日本空港ビルデング(成田) 様の導入事例

日本空港ビルデング(成田)

【業務内容】
物品販売(免税売店等)、販売業務受託(免税売店等)、免税品の卸売等
【利用用途】
税関への臨時パス申請をはじめとする各種空港業務
  • 税関への臨時パス申請業務など空港ならではの業務に活用
  • 業務の標準化を推進する有力なツールとして広がるkintone

羽田空港旅客ターミナルを中心に「施設管理運営」「物品販売」「飲食」の各事業を展開している日本空港ビルデング株式会社では、成田国際空港においても免税店などの物販店舗の運営を手掛けているが、免税店への入店の際に必要になる税関への臨時パス申請をはじめとした、空港ならではの業務に役立つ基盤としてkintoneを利用している。その理由について、旅客ターミナル運営本部 免税事業部 成田営業所 業務課 副課長 江藤 一氏および同課 課長代理 山岸 有希子氏、同じく同課 課長代理 武井 育子氏にお話を伺った。

紙やExcelなど属人化した業務を標準化する仕組みづくりを検討

1952年米国から返還された東京国際空港、いわゆる羽田空港において、国際空港としての体制を整えるべく誕生した日本空港ビルデング株式会社。旅客ターミナルの建設・管理運営や不動産賃貸、駐車場の管理運営などを手掛ける施設管理運営業をはじめ、物販店舗の運営や飲食店の運営、機内食の製造販売などの事業を行っており、羽田空港のみならず、成田国際空港や関西国際空港、中部国際空港など中核空港での事業を展開している。現在は、羽田空港の“あるべき姿”を追求することで新たな事業・収益機会を創造し、既存事業の収益基盤の再構築によって競争優位を確立していくことを目指した中期経営計画「To Be a World Best Airport 2020」を強力に推進。絶対安全の確立を第一方針として安心安全な空港運営に従事しながら、“訪れる人に安らぎを、去り行く人にしあわせを”というCS理念を掲げ、空港を利用する顧客や取引先に向けたサービス向上に努めている。

旅客ターミナル運営本部 免税事業部 成田営業所 業務課では、総務や人事、経理をはじめ、店舗管理や予算管理など営業活動に関する業務など、手掛ける業務が多岐にわたっており、30名規模のスタッフがさまざまな業務をこなしている状況にある。その多くの業務を遂行するための仕組みの中心が、紙や電話、そしてExcelを用いて実施される、ある意味アナログ的な手法だった。「社内では人事異動が頻繁に行われるため、アナログ的な手法のままでは業務の属人化を加速させ、結果として業務が停滞してしまうリスクも。そこで、業務の標準化を図るための仕組みづくりが求められたのです」と江藤氏は当時の課題を振り返る。

旅客ターミナル運営本部 免税事業部 成田営業所 業務課 副課長 江藤 一氏

なかでも業務的に標準化が急がれたのが、空港施設内で工事を行う業者や店舗へ視察に訪れる社内外の関係者などが制限エリアに入る際の臨時パス申請の仕組みだった。「紙やメールといったアナログな方法で申請依頼が行われていたことで、事前にいただいていたスケジュールなどの情報がうまく共有できずに、申請の抜け漏れが発生してしまうこともありました。なかにはメールでいただいた個人情報そのものが間違えており、臨時パスを受け渡す際にそのミスが発覚、再手続きに時間を要するなど、手続き自体の不備が実際に起こることもあったのです」と臨時パスの申請手続きを行っている武井氏は課題について説明する。臨時パスの発行から受け渡しまでは武井氏が管理できても、パス利用後の回収までは追いかけることができない。現場で事故に巻き込まれた可能性も出てくるため、未回収のたびにインシデントとして現場対応せざるを得ない場面もあったのだ。

