USEN-NEXT HOLDINGS 様の導入事例

USEN-NEXT HOLDINGS

【業務内容】
音楽配信を始めとした店舗サービス事業、通信事業など
【利用用途】
人事報酬査定など
  • グループ全体の評価報酬制度の基盤として採用されたkintone
  • 年間2回約5,000人分のExcelシートの管理から脱却

音楽配信などの店舗サービス事業やICT/回線など通信事業を手掛けるグループ会社を傘下に持つ株式会社 USEN-NEXT HOLDINGSでは、人事における評価報酬制度の仕組みをグループ全体で統合するための基盤として、サイボウズが提供するkintoneを活用している。その経緯について、同社 コーポレート統括部人事部副部長 山本 まりも氏および株式会社 USEN Smart Works 代表取締役社長 大下 幸一郎氏に伺った。

【課題】ホールディングス体制への移行で評価報酬制度の刷新を図る

1961年に2チャンネルの有線音楽放送開始を契機に事業をスタートさせ、有線放送事業を手掛ける株式会社 USENと映像配信事業を中心とした株式会社 U-NEXT2017年に経営統合。株式会社 USEN-NEXT HOLDINGSはグループ会社23社を傘下に持つ企業として、幅広い事業領域にビジネスを展開している。音楽配信をはじめとする店舗サービス事業をはじめ、ICT/回線を展開する通信事業、ホテルや医療機関向けの業務用システム事業、「U-NEXT」を中心としたコンテンツ配信事業、業務店や商業施設向けのエネルギー事業などを展開。販売チャネルの連携と主力サービスのクロスセルによる売上拡大を目指しながら、オペレーションの効率化などグループシナジーを創出するための環境づくりを推進している。現在は100人の社長・100の事業会社を生み出し、一兆円企業グループを目指すビジョンを掲げ、「社長発掘プログラム” CEO's GATE”」といった取り組みも行っている。

そんな同社では、2017年に実施した経営統合を契機にかっこよく、働こう。をスローガンに掲げた「Work Style Innovation」と名付けた人事プロジェクトを始動。コアタイムやフレキシブルタイムを設けないスーパーフレックスタイム制度をはじめ、場所の制約を受けずに柔軟に働くことが可能なリモートワーク制度、Innovationを生み出すためのかっこ良い働き方を目指すクールビズ推進など、結果を出せる組織としての働き方改革に取り組んできた。「ホールディングス体制への移行によって、各社で行ってきた人事も含めた管理部門を全てホールディングスが担当し、事業会社は事業に専念してもらえるような環境を整備しています」と説明するのは山本氏だ。

そんな人事プロジェクトの一環として取り組んできたのが、従来各社で行ってきた評価報酬制度をグループ全体の方針に沿って刷新することだった。「USEN系とU-NEXT系の企業では評価制度がそれぞれ独自のもので、使ってきたツールも手法も異なっていました。これらを統合するべく、まずは評価における制度設計を行った上で、従来Excelやメールを駆使して行われてきた評価業務をシンプルに行うことができるよう、環境整備を進めていくことになったのです」と山本氏は経緯について説明する。

コーポレート統括部人事部副部長 山本 まりも氏

【選定】制度設計に合わせた柔軟な仕組みを作るkintone

Excelからの脱却に向け、制度設計に合わせた仕組みが整備できる環境が必要に

これまでは、半期ごとに目標設定を行い、達成に向けた行動目標も含めて全てExcelを駆使して各メンバーが目標設定・評価シートを作成し、それを上長がチェックすることで目標を決定していた。そして半期後にはExcelをもとにフィードバックを実施し、その結果を人事に提出するフローとなっていた。そのため、部署内では上長とメンバーとの間で何度もExcelファイルがやり取りされるだけでなく、最終的にはおよそ5,000人分のExcelファイルが全て人事に提出されることになる。「報酬や賞与の査定業務はもちろん、Excelを集約して管理していくだけでも非常に労力がかかっていました。しかも評価報酬プロセスを業務として運用するメンバーも少数精鋭だったため、効率的かつシンプルな運用に変えていくための新たな基盤が必要だと考えたのです」と山本氏は当時を振り返る。

