kintone×AIで始める失注分析 ──「感覚の営業会議」を"勝ち筋が見える"会議に変える
はじめに
「最近、A社によく負けている気がする」─ 失注理由や競合の情報は、kintoneのレコードに確かに残っている。それでも振り返りは感覚的な議論で終わり、「どの競合に・どんな理由で負けているか」を把握できないまま、次の商談でまた同じ負け方をしてしまう。こんな経験はありませんか。
この記事では、kintoneに蓄積された失注データを、kintone×AIでどこまで分析できるのか、そして分析結果を次の商談や営業会議にどう活かせるのかを、実際の操作画面とともに具体的にご紹介します。
目次
1. kintone×AIが、失注データを競合別・要因別に分析し「敗因理由と対策案」まで自動でまとめる
2. 四半期に一度の会議で"感覚"で振り返る失注分析
3. 具体例で見る kintone×AI の実現方法
4. まずはここから
5. よくある質問
kintone×AIが、失注データを競合別・要因別に分析し「敗因理由と対策案」まで自動でまとめる
kintone×AIを活用することで、これまで感覚で議論していた失注の振り返りが大きく変わります。数十〜数百件の失注データをAIが横断し、競合別・要因別に敗因理由と対策案を自動で整理。営業会議は「資料の説明」から「データを見ながらの議論」へと変わり、勝ちパターン・負けパターンが個人の経験則ではなく組織の資産として蓄積されていきます。
そのためにやるべきことは、商談の内容と、受注/失注区分をデータとして残す─ この2点だけです。これさえ残っていれば、あとはkintone×AIが分析の大部分を引き受けてくれます。
失注の中身をきちんと分析できるようになれば、次の営業会議では「たぶんA社に負けている」ではなく「A社との失注12件中7件が価格要因」と、数字で語れるようになります。
四半期に一度の会議で"感覚"で振り返る失注分析
失注分析でつまずく企業によくあるのが、次の4つの状況です。① 失注理由が「価格」「他社検討」の一言で終わっている
自由記述欄はあっても、営業担当は忙しさの中で最小限しか書けません。後から見返しても「結局、何があったのか」が分からない状態になりがちです。② 競合の話が「感覚」でしか語られない
「最近A社によく負けている気がする」とは言えても、「何件・いくら負けているのか」を数字で示せる人はおらず、会議は印象論のまま終わります。③ 失注案件が「記録されているだけ」で振り返られない
kintoneに失注理由が残っていても、誰かが手作業で集計しない限り見返されません。前回の負けパターンが担当者の頭の中にしかなければ、次に同じ競合が出てきても活かされず、また同じ負け方をしてしまいます。④「競合がいない失注」が一番多いのに、一番振り返られていない
検討中止や稟議が通らなかった失注は、「先方都合」の一言で処理されがちです。ところが件数としては最も多いケースであることも珍しくありません。「競合との勝ち負け」という切り口だけで振り返ると、この一番多い失注群がまるごと分析対象から外れてしまいます。こうした状況を放置すると、単に「振り返りができない」だけではなく、営業活動そのものに不利益が生まれていきます。ひとつは、対策が「打てない」のではなく「打つべき対象が分からない」まま放置されること。典型が値引きの常態化です。「価格で負けた」という報告が続くと一律の値引きに流れがちですが、記録を分析すると真因は提案タイミングの遅れや機能理解不足だった、というケースは少なくありません。この場合、値引きは利益率を下げるだけで勝率改善につながりません。
もうひとつは、「勝てる攻め方」がベテラン個人の経験則にとどまること。言語化・共有されないため、若手や他拠点は同じ競合に毎回手探りで臨むことになり、ベテランの異動・退職とともに勝ちパターンごと失われてしまいます。
具体例で見る kintone×AI の実現方法
kintone AIで、アプリに蓄積された失注傾向をその場で要約する
kintoneには、AI機能「kintone AI」が用意されています。kintone AI の「レコード一覧分析AI」を活用することで「表示中の一覧の分析」を行うことができます。一覧に表示されている失注レコードを対象に、「この一覧の失注理由の傾向を教えて」と投げかけると、AIがその場で要因を分類し、傾向を要約してくれます。※ kintone AIを利用するための条件はこちらをご確認ください。なお、kintone AIの利用にはシステム管理者による有効化が必要です。
レコード一覧分析AIの画面。表示中の失注一覧について、失注理由の傾向がその場で要約されている。
その先----分析結果をレコードに残し、横断・自動化する
