資生堂
- 【業務内容】
- 化粧品やヘルスケア製品の開発、製造、販売
- 【利用用途】
- Notes 移行、研究開発管理
株式会社資生堂は、さまざまな化粧品ブランドや事業を、約 120 の国と地域に展開する日本を代表するグローバルカンパニーだ。「一瞬も 一生も 美しく」をコーポレートメッセージとして掲げ、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指している同社は、売上 1 兆円超、営業利益 1000 億円超という数値目標を掲げた中長期戦略「VISION 2020」に現在取り組んでいる。
そんな同社は、2018 年に竣工となる、世界 5 カ国 9 カ所の研究開発拠点のハブ「グローバルイノベーションセンター」(以下、GIC)の稼動に際して、これまで IBM Notes(以下、Notes)によって構築、運用してきた掲示板やデータベース、研究テーマの管理に利用してきた Excel での運用管理を改善すべく、両者を刷新するための基盤として kintone を採用した。kintone 導入の経緯について、 GIC統括運営部 総務管理グループ 柴田 隆氏および R&D戦略部 研究企画推進G マネージャー 丸山 菜生氏、同グループ 小野 隆之氏にお話を伺った。
同社は 1990 年代後半から Notes で業務システムを構築していたが、研究開発の強化を世界各国で推し進め、拠点の拡張や GIC の稼動を予定する中で、情報の鮮度や維持管理の観点から、Notes から新たな環境への移行を検討開始した。
研究所の情報基盤として長く活用してきた Notes だが、「技術者不足によりメンテナンスが困難」、「サポートベンダの乗り換えによって仕様書が十分に残っていない」など、さまざまな課題が顕在化していた。
「グローバル化をさらに推し進めていくためには、インターフェースの英語化なども必要です。数百ある Notes DB を海外へ向けて発信するためには、多くのコストと時間がかかってしまう状況にありました。移行はもちろん、情報共有のための仕組みがシンプルに構築できる仕組みを検討しました」と柴田氏は語る。
一方で、研究所内で研究テーマを一元管理し、会議体の設定やテーマの運用、顧客への価値創造などについて研究者を支援してきた丸山氏も、現場の運用について課題を持っていたという。それは研究テーマの Excel による管理だ。
「グローバルに展開する研究所に在籍するチームそれぞれに研究テーマを期初にまとめてもらい、フォーマット化された Excel をベースに情報を送ってもらっていました。約 40 チームほどから Excel シートが届けられ、その情報を我々が管理用のシートに転記して運用してきました」。
この Excel は管理項目が多く設定されていたことで、迷子になるぐらい横長のシートで使いづらい状況が続いていたと丸山氏。また、1 年ごとにシートで管理していたことで過去データの継続性が悪く、事前に設定したフォーマットに新たな項目を追加したり、異なるフォーマットをそのまま転送したりなど、チームによって寄せられる情報の粒度が異なってしまっていた。「属人化した形で情報が届くため、それらの情報を統合するだけでも多くの時間が必要でした」と丸山氏は当時を振り返る。
Notes から移行する基盤については、「スピード」、「移行コスト」、そして「24 時間のサービスが可能なインフラ」を検討した柴田氏。
「各チームが必要に応じて手を入れることができ、かつすぐに公開できるというスピード感を重視しました。以前の Notes では、サポートベンダに維持管理を依頼しても、我々がイメージした通りにフレキシブルかつスピード感を持って対応できるところが少なく、一つの DB を見直すのに一ヶ月かかることもありました」。自分たちでもちょっとした修正が可能なインフラが必要だったという。
また、コストの面で重視したのは、Notes からの移行部分だ。「RFI の段階で16社に声をかけましたが、全体のコスト感と移行における実現性もしっかり確認し、安心して任せることができるかどうかが大きなポイントでした。Notes からの移行ツールなどを用いてできる限り素早く機械的に行う事で、現状の Notes DB 500 個をすべて移行しても、人件費や、プロジェクト進行作業にかかるコストが抑えられるものを希望しました」と柴田氏は語る。なかには従来のウォータフォール型でシステム開発する提案もあったようだが、同社が望むコストとスピード感としては難しい面もあったと振り返る。
24 時間のサービスという面では、当初からクラウドサービスでの基盤を視野に入れていた柴田氏。また、2015 年にオンラインストレージの Box を導入し、研究所内にある端末データは基本的には Box に保存するという運用が定着しつつあるので、この Box と連携できるサービスであることも製品選定のポイントの 1 つだったという。
これらの要件に合致したのが kintone であり、Notes からの移行ツール「Smart at migration」を持ち豊富な移行実績を持っていた M-SOLUTIONS 株式会社(以下、M-SOLUTIONS)だったのだ。Notes の設計情報をもとに kintone アプリの自動生成、データ移行を行うため、調査期間・アプリ構築時間・コストを従来よりも大幅に削減できる。
また、研究テーマの Excel 管理も kintone に合致した。
「kintone なら Excel とは違い、インターネットさえあれば、研究者全員がいつでも最新の研究テーマやその内容など詳細な情報が簡単に共有でき、過去の情報もきちんと蓄積、検索できる。数年前の研究アイディアであっても、環境が整った段階で過去の情報が紐解ける継続性が担保できる仕組みが理想的でした」と小野氏は力説する。
