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株式会社ワーク・ライフバランス
http://work-life-b.com/事業内容:ワーク・ライフバランスコンサルティング事業
ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」と訳され、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できることを指す(wikipediaより抜粋)。
近年、少子高齢化の影響などにより注目度がより高まっているワークライフバランスだが、企業によって取り組みかたや制度は様々だ。株式会社ワーク・ライフバランス様は(以下、ワーク・ライフバランス)2006年に設立し、企業や組織がワークライフバランスを実現するためのコンサルティングを行っており、これまでに800社以上に対して様々なサービスを通じたコンサルティングの提供をしている。同社の顧客には従業員数万人の大企業から中小企業まで、様々な業界の企業がある。また同社が提供する講座などを通じて、個人単位での顧客も多い。
「家庭の事情や体調などで業務に従事できなくなったときに社員全員でバックアップできる体制を日頃から整えている。ネットワークやメールサーバー、グループウェアやデータベースなどの情報システムは、誰もが知識を持ち合わせているべき領域なので、専任の担当者はおかずに、誰でも運用が可能なサービスを選択・利用している。」(松久氏)
コンサルタントの松久氏が語るように、ワーク・ライフバランスでは、専任の情報システム担当者はいない。サイボウズ社のメールワイズやGoogleカレンダーなどを使って、社員同士の情報共有を行っているという。ジョブローテーションという仕組みをとり、従業員の誰もが情報システムと同様に人事や経理といったバックオフィスから、営業やコンサルタントといったフロントオフィスの業務をこなせるように育成しているという。松久氏自身も、複数の顧客を持ちコンサルタント業務をやりながら、「kintone」のアプリケーション運用も同時に行っている。
では、「kintone」を導入した経緯や、アプリケーションの構築・運用などは、どういった役割分担で進められているのだろうか? ワーク・ライフバランスで運用している「kintone」のアプリケーションで、利用頻度が高いのは「顧客リスト」と「会員向け情報サイト」の2種類だ。まずは最初に運用を開始した「顧客リスト」から詳しいお話を伺った。
ワーク・ライフバランスコンサルタント 松久氏
ワーク・ライフバランスコンサルタント 大西氏
「当社の顧客とは、ワークライフバランスの導入を考える時にご相談いただいた組織や、当社が実施している各種セミナーの受講生といった個人まで、様々な単位での「顧客」があります。それは当社が展開しているサービスによって、顧客の定義が異なるということと同義です。そのため、サービスごとに顧客情報を管理しており、当初はエクセルファイルで管理されていました。しかしワークライフバランスを実現するためには、様々な施策があり、当社のサービスを複合的に利用されるケースがあります。そのため社内で一元化した顧客情報を持ち合わせておく必要が高まってきました。これまではExcelファイルで管理していましたが、同じ顧客に対するアプローチ状況や納期管理の点でファイルベースでの情報共有に限界を感じはじめていました。」(大西氏)
同社の「顧客リスト」アプリでは、会社名や担当者氏名といった基本情報以外にも、その顧客に対して行ったアプローチや提案書などの資料の提出状況管理もできるように設計されている。最初にアプリを設計したのは大西氏で、まずは"全員が絶対に必要だとおもっている項目"から設計し、その後はアプリを利用するメンバーと共にブラッシュアップしているという。"メンテナンスの容易さ"は、全社員が同一業務を遂行できるようになっていることを意識している同社にとっては重要なポイントであり、その点が「kintone」を選んだ理由のひとつにもなっている。「Excelファイルだと、人によっては数式やマクロが組まれたプログラムに抵抗を感じ、時にはうっかりマクロを壊してしまうこともある。」と大西氏は続けた。
「顧客情報」アプリでは、先述の顧客に関する各種情報の他に、やりとりしたメールの内容、打ち合せ時の議事録、担当者が感じた所感なども記載がある。これらの情報はすべて、レコード(1顧客1レコードで情報が管理されている)のコメント機能に書き込まれている。
顧客情報アプリ レコード詳細画面イメージ
「打ち合わせなどの議事録をメールで共有している場合、これまでの打ち合わせのやりとりをまとめて見たいとき、メールを検索しなければなりません。時間も要します。しかし顧客情報アプリのコメント欄に議事録を貼っておけば、検索の必要はなく、検索漏れも防げます。顧客情報というと連絡先などに限定して考えることもできますが、これまでの経緯(議事録)も一元管理することによって活用度の高い、奥行きのある顧客情報として活用することができています。」(松久氏)
