすく、集計しても傾向が見えません。
- AIの判定を100%鵜呑みにして即意思決定に使う:序盤は結果を人が軽くレビューし、ズレを見つけたらプロンプトを調整する運用を挟むと精度が安定します。
- 複数部署のアンケートを一気に統合しようとする:まずは1つの窓口・1種類のアンケートで小さく回し、成功パターンを作ってから広げるのが早道です。
体制も補足します。必要な役割は、①どんな観点で分類したいかを決める人(顧客対応や企画の担当者)と、②kintoneのアプリ設定・AI設定を触る人の2つで、小規模な企業では1人が兼ねているケースも多くあります。AI設定は最初に一度決めれば以降は自動で動くため、日常的には分析結果を見て改善を判断する担当が1人いれば運用は回ります。
自由記述は、お客様が時間を割いて書いてくれた改善のヒントです。AIに判定を任せてその結果をkintoneに残していけば、読み切れなかった声が「優先度つきの改善リスト」に変わり、改善とその効果検証までを同じ場所で追えるようになります。まずは自由記述を1つのフィールドに残し、見たい分類軸を決めるところから始めてみてください。
よくある質問
Q1. アンケートの自由記述をAIで分析するには、事前にどんな形でデータを揃えておく必要がありますか?
特別な整形は不要です。kintoneで1レコード=1回答で、自由記述が1つのテキストフィールドに入っていれば分析にかけられます。きれいに書き直された文章である必要はなく、顧客が書いたままの生のテキストで問題ありません。今ある回答データをそのまま取り込むところから始められます。Q2. 感情分析やカテゴリ分類の「精度」はどのくらい信頼できますか?人の確認は必要ですか?
「良い評価か悪い評価か」「どんなテーマの声か」といった分かりやすい内容であれば、AIはかなり正確に判定できます。ただし、遠回しな言い方や業界特有の言葉づかいは間違えることもあります。始めたばかりの時期は人が結果にざっと目を通し、ズレていたらAIへの指示を直す進め方がおすすめです。慣れてくれば大部分はAIに任せ、重要な声だけ人が確認する形に移していけます。この時期はAIを「人が全部読む前のふるい分け」として使うイメージです。そして判定が安定してきたら、分類はたい部分AIに任せ、AIが「ネガティブ・優先度高」と判定した重要な声だけ確認する形に移していけます。
Q3. 分析を続けるうちに、自社に合った精度に育てていくことはできますか?
できます。AIの判定に人が修正を加えていくと、その積み重ねをもとにプロンプトを調整でき、自社特有の言い回しや分類のクセに合わせて精度を育てていけます。「対応済み」の記録や改善後のアンケート結果を同じ基盤に貯めれば、施策の効果検証にもつながります。最初から完璧を狙うのではなく、運用しながら自社仕様に寄せていきましょう。Q4. AIが出した「改善の優先度」は、何をもとに決めているのですか?
多いのは、「対応した方がよい内容か(不満や困りごとが書かれているか)」と「同じ指摘が繰り返し出ているか」の2つをもとに順位づけする方法です。前者は回答1件ごとの分析で判定し、後者はレコード横断の分析で、同じ指摘が全体で何件挙がっているかをチェックします。この仕組みによって、単発の目立つ声よりも、対応が必要かつ繰り返し挙がっている声が上位に来ます。レコード横断の分析は、1件ごとの判定とは別のAI設定として追加します。期間などを指定してアンケートアプリの複数レコードを参照させ、集計結果は別途用意した集計用アプリに出力する形です。
何を材料にし、どう重みづけするかは、いずれもプロンプトで調整可能です。判断基準が決まっているので優先度がブラックボックスにならず、社内でも「なぜこの声から対応するのか」を根拠を持って説明できます。
Q5. 始めるにあたって、どのくらいのアンケート件数・データ量が必要ですか?
数件でも分析自体は動きますが、傾向やカテゴリの偏りを把握するには数十件〜100件程度あると気づきが得やすくなります。「件数が少ないから意味がない」と待つより、少ない段階から貯め始めて分類軸を固めておく方が、回答が増えたときにそのまま活きます。件数が増えるほど、頻出課題や優先度の精度も上がります。監修パートナー
株式会社コムデック
代表取締役社長 生田 智之
三重県伊勢市から中小企業のAI活用を発信する「中小企業のAI活用の第一人者」。自社をテストキッチンに資料作成や営業分析、OCR入力の自動化などを推進し、数十社以上の現場で業務改善を実現。AI活用を「人を減らす」ではなく「会社の独自性を活かしながら成長させる」ことと捉え、人とAIのハイブリッド型組織の設計を強みとする。
※本記事の内容は、2026年9月時点での情報です。最新情報は各製品サイトをご確認ください。