外部入力が可能で情報共有が容易な基盤としてのkintoneを選択

業務アプリがほぼ出来上がった状態での提案、現場の業務が強烈にイメージできた

 当初は予算の関係もあり、工事に関するタスク管理が行えるようなパッケージを中心に製品選定を進めていた江藤氏。実際には、出入りのインテグレータや外部のパートナーに声をかけたところ、サイボウズが提供するkintoneが提案されたという。「想定していた予算内で、スピード感を持って構築できるという提案でした。我々の仕様に合わせて柔軟に作り込めるなど、要件には十分マッチしていました」と江藤氏。具体的には、外部の業者が申請手続きをする際でもライセンスが不要でアクセスできる仕組みが構築できること、店舗が離れている空港内でもスタッフが手軽に情報共有できること、そして何よりも比較的簡単かつ安価に業務システムが構築できる点だった。

特に大きなポイントは、提案段階で利用するイメージがその場で見えていたことだったと山岸氏は振り返る。「実は提案の段階で具体的な業務アプリが動く形で提示されたことで、すぐに現場の業務に使えると、直感的に理解できたのは大きかった。実務者と詳細を詰めていけば、すぐに使える代物になっていたのです」。実は今回提案したインテグレータ自身が成田空港への入館手続きを普段から行っており、社内にプロセスを理解したメンバーからヒアリングすることで、提案時点で業務プロセスに落とし込むことができたのだ。実際の現場で支援を行っている武井氏も「以前は紙のカレンダー上で行っていた情報共有がExcelに変わりはしましたが、結局入力する手間は変わりません。あきらめていたのが正直なところですが、kintoneのデモを見て、業務効率化につながることが期待できる仕組みだと感じました」と振り返る。

旅客ターミナル運営本部 免税事業部 成田営業所 業務課 課長代理 山岸 有希子氏

同じ業界での採用実績が社内の説得に寄与、税関からの許諾もスムーズ

 また、kintoneを採用した理由の1つに挙げられるのが、全日本空輸株式会社の関連企業での採用実績だろう。社内的なプレゼン時に合意を得やすい環境だった点は見逃せないと山岸氏。なお、臨時パス申請といった税関とのやり取りが発生する部分については、運用フローの変更について税関側に許諾を求める必要がある。「税関としては、適正に事故なく情報管理が行われる環境で、かつ以前よりもリスクが軽減されるということを説明し、許諾いただきました。」と山岸氏。

転記不要で業務を劇的改善、いつでも申請可能だけに申請者からの評判も良好

現在は、税関とのやり取りに使う臨時パスの申請をはじめ、空港内で行われる工事届やその進捗管理クレーム報告、酒税申告管理など、空港ならではの業務アプリがkintoneによって作成されている。「提案時に作り込まれていた工事届や工事進捗管理などは微調整だけですぐに利用し始めることができました。カスタマイズも含めて構築した臨時パス申請のアプリであっても、わずか3か月ほどで構築に成功しています」と江藤氏。なお、プラグインとしては、外部にいる申請者が入力するためのフォームブリッジ、そして申請書出力のためのプリントクリエイターが導入されており、臨時パスの授受に関する署名のためのサインパット連携プラグインについては、今回新たに開発されたものだ。

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      サインパッドに文字を書けば、そのままkintoneアプリに直接反映される。

今回メインとなる臨時パス申請のフローについては、まずフォームブリッジを経由して必要な情報を申請者が直接入力する。訪問の前日に税関から臨時パスを入手するため、前々日にkintone内に入力された情報をプリントクリエイターにて申請書フォーマットにて一括出力し、税関へ紙で申請書を提出する。実際に臨時パスを渡す当日には、サインパットにて臨時パスの受け渡しのサインを行い、その署名データはkintone上に記録。最終的には返却時に再度サインパットにてサインを行い、税関に臨時パスを戻したフラグを立てて一連のフローが完了することになる。

image.png フォームブリッジに入力→kintoneアプリに直接反映→プリントクリエイターでワンクリック出力

1日多い時で30件ほどの申請を受け付けますが、以前は紙やメールでもらった申請者の情報をこちらで転記していました。今では転記不要で確認だけで済んでおり、大きく業務効率化につながっています。申請者もタブレットやスマートフォンを使っていつでも情報が入力できるようになり、使い勝手がいいと喜びの声が寄せられています」と武井氏。なお、kintoneからリマインダーとしてメールが管理者に一斉通知される仕組みとなっており、返却されていないものがあればインシデント情報として管理者に伝わるようになっている。

