辻野社会保険労務士事務所 様の導入事例

辻野社会保険労務士事務所

【業務内容】
顧問先企業の人事・労務業務の支援
【利用用途】
顧客管理を中心とした案件、日報・月報、給与計算業務・業務効率の分析・SpeedocV3と連携した文書管理など
  • 業務を可視化することで最適なタスク分担を実現。社労士事務所の業務効率化・収益性の向上にkintoneを活用

辻野社会保険労務士事務所は、宮城県は多賀城市に事務所を構え、地域の法人顧客を中心に、労働社会保険諸法令に基づく書類の作成・提出代行などの労務管理を行っている。

また、併設の経営コンサルティング会社である株式会社アートプラン(以下、アートプラン)は、就業規則の整備や各種労務管理に関する情報提供や、人事労務管理上のトラブルの未然での防止、実際に起こってしまったトラブルを解決するための支援等を担っている。「企業が最大限の実力を発揮できるように支援し、地域経済及び地域社会の発展に貢献する」こと経営理念に掲げ、バックオフィス業務から企業の発展を支えるための、多岐にわたった活動を行っている。

同社の企業ロゴは、同事務所の所長、およびアートプラン代表取締役である辻野扶美氏の当時小学2年生だった次男様が「お客様である会社と、そこで働く人が仲良くやっていけるようにお手伝いをすることが、ママの仕事だよ」という辻野氏の言葉をもとにデザインしたそうだ。

今回は辻野氏に、kintone導入の経緯と活用方法についてお話を伺った。

「業務進捗の見える化」「限られたリソースを活かすための業務効率化」が急務

kintone導入のきっかけになった課題意識は、「各人の担当業務のブラックボックス化」「入力の二度手間」「限られた人的リソース」の大きく3軸にあった。

「とにかく業務が見えない。それぞれに任せている仕事の進捗を把握するというのが無理だったんです。」と辻野氏は語る。

担当する案件がそれぞれのスタッフへ割り振られた後は、その後の進捗は各人に依存し、辻野氏の管轄からは大きく外れてしまう。その日の作業や業務の進捗を日報に残すことは義務付けてはいたものの、運用がうまくいっていたとは言い難い状況だった。

辻野社会保険労務士所長 アートプラン代表取締役 辻野氏

また、「毎日の日報作成と月毎にまとめる業務日誌の作成には、記録すべき一つの業務を、個人別の日報と、顧客中心の業務日誌の両方に入力していたので、結果として『入力の二度手間』が起こっていました。これをなんとか解消したい、これも大きな課題でした。」と、辻野氏は当時の苦労を振り返る。

「以前はExcelをベースにした、社労士向けの業務ソフトウェアで業務日誌を作成していました。ですが案件の状態も『受付けました』『終わりました』などとても大雑把にしか把握できていなくて、顧客や案件の情報にも紐付いていませんでしたね。詳細の情報については、担当者に直接聞くしかありませんでした。」

更に、同事務所のスタッフの多くが主婦やパートの方で、働く時間に制約があった。対面での意思疎通が難しいなか、当時、辻野氏を含めた5名で数十社の顧問先へスムーズに対応していくためには、情報を共有できる環境を整えていくことが急務だった。

トライ&エラーを繰り返し、アプリ構成・運用方法を洗練されたものに

運用しているアプリは、全部で7種類。「見える顧客」という顧問先の顧客を管理するアプリを中心に、受付・案件管理・案件処理・日報・月報・給与計算のアプリを紐付けて、一連の業務を行っている。

IT活用への意欲が高い辻野氏。kintoneに初めて触れたときの印象を「新しいもの好きなので、ワクワクした」と語る一方で、当初は導入にも及び腰だったという。

「実際の画面を見てみて、自分たちで好きなようにシステムが作れるんだなということはなんとなくわかりました。一方でやはり『ちゃんとスタッフの皆さんが入力してくれるのかな……』と、運用が浸透するかどうかの不安がありましたね。」