一方で、「一覧に表示されているだけでなく、複数のアプリ・大量のレコードを横断して競合別に集約したい」「毎回同じ観点で、担当者を問わず再現したい」----こうした一歩踏み込んだ使い方になると、kintone AIだけでは難しくなります。 ここで活躍するのが、M-SOLUTIONS株式会社が提供する「Smart at AI for kintone Powered by GPT(以下、Smart at AI)」です。Smart at AIを使うと、複数のアプリ・大量のレコードを横断した分析が行えます。さらに、分析の観点はあらかじめ設定として組み込めるので、いつ誰が分析をしても、同じ基準で失注分析が行えるようになります。やることは、大きく次の3ステップだけです。
① 商談記録・受注/失注区分を入力する:失注が確定したら、いつものようにレコードに記録を残します。それぞれのステップを、実際の画面で追ってみましょう。
② ボタンを押して、AIに失注理由を判定させる:一覧で対象を絞り込み、ボタンを1回押すだけ。あとはAIが1件ずつ商談記録を読み取り、失注要因のタグを付けてくれます。
③ 全体をまとめて、レポートを確認する:タグ付けした失注をまとめて分析すると、競合別・要因別に整理された敗因理由と対策案のレポートが出力されるので、あとはそれを確認するだけです。
Step 1|商談記録・受注/失注区分・金額を入力する
失注が確定したら、営業担当が「商談/失注アプリ」のレコードに商談記録(メモ、またはWeb会議の文字起こしの貼り付け)と、受注/失注区分・金額を入力します。自由記述で構いません(例:「A社が機能面で優位、特に○○連携で見劣りした」)。Step 2|ボタンを押して、AIに失注理由を判定・タグ付けさせる
一覧で対象期間の失注レコードを絞り込み、ボタンを1回押します。操作はこれだけです。あとはAIが絞り込んだレコードを1件ずつ読み取り、失注要因のタグを自動で判定して書き込んでくれます。
タグ付け後のレコード一覧。「要因タグ判定理由(AI)」列に、AIが判定した各レコードの失注要因が書き込まれている。
要因タグ判定結果のレコード詳細。判定した要因タグと、その根拠となった商談記録の引用がセットで保存される。
要因タグ付けプロンプトの設定画面。生成モデル・結果保存先・判定に使う項目を指定。
Step 3|集約された「敗因理由・対策案」のレポートを確認する
タグ付けで自由記述が"構造化されたデータ"に変わったら、次は全体をまとめて分析します。AIが失注レコードを参照し、競合名がある案件は競合別に、無い案件は要因タグ別に、敗因・自社が勝てたケースとの違い・対策案を整理してくれます。分析結果は専用の「失注分析レポート」アプリにレコードとして追加されるので、あとはその結果を確認するだけです。どうまとめるかはあらかじめプロンプトとして設定しておけるので、毎回設計し直す必要はありません。
まとめて分析するプロンプトの設定画面。「①競合別の敗因トップ3 ②競合名がない案件は要因タグ別 ③勝てたケースとの違い ④対策案」を出力するよう指示している。
これにより、数値の集計からビジュアル化までを一気通貫で任せられます。下の画面は、商談データから生成されたサマリーです。数字の羅列ではなく、競合別の敗因理由・件数比率・対策案が一望できるため、会議で画面を見ながら議論する際の理解が格段に早くなります。
分析レポートのレコード詳細。分析結果テキストとグラフ画像が同一レコードに保存され、そのまま会議で見られる状態になっている。
AIが自動生成した「失注・競合分析レポート」。商談データから、競合別の敗因トップ3・件数比率・対策案までを1枚に整理している(実際の生成結果)。
感覚の議論から、データにもとづく作戦会議へ
ここまでの3ステップでできあがった分析レポートは、そのまま営業会議で活躍します。アプリの画面を会議のモニターに映し、敗因・件数比率を見ながら「なぜこの数字になっているのか」「対策はどうするか」をその場で深掘りする。会議自体が「資料の説明」から「データを見ながらの議論」へと変わります。さらに、この分析は一度で終わりません。Smart at AIの「エージェント実行」機能を使えば四半期末などに自動実行でき、対策後の敗因比率を前四半期と比較させれば、「対策で特定の敗因が減ったか」の効果検証までAIに任せられます。四半期ごとに回り続ける仕組みとして設計できるのです。
まずはここから
AIが分析できる失注データを整える
着手前に整えるべき必須データは、次の3点だけです。①商談記録:自由記述、または録画・音声の文字起こしで可。「何が決め手だったか」が一言でも具体的に書かれていることが重要。競合名は「あれば活用する」程度で十分です。競合名をあらかじめ項目として持っておけば、集計は速くなりますが、無くても商談記録に社名があればAIが抽出し、「A社」「A社さん」といった表記ゆれも名寄せします。 ポイントは「1商談=1レコード」で、商談記録と受注/失注区分がセットで残っていること。すでにkintoneで商談管理をしていれば、大掛かりなデータ整備は不要でスタートできます。最近はWeb会議の録画をAI議事録ツールで自動文字起こしし、そのまま商談記録として残す運用も増えており、この場合は入力負荷をほぼゼロにできます。
