退職届が出てからでは遅い ── kintone×AIで人事データを「離職予測」に変える方法

退職届が出てからでは遅い ── kintone×AIで人事データを「離職予測」に変える方法

はじめに

「あの人が辞めるなんて思わなかった」優秀な社員から退職を切り出され、慌てて引き止めにかかったものの、すでに本人の気持ちは固まっていた。そんな経験はありませんか。

勤怠、評価、研修、日報、1on1の記録──社員の状態を示すデータは、実はすでに社内にたくさんあります。ところがそれらは部署や担当者ごとにバラバラに管理され、「変化の兆候」として日常的に観察できていないのが多くの企業の実情です。気づいたときには手遅れ、という後手の対応が繰り返されてしまいます。

この記事では、kintoneに人事データを集約し、AIで離職リスクの高い社員を早期に見つけ出す方法をご紹介します。

目次

1. kintone×AIで、離職の「兆候」が見えるようになる
2. 人事データが分散し、"後手の引き止め"に陥ってしまう
3. 具体例で見る kintone×AI の実現方法
4. 予測の前にやっておく「データの置き場所と評価基準」の整理
5. よくある質問
6. AIは人の判断を助ける"補助輪"

1. kintone×AIで、離職の「兆候」が見えるようになる

離職予測というと難しく聞こえますが、やることはシンプルです。社内に散らばった人事データをkintoneに集約し、AIで横断的に分析する。それだけで、これまで「なんとなく元気がない」で流れていた社員の変化が、具体的な"兆候"として見えるようになります

kintone×AIは、社員一人ひとりの状態を多面的に見える化し、変化にいち早く気づくための仕組みとして使えます。これまで担当者の印象や記憶に頼っていた「気になる社員」の把握を、データにもとづいて、しかも継続的に行えるようになる。人が一人ひとりの記録を追いきれない部分を、AIが下支えしてくれることで、担当者の勘ではなくデータにもとづいた根拠とともに前に進められるようになります。

ポイントは、"いま調べて終わり"にせず、変化を継続して追い続けられることです。離職予測は、退職の申し出があってから慌てて動くテーマではなく、日頃から変化を捉え続けることにこそ価値があります。

2. 人事データが分散し、"後手の引き止め"に陥ってしまう

「退職の申し出があってから慌てて動く」----これは特定の業界に限った話ではなく、規模や業種を問わず多くの組織で起きている、いわば"あるある"の課題です。なぜ、後手に回ってしまうのでしょうか。

兆候は出ているのに、「なんとなく元気がない」で流れてしまう

現場でよく聞くのは、上司が部下の変化に気づいた頃には、すでに本人の気持ちが固まっているというパターンです。口数が減った、日報のトーンが変わった----こうしたサインは、実はかなり早い段階から出ています。ところがそれらはデータとして拾われず、「なんとなく元気がないな」という漠然とした印象のまま流れてしまうのです。
もう一つのつまずきが、「辞めそうな人はなんとなく分かっても、誰から声をかけるべきか優先順位がつけられない」というものです。結果として、退職の申し出から慌てて対応する後手の状態に陥り、引き継ぎや採用の負担まで一気に増えていきます。

データが分散していると、「評価と行動の乖離」が見えない

背景にあるのが、人事データの分散です。勤怠は勤怠システム、評価は表計算ソフト、日報は別のツール----このようにバラバラだと、一人の社員を多面的に・時系列で見ることができません。
たとえば「評価は高いのに、最近の1on1では表情が沈んでいる」「研修には出ているが、日報のトーンが下がっている」。こうした"評価と行動の乖離"こそ見逃したくない兆候ですが、データが分かれているとその組み合わせが見えてこないのです。
その結果、判断は各部門の担当者の記憶や主観に依存し、見るポイントも人によってバラつきます。裏を返せば、データの一元化は単なる効率化ではなく、社員を見る視点を組織でそろえる取り組みでもあります。公正な評価やよい組織づくりの土台になるのです。

3. 具体例で見る kintone×AI の実現方法

kintone AIなら、気になる社員の記録を横断してサッと確認できる

kintoneの「検索AI」を活用することで、「探している情報に関連の深い記録をピンポイントで見つけ出し、要約する」ことができます。人事のように日報・1on1・評価と情報が複数アプリに分かれていても、アプリを横断して関連する記録を拾い、要点をまとめてくれます。
※ kintone AIを利用するための条件はこちらをご確認ください。なお、kintone AIの利用にはシステム管理者による有効化が必要です。

