高田工業所
- 【業務内容】
- プラント事業・エンジニアリング事業・設備診断事業・装置事業
- 【利用用途】
- 営業活動支援システム・スケジュール管理・固定資産管理システム・技術標準検索システム
製鉄や化学など基礎素材産業に欠かせない各種プラントの設計や施工、メンテナンスまでを手がけている株式会社高田工業所では、時代の要請にあわせたガバナンス強化を推進しながら、業務の効率化や改善を進めるための業務改善プラットフォームとしてkintoneを採用している。その背景について、ICT推進部長 松本 次郎氏、同部企画管理グループ長 高橋広一氏、同部業務プロセス改善 グループ長 讃井将司氏にお話を伺った。
1940年に福岡・北九州の地で創業し、製鉄や化学、石油・天然ガスなどの事業に必要な産業設備の設計からメンテナンスまでを手がけるプラント事業を中心にビジネスを展開している株式会社高田工業所。プラント事業で培った知見を活かし、最適なプラントを生み出すためのエンジニアリング事業や、基礎素材産業の設備メンテナンスでのノウハウを生かした設備診断事業、エレクトロニクス分野における装置化技術をもとにした装置事業などさまざまな分野での事業を手がけており、経済成長が見込まれるアジア地域を中心に海外事業にも積極的に展開している。
そんな同社では、2020年の創業80年をターニングポイントと捉え、ICT導入による全社レベルでの業務効率化と生産性・付加価値の向上を目標に掲げた。その中で取り組んだものの1つが、情報共有の基盤を整備することで企業風土の改革を促し、DX化の第一歩となるデジタル化を促進することだった。「まずは解決しやすい営業部や調達部といった現場部門の課題を拾い上げ、ICT活用を通じて業務の効率化を図るためのプロジェクトを進めました。その1つが、円滑なコミュニケーション環境と情報共有基盤の整備だったのです」と松本氏は説明する。
実は、これまでも案件情報などを管理する基幹システムは運用していた。しかし、現場部門で情報共有するための業務基盤は整備されておらず、個人の予定を管理するためのスケジューラーも十分に活用されていない状況だった。また、誰が何をしているのかが分かりにくいなど、プロセス管理も十分に実施できていなかった。「たとえば案件情報は手帳の中にしか記録されておらず、週1回開催される会議内での報告のみ。他部門への情報共有はメールが主で、過去の情報を探し出すのも大変な労力が発生していました。現場部門で発生する情報を共通のプラットフォーム上でデータ化し、うまく共有できないかと考えたのです」と松本氏。
ただし、日々の業務で忙しい現場部門主導では業務改善への取り組みが思うように進まないため、ICT推進部が主導で行うことに。そこで最初に行ったのが、営業本部で活用できる営業活動支援のための仕組みづくりだった。「実は営業本部の上長が以前ICTの推進に関わっていたため、業務改善に向けて足並みを揃えてもらいやすかったのです」と松本氏。現場部門に受けて入れもらいやすいよう、急激な業務改善ではなく、最低限出来るところからスモールスタートすることに。具体的には、営業日報の提出やスケジュール共有といった、営業活動に役立つ環境整備から始めることになったのだ。
新たな環境づくりでは、基幹システムに保管されている案件情報をうまく活用できること、大がかりなパッケージではなく現場部門の課題にすばやく応えられ、新しい業務イメージが体現できる仕組みであること、そしてノンプログラミングで構築できる仕組みを検討した松本氏。「基幹システムを担当する情報システム部門に頼るのではなく、基本的にはICT推進部で主体的に進めていこうと考えました。スピード感をもって対応できるよう内製化したいという思いはもちろん、現場部門でも改善に向けた環境が自ら整備できるようなものが理想的でした」と説明する。
そんな折、展示会で同社の課題解決に役立つソリューションとして目を付けたのがkintoneだった。すぐにサイボウズのオフィスを訪問し、働き方改革における先進的な取り組みを目の当たりにしたことで、kintoneが社内の風土改革に資する環境づくりに役立つと考えたという。「kintoneには標準で使えるアプリが揃っており、プラグインも豊富に用意されています。業務改善の基盤として我々が求めているものが実現できると考えたのです」と松本氏。
セミナーに参加した讃井氏も「わずか2時間で、システムの構築に携わったことがない業務部門の方でも一通りのことができるようになり、驚きを隠せませんでした。これだけ簡単に作成できてしまい、ビックリしました」と当時の印象を語る。またサイボウズでは、kintoneとの親和性が高いGaroonが提供されていることも大きかったという。結果として、業務改善の基盤にkintoneを、スケジューラーを中心としたコミュニケーション基盤にGaroonを採用することになった。
まずは「営業活動支援システム」からkintoneの利用を開始し、続けて役員向けの「スケジュール管理システム」や「固定資産管理システム」や「技術標準検索システム」といったあらゆるシステムを展開してきた。現在は、iPadを貸与された50名ほどいる営業本部のメンバー含め、調達部門や総務部門、現場部門の技術社員など150名ほどがkintoneとGaroonを活用している状況だ。
「営業活動支援システム」では、基幹システム内の案件情報をkintone側に取り込んだ「受注情報マスタ」をはじめ、5000枚以上の名刺情報を名刺管理クラウドサービス「Hotprofile」(「ScanSnap」を経由してデータ化)と連携することでkintoneに取り込み、組織で共有化。営業担当者が名刺裏に手書きしていたメモは、kintoneの「名刺個人メモアプリ」にて管理されている。また「営業活動報告面談メモアプリ」には、活動実績のほかにGaroonに入力した面談予定のスケジュールもシームレスに連携し、二重入力の手間を省いている。これまで個人で管理していた営業活動情報をkintoneで一元管理し、見える化することでチームの営業活動に最大限生かすことができている。