さらに、日本と海外での研究テーマ管理を統合し、研究の進捗状況も同じインフラで管理できるものを希望した。「自由度の高い Excel だと、列を勝手に消してしまったり新たに項目を追加したりする人も。なかには Excel 内に図版を張り付けて提出する人もいて、統合するのに多くの時間がかかっていました」。
必要な項目だけを選択して印刷したり、フィルタをかけて不要な項目を見せないようにしたいといったニーズもあり、これらの要望に対応できるものが必要だったと丸山氏。結果として、研究所内の情報共有基盤として利用してきた Notes および研究テーマの Excel 管理を刷新するための基盤として、kintone が選ばれることになった
まずは研究テーマ用の Excel を kintone に置き換えることからスタートした同社は、現在は日本の研究者を中心に 1000 名弱がkintone を利用できる状況にある。従来 Excel で入力していた研究テーマはすべて kintone 上に登録され、情報共有されている。以前は期初に研究テーマを集めていたが、現在はテーマの設定から推進への移行や、進捗管理が格段にスムーズになったという。
現在 20 を超えるアプリの中には、システム承認をするためのアプリや庶務連絡に利用する掲示板アプリもある。「システム承認をするためのアプリは、記入した締切日前にきちんと申請を行うよう促せるよう、リマインダー機能を利用して通知できるようになっています」と小野氏。
なお、掲示板アプリは多い時には 1 日 30 件あまりが書き込まれるなど、kintone へのアクセス数が飛躍的に伸びている状況にあるという。
Notes で運用してきた各種 DB は、これから 2018 年末を目処に移行が進められる計画だ。また、Excel 関連のアプリ制作はディベロッパーである M-SOLUTIONS が行った。Notes の移行は M-SOLUTIONS が提供している Notes 移行ツール「Smart at migration」を用いて既存 Notes のサポートチームが行う予定となっている。「Notes の環境すべてを kintone に移行するだけではなく、他のシステムへの移行も含めておよそ 2 年間で移行していく目標です」と柴田氏。
実際得られている効果について丸山氏は「各チームから収集していた Excel を統合するだけでも、以前なら 30 時間はゆうにかかっていました。今では直接 kintone に書き込まれるため統合作業はゼロ、情報管理の負担は大きく軽減されています」と評価する。
Excel に比べて入力も早く、一覧表で見ると漏れている項目も一目瞭然でデータが来ていないチームの状況もすぐに把握できるという。「履歴も残るため、どう変更したのかといったことも把握できます」と小野氏は評価する。もちろんなかなか触ってもらえない一部の人も残っており、さらに啓蒙活動を続けていく計画だ。
システム面では、以前の Notes では利用する際にクライアントアプリのインストールから行う必要があり、環境を整えるだけでも苦労していたという。「kintone であればアカウント追加が容易で、Web ブラウザさえあればすぐに利用できます。IP アドレス制御も可能でどこからアクセスしているのかの導線管理も可能です。アカウントの維持管理がとても楽になっています」と柴田氏は評価する。特にグローバル展開時にはシステム管理として恩恵を受ける部分だと力説する。
今回ディベロッパーとして kintone アプリを開発しているのが M-SOLUTIONS だが、kintone 目線での的確な指摘が多く、優れた提案内容で柴田氏の評価も高い。「Notes 移行ツールにとって想定外の運用も結構ありましたが、知恵を絞って移行可能な形に修正いただくなど、とても真摯に対応していただきました」。
今回のようなアジャイル開発的な手法は慣れていなかったものの、互いにイメージを共有しながら画面を作り、あとから機能を足していくという開発手法が今後の主流になっていくと実感できたという。「3ヶ月である程度形にすることができるなど、アジャイル開発をいい環境の中で体験することができました。とても感謝しています」と柴田氏。
2017 年度中には、現地の社員も含めて kintone をグローバルな環境で利用できるようにしていく計画だ。kintone は、多くのディベロッパーやサードパーティベンダがさまざまなツールを開発、提供しており、自社に必要なものが選べるという点が大きな魅力の1つだと柴田氏。
「さまざまなソリューションを選んで組み合わせていくことができるのは、今後の強力な武器になるはず。」と柴田氏は語る。
また小野氏は、研究資産の DB 化を進めていきながら、情報活用できる基盤として kintone を積極的に活用してきたいという。「研究資産は一部閲覧できるものの、組織ごとに個別管理されている年も。これを機に kintone で一本化していければと考えています」。現場が今以上に慣れてくれば、新たな要望も出てくるはずで、その意見も加味しながらシステムを成長させていきたい考えだ。そして丸山氏は、研究テーマごとの進捗管理をするアプリをもっと活用してもらえるよう働きかけていきたいと語った。
最後に kintone について柴田氏は「いつでもどこでも情報にアクセスできる、身近な情報の宝箱」、丸山氏は「縦にも横にも自由にデータが取り出せる、蓄積できる魔法の箱」、そして小野氏は「自分の子供みたいなもので、成長させていける仕組み」とそれぞれ表現していただいた。(2017年4月取材)
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