品川区役所 様の導入事例

品川区役所

【業務内容】
中小企業の支援活動
【利用用途】
助成金申請システム基盤
  • わずか2ヶ月で自治体におけるオンライン申請の仕組みを整備
  • 中小企業支援に欠かせない助成金申請の基盤に採用されたkintone

京浜工業地帯発祥の地であり、古くからものづくり企業が集積し、また戸越銀座や武蔵小山等多くの商店街が立ち並ぶ品川区において、中小企業や商店街の支援活動に取り組んでいる地域振興部商業・ものづくり課では、各種助成金の申請基盤として、オンラインによる助成金申請システムを整備している。その基盤にkintoneを採用しているが、その経緯について品川区役所の地域振興部 商業・ものづくり課 中小企業支援係長 後藤 真由美氏、同係 主任 粂 英之氏および同係 主任 石田 将也氏にお話を伺った。

【課題】紙での助成金申請急増が職員の大きな負担に

羽田空港の国際化やリニア中央新幹線の乗り入れなど、現在でも交通、産業の重要な役割を担う品川区を拠点に事業を推進している企業は多い。その品川区において、商業および中小企業の振興、経営相談、中小企業事業資金の融資斡旋、創業支援などを担当しているのが、地域振興部商業・ものづくり課だ。商店街支援係や創業支援担当、産業活性化担当など7つの部門に分かれており、そのなかの中小企業支援係では、区内産業振興のための経営相談や助成金に関連した事業を推進している。「現在は新型コロナウイルス感染症対策の一環として、中小企業向けの金融的な支援を積極的に行っており、2万を超える品川区の事業者に対してさまざまな支援活動を推進しています」と語るのは後藤氏だ。

中小企業支援係長 後藤 真由美氏

品川区では、従来からさまざまな形で中小企業に対して助成金申請を受け付けていたが、以前は紙による申請のみで、オンライン上で申請可能な環境は整備していなかった。そういった中、2020年度に「新型コロナウイルス感染症対応特別助成事業(以下、コロナ特別助成事業)」を実施することになり、窓口での申請を受け付けた結果、申請件数は1,400件を超える規模にまで膨らんだという。

「これまでの助成事業は、多くても50件程度の申請数となっており、紙による運用でも十分対応できていました。しかし、コロナ特別助成事業では1,400件を超える規模にまで拡大したことで、業務そのものが膨大になったのです」と粂氏は説明する。そして2021年度についても、同様のコロナ特別助成事業が計画されたことで、これまで行ってきた紙での運用を続けると窓口までお越しいただく事業者の方にとっても、職員にとっても双方の負担が大きいと判断。そこで、オンラインで申請できる環境を整備することになったという。

中小企業支援係 主任 粂 英之氏

【選定】複雑な助成金申請のフローには短期間でも柔軟に構築できるkintoneが最適

過去の実績がkintone導入の決め手に

商業・ものづくり課では、以前から多くの助成事業を推進していたこともあり、コロナ特別助成事業をきっかけに助成金申請をオンライン化できるような環境を目指して2020年度にプロジェクトをスタートさせている。2020年度に品川区家賃支援給付金の助成事業を実施する際に、数千件を超える事業申請が見込まれたため、品川区として初めてオンライン申請の環境整備を進める決断を行っていた経緯がある。

その当時、窓口業務を委託している事業者にシステム整備を依頼、kintoneを活用した環境を整備したことで、この品川区家賃支援給付金に関する助成事業では3,200件ほどの給付金支援が実施できたという。

過去の実績を踏襲しながら、オールラウンドで作り込めるkintoneを評価

「コロナ特別助成事業では添付資料が多く、詳細に内容を精査する必要がありました。 できる限り多くの企業に助成金を申請いただくためには、オンライン申請できる環境が必要だと改めて考えたのです」と後藤氏は説明する。

そこで、競争型入札ではなく公募型プロポーザル方式を採用して複数のベンダから提案を受けることに。 そこで2020年度に実施した品川区家賃支援給付金に関する助成事業で実績を持つサイボウズ オフィシャルパートナーのNDIソリューションズが 、kintoneを基盤としたオンライン申請システムを大きく拡張することを提案した。「自治体における助成金の申請から内部での承認フローは非常に複雑です。その点で見れば、助成金のフローをよく熟知しており、その流れに沿って提案いただけた部分は大きい」と石田氏は評価する。

中小企業支援係 主任 石田 将也氏

また、システム公開時には初年度から20ほどの助成事業を運用することが計画されていたものの、構築期間はわずか2か月という短期間での稼働が求められていた。セキュリティを担保しながら安定稼働できる助成金申請システムを短期間のうちに整備するには、kintoneを含めた実績のある基盤を利用することが最適だと考えたという。「以前の品川区家賃支援給付金の際にも、kintoneはオールラウンドになんでも作り込める印象を持っていました。将来的には内製化できるような基盤である事も望んでおり、オリジナルのシステムを新たに開発しても自分たちで改善することは難しい。その点kintoneであれば十分対応できると考えたのです」と粂氏。

ステータス管理や情報共有の業務運用フローが好印象

そもそも助成金は、事業者が事業に合致したものを事前に購入し、その費用を補填することが基本となっている。そのため、購入する前に申請した段階での“決定”と、購入したものに対して費用を支給する“確定”というステップに大きく区分され、それぞれ審査中や差し戻しなどの申請状況を管理する必要がある。また最終的な支給決定後には交付決定通知書を出力し送付したり、交付先口座への振り込みといった作業もあるため、トータルで10工程以上の状況を適切に管理する必要がある。

