住友商事
- 【業務内容】
- 総合商社、輸送機・建機業務
- 【利用用途】
- 案件管理、議事録管理 他
住友商事株式会社が事業展開する6つの営業部門の1つである輸送機・建機事業部門では、IoTの活用が広がる自動車産業など、担当領域において新たなビジネスが勃興。新たなビジネスに経営資源を振り分けるべく、既存業務の効率化を掲げたタスクフォースを立ち上げ、ITツールの活用を推進している。
この業務効率化に寄与するソリューションの1つにkintoneが採用されているが、その背景について、輸送機・建機業務部 クオリティーマネジメントサポートチーム 柏倉 将吾氏、戦略・企画チーム 部長付 西本 るい氏、および人事チーム 増田 遥香氏にお話を伺った。
住友商事は、金属、輸送機・建機、インフラ、メディア・デジタル、生活・不動産、資源・化学品という6つの営業部門を持ち、世界66の国と地域に事業を展開。国内・海外の地域組織が連携し、幅広い産業分野でビジネスをグローバルに展開している。
それら営業部門の1つである輸送機・建機事業部門では、総合リース事業、航空機・船舶・自動車・タイヤ・建機業界におけるバリューチェーンを俯瞰し、製造・流通・金融・サービス分野で事業展開をしている。
そんな同事業部門にも、時代の変化の波が押し寄せている。自動車業界でのMaaSの動きのように、高度な技術革新を背景にした消費者の価値観の変化とビジネスモデルや業界構造の変化が、自動車に限らず全ての領域で起こり始めており、新たな価値創造のチャンスが広がっている。
元来、時代のニーズを敏感に捉え、自らを再定義し続けてきた総合商社であるが、昨今のダイナミックな変化にあっては、従来の勝ちパターンや強みを生かしながら、変化の先にあるニーズをしっかりと捕まえ、新しいビジネスを生み出していくスピード感がいっそう求められている。
「既存のオペレーションは効率化・高度化していき、新しい価値創造・ビジネスの進化に、積極的にリソースを充てていくのが部門の方針。」と西本氏は同事業部門における状況を説明する。
新たな価値創造にかける時間を確保するためには、既存業務の見直しを含めた業務改善が欠かせない。そこで、営業とコーポレートの中間に位置する部門業務部というミドルオフィスにおいて、人事・IT・業績管理・戦略・総務など異なる領域を担当する複数ラインから人を集めた、業務ICT支援タスクフォースが結成され、業務改善のためのソリューションを検討することになったのだ。その切り口の1つが、ロボットによる業務支援を実現するRPAであり、今回導入した情報基盤としてのkintoneだった。
「当部門内の業務は、他業界に見るような窓口業務やコーポレートのバックオフィス業務と違い、そもそもビジネスが多岐に亘ること、かつ事業現場がグローバルであるがゆえに、一見似たような業務でも国・相手先の事情に合わせてやり方が異なり、営業部ごとに小粒の業務が散在している状況。個別最適が進み、定型化・標準化の難易度が高いことが、自動化や業務改善と一口に言っても難しいところでした。」と西本氏は指摘する。
もともとkintoneを導入したのは、業務改善のプロジェクトがきっかけではない。実は、業務部内のある事務職メンバーが、自分が担当する、事業現場や取引の中で発生する様々な情報を収集する業務を、どうにか効率化・高度化できないか、思案する中でkintoneに出会ったことが、そもそもの始まりだった。
「グローバルな事業現場から、さまざまな報告が我々の部署に集められ、それらの内容を複数の部署に共有する必要があります。報告は、メールやメールに添付された文書、Excel、時には現場の写真など、形式がさまざまです。案件管理をしたくて、報告受領日や地域・部署などの属性情報を加えたExcelを作っていましたが、文字数には限界があり、すべての情報を入力しきれません。また、添付ファイルは別の場所に保存するしかありません。データベースとして俯瞰性を欠くExcelの案件管理表は、正直手間ばかり掛かり有効に機能していない状況でした。」柏倉氏はそのきっかけを振り返る。そこに、kintoneが情報の一元管理に使えるのではないかと目をつけたのだ。
ExcelやAccessでの開発も含めて複数のソリューションを検討した結果、テキストだけでなくPDFや、JPEGなどのバイナリデータが一元管理でき、自分たちで自由に変更可能なkintoneが選ばれた。
「ITツールの導入は、本来であれば全社導入を前提に検討しますが、プロジェクト自体が営業ニーズに近いところにあるため、コーポレートと相談しながらトライアルを実施するという役割も担っています。だからこそ、すぐに仕組みが構築できるkitnoneが最適だと判断したのです。」と柏倉氏は説明する。
また、どこからでも閲覧でき、入力可能なクラウド環境であることは潜在的な要件だった。
「英語、中国語にも対応しており、将来的な拡張性の面でもkintoneを魅力的に感じました。」海外拠点ともやり取りをすることが多いという人事チームの増田氏。レスポンス的にも画面展開が早く、ストレスなく使える面も評価したという。
ただし、実はパブリッククラウドを利用すること自体、同社では知見がほぼないものだった。
「導入当時はセキュリティやガバナンスの観点から、クラウド自体が認められていませんでした。そこで、IPアドレス制限や詳細なアクセス権限の設定など、セキュリティについて十分担保できることを念頭に、導入を強力に推し進めていったのです。」と柏倉氏。
将来的なクラウド利用規定の整備に向けて、コーポ―レート部門がクラウド利用に関するチェックリストのドラフト版を整備している最中だったことも幸いし、そのチェックリストを参考にしながらkintoneを評価していくことに。
