大陽日酸 様の導入事例

大陽日酸

【業務内容】
エレクトロニクス窒素や材料ガスから関連装置まで、トータル・ソリューションを提供
【利用用途】
ワークフロー、掲示板、コンテンツ管理、契約書管理など
  • グループ全体53社8,000名の業務基盤として利用するkintone
  • パートナーの伴走支援により少人数でシステム移行を完遂

産業ガスが持つポテンシャルを最大限に発揮した事業を展開している大陽日酸株式会社では、業務基盤として長年運用してきたNotesからの脱却を図るべく、掲示板やワークフロー、ライブラリなどの機能をkintoneにて実装、グループ8,000名の業務基盤として活用している。kintone導入の経緯や他のノーコード/ローコードツールとの使い分けも含め、経営企画・ICTユニット ICTマネジメント統括部 業務デザイン部長 伊左治 和子氏、同部 デジタルコミュニケーション課長 丸山 学氏、同部 デジタルコミュニケーション課 神野 光恵氏および大陽日酸システムソリューション株式会社 ソリューション本部 副本部長 須永 史朗氏と同本部 グループICT促進部クラウドサービス課 佐々木 夏紀氏にお話を伺った。

【課題】老朽化したNotesからの脱却に向けて新たな業務基盤を模索

1910年の創業以来、産業ガスのリーディングカンパニーとして国内産業の発展に貢献し続けている大陽日酸株式会社。2020年に日本酸素ホールディングス株式会社の元、国内での産業ガスおよび関連機器の製造・販売を承継しており、産業ガス事業やエレクトロニクス事業、プラントエンジニアリング事業、メディカル事業など多角的に事業を展開している。安心安全かつ高品質の産業ガスを提供することで、あらゆる産業の発展と社会活動における課題解決に貢献する企業を目指している。

同社において、グループ内のICT化推進を担っているのが、経営企画・ICTユニット ICTマネジメント統括部だ。「我々の位置付けとして、業務のデジタル化・業務効率化と生産性向上を推進することで、大陽日酸グループの企業風土、企業文化を変革することを重点戦略に掲げています」と伊左治氏は説明する。またグループ内での情報システム機能会社としてICTシステムの導入から運用保守までを担っているのが、須永氏や佐々木氏が所属する大陽日酸システムソリューション株式会社で、従来から運用している基幹システムや業務システムはもちろん、ネットワークやインフラ、クラウドサービスの利活用含め、グループ内でのICT化をともに推進している。

そんな同グループでは、業務基盤として旧IBM Notes/Dominoを長年活用してきたが、製品の老朽化に伴って新たな環境づくりに着手することに。「Notes脱却をテーマに、新たな環境では機能をすべて集約せずに、さまざまなソリューションを組み合わせることで長所を生かせる環境づくりを目指したのです」と伊左治氏は当時を振り返る。

業務デザイン部長 伊左治 和子氏

かつてのNotesに機能を集約しすぎた反省から、扱えるメンバーも限定されてしまうなど属人化の弊害も危惧されていた。また、既存のNotesではモバイル環境での対応が困難だったことから、業務の効率化も視野にモバイル活用できる環境づくりも意識した業務基盤の整備を目指すことになったのだ。

なお、今回のプロジェクトは、Notesアプリの移行検討からkintoneの導入・その後の運用まで、同社のkintoneチーム6名に加え、伴走型の支援を継続して行っている伴走パートナーの少数精鋭で進められている。

プロジェクト体制図

【選定】作りやすさと高いメンテナンス性を兼ね備えたkintoneに注目

従来の環境では、作り込まれたNotesDBアプリが2,500を超えており、これら業務アプリを棚卸したうえで、必要なアプリが実装できる環境を選定することに。「新たな環境では、スピード感を重視し、ノーコード/ローコードツールを駆使して短期間でアプリ構築できる環境を考えました。最終的には600ほどのアプリに絞ったものの、内部のリソースだけでは移行することも大変です。内製化はもちろんですが、外部パートナー含めて技術者が確保しやすいよう市場での普及度合いが高いものが理想的だったのです」と須永氏は説明する。また、メールや経費精算など専用ツールとうまく組み合わせる方針でツール選定を行っていったという。