従来のExcelに代わる新たな基盤については、異動や入退社といった人事情報が常に最新の状態に更新できるものが絶対条件だった。そして、組織のなかで業務を兼任するメンバーが多くいる同社の事情に合わせて、閲覧や編集権限などが項目ごとに柔軟に制御できるもの、そして事業会社ごとに必要な管理項目が自由に設定できるといった柔軟性も求められた。「すでにパッケージ化されているものでは、例えば設定できる項目数に上限があるなど制約も多く、制度設計を仕組みに合わせざるを得ないことも。そうならないよう、我々がやりたいことに対して仕組みが柔軟に作り変えられるものが必要でした。もちろん、入力期限前にアラートが出せたり未入力のメンバーが抽出できたりといったワークフローも含めた機能は意識したところです」と山本氏。

そこで注目したのが、営業部門や法務部門など他部署でも幅広く利用されていたkintoneだった。「文化やバックボーンの異なる従業員であっても分かりやすく、かつグループの意思を反映した制度を邪魔しないシステムが必要でした。世の中には人事系のシステムは数多く提供されていますが、実はエンゲージメント強化や離職率低下といった特定のテーマに沿ったソリューションが中心です。想いを具現化した制度があって、それをシステムに落とし込める柔軟性の高いソリューションという意味では、正直kintone以外に選択肢はありませんでした」と大下氏は力説する。

株式会社 USEN Smart Works 代表取締役社長 大下 幸一郎氏

一方で、自身がユーザーとして初めてkintoneを使う立場になった山本氏は、一抹の不安を抱えていたという。「柔軟性は必要ですが、自由度が高すぎてどうやって環境を整備していけるのか不安に感じたのは確かです。しかし、大下からアプローチの異なる複数のパートナーを紹介もらったことで、具体的に進めていけるイメージができました。開発から運用まで全てお願いできるところもあれば、併走しながら自分たちで作っていける環境づくりを支援してくれるところなど、いろいろなアプローチが選択できると分かったのです。その意味でも、パートナーの存在は大きかったです」と山本氏。

パートナーが数多く存在していることも、他のシステムの大きな違いだったという。「kintoneというプロダクトの周りでパートナーのエコシステムが存在しており、さまざまな実現方法が選択できる点は大きい。プロダクトとパートナーコミュニティがあるからこそ、グループが描く制度が具現化できると考えたのです」と大下氏は説明する。結果として、新たな評価報酬制度を具現化するための業務基盤として、kintoneが選ばれることになったのだ。

【効果】評価報酬査定にかかる工数が一人当たり計約5時間削減

目標設定から総合評価、報酬の通知までkintoneアプリで全て実装

同社では、複数部門の業務にドメインの異なるkintoneが活用されており、全体では30ほどのドメインが契約されている。今回導入した人事業務向けのkintoneも専用のドメインを契約し、契約社員も含めて6,000人を超えるメンバーが利用する評価報酬制度の基盤となっている。「社員全員がそれぞれ必要なkintoneアプリを駆使して業務を推進しているため、1つのドメインで運用するとアプリ作成の上限も出てくる可能性が高い。また、評価報酬用に作成したアプリがその他のkintoneアプリに埋没してしまう懸念もあったため、人事用のシステムとして個別に運用できるようにしています」と大下氏。

人事関連で運用しているアプリは、目標設定や評価を含めた評価報酬制度のアプリをはじめ、グループ内の人材流動化を目的として実施しているグループ内スカウト制度(各社の社員がキャリアシートを提出し、各社社長が必要な人材にオファーをする制度)に関連したアプリや、ホールディングスの監査担当者が全国の店舗を巡回する際に記載する紙の報告書をkintoneに集約するアプリなどを運用している。最近では、Google Chat経由で全国の社員から寄せられる問い合わせ情報を蓄積するための基盤としても開発が進められている状況だ。なお、異なるドメインも含めたkintoneアプリの総数はゆうに2,000を超える規模になっている。