「役員スケジュール管理システム」については、Garoonをベースにスケジュール管理を行っている。社外ネットワークからも閲覧できる環境が整備され、秘書部門が個別に入力する必要がある項目の入力インターフェースや詳細な検索機能はkintoneと連携することで実現している。
役員のスケジュールが公開されており、現場部門の社員でも閲覧や書き込みができる
「技術標準情報検索システム」については、これまでイントラ内でしか閲覧できなかった情報をkintone上に展開。施工に関する技術標準文書などの文書を社外からでも閲覧、検索できる環境を整備した。
調達部門の「固定資産管理システム」では、基幹システム内にある3000件ほどの資産情報をkintone上で共有しており、固定資産NO.や資産名などが記載されたQRコードのシールを固定資産に貼付。年2回実施される実態調査時にQRコードを読みとり、最新の情報をkintoneに再入力することで固定資産管理を実現している。
社内のkintone活用の幅を広げていくよう、業務上欠かせないフローに組み込むことでkintone活用がマストな状態にするなど工夫を凝らしている。「現場部門でも業務改善を進めたいという意識はあるものの、マンパワーや予算なども必要です。そこで、ICT推進部のほうで課題をヒアリングし、うまく仕組みを整備していくなどプロデュースすることが全社展開には重要です。ただし、必要な機能があれば素早く実装するものの、もし使わないのであれば無理はさせない。現場部門にとって便利なものを作っていくことで、徐々に広げているのが実態です」と松本氏は展開の工夫について語る。
アプリ作成については、要望に対して完全な仕組みを提供するのではなく、スピード感を重視して7割ほどの完成度で現場に展開し、改善を繰り返しながら使っていくことがコツの1つだと語る。「kintoneを情報基盤に、スマートフォンのカメラとQRコードを出力するプリンタをシンプルに組み合わせて、迅速に現場部門へ展開しました。たとえ、きちんと要件を詰めたうえで1年後に現場部門に展開しても、それはすでに古い仕組みです。現場部門の意見も交えながらトライ&エラーしていくことが活用しやすい仕組みを構築する上では大切です」と松本氏。
kintoneを活用して現場部門の業務改善を進めたことで、当初掲げていた風土改革や働き方改革につながってきていると松本氏は評価する。「たとえ役員であっても、スケジュールが空いていれば許可なく予定をいれていいというルールで運用しています。これまでクローズドな環境だった業務基盤をオープンにしたことで、企業風土改革の一助になっているはず」。「固定資産管理システム」を活用する調達部門も、利便性の高いkintoneに触れたことでExcelで行っていた業務を自らkintoneに移行するなど、自然に広がってきている面も風土改革における成果の1つと見ている。営業本部でも、商談のプロセスが見える化できたことでトラブルを未然に防ぐことに役立っている。
基本的には内製化を目指した今回のプロジェクトだが、JavaScriptを駆使した高度なカスタマイズが必要な部分は、パートナーである株式会社インフォメックスが手がけている。「基幹システムの領域でもお世話になっており、我々の業務をしっかり、ご理解いただいているためとても助かっています。情報システム部門との橋渡しやアプリ開発の支援など、いろいろコーディネートしてくれて感謝しています」と松本氏。
現在も業務改善プロジェクトは継続的に実施しており、全社規模で申請承認処理が可能になる「電子決裁システム」の展開が予定されている。また部門ごとにkintone のスペースを作って自由にアプリ開発できる環境も提供。ICT推進部だけでなく、現場部門主体で業務改善に役立てていけるような活動も広げていきたいという。
そのためには、kintoneの利便性を広く社内に認知してもらうための活動も欠かせないという。「今は電子決裁システムを優先的に展開していくことを考えていますが、kintoneを使うことによるメリットをしっかり社内にフィードバックし、多くの人に使ってもらえるような施策にも取り組んでいきたい」と高橋氏は力説する。
部門ごとにアプリ作成を推奨している一方で、内部統制上のルールなどに十分配慮していくことも念頭においている。「情報システム部門で規定している『クラウドサービスの利用規約』などのルールに逸脱した使い方をしていないか?といったチェックは、ICT推進部にて行う必要があると考えています。積極的に活用してもらえる環境整備は進めながらも、きちんと統制のとれた環境にも配慮してきたい」と松本氏。そして、いずれはExcelでの業務から脱却し、全てkintoneに置き換えていくことが理想だと最後に語っていただいた。
(2020年9月 取材)
・Garoon(サイボウズ株式会社)
・HotProfile(株式会社ハンモック)
※プラグイン・連携サービスはkintoneスタンダードコース以上でご利用いただけます
TEL:093-663-1303
FAX:093-682-0311
E-mail:eigyou_sec@infomex.jp
kintoneアプリを使った業務改善を実践しており、お客様の課題に対してより具体的に提案を行えることが強みです。
kintone単独の運用だけでなく、お客様が運用中の基幹システムとの連携や、他のクラウドサービスとの連携の実績もあり、システムの大小問わず対応可能です。導入のみやお客様での開発サポートも行っておりますので気楽にお問合せください。
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