紙帳票の転記が終わらない──kintone×AI-OCRで「人の作業」を最終チェックだけにする進め方

紙帳票の転記が終わらない──kintone×AI-OCRで「人の作業」を最終チェックだけにする進め方

はじめに

毎日のように届く申請書、報告書、納品書、FAXの受注票。中身をkintoneや基幹システムに転記するために、現場では今日も誰かが手入力に時間を取られている─こんな状況に心当たりはありませんか。

入力した先から次の紙が積み上がり、繁忙期には処理が追いつかない。転記ミスが起きればその確認とやり直しにも時間がかかる。しかも手入力が追いつかない分は紙のまま残るため、過去の記録を探したり集計したりしようにも紙を辿るしかなく、監査や取引先からの問い合わせのたびに丸一日が消えていく。実はこれ、多くの企業が共通して直面している課題です。

この記事では、kintone × AI を使うと紙帳票まわりの仕事がどう変わるのかを、具体的にご紹介します。

結論:kintone × AI なら、紙帳票はAIがデータ化し、人は最終チェックするだけ。だから探せて・活かせる

kintone × AI なら、紙に書かれた内容をAIが読み取ってkintoneに登録するところまでを自動化でき、人はその結果を最終チェックするだけでよくなります。複数の帳票が混在していてもAIが種類を仕分け、手書きでも活字でも、多少傾いていても補正して読み取ってくれます。

kintoneにデータとして入ってしまえば、必要な帳票をすぐに検索可能、集計も簡単、後続の業務ワークフローにもそのまま流せる──このように「データを探せて・活かせる」状態に変わります。ポイントは、紙をkintoneに登録する「入口でのデータ化」と、登録された後の「データの活用」の2つです。

よくある課題:紙の申請書・報告書・伝票が現場に残り、転記と紙保管に追われる

多くの企業に共通する「あるある」な課題を整理しておきましょう。自社にも当てはまるものがないか、確認してみてください。

転記そのものが負担になり、ミスや遅れにつながる

依頼書や報告書、見積・注文書の多くはFAXで届き、問診票やアンケートはスキャナで取り込む──といったように、紙作業は今も現場に数多く残っています。実際、ある現場ではこうした帳票の手書きと活字の比率は7対3で、手書きが大半を占めるといいます。

これらを人が一枚ずつ読み取って入力していくと、どうしても転記ミスが起こります。ミスはその後の確認・修正という余計な作業を生み、繁忙期には入力が追いつかずサービス提供の遅延につながることもあります。そもそも入力できる人が限られていて、人材不足がボトルネックになっている、という声も少なくありません。

データになっていないため「探せない・振り返れない」

そもそもデータ化していなかったり、手入力が追いつかずデータになりきらなかったりする帳票が多く残ると、必要なときに過去の記録がすぐに引き出せない、という問題が顕在化します。社内では情報共有の漏れや業務の属人化、原本の紛失リスクといった形で、社外対応では顧客からの問い合わせ対応やデータ分析、外部とのやり取りといった場面で、「あの帳票はどこだ」「転記していない項目は集計できない」という事態に直面しがちです。

自力でデジタル化を試みても、途中で止まってしまう

こうした状況を前に、「それなら自分たちでなんとかしよう」と、複合機内蔵のOCRや汎用OCRを試した方も多いのではないでしょうか。ところが、手書き文字の認識精度がどうしても上がらず、結局手直しに追われてしまう。あるいは、PDF化まではできても、そこからkintoneアプリへ登録する作業がひと手間で、「スキャンはしたけれど、その先が進まない」まま止まってしまう。そんな声もよく聞かれます。

紙の入口が残り、過去帳票は探せず、自力のデジタル化も途中で止まる──多くの企業が、こうしたところで足踏みしているのが実情です。

具体例で見る kintone × AI の実現方法

ここからは、kintone × AI で紙帳票まわりの業務がどう変わるのかを、具体的に見ていきます。まず前半で、紙をkintoneにデータとして取り込む「入口でのデータ化」を。続いて後半で、取り込んだデータを活かす「データの活用」を、それぞれ実際の画面とともに紹介します。

紙の帳票をデータ化する

株式会社バーズ情報科学研究所が提供するかんたんAI入力サービス「mojula for kintone」を活用することで、帳票の読み取りから仕分け、補正入力、kintoneアプリへの出力まで行うことができます。