「セキュリティも含めて詳細に調査し、エビデンスをベースにコーポ―レートと共働できたことは大きかったです。」と柏倉氏。
この情報共有・管理ツールとしての導入を皮切りに、部門としてkintoneの運用を開始し、その推進部署として、業務部内では柏倉氏の所属するQMSチームから、予算・業績管理チームや戦略・企画チーム、人事チーム、そして営業部に対しても、草の根的にkintoneを広げていくことになったのだ。
現在は、組織やプロジェクトごとにスペースを用意し、アクセス制御を行ってセキュリティを担保しながら、100を超えるアプリを作成して日常業務に役立てている。運用の中では、Excel同様の表現や機能をkintone上で実現する “krewSheet” をはじめ、kintone内の情報を外部に公開可能な “kViewer” など、さまざまなプラグインを活用。現場の課題解決に向けた手段の1つとしてkintone活用が広がっている状況だ。
「世界中を飛び回る営業の場合、1日30通もの面談録がメールでやり取りされることも。この面談録を後で振り返るためには、メールをスクロールして該当の情報を探す必要があります。我々業務ICT支援タスクフォースのメンバーがそれらのニーズを拾い、 “それならkintoneを使ってみませんか”とアドバイスするわけです。このような形で現場にkintoneが浸透しつつあります。」と増田氏。
今回の取材申し込みに対し、同社から一押しということで紹介があったアプリは、業務改善のもう1つの切り口であるRPAの導入に関するものだ。RPA化対象とする業務ごとの案件進捗管理や開発の工数、効果の測定などを記録している。
「どの業務にどのようなロボットを適用し、それがどの程度の時間削減目標となっているのかといった、案件ごとの状況をレコード単位で管理しています。案件の進捗状況やロボット制作のコスト、目標達成率などを、ダッシュボード上のグラフで見える化することが可能です。」と柏倉氏は説明する。
タスクフォース内では、情報交換やミーティング議事録、To Do管理などにもkintoneを活用しているという。
「議事録を共有してすぐにコメントにてコミュニケーションでき、修正履歴もきちんと管理できるのはとても便利です。kintoneがなければ、Wordなどをメールに添付して全員に閲覧してもらうなど確認プロセスも煩雑だったはず。」と増田氏も評価する。また、案件管理表があることで、会議のためのアジェンダづくりが不要になったとの声も挙がっている。
さらには、RPAとkintoneを組み合わせることで、普段の業務改善に貢献できる仕組み作りを模索している。
「システムに情報をインプットするような業務の場合、インプットデータを担当者が手元のExcelで管理していることがよくあります。同じような情報であっても用途によって多少必要な情報の粒度が異なってくるために、担当者がそれぞれ、業務ごとに管理表を作っているので、RPA化しようとすると、まずインプットデータのフォームを共通化するところから始めなくてはいけません。
しかし、あらかじめkintone上に必要な情報を集約して共通のデータベースを作っておけば、用途ごとにデータの出力・表示形式を切り替えるだけで済むので、何種類もの管理表を持つ必要がなく、共通フォームをRPAに参照させることで、RPAの開発工数を最小化できると考えています」。
ほかにもチーム横断で複数のプロジェクトを抱えている柏倉氏は「私の上司に対して、以前はExcelで作成したToDoを共有していましたが、今はkintoneを見てもらうだけ。アップデート情報の通知機能や“いいね”ボタンを押すだけの意思確認など、小さな業務改善の積み重ねが大きな効果につながっていくはず。」とkintoneを評価する。
kintoneを導入したもう1つの大きな効果は、業務改善に貢献するツールがあることで発想が膨らみ、改善アイディアを思いつきやすくなったことだと西本氏は力説する。
「部門内では、何かあればタスクフォースのメンバーに相談する流れが生まれており、全社にも波及する動きが出てきています。全社では、内向きの業務を減らして、外向きの業務を増やす“半分2倍”という合言葉で業務の見直しに取り組んでいますが、その先駆けとして、現場に近い我々が行動することで好循環を生んでいきたい。それができるのは、現場で仕組みを構築できるkintoneがあるからこそ。」と西本氏は評価する。
増田氏は「業務が自動化されるような大掛かりなものを作ろうというわけではなく、一人一人が自由に使いこなし、ケイパビリティを広げるツールにしてもらいたい。」と想いを語る。
今後は、同部が現場の声・業務改善のニーズと他部門・コーポレートをつなぐ立場にあることから、全社・コーポレートとの情報共有基盤としてkintoneを活用していきたいと語る。
「契約関係の管理をはじめ、日常業務の至るところで活用されているExcelをkintoneに置き換え、定型フォーマットで効率良く情報管理できる基盤として確立していきたい。いずれは蓄積された情報を宝の山として活用できるよう、情報の置き場としての用途にも期待を寄せています。」と増田氏。
RPAについても、過去の経緯からなかなか標準化が難しかった部門内の業務についても、標準化するところから手をつけ、RPA化の動きをさらに加速していきたい考えだ。
「業務支援ツールの1つとしてRPAをさらに広めていく予定です。案件管理としてのkintoneはもちろん、RPAに対するインプット情報を提供する基盤としてもkintoneをさらに活用していきたい。」と今後について西本氏に語っていただいた。
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