「事業者様が申請される際の使いやすさや 、職員が行う業務フローが明らかかどうか、が重要なポイントでした。品川区家賃支援給付金の実績があったからこそ、サンプルの申請画面を含めてご提案いただけたことで選定者でも具体的に利用シーンをイメージできたことが採用に大きく影響した」と粂氏は評価する。

実績も考慮したうえで、品川区が想定していた助成金申請フローに適した基盤としてkintoneが採用され、オンライン申請システムを構築することになった。

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【効果】事業者・職員どちらの負担も大きく軽減しながら、交付決定までの期間も半減

職員の作業効率化に寄与、データ活用が進むなどDX推進の第一歩を踏み出す

kintone上では助成事業ごとにアプリが構築されており、事業者よりWebサイト上から申請が行われた段階で各アプリにデータが自動で登録される 。帳票出力アプリも用意されており、必要に応じて申請内容が出力可能だ。商業・ものづくり課のなかにある中小企業支援係以外の係で行っている助成金受付の基盤としても活用しており、それぞれの助成事業担当者だけでなく、申請業務を一部委託している外部パートナーも含めて15名ほどが利用している状況だ。

kintoneを基盤として助成金申請のプラットフォームを整備したことで、職員の作業効率化に大きく貢献、特に件数の多いコロナ特別助成事業の担当者の残業時間は1人あたり15時間ほどの削減につながっているという。「紙で運用していた2020年度では、メンバーのほとんどが土日出勤しながら処理を行っていましたが、今はそこまでひっ迫していません。ある意味では、自治体における働き方改革にも役立っています」と石田氏は評価する。 これまでの運用では口座振り込みの際、紙からExcelに転記する必要があったが、今では登録されている口座情報を出力し「振込先一覧データ」を作成している。

さらに担当者間の情報共有にも一役買っているという。「複数メンバーで担当しているような申請件数の多い助成事業は、kintoneのコメント機能などを利用して情報共有しています。不備があって電話がつながらなかったといったコメントを書き込めば、情報の引継ぎも容易です」と粂氏。

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また、報告時に必要な資料作成の際にもkintone上から簡単に情報が集計できるなど、データ活用が進んだことで業務の効率化にも貢献していると評価が高い。「自治体においても業務のDX化が叫ばれていますが、いったんは業務のデジタル化が推進でき、ようやくDX推進の第一歩を踏み出せたのではないでしょうか」と粂氏。

kintoneによって職員自ら業務に合わせたシステム改修ができるように

申請を行う事業者にとっても、オンライン化は大きなメリットを感じる点だ。「当初は初めてオンラインで運用することで申請率が上がらない可能性も危惧していましたが、運用を始めてから助成金申請の98%ほどがオンラインを経由しており、窓口に出向かずとも申請しやすい環境が整備できたことは大きな効果です。もちろん、オンラインでの申請が難しい方に向けて窓口での申請も同時に受け付けており、多くの事業者の方に申請いただける環境が整備できました」と後藤氏は評価する。また、従来の紙による運用に比べて迅速に審査できるようになり、従来は最低でも1か月ほどかかっていたものが、今では2週間ほどの期間で交付決定できるようになっている点も、業務が効率化できたとして大きく実感しているという。

kintoneについては、簡単にカスタマイズが可能で、実際に使用する担当者が使いやすいよう自ら改変することもあるほどだ。「担当者ごとに帳票出力を編集したうえで必要な情報を出力するなど、自分たちでも改善しながら運用できる点は大きなメリットです。私自身システム開発の経験はありませんが、パートナーであるNDIソリューションズさまにフォローいただきながら業務の変化に合わせてアプリを改修することができています」と石田氏は評価する。後藤氏も「Excelなどは日常的に利用していますが、システムに熟知しているメンバーではありませんし、業務委託先も全員が助成金申請業務に精通しているとは限りません。kintoneは、そういったメンバーでも負担なく利用できるプラットフォームであり、情報を管理するデータベースとしても高く評価しています」と話す。

データベースおよび情報共有基盤として活用の幅を広げていきたい

今後新たな助成事業を実施する際にも、オンライン申請の基盤としてkintoneを引き続き活用していきたいという。最終的には事業者を軸に過去の各種助成金申請履歴を管理できるような環境づくりが理想的で、kintoneにて事業者マスターを整備し、状況把握できるような情報管理基盤を構築したいと粂氏は期待を寄せている。

また、柔軟性の高いデータベースとしてのkintoneを活用し、品川区が主体となってオフィスを貸し出す創業支援施設の管理など、用途拡大を検討していきたいという。「我々係のメンバーと一緒に企業支援を行っている非常勤の商工相談員がおり、企業にお伺いして助成金に関する紹介などを行っています。現状は口頭での報告が中心で、情報共有がうまく進んでいません。kintoneを情報共有基盤としても有効に活用していくことで、事業者様に対する更なる支援に繋げられるはず」と粂氏に今後について語っていただいた。(2021年9月取材)

【この事例の販売パートナー】
NDIソリューションズ株式会社

担当部署:
ソリューション戦略部マーケティング課
E-mail:ndi.info@ndisol.com

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