STEP1:帳票を添付し、AI-OCRで読み取る

まずは、読み取りたい帳票を、画像やPDFとして kintone のレコードに取り込みます。同社が提供する「FAX+kintone」と組み合わせることで、専用のFAX番号で受信した帳票が、そのままイメージファイルとして kintone のレコードに自動登録されるため、届いた紙をスキャンし直す手間がありません。このほか、複合機やスキャナで読み取ったPDFを、手動でレコードに登録する方法もあります。
添付ファイルフィールドに帳票を追加

添付ファイルフィールドに、読み取りたい帳票を追加する。

帳票を添付したら、レコード一覧の「AI OCR」欄にある実行ボタンを押すと、読み取りが始まります。複数の帳票をまとめて読み取りたい場合は、「AI OCR 一括実行」も使えます。
AI-OCR実行ボタン

添付した帳票に対して、AI OCRの「実行」ボタンを押すと読み取りが始まる。

現場には種類の異なる帳票が混在していますが、mojula for kintone では、事前に帳票テンプレートを登録しておくことで、AIが帳票の種類を自動で仕分けたうえで帳票の傾きや反転を自動で検知し、正しい向きに補正して読み取ります。帳票の種類ごとに、どの位置のどの項目を読み取るかをあらかじめ定義しておけるため、種類が混ざっていても、それぞれに合った読み取りができます。実際に十数種類の帳票を自動仕分けしてデータ化している企業もあります。 一方で、取引先ごとにフォーマットが不特定な帳票や、明細行が都度増減したり改ページしたりする変動フォーマットの帳票は、基本的には対応ができません。

STEP2:読み取った結果を補正する

AI-OCRの読み取り結果は、そのまま登録することも可能ですが、人が確認・補正してから確定させることもできます。読み取り結果のリンクから補正画面に移動すると、編集画面の項目が、元の帳票の項目の並び方に合わせて配列されています。さらに、編集画面の項目フィールドにカーソルを合わせると、隣に表示された帳票イメージの対象エリアに自動でフォーカスが当たります。これにより、「今どの項目を直しているのか」を項目単位だけでなく、帳票全体の中での位置として把握できます
帳票イメージと編集画面が左右に並んだ補正画面

mojula for kintone の補正画面。左に元の帳票イメージ、右に補正・追記する項目が、帳票と同じ並びで配置される。カーソルを合わせた項目(単価500)が、左の帳票イメージ上でもハイライトされる。

紙とデータを見比べながら、おかしいところだけを直していけばよいので、最終チェックがストレスになりにくい設計になっています。

STEP3:補正した内容を登録先のkintoneアプリに書き出す

補正が済んだら、「アプリ連携」ボタンを押すと、読み取った項目が、あらかじめ連携設定しておいた登録先のkintoneアプリにレコード追加されます。
アプリ連携で書き出し

読み取り・補正が完了したレコードで「連携」ボタンを押すと、登録先アプリへ書き出される。

連携先アプリにデータが追加

連携先の注文書アプリに、読み取った内容がデータとして追加された状態。

書き出した先のアプリを見ると、注文日・会社名・電話番号・金額・明細といった項目が、テキストデータとして1レコードに登録されています。手作業での転記は発生しません。 ここまでが一連の流れです。帳票を添付してから、人が行うのは最終チェックだけになり、転記作業を無くすことができます。 また、kintoneにデータが溜まることで、そのまま後続の申請・承認などの業務フローを進めることができます。

データ化した帳票データを kintone AI で活かす

帳票を画像のまま添付しただけでは検索も集計もできませんが、中身がテキストデータになっていれば、kintone AI を活用して検索や分析に役立てられます。kintone に蓄積されたデータをそのまま扱えるため、データ化した帳票データもすぐに活用できます。ここでは代表的な2つの使い方を紹介します。
※ kintone AIを利用するための条件はこちらをご確認ください。なお、kintone AIの利用にはシステム管理者による有効化が必要です。

探す:検索AIで、ほしいデータを言葉で見つける

検索AI」を使うと、複数のアプリをまたいで、対話形式でデータを検索できます。たとえば「文具のまるい からの注文を出して」と入力すると、その取引先の注文履歴が返ってきます。どのアプリのどの項目に入っているかを指定する必要はなく、受注日・担当者・受注経路といった条件も言葉で指定できます。
検索AIの画面