ソリューション本部 副本部長 須永 史朗氏

そこで注目したのがkintoneだった。実は当時から顧客管理の基盤は別サービスを利用していたものの、600ものアプリを移行する基盤としては難しいと判断。「ユーザーインタフェース含めた作りやすさを考えた場合、ドラッグ&ドロップで視覚的に作っていけるkintoneであればアプリ移行も可能だと考えたのです」と須永氏。また、NotesDBのようにkintoneアプリの粒度が1DB1アプリに近い感覚もkintoneを評価したポイントに挙げている。

さらに、高度に作り込まれたNotesDBの反省から、ある程度同じ目的のものは汎用的なアプリを作成し提供することを方針として掲げた同社。アプリ製作を行っている佐々木氏も「ベースのアプリを複数作成し、コピーして配布するような形で移行を進めていくことができました。kintoneであれば、今後もスピーディーにアプリを展開できるイメージもつきました」と評価する。メンテナンス性を考慮してできるだけ長く使っていける仕組みづくりを進めていったという。

グループICT促進部クラウドサービス課 佐々木 夏紀氏

実は、Notesから移行した企業に訪問し、kintoneの開発や運用などの評価を聞いたことも大きかったという。「同じ産業ガス業界ではありませんが、Notesからkintoneに移行したお客様の声を聞き、これなら使えるという判断もしています」と伊左治氏。

結果として、Notesの移行先となる、同社の業務基盤としての新たなプラットフォームに、kintoneが採用されることになったのだ。

【効果】8,000名を超えるグループ業務基盤へと進化を遂げるkintone

作成されたテンプレートをベースに展開を加速、掲示板やワークフローアプリを運用

現在は、同社や日本酸素ホールディングス含めて、53社にて8,000名を超えるユーザがkintoneを活用しており、試験的なものも含めて700ほどのアプリを運用している。「業務アプリの目的に応じて20ほどのテンプレートを用意しています。基本的な運用はテンプレートをベースに行い、汎用的なプラグインを複数導入したうえで、現場の要望に応じてアドオン開発によるカスタマイズも実施しています」と佐々木氏。アプリの種類を大きく分けると、掲示板や各種ワークフロー、そして改版機能が備わったライブラリなどのアプリが実際に活用されている。現時点でも毎月40ほどのアプリ開発要望が寄せられており、要望を検討しテンプレートの適用などを考慮しながら、毎月2〜3の新規アプリが追加されている状況だ。

kintoneアプリのなかでは、データ連携ツールを用いて基幹システムとの連携を行っているものもある。具体的には、人事マスター更新などは人事システムと、振替処理や臨時の支払手続きなどはkintoneのワークフローを動かし、その結果を反映させるといった連携だ。「kintoneがインターフェースとしてあることで、モバイル環境でも利用しやすくなっています」と伊左治氏。さらにkintone含めたSaaSへのアクセスは、端末を限定してアクセスを可能とするなどセキュアな環境を整備している。

新情報基盤の概要図

掲示板アプリについては、グループ会社ごとに掲示板を設けており、それぞれ閲覧権限を設定したうえで情報共有が行われている。ワークフローについては、異動届など総務的なものから、金額ごとに承認者が変更になるような購買承認などさまざまなものがあり、社内手続きにて必要なワークフローの大部分はkintoneにて行っている。例えば紙で行っていた判取りアプリと契約書管理アプリでは、部署をまたいで押印が必要な契約書を、kintoneのワークフローで申請承認を行い、電子契約の仕組みと連携させている。