こういった顧客情報の奥行きは、例えば顧客にメールを送る時に気遣いのひと言を差し込めるようになり、顧客とコンサルタントの間の信頼関係を強めるひとつの要因にもつながっているという。同社の場合、企業コンサルティングやコンサルタント資格を取得したからといって、顧客との関係が終了することほとんどない。変化してゆく時代の中で、時代に適したワークライフバランスのあり方を顧客へ呼びかけ、企業と個人がいつの時代もよい関係で成り立つようにアプローチを続けている。
そこで次には、同社の顧客がワーク・ライフバランスコンサルタントの資格を取得した後に提供される情報を公開している「会員情報サイト」について、引き続きお話を伺った。元々、社内情報のアプリケーション化のために導入したkintoneだったが、アクセス権設定の多様性に着目した松久氏によって、社外向けコンテンツの公開用もkintoneでアプリケーション化することに挑戦した。
認定コンサルタント向けの更新受験アプリ
同社が主催する研修を受講し認定試験に合格するなどの条件を満たすと、同社の加盟コンサルタントや認定コンサルタントとして活動ができる。こういった社外のコンサルタントに対してワークライフバランスに関する様々な情報やサービスが提供される。その中の1つが「会員情報サイト」である。ワークライフバランスと関係のある法案の最新動向や、企業の導入事例といったニュースから、働き方の見直しコンサルティングで使用することのできるツールなどもアップされる。しかし、単に情報をアップするだけでなく会員が楽しんで続けられるゲーム性を取り入れている。
「登録いただいている会員の種類に応じて見られる情報を管理し、続きの情報を見たい場合には別のアクションが必要なように工夫しています。会員の方が知識や理解を深めて行くのにあわせて、提供する情報の量や質を変えているのです。」(松久氏)
他にもこの講座を受講している段階でも、kintoneのアプリケーションを活用している。たとえば受講生は受講期間中の課題をメールではなくアプリケーションを通じて提出し、メンターとしてのコンサルタントにいつでも気軽に質問をすることができるアプリケーションも用意されているというわけだ。メールを使っていた頃には、他のメールに埋もれてしまったり、タイトルのつけ方や本文の書き出しなど、受講生にとっても負担があったりした。しかしアプリケーションにしたことで問題は解決したという。こういった工夫により「会員はよりメンターとしてのコンサルタントを身近に感じていただくことができ、質問を通じて疑問点を解消しながら受講期間中のモチベーションを保ち続けることができた。」と松久氏は続けた。
ところで、社内システムに等しい「顧客リスト」と社員ではない会員が利用する「会員情報サイト」を「kintone」上で運用することの苦労はないのだろうか?
「アクセス権の設定が面白くって、かなり使い込んでいます。」(松久氏)
「kintone」では、アプリケーション/フィールド/レコード単位で、組織/グループ/ユーザー単位に処理の種類に応じたアクセス権を設定することが出来る。そのため、社員と会員では見えるアプリケーションが異なるように設定することが可能だ。社内用のアプリケーションは、そもそも会員がログインした画面では存在さえ見えないのだ。
アクセス権の図解
アクセス権で「kintone」の利用ユーザーに公開する情報をコントロールすることで、社内と社外で使うアプリケーションを1つのシステム上での運用を実現している。用途に応じて、専用のサービスやソフトウェアを導入すればそれだけで管理工数が上がってしまうが、ひとつのシステムであればその心配もない。「○○アプリの応用で、△△なこともアプリ化できるのでは?」という新しいアイデアも浮かんでくるという。
さらに、同社の面白い試みとして、マクロや数式の組まれたExcelの取り扱いに苦手意識を感じている従業員がいたという経験から「kintone ○級」という社内ランクを作って「アプリ管理の権限を設定できるようになったら準1級」といった方法で、アプリのメンテナンスが出来る社員が、自発的な努力によって増える仕組みづくりに成功している。「アプリを作ってみたいと思ったら、自然とkintoneを勉強するようになりましたよ。
最後に「kintone」への要望を伺った。
「Excelやテキストでやっていることで "これがkintoneでできたらいいのに"と思うことがいくつかあります。例えば、時間計算(※)が出来たら勤怠管理はアプリを通じてできるかもしれない。当社のように社員の多くが外出していることがほとんどの場合、アプリケーションを通じてタイムカードを付けることができればと思います。」(大西氏)
「管理側の機能になるのですが、課金のユーザーカウントを自動で行って欲しいです。当社は、毎月新しい受講生が増えたり、逆に受講期間が終わったらkintoneから退会したりとユーザーアカウントの出入りがあります。今は、利用ユーザー数を手動で設定する必要があるので、ここを自動化して(今月は○ユーザー利用だったので利用料はXXX円です)と通知してくれればいい。」(松久氏)
Excelでのファイル共有に問題を感じている方や、取引先や協力会社、会員などとのB to B間での情報共有にソリューションをお探しの方には、是非今回のワーク・ライフバランスの事例を参考にしていだけると嬉しい。
※ 取材当時は時間計算機能がありませんでしたが、2013年3月のアップデートで実装いたしました。今後もお客様のご要望にお応えした製品開発を進めてまいります。