たとえば、気になる社員について、その人の記録をまとめて確認する使い方です。日報も1on1も評価も、いちいちアプリを開いて一件ずつ読む必要はありません。名前を挙げて質問するだけで、複数アプリに散らばった記録から関連する部分を集め、要点をまとめて答えてくれます。
「佐藤 健太さんについて、日報や1on1で気になる記述はありますか?」と質問した画面

「検索AI」に質問した画面。1on1の記録から時系列の変化を読み取り、評価の推移やコメントもあわせて、気になるポイントと対応のヒントまで要約して返してくれる。

このように、「見当をつけた社員を深掘りする」「特定の記述がある記録を探す」といった、探す手がかりがはっきりしている調べものでは、kintone AIだけでも十分に活躍します。
ただし、検索AIが回答の材料にできる範囲には制約がある点は知っておくと安心です。検索の対象になるフィールドが一部の種類に限られていたり、参照されるのは関連度の高い上位数件までだったりするため、全社員を漏れなく見渡すような使い方には向きません。詳しい条件は公式ヘルプの「検索AIの利用に関する注意事項」をご確認ください。

兆候の抽出・蓄積・見守りまで踏み込む

株式会社コムデックが提供する「コムデック 生成AI for kintone」を活用することで、全社員を見渡して兆候のある人を洗い出し、その結果を蓄積して、変化を継続的に見守ることまで可能になります
具体的には、kintoneにたまった人事データをそのままAIに読み込ませ、判断させます。操作はシンプルで、分析したい対象期間を入力し、「離職予測AI」ボタンを押すだけです。すると全社員のなかから兆候のある社員だけが、危険度の高い順にレコード内へ一覧化されます。下の画面をご覧ください。
kintoneの「離職予測」アプリの画面

kintoneの「離職予測」アプリの画面。実施日と対象期間を入力して「離職予測AI」ボタンを押すと、予測結果がそのままこのレコードに保存され、「社員/部署/危険度/継続期間/主な兆候/AI所見(抽出理由)」が危険度順に一覧表示される。

この画面のポイントは2つあります。1つは、「どんな兆候が・どのくらい続いているか」が継続期間とともに示されること。たとえば「日報の所感が事実報告だけになり、感想や気づきの記述が減った」「1on1記録に『正直しんどい』『余裕がない』等の負担を示す発言」といった具体的なサインが、社員ごとに整理されます。
もう1つは、「なぜAIがその社員を抽出したのか」という理由(AI所見)まで示されること。担当者の勘ではなく、具体的な根拠とともに社員の状態が見えるため、「この人に、なぜ、いま声をかけるべきか」を納得感を持って判断できます。
そして重要なのが、この抽出結果がkintoneのレコードとしてそのまま保存されること。分析して終わりの"使い捨て"ではなく、実行するたびに結果が残っていくため、あとから経緯を振り返ったり、チームの誰もが同じ画面で状況を把握したりできます。

根拠が見えるから、抽出結果を信頼できる

兆候を読む主な材料になるのは、日報と1on1記録です。社員の言葉に表れるトーンや前向きさの機微がここに現れます。抽出の軸は「いまの状態」(負担や孤立を示す記述など)に加え、以前より下がっていないかという「変化」、その兆候が何か月続いているか、複数の兆候が重なっていないか。どのデータを使い、どんな観点を重視するかは、プロンプトで各社の実情に合わせて調整できます
抽出の観点を指定するプロンプト設定画面

抽出の観点を指定するプロンプト設定画面。参照するデータやどんな兆候を重視するかを、自社に合わせて調整。

さらに効いてくるのが、過去の人事評価を、離職の兆候を読む材料として活用できることです。評価が回を追うごとに下がってきている、伸び悩んでいる----こうした時系列の変化はそれ自体がサインですし、点数だけでなく評価面談のコメント(「成長意欲が見えにくい」など)もAIが読み取れば兆候のシグナルになります。日報・1on1に評価という別の角度が加わることで、「評価は高いのに様子が変わってきた」といった"評価と行動の乖離"にも気づけるようになります

見つけて終わりにせず、回し続けられる

離職予測は、一度調べて終わりではなく"見続けること"に価値があります。日報や1on1記録が更新されたタイミングでAIが自動で反応するよう設定しておけば、「人が見ようと思ったときだけ見る」状態から、「変化があれば仕組みが教えてくれる」状態へと変わります。
さらに、抽出された社員に「面談をしたか・どうフォローしたか・その後どうなったか」という結果もkintoneに記録していけば、抽出→対応→結果が一本の線でつながります。いつ・誰が・どんな兆候だったかが履歴として積み上がり、誰もが同じ画面で過去の経緯も含めて社員の状態を振り返れるようになります。自社ではどんなサインが本当に離職につながるのか、という知見がたまり、人材育成・定着のノウハウが会社に蓄積されていきます。