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         グループ内スカウト制度「Scout U」における情報入力アプリ    

評価報酬制度の運用については、主にはkintoneのポータル上にマニュアルを用意したうえで、目標設定などが入力できるアプリを用意。個人ごとにレコードが用意されており、所属を更新することで期ごとに評価する上長が自動的にアサインされ、適切な閲覧編集権限が設定されるようになる。メンバー個人の目標に沿って半期ごとに上長が振り返りを行い、最終的には上長が通期の総合評価とともに申し送りコメントを入力する運用だ。総合評価が入力された段階で、kintoneから評価に関する情報を抽出し、部内の全体予算を加味しながら年棒などをスプレッドシート上で計算、最終的に各メンバーに結果を通知する。

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            目標設定・評価アプリにおける個人レコード

3か月という短期間でのプロジェクトながら、アプリは高い完成度で仕上がっていると大下氏は評価する。「アジャイル的に開発を進め、8割がた完成したところでリリースしており、まだ改善する余地はたくさん残っています。我々自身もkintoneを扱うプロジェクトに多く関わっていますが、実際に運用してみると改善する意味でも手を入れたいところが出てくるもの。あえて完璧に仕上げてしまわないように意識しています」。

工数削減によって上長が従業員に向き合う時間を確保できるようになった

グループに最適な制度設計を具現化するべくkintoneを導入したことで、従来Excelにて行ってきた評価報酬査定の業務が大幅に効率化できたと山本氏は評価する。「これまでは目標が記入されているExcelのシートを上長が全員分印刷し、赤ペンでチェックして面談に望むことも。今ではkintoneを画面で見ながら面談できますし、以前は郵送していた結果の通知もkintoneの画面で確認するだけ。工数を削減したことで、上長が従業員に向き合う時間が確保できるようになったのは大きい」。実際にメンバーは目標を記入する際に最低でも4時間ほどを要していたが、過去の情報も参考にしながら検討できるようになり、今は30分ほどで入力できるようになっている状況だ。上長も入力の指示や入力内容のチェックなどに多くの時間を割いていたが、わずか20分あまりで完了できるなど、大幅な時間短縮につながっている。アラート通知なども実施できるようになり、進捗確認も容易にできるようになったと評価する。

クラウド環境で提供されているkintoneのおかげで、テレワーク環境下においても社外から容易にアクセスできるなど、新たな働き方にも柔軟な対応が可能な基盤として重宝していると現場からも評価の声が寄せられている。なおkintoneについては、自らアプリが作成できるだけでなく、ディベロッパーの選択肢も豊富など、自由度の高さが最大の魅力だと大下氏は力説する。「自由度が高いだけでなく、kintoneというツールはチームワークに意思を向けているソリューションの1つ。今回我々が目指した制度設計において非常にマッチしました」。

成長していくプラットフォームとしてさらなる効率化を目指す

今後については、現在の評価報酬制度の運用が2期目に入っており、3期目に向けての制度リニューアルに向けて、新たに仕組みをブラッシュアップしていくことになるという。「今が完成形というよりも、制度とともに成長していくことができるプラットフォームだと考えています。そんな柔軟な運用が可能になっているのもkintoneのおかげです」と山本氏。現場の声もヒアリングしていきながら、本来やるべき業務に時間をかけることができるように、さらに効率的な環境づくりに取り組んでいきたいと意欲的に語る。

また人事の仕組みに合わせて全社的にkintoneが利用できる環境を整備したことで、現場に残る仕事の無駄が解消できるような活用にも役立てていきたいという。「これまで当たり前だから変えてこなかったものの、非効率な業務はまだ数多く残っています。kintoneの使い方がさらに広まっていくことで、これまであげられなかった声が出しやすいような環境を醸成していきたい」と最後に語っていただいた。

(2021年4月取材)