ZOZO 様の導入事例

ZOZO

【業務内容】
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の運営など
【利用用途】
マルチデバイスによるワークフロー管理、契約書管理、発注管理など
  • 非IT部門主導による内製でワークフローシステムを刷新
  • kintoneで実務に即した新システムを構築し
  • 業務・意思決定の大幅な迅速化を実現!

年間購入者数973万人(2021年6月末時点)を誇るファッション通販サイト「ZOZOTOWN」などを運営し、先進的なサービス展開で社会の注目を集め続けているZOZO。積極的なIT活用でも知られる同社は、2019年8月にゼロトラストネットワークに準拠したセキュリティ強化策を整え、いち早くテレワーク環境を確立。コロナ禍でも業績を伸ばし、2021年3月期決算で過去最高の営業利益を達成している。
kintoneを導入したのは2017年。ワークフローシステムの刷新にあたり、同社はなぜkintoneを選び、非IT部門主導でいかにしてワークフローシステムの内製・活用を進めたのか? 同社経営管理本部総務部総務Aブロックの源裕子氏、および情報セキュリティ・IT統括本部コーポレートエンジニアリング部ITサービスブロックの瓦林雄介氏・高橋昭安氏にお話を伺った。

【課題】ワークフローシステムと現場のニーズの乖離が顕著に。「モバイルで利用できない」「一部業務が“紙”のまま」という課題も

ビジネス拡大により既存のワークフローシステムに起因する課題が浮上

ZOZOは長年、部署をまたいでデータにアクセスするための権限の付与を申請したり、上長に承認の押印を依頼したりといった一連のワークフローを他社の業務システムを利用して行っていた。しかし、ビジネスの急拡大にともなう業務の多様化や複雑化、働き方の変化などによって、既存のワークフローシステムは、次第に現場のニーズに合わない、使い勝手の悪いものとなっていった。経営管理本部総務部総務ブロックの源裕子氏は、その様子をこう振り返る。

当時のシステムはスマートフォンで利用することができませんでした。そのため、たとえば上長が外出中だと承認の押印をもらえず、そこで業務が滞ってしまう。『スマートフォンを使えたら便利なのに』という声は、申請側からだけでなく決裁者側からも上がっていました。また、ワークフローシステムでカバーできない領域の業務がデジタル化されずに残されていたため、いわゆる“紙文化”から脱却できないという課題もありました」(源氏)

株式会社ZOZO 経営管理本部 総務部 総務Aブロック ブロック長 源 裕子氏

モバイル対応やカスタマイズ性を評価しkintone導入を決断

周知の通り、同社は創業以来、ITを積極的に活用して成長を続けてきた企業だ。当然、ワークフローシステムを刷新するため、さまざまな製品を比較・検討した。要件は、ビジネスの変化に合わせて素早く、容易にカスタマイズできること。その背景には、急速な成長と事業拡大、さらには環境の変化に柔軟に対応するため、組織改変や人事異動が適宜行われるという、同社特有の事情があった。

しかし、各社からリリースされているワークフロー機能に特化したパッケージ型のシステムの多くは、一旦構築するとその後のカスタマイズにコストがかかる。逆に、汎用性の高いシステムには、複雑な承認経路の条件を細かく設定できないなど、ワークフローの実情に合わせるのが難しいものが多い。

社内のワークフローを再現しつつ課題を克服でき、なおかつビジネスの変化に柔軟に対応できるカスタマイズ性を有するワークフローシステム。そうした要件を満たすものとして、最終的に選定されたのがkintoneだった。

「クラウドサービスでスマートフォンから利用できるなどの仕様、カスタマイズ性、利用料金などの面で、kintoneは弊社のニーズに合うと感じ、導入を決断しました」(源氏)

【導入】実務を知る総務部主導で構築、情報システム部門の技術支援を受け、kintoneの活用範囲を拡大

実務に即したワークフローシステム構築のため、総務部主導でプロジェクトを推進

同社の情報システム領域に関する業務については、基本的に、ZOZOのサービス運用・技術開発を担うエンジニアが担当することになっている。そこで源氏は、情報システム部門のプロジェクトメンバーを交え、導入の方法について議論を尽くした。その結果打ち出したのが、総務部主導でkintoneを構築・運用するという方針だ。いうまでもなく総務部は、社内の実務全般を扱う部門としてワークフローには精通しているが、ITに詳しい人員の集団ではない。それでもあえて総務部主導を決めたのには理由があった。

やはり実務に携わっている私たちが中心となって、実際の運用を想定しながら作ったほうが、社内の実情に即した、社員にとって使いやすいワークフローシステムになると思ったからです。それはシステムの選定段階から考えていたことだったので、ITに詳しくない私たちでも感覚的に構築できそうだという点は、kintoneを選んだ大きな要因のひとつでした。実際、最初は『プラグインってなに?』という手探りの状態で、サイボウズやサイボウズのオフィシャルパートナーの方に協力していただきながらでしたが、次第に私たち自身の手で構築作業を進めていけるようになりました」(源氏)

総務部が情報システム部門と連携しつつ内製で進める方針を確立

源氏は、一部の技術的な領域に関しては、情報システム部門のエンジニアである瓦林雄介氏や高橋昭安氏らの支援も受け、ともに作業を進めていった。というのも、会社の規模拡大に伴い、社内業務はより複雑に、かつ膨大になっていく。社内業務の複雑化は、事業成長のスピードを落とす理由になりかねない。今後を考えると、社内のインフラ基盤を全社的に整備し、ワークフローシステムの一本化やデータ連携を進めていく必要がある。そうした判断から、顧客向けのシステムだけでなく、社内向けのシステムにも情報システム部門のリソースを投下する、という方針が打ち出されたのである。