4. 予測の前にやっておく「データの置き場所と評価基準」の整理

推進者にまず持っておいてほしい認識があります。それは「AIは、人の代わりに人を選別する道具ではない」ということです。

AIはあくまで、忙しい現場で見落とされがちな社員の変化に、早く・もれなく気づくための補助にすぎません。最終的に声をかけ、向き合うのは人である----この前提を推進者がぶらさず持てるかどうかが、取り組みの成否を分けます。

そのうえで、先に整えておきたいのがデータまわりの足場づくりです。
  • 評価基準を言葉にしておく(何をもって良い/気になる状態とするかの言語化)
  • 部署ごとにバラついた項目名や表記をそろえておく(データ項目の統一)
  • 日報や面談記録などの更新頻度を決めておく
推進体制としては、経営層が「なぜやるのか」を自分の言葉で語り、人事部門が運用の主体となり、情報システム部門やパートナー企業が形にする----この三者の連携がうまくいく形です。とくに中小企業では、経営者が目的を語れるかどうかが鍵になります。

こうした準備は、AI活用の下準備であると同時に、自社のマネジメントや評価のあり方を見つめ直す作業でもあります。準備そのものが、組織を良くする一歩になります。

5. よくある質問

Q. どんなデータがあれば始められますか?まず何から集めればいいですか?

A. 完璧なデータは必要ありません。まず使いたいのは日報です。本人が言語化しにくい不満や前向きさの低下は、日々の記録のトーンの変化に比較的早く表れるためです。次に1on1などの面談記録、できればその文字起こしデータを重ねられると、変化をより捉えやすくなります。さらに人事評価や研修記録があれば、「評価は高いのに最近様子が違う」といった乖離も見えるようになり、分析を一段高度化できます。

Q. 費用や手間を考えると、離職予測のようなAIは全社員に使うものですか?

A. 汎用的なAIは幅広い業務に使えるため、本来は全社員が持っておきたい道具です。ただ、今回の離職予測という特定テーマだけを見れば、経営陣や人事部門など限られた社員での運用でも十分に成立します。また、AIの解析対象を特定の部署や勤続年数などで絞り込めば、トークン使用量(=コスト)を抑えることもできます。全員に一律で当てるのではなく、見たい対象に絞って始められるのが現実的です。

Q. 「兆候がある社員」が分かったあと、何をすればいいですか?

A. まずは上司や人事による1on1・面談で事実を確かめ、話を聴くことから始めます。AIの結果は決めつけではなく、声をかけるきっかけとして使うのがポイントです。そのうえで、業務量の調整・配置転換・キャリア面談・研修機会の提供など、要因に応じた育成・定着のアクションにつなげます。「辞めさせないための対応」ではなく「一人ひとりがいきいき働ける会社にするきっかけ」として扱うことで、離職防止だけでなく社員の成長と組織力の向上につながります。

Q. 人事データをAIに扱わせるのは、プライバシー的に大丈夫ですか?

A. 人事データはセンシティブな情報なので、「だれが・何のために見るか」を社内で明確にし、アクセス権限を適切に設定することが大前提です。kintoneはユーザーやアプリ単位で閲覧・編集権限を細かく設定できるため、見てよい人だけが見る状態をつくりやすいのが強みです。また、「コムデック 生成AI for kintone」はOpenAIのAPIを利用しており、入力された人事データがAIの学習に使われることはありません。安心してデータを預けられます。

6. AIは人の判断を助ける"補助輪"

kintone×AIによる離職予測は、社内に散らばった人事データを集約し、AIで兆候を見える化して、変化を継続的に見守る取り組みです。

大切なのは、AIを「人の代わりに人を選別する道具」にしないこと。いきなり全社員・全データを対象にした高度な予測を目指すのではなく、まずは「なぜやるのか(社員が長くいきいき働ける会社にする)」を経営と現場でそろえ、小さく始める。AIはあくまで、人が判断し声をかけるための"補助輪"です。その前提さえ外さなければ、離職予測は人材育成・定着の強い味方になります。

監修者パートナー

生田 智之

株式会社コムデック

代表取締役社長 生田 智之

kintoneと生成AIを掛け合わせた業務改善に精通し、中小企業を中心に数多くのDX・AI活用を支援。従業員評価支援の実績を応用した「コムデック 生成AI for kintone」を通じ、離職予測・タレントマネジメント領域でのデータ活用を推進している。

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※本記事の内容は、2026年7月時点での情報です。最新情報は各製品サイトをご確認ください。