初めは、以前から運用していた業務フローをベースに、数ヶ月かけてkintoneアプリを作り込んでいた。しかし、思うように形にならず運用開始に二の足を踏んでいたところ、多くの案件を抱えるスタッフの退職が決まる。

「その方が退職してしまうと、わからなくなってしまうことが多すぎる。覚悟を決めました。」

すでに作り込んでいたアプリを白紙に戻し、そもそもの業務フローから見直しに入った。本当に必要な項目だけを洗い出して再構築した結果、ものの数時間でプロトタイプが完成してしまうくらい、シンプルな設計にしあがったそうだ。

「とにかく作りながら、実際に手を動かしてアプリを組み立てながら最適な形の当たりをつけにいくことができるのが、kintoneの良いところですよね。すぐに作り直しができるので、できるだけシンプルな構成を目指してトライ&エラーを繰り返していくことが、うまく運用できる業務システムを作るコツなんじゃないかと思っています。」

アプリ運用の主な流れとしては、「見える顧客」アプリに顧客の情報を登録し、案件の依頼を「受付」アプリに登録した後に「案件管理」へ登録する。その後、案件に伴う様々な処理の内容を「案件処理」アプリで管理している。作業担当者は日々「日報」アプリを更新し、次ごとに「月報」アプリへまとめる。その月報にまとめられた案件情報をもとに、手動で顧問料に発生する請求の処理を行うという流れだ。

「顧客の情報は200個くらいの項目を登録していて、案件管理アプリなどにルックアップ(※特定の項目をキーに、アプリに入力するデータを他のアプリから取得できるようにする機能)で取得できるようにしています。以前はすべて手入力で法人名や住所などの情報をいれる必要がありましたから、この点は非常に助かっています。基本情報だけではなく、お客様の呼び名や性格面での特徴などもアプリで共有しているので、担当者が変わるときの引き継ぎも非常にスムーズになりました。」

各案件の進捗管理は、10段階の細かいステータスで担当者別に行われている。それぞれの担当者が行っている業務の種類や進捗ステータス、業務にかかった作業の時間をアプリに入力させ、グラフにして可視化している。そのため、「今、誰が、どんな仕事を、どこまで、どの程度の時間をかけて行っているのか」のすべてが一目で把握できる。

日報の入力作業の効率化は圧巻だ。最終更新日をキーにして、その日の案件や処理内容など、1日に行った作業情報をすべて関連レコード(※指定した条件にあてはまるデータを、フォームに表示する機能。同じアプリのデータだけでなく、他のアプリからのデータも取得できる)で取得できるようにアプリを設計している。

「日報を作業日当日に入力していただくことは、その日の案件や処理内容の入力忘れ防止につながります。『更新日』がキーなので、その日のうちに更新しておかないと日報に正常に反映されなくなってしまうので、各人の日報作成作業そのものが、自然に、その日に自分が入力した案件や処理内容の点検になっていると思います。本当に、当事務所のスタッフは、よくやってくれています。とはいえ膨大な作業内容をいちいち手入力してもらうのは非常に手間ですから、その作業は効率化しつつの運用を心がけています。」

案件管理アプリの一覧画面

各種業務を、担当者別に集計している

また、IT化を推進するとはいえども、手続きに伴う膨大な紙の書類とは切っても切れないのが、社労士事務所の業務だ。同事務所では案件が終了した後に残る申請書のデータ管理に、サイボウズの販売パートナーが提供するドキュメント変換ソリューション「SpeedocV3」とkintoneの連携を活用している。文書を複合機でスキャンして電子化した後、複合機のパネル上でそのままファイルサーバー上の保存先を選択し、格納していくことが可能だ。kintoneでは、各書類がファイルサーバーのどの保存先に格納されているのかを管理している。

「役所の受付印があるような本当に大事な書類以外は、できるだけPDF化して捨ててしまう。そうすることで随分とペーパーレス化が進みました。一昔前までは本当に紙だけで保存・管理をしていたので、それだけでものすごいスペースになってしまっていましたから。」

