相互電業
- 【業務内容】
- 電気設備工事、LED化工事など
- 【利用用途】
- 精算・請求、案件管理
北海道帯広市に事業所を構える相互電業株式会社は電気工事を中心に行っている企業だ。1956年の創業以来、「まちの電気屋さん」として地域に根ざした経営を行なっている。従業員は30名程度で、10代の若手から80代のベテランまで年代も様々だ。
そんな相互電業でkintoneの導入から社内の活用浸透までを担当しているのは管理部の今野愛菜氏。今野氏がkintoneの導入を進めるきっかけになった理由は「愛犬の茶々丸と一緒に過ごす時間を増やすため」。今回は今野氏に、家族の幸せを一番に考えた末、会社の制度改革やチームワーク向上に成功したエピソードをお話しいただいた。
今野氏が前職から相互電業に転職した当初、社内の業務体制はひと言で表すと「超属人化」状態だったという。工事の案件情報は担当者のパソコンか頭の中にしか情報がなく、顧客から問い合わせがあっても担当者本人でなければ対応ができない状況だった。そのため、案件について分からないことがあった場合は毎回担当者に電話をして問い合わせをしていたという。
そんな状況を改善するべく、ある時社長が一念発起しSalesforceを導入。しかし現場の社員たちは30人が30通りのやり方で仕事を進めていたため、新しいシステムの導入に猛反発が起き、結果的に新システムの導入は失敗に終わったという。
業務の超属人化に加え、現場のシステムアレルギー体質。社内の業務改善は難しいかと思われていたが、あるきっかけにより今野氏が会社の制度を変えるために立ち上がることとなった。
「2018年の秋、仕事を終えて帰宅した際、自宅の窓際で淋しそうに佇む愛犬の茶々丸の姿を目にしました。その時ふと考えたのです。平日は朝8時から夕方5時まで毎日仕事をして、その間茶々丸は家で一人ぼっち。散歩にも行けず、おやつも食べられず、果たしてこの子は本当に幸せなのだろうか?と考えました。そして、私の中で『何かを変えなければ』という強い思いが芽生えたのです」
仕事も頑張りたい、愛犬と過ごす時間も増やしたい。そんな今野氏が考えついたのは在宅勤務制度の導入だった。しかし当時の状況では、必要な紙の書類を全て家に持ち帰らなければいけなかったり、社内にいないとコミュニケーションができなかったりと、とても在宅勤務ができる環境とは程遠い状況だったそうだ。
「在宅勤務ができるようになるためには何が必要なのか。様々なサイトや資料を読み込み、必死に勉強しました。そして出会ったのが、サイボウズが運営するオウンドメディア『サイボウズ式』です。サイボウズ式の記事を読み、在宅勤務ができるような環境にするためには制度とツールの整備が必要だと学びました。そこでkintoneの存在を知り、自社への導入を進めていくことになったのです」
kintoneの導入にあたってまず今野氏が行ったのは、現場メンバーとの話し合い。自由参加のざつだん会を開き、現在問題だと感じていることや、どういう状況になれば理想かという内容を、時間をかけて話し合った。
「脱・属人化をして残業時間を減らしたい、他のメンバーと情報を共有して顧客満足度をアップさせたい、という理想はみんな共通して持っていました。しかし新しいシステムを増やしてほしくないという現場の本音もあります。そこで、一気にkintoneの導入を行うのではなく、まずは移行しやすく効率化が見込める精算請求アプリから徐々にkintoneを使い始めることにしました」
その後、今野氏は精算請求業務に関するワークショップを開いたり、システムに苦手意識を持っている現場メンバーのためにkintone入力のハードルを下げる工夫をしたりと、現場の声を取り込みながらより使いやすい精算請求アプリを作り上げていった。その甲斐あって、精算請求アプリの導入は大成功。作業時間は約半分に短縮され、現場メンバーも好意的にkintoneを使ってくれるようになった。
kintone導入に好スタートを切った今野氏。その調子で社内のkintone活用をさらに進めていこうと、さっそく社内の日報や議事録もkintoneに移行を始めた。しかしスムーズに事が運んだ精算請求管理とは違い、今野氏が作ったアプリはまったく使われなかったという。それならばもっと現場メンバーにアプリの説明をしよう、問いかけをしようと必死に訴えた結果、次第に皆反応すらしてくれなくなってしまった。
「私はkintoneを使って欲しい一心で社内に呼びかけを行っていましたが、一旦冷静になって現場メンバーに話を聞いてみることにしました。すると、現場は『日報には特に困ってないのに』『それをkintone化したら余計不便になる』と困惑していた事が発覚したのです。独りよがりの業務改善では皆が付いてきてくれるはずがありません。私はこの失敗を反省し、次のステップに活かすことに決めました」
一旦kintoneにこだわらず、社内で「業務を良くしていくためのワークショップ」を開催することに決めた今野氏。社員一人一人が改善したい事、継続したい事、挑戦したい事を紙に書き出し、その意見をもとに各部門の問題点や改善点を洗い出していく手法を取った。
このワークショップを開催した効果はてきめんで、各部門から自然に「これはkintoneで解決できるんじゃない?」と自発的な意見が出てきたという。その後、各部門長が話し合いを重ね、全社的に今一番問題となっている部分にターゲットを絞り、皆が同じ理想に向かって改善をしていくという方向性にシフトしていった。
「ワークショップで話し合った結果、まずは案件管理をkintoneのスレッドで行う事に決めました。今までは担当者の頭の中にしかなかった案件の情報をkintoneのスレッド上で共有し、他のメンバーも情報を見られるようにしました。すると、今までほとんど話した事がなかった先輩社員が『その工事得意だから、一緒に行こうか?』と書き込むなどやり取りが発生したのです。社内にチームワークが生まれた瞬間でした」
今までは同じ会社内でも世代間に隔たりがあり、関わることが少なかった。しかしkintoneを導入し、それぞれのメンバーの活動や考えが見えるようになったことで、若手のつぶやきを見たベテラン社員が声を掛けたり、手助けをしたりするような風土が出来上がったという。
「kintoneの導入を通じて、社内からは『自分たちの手で会社は変えられるんだ』という意識が芽生えたと思います。新たな人事制度も採用され、会社もどんどん働きやすい環境に変わっています。今までシステムアレルギーを持っていた社員からも『今度はこんなツールを導入してみたらどうだろう?』といった、自主的な提案も起きるようになりました」
こうして相互電業でのkintone活用が浸透し、ついに今野氏念願の在宅勤務制度も採用されることになった。
また、今後は取引先とのやりとりにもkintoneを採用していく案もあがっており、社内外問わずkintoneを使った業務改善を推し進めていきたいと今野氏は熱い想いを語ってくれた。
「家族と過ごす時間を増やしたい」という強い思いから始まった、社内改革。最初から「できない」と諦めずに自ら行動した今野氏の功績は、多くのkintone担当者の背中を押すだろう。
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