掲示板アプリと判取台帳アプリの画面

本社や支社の押印申請の書類を何度も往復させることなく契約まで進めることができ、印紙不要で契約先との契約業務を完了させることができています」と神野氏は説明する。現在は社内での展開を進めており、いずれは関係会社にも展開していく計画だ。

ライブラリのアプリは、利用している会社ごとの規定や運用ルールなどを書庫としてkintoneアプリにまとめ、参照用途として活用しているものだ。「エンジニア中心のグループ会社では図面や取り扱いマニュアルなどの技術系ライブラリを作っているところもあります。品質管理系の規約やISOに関連した記録を保管するようなものをライブラリとして運用している企業もあります」と須永氏。

なお、Notesからの移行については、メールや経費精算など専用アプリの移行とともに、多くのメンバーが使う掲示板などのアプリから徐々に現場への展開を進め、2年ほどかけてNotesの終了宣言を行っている。原則としてNotesDBの過去の情報は移行しない方針とし、必要な過去の情報のみ、HTML形式で閲覧できるような形で移行を成功させている。

業務デザイン部 デジタルコミュニケーション課 神野 光恵氏

業務デザイン部 デジタルコミュニケーション課長 丸山 学氏

社内への展開を加速させるkintone道場

kintoneについては、業務効率化を加速させるため、現場担当者でもアプリ開発ができる方針とした。現場でのアプリ開発を進めていくにあたって、野良アプリが無数に存在してしまうような状況を避けるべく、kintone道場と呼ばれる講習会を定期的に開催しており、ICT部門社員が講師となって行うこの講習をパスしたメンバーにのみアプリの開発権限を付与していくような取り組みを進めている。「全てICT部門のみが対応するのではないと考えており、スピード感を持って現場でアプリ開発に取り組んでもらえるような環境整備を進めています。まだ始めたばかりで道半ばではありますが、何名かのパワーユーザーが自分たちの現場に適したアプリを開発するような実例も出てきています」と須永氏は工夫について語る。

また、8,000を超える社員が利用するワークフローだけに、汎用的に使えるよう、利用者自らが承認者などの設定値を変更できるようにする仕組みを用意することで、迅速な展開を可能にしながら運用コストの削減も図っている。「人事異動などで初期設定した承認者を変更する際には、kintoneにて変更申請をあげてもらい、承認ボタンを押すと自動的に変更できる機能も実装しています。利用する会社が数多くあるため、申請以外にも任意のタイミングで自ら変更が反映できる機能も用意しています」と佐々木氏は説明する。

同社では、現在クラウドサービスとして各種システムを活用し、やりたいことによって、 kintone以外でもシステム化している。「例えば現場からの要望に対しては、ICT部門で要望に適しているシステムを検討したうえで最適なシステムを選択し開発しています。この辺りはkintoneと各種システムを棲み分けながら活用を進めていく計画です」と丸山氏。

どう棲み分けていくのかは現在検討中ではあるものの、グループ全体で使うような仕組みはkintoneで実装し、特定の部署が持つ課題であれば個別課題に特化したサービスで解決していくといったものが現実的だと伊左治氏は使い分けについて説明する。

テレワークへの移行がスムーズに、大きなコストメリットも得られる

Notesからkintoneへの移行を早期に実現できたことで、コロナ禍においてテレワークを余儀なくされたタイミングでも、スムーズにテレワークへ移行できたことは何よりも大きいという。「開発のしやすさから、移行コストは大きく抑えることができました。kintone以外であれば相当コストがかかっていたはず」と丸山氏は評価する。アプリをシンプルにテンプレート化し、簡単にコピーしていけることで展開のスピードも迅速だったとその効果を実感している。「今やkintoneが業務基盤の標準になっており、モバイル対応によってどこからでも業務を進めることができるようになっています。なにか新たな業務が発生した際はkintoneで作りたいという声が上がるほど。専用ツールでの業務でも、承認データだけkintoneに持ってきて承認したうえで、結果だけ専用ツールに返して欲しいなど、とても浸透しています」と伊左治氏の評価も高い。

