JA全農ひろしま 様の導入事例

JA全農ひろしま

【業務内容】
農畜産物の販売事業、生産資材などの購買事業
【利用用途】
出荷計画管理、シフト作成、各種申請業務、AI活用(問い合わせ対応業務)
  • 「電話・FAX・紙」が当たり前だった農業の現場を変える
  • kintoneによる市民開発とAI活用で挑むJA全農ひろしまのDX

農畜産物の販売事業と生産資材・燃料・生活用品などの購買事業を柱に、広島県の農業を支えるJA全農ひろしま。同組織ではキントーンを導入し、シフトの自動作成システムや農作物の出荷計画アプリを作成しただけでなく、現場主導のアプリ開発体制も構築した。入職1年目の職員がハンズオン研修の講師を務めるなど、独自の市民開発推進を展開する一方、キントーンのAIプラグインを活用し、問い合わせ対応業務の効率化にも着手。地方拠点ならではの主体的なDX推進について、改革推進部 JA営農支援課の藤井隆介氏、橋詰雄太氏、青木菜月氏に話を伺った。

【課題】部門ごとに異なる基幹システム、その周辺に残る「紙とFAX」の業務

全国農業協同組合連合会広島県本部(以下、JA全農ひろしま)は、JA全農の広島県域を管轄する組織だ。JAを通じて米・野菜・畜産物などを集荷し、加工して消費者に届ける「販売事業」と、肥料・農薬・農業機械などを生産者(組合員)に供給する「購買事業」を柱に、農業生産から暮らしまでを幅広く支える経済事業を担っている。

特徴的なのは、事業領域が非常に多岐にわたる点である。販売部門と購買部門、さらに管理部門まで、それぞれが独自の基幹システムを持ち、連携するJAとのシステムもすべて別々に構築されている。

「たとえば農業機械はこのシステムで農協とつながり、米であれば別のシステムでつながる、というように、連携システムがそれぞれ別々なのです」と、改革推進部 JA営農支援課 課長の藤井氏は説明する。

基幹システムそのものは整備されている。しかし周辺業務——出荷計画の集計、シフト作成、各種申請処理など——Excelや紙の運用が根強く残り、属人化や非効率が課題となっていた。加えて、JAグループ全体に共通する構造的な問題も存在した。

「我々を含めてJAグループは、他の組織の方が見たら驚くぐらいシステム化が進んでいません。電話やFAX、メモがいまだに多く残っているんですよね」と藤井氏は率直に語る。さらに、生産者、JA、県域団体(全農)、市場という階層構造の中で、互いの組織に対して強制力を持ちにくいという関係性も、デジタル化の遅れを助長してきた。

全国農業協同組合連合会広島県本部 改革推進部 JA営農支援課 課長 藤井 隆介氏

全国農業協同組合連合会広島県本部 改革推進部 JA営農支援課 橋詰 雄太氏

「現場の業務に合わせてアプリを作成できる」ことに可能性を見出す

Excelや紙による運用が根強く残り、属人化や非効率が課題になっている業務を改善すべく、キントーンの導入を決めました」と、改革推進部 JA営農支援課の橋詰氏は語る。

藤井氏と橋詰氏はかつて東京の全農本所に駐在しており、そのときにキントーンが活用されている現場を目にしていた。この経験も参考に、サイボウズの担当者からキントーンの活用事例や可能性の紹介を受け、「現場の業務に合わせてアプリを作成できる」ことに可能性を見出したという。

【効果】現場を巻き込んだkintone活用——わけぎ出荷計画アプリの成功

2022年10月にキントーンを導入し、シフトの自動作成や申請業務の効率化など、あらゆる成果を上げてきた。その一つが「わけぎ出荷計画アプリ」である。これは全農単体の取り組みではなく、JAや生産者も巻き込んだ組織横断の仕組みだ。

 わけぎは広島県が全国で最も生産量が多い野菜だ。生産者は出荷量の計画を、JAを経由して全農に報告するのだが、従来はすべて紙ベースだった。生産者が紙を提出し、各拠点のJAの担当者が集計し、JA本部がさらにとりまとめて全農に報告する、という多段階の手作業が発生していた。