「社内のエンジニアは、もともと顧客向けのシステムが主な担当でしたが、社内の方針として社内向けのシステムについても支援することになりました。ワークフローシステムを開発するにあたり、kintoneと合わせて、ワークフローに特化した機能を持つプラグインを活用する選択肢もありました。しかし、設定が複雑すぎるという課題が出てきたため、プラグインではなくkintoneの標準のプロセス管理機能を使ったほうがいいのではないか、それなら内製でできるのではないか、と提案しました。そうした経緯で、総務部は、相談窓口として社内からの要望を受け、kintoneの基本機能で解決できるものは自身で実装し、多少工夫の必要なものは私たちと相談しながら、主たる作業を内製で進める、という方針が確立されました」(瓦林氏)

株式会社ZOZO 情報セキュリティ・IT統括本部 コーポレートエンジニアリング部 ITサービスブロック ブロック長 瓦林 雄介氏

情報システム部門のリソース投下と密な部門間連携がkintone活用の追い風に

こうして総務部と情報システム部門は、kintoneを用いて共同でワークフローシステムを内製開発。社内システムにエンジニアの工数を割けない企業が多い中、そこにもしっかり投資しようという決断があったことが、kintoneの活用の追い風になったのである。

総務部が中心となって動く中で、私たちからもいろいろ提案して密に連携を取るようになり、kintoneの使い方をブラッシュアップしていきました。その結果、活用の範囲と方法がどんどん拡大し、総務部だけでなく他の部門の業務にまで広まっていったのです。kintoneの長所である発展性、拡張性をまさに実感しているところです」(高橋氏)

株式会社ZOZO 情報セキュリティ・IT統括本部 コーポレートエンジニアリング部 ITサービスブロック 高橋 昭安氏

【効果】モバイル利用、各種ツールとの連携、コメント機能活用で、業務・意思決定の大幅迅速化を実現

スマホで各種申請・承認が可能になり、業務・意思決定がスピーディに

kintoneの導入によって、従来のワークフローシステムに起因する課題は一気に解消された。中でも、スマートフォンで各種の申請・承認ができるようになったことは、業務の効率化、意思決定の迅速化につながる大きな成果だ。また、kintoneと別のコミュニケーションツールを連携させ、自分に承認の順番が回ってくるとそこに通知がくるようにしたことで、承認フローの進捗状況を視覚的に把握できるようになり、業務がさらにスピーディになったという。

「業務や意思決定のスピードが格段に速くなり、経営層からも『すごく助かる』という声が上がっています」(源氏)

▼総務部と情報システム部門が共同で開発したワークフローアプリのPC画面(画面左) スマホからの承認も可能になった(画面右)

さらに、kintoneのレコード内でやり取りできるコメント機能の活用も進んでいる。申請書の画面に残しておいたほうがいい情報、足りない情報などをコメント機能でメモしておくことで、ワークフローをより便利、かつ円滑に回せるようになった。

▼レコードの情報に紐付いたコミュニケーションでワークフローがより円滑に

開発工数をかけずに電子契約サービスとkintoneをAPI連携

総務部がワークフローシステムの次に構築したのが、外部の取引先との契約業務に関するシステムだ。

以前のシステムはかゆいところに手の届かない面がありましたが、kintoneは感覚的に使えて、『こういうことはできない? 時間かかるよね?』というような社内からの要望に対しても、『いえ、数日でできますよ』と迅速に、柔軟に応えられることが以前より格段に増えました。商品を提供していただくファッションブランド様との契約など、さまざまな契約業務で使用する契約書管理システムも、電子契約サービスとkintoneを連携させることで構築しました。kintoneは多くのクラウドサービスとAPI連携が可能なため、新たにシステムを作る、という開発工数を省くことができます。すでにkintoneのユーザーである従業員からすれば、新しいシステムをいちから覚えなければならないというハードルがなく、そこも大きなメリットだったと思います。 “紙文化”として残っていた業務をほぼデータ化することができ、もしkintoneを導入していなかったらコロナ禍にどう対応していたのだろう、と思っています」(源氏)

成果が社内で反響を呼び、他部門の現場でも内製開発がスタート

こうした総務部の取り組みは、社内で評判を呼び、他部門の業務でもkintoneを活用できないか、という声が上がるようになった。現場部門による内製開発の波が着実に広がっている、と高橋氏は話す。

シンプルな仕組みで汎用性が高く、さまざまな業務に応用できる。システムに詳しくない人でも、使っているうちに『こんな業務に使えるのではないか』というアイデアが浮かんでくるのがkintoneのいいところです」(高橋氏)

そうしたアイデアが具体化したケースも少なくない。たとえば、商品の製造に関する発注管理や情報共有のためのシステムは、他部門が総務部のアドバイスと情報システム部門のサポートを受けて開発したものだ。

「これはワークフローではなく、Webデータベースとして活用した仕組みです。そのように、別の用途に内製の範囲が広がったのは大きな前進です。この成果を社内で共有することで、さらに内製化の範囲を拡大したいですね」(瓦林氏)

総務部が主体となり、情報システム部門およびサイボウズのオフィシャルパートナーとの緊密な連携を基盤とするプロジェクト体制を構築し、かつITの専門家でなくとも使えるkintoneの利点を最大限に活かして、実際の運用に即したワークフローシステムを作り上げたZOZO。同社におけるkintoneの活用は、今後ますます進んでいくに違いない。(2021年7月取材)