検索AIの画面。質問に対し、AIがアプリのデータから回答を生成し、関連レコードへのリンクも添えて示す。

まとめる・気づく:レコード一覧分析AIで、たまったデータの傾向を読み取る

レコード一覧分析AI」を使うと、一覧に表示されているレコードをもとに、要約や傾向分析ができます。例えば「よく注文されている品番の傾向を要約して」と指示すると、品番別の注文回数・合計数量・合計金額がランキングで整理され、あわせて「どの色系統に需要が集まっているか」といった傾向がまとめられます。一件ずつ集計しなくても、たまったデータから示唆を得られます。
レコード一覧分析AIの画面

レコード一覧分析AIの画面。アプリの一覧画面の右側にAIパネルが開き、品番別のランキングや人気の品番、需要が集まっている色系統が箇条書きでまとめられている。

このように、紙の処理に追われていた業務が、入口でのデータ化から活用まで一つの流れでつながります

まずはここから

「目的」と「現物の流れ」を先に決める

最も大切なのは「業務の本質」を先に明確にしてから手段を考えることです。具体的には、読み取り対象の帳票について、データ化の目的は何か、現物(紙)が誰にどう配布され、どう回収され、どうPDF化されてkintoneに取り込まれるのか、その過程で担当者がどう動くのか──こうした流れを整理しておくことです。

逆に避けたほうがよいのは、「とりあえず全項目をデータ化して、それから考える」 という進め方です。目的が定まらないまま手を広げると、運用が複雑になり、かえって続かなくなってしまいます。まずは目的と現物の流れを固める。そこさえ押さえておけば、最初の一歩は決して難しくありません。あわせて、帳票の種類数や月間の処理枚数、帳票のフォーマット、導入後の運用フローといった点も整理できていると、その後の検討がよりスムーズに進みます。とはいえ、すべてを自社だけで抱え込む必要はありません。まずは気軽にパートナーへ相談してみることをおすすめします。

よくある質問

Q. 費用はどのような体系ですか?読み取り枚数が少なくても費用対効果は見合いますか?

費用対効果の目安として、おおよそ「20項目/帳票 × 250枚/月」程度を下回る規模であれば、導入はおすすめしていません。逆に、これを超える転記業務がある場合は検討する価値があります。具体的な金額は料金表をご確認のうえ、料金シミュレーションも可能ですので、お問い合わせください。料金表はこちらの価格欄をご確認ください。

Q. 過去に紙のまま保管している帳票も、遡ってまとめてデータ化できますか?

定型帳票であることが前提になりますが、可能です。複合機などで大量の帳票(申請書類など)を一括スキャンし、1ページ1レコードでkintoneに登録したうえで mojula for kintone で読み取りを行った事例もあります。

Q. 帳票画像や読み取りデータの保存先・セキュリティはどうなっていますか?

mojula for kintone では、帳票画像や読み取りデータの保存基盤として Microsoft Azure を採用しており、高い可用性と信頼性のある環境でデータを管理しています。データは保存時・通信時の双方で暗号化され、不正アクセスを防ぐための各種対策が講じられています。アクセス権限の制御や監査ログの仕組みもあり、データへのアクセス状況を適切に管理できます。なお、AI-OCRエンジンとしてAI inside 社の DX Suite を利用しており、DX Suiteはお客様による個別契約となるため、そのセキュリティ対策については DX Suite 側の情報をご確認ください。

Q. 帳票のフォーマットが変わったとき、読み取り定義の修正は自社でできますか?IT専任者がいなくても運用を続けられますか?

日々の運用は、すでにkintoneを使っている企業であれば現場部門だけで進められます。初期設定(プラグイン導入の支援や、読み取る帳票の定義)はバーズ情報科学研究所が行うため、IT専任者がいなくても運用を始められます。ただし、帳票フォーマットが変わった場合の読み取り定義の修正は、システム固有の設定変更を伴うため、基本的には同社の技術者による対応が前提となります。様式変更が起きたら相談する、という運用イメージです。

監修パートナー

佐藤 潤

株式会社バーズ情報科学研究所 営業部 kintoneサービス担当

佐藤 潤

FAX・OCRのBPOやSI事業で培った実績を背景に、kintoneビジネス12年、AI-OCR連携5年。企画から営業・サポートまで一貫して担い、現場課題の発見と解決を支援しています。

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※本記事の内容は、2026年7月時点の情報です。最新情報は各製品サイトをご確認ください。