 「生産者の方もわざわざJAに提出しに行かなくてはならず、それで提出漏れも発生し、出荷計画の精度があまり良くないという課題がありました」と橋詰氏は語る。

この課題を解決するため、生産者に毎週木曜日に自動メールで出荷計画の提出を促し、スマホやパソコンから入力フォームで提出できる仕組みをキントーンで構築した。 集計は自動で行われ、必要な情報だけをJAや生産者にフィードバックする。

 「出荷計画を提出しやすくなったという声を、実際に生産者の方からいただいています。我々単一の組織だけではなく、JAさんや生産者を巻き込んだ取り組みとして、作ってよかったなと感じています」(橋詰氏)

JA全農ひろしま_kintone集荷アプリ_レコード詳細

(わけぎ出荷計画アプリ_レコード詳細)

JA全農ひろしま_kintone集荷アプリ_JA別出荷計画数量推移

(わけぎ出荷計画アプリ_JA別出荷計画数量推移)

入職1年目の職員が講師に。市民開発を広げる「ハンズオン研修」

キントーンの導入から約3年が経ち、当初のJA営農支援課主導によるアプリ開発から現場主導の「市民開発」へと段階的にシフトしている。

「導入当初は、我々がヒアリングしてアプリを作っていましたが、現場の業務課題を1番わかっているのは現場ですから、皆がアプリを作れる環境を目指すべきだと考えました」 と橋詰氏は説明する。

 そこで2025年度から、各部署にキントーンの担当者を1名ずつ設置。約20名の担当者に対して月1回のハンズオン研修を実施している。研修ではキントーンの基礎操作やプラグインの使い方を教えるとともに、実際の業務課題をキントーンで解決した事例を紹介し、現場にイメージを湧かせる工夫をしている。

この研修で講師を務めるのが、当時まだ入職1年目だった、改革推進部 JA営農支援課の青木氏だ。大学ではITとは全く異なる分野を学んでおり、配属後にゼロから習得した。 

「『1年目の職員がここまでキントーンを使えるのだから自分たちも頑張ろう』という刺激になったのではないかと思います」と、藤井氏はその効果を語る。

研修を受けた後の反応はさまざまだが、「研修後すぐにアプリを作る職員もいます」と青木氏は語る。また、研修後に実施した課題抽出では、ほとんどの部署から業務課題が集まってきており、土壌はできつつある。

全国農業協同組合連合会広島県本部 改革推進部 JA営農支援課 青木 菜月氏

「自発的に質問してくる担当者は全体の1割にも満たないのが正直なところです。ただ、課題自体は集まっています。なかなか最初の一歩が出にくいところへのフォローが、今後の我々に必要なところだと考えています」(青木氏)

パートナーとの伴走支援で「地方拠点ならではの課題」を克服

 県域の連合会として独自にDXを推進する組織は珍しく、全国500弱の農協の中でも10箇所程度ではないかと藤井氏は見る。この背景には上層部のIT活用への理解がある。

IT技術を活用していこうという考えを上層部が持っているのが非常に大きい。業務を効率化して余白の時間を生み出し、付加価値のある仕事やプライベートの充実に時間を使っていこうという考えが強いです」 と橋詰氏は語る。

 一方、地方拠点ならではの課題もある。IT企業のイベントや研修は東京開催が多く、物理的な距離がネックとなる。この課題を解消するため、同組織ではパートナー企業であるみらい株式会社と契約し、伴走支援を受けている。具体的には、月に一定時間の枠を設け、トラブル対応やプログラム作成などを依頼できる体制を作っている。

 また、オンプレミスのシステム開発と比べて月額コストで済むクラウドサービスだからこそ、県本部単独での推進が可能になったという側面もある。「何千万、何億とかかるシステム開発であれば、県本部単位で進めるのは無理だったでしょう。月々のコストで済むというところで、県本部独自でできた部分は大きいですね」(藤井氏)

生成AI活用の第一歩——Smart at AIで問い合わせ対応を効率化

キントーンによる業務改善が進む中、JA全農ひろしまでは生成AIの活用にも着手している。JA全農全体としては202510月からMicrosoftCopilotが全職員向けに利用可能となったが、現状は議事録の要約やアンケート作成など、個人業務の補助的な利用にとどまっている。

 橋詰氏は「AIをどう使えばいいかわからない、というのが職員たちの正直なところです。業務プロセスの中にどう自然にAIを組み込んでいくかが今後の課題となります」と語る。