旅客ターミナル運営本部 免税事業部 成田営業所 業務課 課長代理 武井 育子氏

工事届については、臨時パス申請同様に工事日や持ち込む工具、搬入するトラックなど申請に必要な情報をフォームブリッジにて工事業者自ら登録し、プリントクリエイターにて工事届を出力。一般のエリアであれば成田空港へ提出し、制限エリア内の工事であれば税関へも同様の工事届を提出することになる。工事管理については、店舗などの現場から写真付きで修理の依頼をkintone上に直接書き込み、それを受けて工事事業者を内部で手配、実際の工事完了までが一覧でステータス管理できるようになっている。依頼した工事内容の抜け漏れが防止できるようになったと好評だ。

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          工事管理アプリ。現在のステータスがひと目で確認できる。

3分の1ほどの工数削減に貢献、業務がワンストップで管理できる

 今回kintoneを導入したことで、業務の標準化はもちろん、業務の効率化に大きく寄与していると山岸氏の評価も高い。「臨時パス申請や工事届など従来必要だった転記作業がなくなり、おそらく3分の1ほど工数が削減できています。転記ミスもなくなるばかりか、入力ミスなどのリスクが申請者側の責任となり、我々としてのリスクヘッジにもつながっています」。

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              kintoneの導入で圧倒的な工数削減を実現

江藤氏は、業務プロセスが一連の流れで管理できる基盤が整備できた点を強調する。「これまで業務を行うためには、電話にて連絡を受け付けたうえで、メールにて送られてきた情報を転記し、申請書を個別に作成するなど業務が分断していたのです。今ではkintone上に外部入力した情報が生かせるようになり、情報共有や業務プロセスがワンストップで管理できるようになっています」。kintoneについては、誰にでもわかりやすいインターフェースであるだけでなく、サーバー管理の不要なクラウドサービスだけに管理の負担も大きく軽減しているという。「課題に対する解決策としてkintoneはイメージしやすい。管理管轄元は違えども業務フローが大きく変わらない羽田のほうからも導入したいという声が届いています」と山岸氏。

 なお、今回提案から開発支援、サポートまでを富士ゼロックス千葉株式会社が手掛けているが、高い技術力はもちろん、ユーザー側に立って提案を行ってくれる点を江藤氏は高く評価する。「現場の課題を1つずつ解決していくことにkintoneを生かしており、それを手掛けてくれている点はとてもありがたい。末端の業務にはExcelや紙で行っている業務もたくさんあり、なかなか手が出しにくい部分なのは間違いありません。私がこちらに異動して業務の標準化を少しずつ進めていけるのも、パートナーの存在があってこそ」。山岸氏も「やりたいことはイメージできても、それが具体化する案がなかなか持てないなか、富士ゼロックスさんは我々にとって救世主のような存在で本当に助かっています」と語る。

商品掲載の入稿ツールとして活用、外部との連携も加速

 今後については、免税店で扱う商品をインターネットで事前注文できるECサイトでの商品掲載業務にkintoneを活用したいという。「事前に商品を予約してお店でお渡しするサービスなのですが、ECサイトに掲載する商品数が多く、商品の入れ替えも頻繁に行われます。商品情報をメーカー側で直接kintoneに入力してもらうなど、ECサイト掲載のための入稿ツールとして活用したい」と武井氏。また採用計画の情報基盤としてのkintone活用も計画しており、現場業務の効率化にさらに活用していきたいと山岸氏。「社員の臨時パス申請がグループウェアから連携して行えるようにするなど、電子化によって紙を減らしていくようなことにも活用したい」と今後について語っていただいた。

(2018年10月取材)

※本事例は2018年時点の情報であり、文中の「富士ゼロックス千葉株式会社」は、現在「富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社 千葉支社」へ社名変更しています。

【この事例の販売パートナー】
富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社 千葉支社

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成田国際空港は千葉県を代表する施設のひとつです。安全で快適な空の旅を支えるため、手間がかかっていたパス管理に於ける付帯業務を削減する事に成功いたしました。弊社はお客様のベストパートナーになるべく、業務改善や課題解決をするための最適なソリューションを通じて、企業の競争力強化を支援いたします。