契約管理の仕組みでも、紙によるやり取りがなくなり、かつ印紙代も削減できるなど、アプリを展開するたびに効果が生まれていると神野氏。「現在進めている中期経営計画のなかでは、オペレーショナル・エクセレンスの追求という重点戦略を掲げており、コスト削減目標が設定されています。各業務の効率に伴う生産性向上やアプリ開発および運用コストの削減に寄与するkintoneは、その一翼を担っているものの1つと言えます」と評価する。

導入効果の一例、ペーパーレス化による業務効率の向上とコスト削減

グループ内で異動される方が多く、新しい赴任先でも前の会社で使っていたkintoneアプリを使いたいという声がよく上がってきます。グループ全体で100社を超えていることから、自然とkintoneをグループ全体に広げていくことができています」と佐々木氏は展開のしやすさについて評価する。

kintoneに対する現場からの評価も上々だ。「アプリやレコード、フィールドと分かりやすく表示されており、分岐も複雑でないため、直感的に触りやすい。マニュアルも各部署で作ってもらってはいるものの、マニュアルを見ずとも使っていけると好評です」と神野氏。社長をはじめ、経営層も含めてkintoneを活用しており、順調に活用が進んでいる状況だ。「多くの方から評価いただけており、いいものを選んで良かったと正直に思っています」と伊左治氏。

パートナーによる併走型支援とkintoneコンテンツの充実が社内展開に貢献

今回のプロジェクトにおいて、kintoneの開発からアドバイザリーとして伴走型の支援を継続して行っているのがコムチュア株式会社だ。Notes移行のプロジェクトから同社を支援しており、不足しがちな内部リソースを補完するべく開発やプラグイン提供、展開支援など幅広いサポートを行っている。「Notes移行PJ当初から継続して参画いただいている方もおり、強力なパートナシップを結んで支援を行っていただいています。実現したいものの知見がない部分に対して支援いただいており、とても助かっています」と須永氏は評価する。

伴走パートナーの強み、1最新技術動向の収集、2知見の活用とノウハウの蓄積、3開発メンバとして柔軟に活用、4当社環境や設計などの理解

コムチュア社とのkintoneアプリ上における情報共有例

kintoneは、基本操作に関するコンテンツが充実しており「初心者向けに、データを見る、編集する、検索するといった基本的な機能の紹介など、社内向けのWebセミナーを開催する際の資料として有効に活用するなど、役立つコンテンツが豊富にあって助かっています。かなり厚みのあるWebセミナーを開くことができました。」と神野氏は評価する。

グループ全体への展開を加速させ、ワークフロー機能の拡充も目指す

今後については、コムチュア協力のもとkintoneでできることの知見を高めていきたいと神野氏は意欲的だ。「現場からの要望に対して、別のアプリで考えていた部分をできる限りkintoneでできるようにしていきたい。その意味では、把握できていない機能をしっかりと吸収し、いろいろ試していきたいですね」。

さらに、ワークフロー部分だけをkintoneで実装していくことはさらに進めていきたいところだという。「セキュリティ要件が高まっているなか、持っているデータをインターネット上に出していくこと自体が難しい場面も。承認フローだけkintoneで簡単に実装できれば、重要なデータは中で持っておき、外でやる部分だけをkintoneに切り出すなんてことを当たり前のように提供できればと考えています」と須永氏。

ユーザに対しても、kintone道場の開催によって扱えるメンバーを増やしていきながら、必要に応じて現場の権限を解放していくことで、現場でも開発や修正していけるような環境整備を進めていきたいと伊左治氏に今後について語っていただいた。(2023年6月取材)

【この事例の伴走パートナー】
コムチュア株式会社

電話番号:03-5745-9730
メールアドレス:kintone_hotline@comture.com

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