複合機のパネル上から、ファイルの保存先を選択できる

SpeedocV3と複合機の導入でペーパーレス化を実現

単なる時短・見える化にとどまらない「業務のクオリティ向上」を実現。収益アップのための指針にも

kintoneの導入による活用効果は、当初狙っていた「業務の見える化・効率化」にとどまらなかった。辻野氏はこのことを「単なる『時短』ではなく、『業務のクオリティ向上』を実現しました」と語る。では、「業務のクオリティ向上」とは、具体的にどのような効果を指すのか。

1つは、これまで概要しか把握できていなかった担当者別の業務内容や進捗に関するデータをためていったことで、それらを1つのビッグデータとして活用できるようになったことだ。各担当者が抱えている業務内容の進捗が全体で共有できるようになったため、一連の業務進捗を滞らせている要因の分析が可能になった。

「前の方の作業が進まないがために、次の人が仕事に取り掛かれないということは往々にしてあります。これまでは『なんだかおかしいけれど、滞っているな』という感覚的な認識しかできずにいたのですが、実際にkintone上でグラフ化することで、ある特定の人が『作業中』のタスクを多く抱えてしまっていることが可視化されて。その作業を他の人に分担することで、事務所全体での業務効率化につながりました。」

「作業中」のステータスになっている業務の量が一目瞭然

顧問先別で対応件数をグラフ化している

また、スタッフがその場にいない時の業務進捗状況も、大幅に把握できるようになった。

「私は勿論のこと、スタッフ間でも、必要に応じていつでも他のスタッフが進めている業務の進捗を確認し共有できることが、何よりも大きなメリットだと思っています。顧客から『急ぐことになったからすぐに送って』と電話を受けた書類は、既に帰宅したスタッフにより送付が済んでいることを『みえる案件』で確認し、その電話でお伝えするようなこともあります。更に、他人がしたことを把握できることにとどまらず、過去に自分が行った業務をどのように進めたか忘れた場合でも、頭の中では忘れていても『みえる案件』や『みえる処理』が覚えていてくれるので、いつでも確認することができます。」

また、各案件に対する作業時間のデータがたまっていくと、それぞれの顧問先にどのくらいの対応時間が割かれているのかが可視化される。すると、対応時間を多く割く顧問先と事務所の売上上位に位置する顧問先とが、必ずしも一致しないケースが見られた。

「例えば売上構成比では1%にも満たないけれども、作業時間は売上上位のお客様に逼迫しているようなケースもありました。そのようなお客様については、取引を続けさせていく上で顧問料について再度ご相談させていただくこともあるのですが、その際にもこのような定量的なデータをお持ちすると、お客様にも納得していただきやすくなったのが大変ありがたいですね。」

今後のkintone活用の展望としては、紙の文書や複合機との連携を更に進め、各案件を更にシームレスに進めていくことを目指している。

「今は保存先をファイルサーバーに設定している文書も、いずれ複合機のパネル上に表示される『kintoneの案件情報・顧客情報』から保存先を選択して、kintone上の案件や顧客に紐付けて管理できるようにしたいです。」

最後に辻野氏にとってのkintoneが何かを伺うと、「業務をうまく先導してくれる『水先案内人』です」と答えてくださった。今後も同社の発展と、士業界における更なるIT活用の推進から目が離せない。

【記事内で登場したプラグイン・連携サービス】

SpeedocV5 for RICOH(サイオステクノロジー株式会社)


※プラグイン・連携サービスはkintoneスタンダードコース以上でご利用いただけます

【この事例の販売パートナー】
リコージャパン株式会社

https://www.ricoh.co.jp/sales/about/

リコージャパンは、さまざまな業種におけるお客様の経営課題や
業務課題の解決を支援する各種ソリューションの提供をしております。

複合機(MFP)やプリンターなどの画像機器や消耗品および
ICT関連商品やソリューション・サポート&サービスなどを
トータルソリューションでお客様にお届けしています。

今回のお客様のご提案においては、サイボウズ社のkintoneと
自社商品の複合機との連携を実現し、
紙媒体(スキャン文書)のデータ管理の効率化を実現いただきました。