こうした中で同組織が注目したのが、M-SOLUTIONSが提供するキントーンのプラグイン「Smart at AI for kintone Powered by GPT」(以下、Smart at AI)だ。きっかけは、東京で開催されたサイボウズの大型イベント「Cybozu Days」に橋詰氏が参加した際、会場でSmart at AIの紹介を受けたことだった。

ChatGPTをキントーンの中で使えるのが非常に新鮮でした」と橋詰氏は振り返る。Copilotが個人のツールとして使われるのに対し、Smart at AIはキントーンのアプリや業務フローの中へプロセスとして組み込める点に魅力を感じた という。

 ただし、導入までの道のりは平坦ではなかった。全農全体として生成AIの利用にはガイドラインがあり、本所が定めたチェックリストをすべてクリアしなければ利用ツールとして認められない。厳しい審査の末にSmart at AIは導入が認められたが、県本部からの申請によって生成AIツールが全国的に承諾されたのは、おそらく全農として初めてのケースだった という。

 具体的な活用事例として動き出しているのが、消費者からの問い合わせ対応業務だ。Webサイトの問い合わせフォームから入力されたデータがキントーンに取り込まれ、Smart at AIが過去の対応履歴やプロンプトに設定した組織情報をもとに返信文案を自動生成する。担当者はそれを確認・修正し、キントーン上で上司の承認を経て返信する。

 「以前は担当者が1から文案を考え、印刷して上司に見せて確認していたのが、キントーンの中で業務の空き時間に確認してすぐに問い合わせに回答できるようになりました」と橋詰氏はその効果を語る。

 藤井氏も、回答品質の標準化という副次的な効果を指摘する。「職員の知識や経験によって回答内容に差が出てしまうのを、ある程度標準化・底上げできました。また、AIが業界用語を噛み砕き、消費者の方々に分かりやすい形で回答してくれる効果もあります」

 もちろん、AIの回答をそのまま送るのではなく、必ず人のチェックを介在させることで、運用上の安全性を確保している。

返信文案を生成

返信文案の生成完了

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「場面ごとに使い方を考えないと広がらない」——生成AI活用の今後

 同組織が描く今後のAI活用像は、「全員がAIを使いこなす」ことではない。橋詰氏は理想をこう語る。

 「全員が生成AIを使いこなすのは難しいと考えています。我々のセクションや各部署のキーマンが知識を習得して業務の中にAIを組み込んでしまい、一般の職員は意識せず使うぐらいの体制が理想です」

 この考え方は、Copilotのように個々人がプロンプトを書いて使うツールと、Smart at AIのように業務フローに組み込まれたAIとでは、求められるアプローチが異なるという認識に基づいている。

藤井氏はさらに踏み込んで、生成AI活用の認識が人々の中でまだ漠然としていることが課題だと指摘する。「要約に使うのか、クリエイティブに使うのか、商談資料を作るのか、数字の予測に使うのか——場面ごとに細分化して使い方を具体的にしていかないと、生成AIは簡単には広がりません」

 今後はハンズオン研修の中でSmart at AIの活用事例も共有しながら、わかりやすい成功事例を着実に増やしていく方針だ。さらに青木氏は「キントーンの中に蓄積されたデータをAIで加工・変換し、次のアクションにつなげるようなことができたらいいなと思います」と展望を語る。

電話・FAX・紙が当たり前だったJAグループの現場に、キントーンとAIという新しい道具を持ち込み、市民開発とボトムアップ型のAI活用を地方拠点から主体的に推進するJA全農ひろしま。その取り組みは、DXの鍵が「技術の導入」ではなく「現場と技術をつなぐ人の力」にあることを示している。(2026年4月 取材)

【記事内で登場したプラグイン・連携サービス】

Smart at AI for kintone Powered by GPT(M-SOLUTIONS株式会社)


※プラグイン・連携サービスはkintoneスタンダードコース以上でご利用いただけます

【この事例の開発パートナー】
みらい株式会社

お問い合わせ:https://go-mirai.jp/contact/

地方自治体や企業の多岐にわたるテーマに対応し、それぞれの組織が直面する課題に最適な解決策を提案、伴走支援することで課題解決や事業成長を実現します。​