②受注/失注区分
③金額
明日からできる第一歩:完璧な項目設計より「まず選択肢で揃える」
ツールを入れる前に、次の3つを意識しておくとつまずきにくくなります。①「商談記録・受注/失注区分を必ず残す」ルールを先に徹底する。入力データが無ければ分析対象そのものがありません。
②記述を厳しく縛らず、「事実を1つ足す」ことだけをお願いする。金額感・時期・相手の反応など、具体的な事実を1つでも書き足してもらう。フォーマットを厳格にしすぎると、現場が入力を面倒に感じて記録量そのものが減ります。
③完璧な体系化を最初から狙わない。分類軸を作り込みすぎると着手が遅れます。まずは大まかな選択肢から始め、実データを見ながら育てる前提を持っておく。
進め方のコツは、いきなり全期間のデータを投入せず、直近の失注から小さく始めること。古い案件まで一度に含めるとタグの精度が下がり、結果への信頼を損ないかねません。まずは傾向をつかむことを目的に分析レポートを一度会議で見せ、現場の反応を見ながら育てていく。その一歩の積み重ねが、「感覚の営業会議」を「勝ち筋が見える会議」へと変えていきます。
よくある質問
Q1. 失注理由が自由記述でバラバラでも分析できますか?
A. 分析できます。自由記述でも、AIが文脈からタグ(価格/機能・スペック 等)を推定して分類します。ただし「他社検討」「価格」といった一言だけでは十分な文脈を読み取れません。「何が決め手で負けたのか」が一言でも具体的に書かれていれば精度は大きく上がります。読み取れる材料が無いレコードは無理に分類せず「情報不足・要確認」タグに振り分けられ、それを集計すると「どのチームの記録が薄いか」も見えるため、分析基盤の導入自体が記録改善のきっかけにもなります。Q2. どのくらいの件数・期間がたまっていれば分析に意味が出ますか?
A. 目安は集計軸によって変わります。競合軸なら競合ごとに最低5〜10件、要因タグ軸なら全体で30〜50件程度あれば傾向として語れるようになります。期間では直近1〜2四半期分から見え始めます。失注件数が少ない企業は半年〜1年分をまとめて見るのがおすすめ。件数が少ないうちは「結論」ではなく「仮説」として扱い、貯まるにつれて確度を上げていく段階的な見方が現実的です。Q3. 失注理由は営業の主観で書かれがちですが、AIで分析して信頼できますか?
A. 信頼できます。ポイントは、失注理由を「事実」と「主観(仮説)」に分けて扱う設計にすること。自由記述に明記された条件は「事実」、そこから読み取れる傾向は「仮説」として切り分けて出力させることで、主観を鵜呑みにせず事実を中心に傾向を組み立てられます。加えて、1件1件は主観が混ざっていても、数十件を横断すれば個人の思い込みは薄まり、繰り返し現れる要因だけが傾向として残ります。Q4. AIが出した敗因や対策案を、現場にどう納得感を持って共有すればよいですか?
A. 「AIが出した結論」ではなく、「データから見えた事実と、そこから導かれた仮説」として提示するのがコツです。「なんとなくA社に負けている」ではなく「直近2四半期でA社との失注12件中7件が価格要因」という数字が添わるだけで、議論の質が変わります。対策案は「断定」ではなく「たたき台」として共有し、ベテランの意見で肉付けする進め方にすると、納得感と当事者意識の両方が得られます。Q5. 分析結果を、次の商談や日々の営業活動にどう活かせばよいですか?
A. 最も分かりやすいのは、同じ競合が想定される商談の準備に組み込むこと。商談前に過去の分析レポートを確認し、傾向を踏まえて提案書やトークを準備するルーティンにすれば、分析が振り返りだけで終わりません。競合が特定できないケースでは、上位の失注要因そのものを準備に反映します(例:「社内決裁で止まる」が上位なら、商談中盤で稟議支援資料を先回りして提示する)。日常でも「この業種・規模で過去にどんな受注/失注があったか」をその場に検索させる使い方もできます。監修パートナー
M-SOLUTIONS株式会社
代表取締役社長CEO 植草 学
M-SOLUTIONSは、長年のSI技術と豊富なkintone開発実績を基盤に、kintone×AI連携サービス「Smart at AI」を展開。1,500件以上に利用されるサービスとして、安全かつ実践的なAI活用で、業務効率化とDX推進を支援しています。
※本記事の内容は、2026年7月時点での情報です。最新情報は各製品サイトをご確認ください。
