島津マレーシア 様の導入事例

島津マレーシア

【業務内容】
分析計測機器・医療機器の販売およびサービス
【利用用途】
案件管理、見積・申請業務、プロジェクト工程管理、販売ライセンス管理など
  • 営業生産性30%向上、売上も2倍に! 脱Excel・脱属人化で“会話の質”と意思決定スピードを改善

分析計測機器・医療機器の販売およびサービスを担う島津製作所のマレーシア子会社 SHIMADZU MALAYSIA SDN BHD(以下、島津マレーシア)は、現場とマネジメントをつなぐ情報基盤としてkintoneを活用している。

導入前はExcel中心の運用で属人化が進み、特に営業案件では月次更新の重複・漏れ・回答忘れが常態化。マネージャーは個別確認に追われ、チームの進捗が見えにくい状況だった。
そこで、点在する顧客・案件・活動情報をkintoneで一元管理し、役割の明確化と標準化を推進。更新漏れや重複が抑えられ、会話の質や意思決定のスピードも大きく向上した。

kintone導入の背景や活用効果について、Managing Director(MD)佐々木 大輔氏、Business Support Division(経営企画)山崎 明子氏、Analytical Measurement Instruments(分析計測機器)営業 角田 久美子氏、kintone導入時に島津マレーシアのMDだった(現在は島津製作所 営業本部 営業推進ユニット 所属)吉岡 竜太郎氏に話を伺った。

【課題】Excel中心の属人化と情報分散。営業活動の実態が見えない状況に危機感

島津マレーシアでは、事業規模の拡大とともに、現場とマネジメントの間で情報共有の課題が顕在化していた。同社は約80名体制で大学・研究所・病院・製造業など幅広い顧客を持ち、分析計測機器と医療機器で安定した需要に支えられて成長を続けているが、社内の業務基盤は長らくExcel中心のままで、情報管理の属人化が課題だった。 

特に営業部門では、引き合いや見積、受注見込みといった案件情報をExcelで管理しており、月次更新のたびに重複入力・更新漏れ・回答忘れが頻発。未更新の案件についてマネージャーが個別に確認する必要があり、重要案件に関しては「覚えている人が覚えている限り」で進捗を把握するという、属人的で非効率な運用が続いていた。 

当時の分析計測機器の営業チームは約7名。ナショナルスタッフが中心で担当領域が広く、Excelでのすり合わせにはすでに限界が見えていたという。現場で持つ顧客・案件・活動履歴が個々のPCやファイルや頭の中に分散し、「誰が、どの案件を、どこまで進めているのか」をマネジメント層がリアルタイムで把握することが困難な状況だった。 

「案件の状況を把握するには毎回スタッフに一から聞かなければならず、意図せず“質問攻め”のようになってしまうこともありました。責めているわけではないのに、そう受け取られてしまう場面もあって、マネジメント面で大きな障害になっていました。」(吉岡氏) 

こうした背景から、“情報の一元化”と“業務の標準化”を実現するための仕組みづくりが課題となっていた。Excelから脱却し、属人化を解消し、現場とマネジメントが同じ情報を見ながら議論できる環境が強く求められていた。 

島津製作所 営業本部 営業推進ユニット吉岡 竜太郎 氏(元 島津マレーシアMD)

【選定】CRMだけで終わらない汎用性と、自社で作り込める柔軟性。スピード・コスト・現場適応力が決め手に

業務の属人化と情報分散を解消するため、当時のMDであった吉岡氏は、まず営業案件管理の改善を軸にCRMの導入検討を開始。検討を進める中で、同社にとっての本質的な課題は「Excel中心による業務の属人化」であることが改めて明らかになった。

案件管理、顧客管理、見積、申請業務、販売ライセンス管理、マネジメント報告、など営業を取り巻く業務は多岐にわたり、その多くがExcelや個々のファイルに散在していたため、特定領域だけをシステム化しても全体最適にはつながらない。案件管理に限らず、他の業務領域にも広げられる汎用性が強く求められていた。 特化型CRMは高機能で魅力的だったが事業規模に対する費用対効果を踏まえると、投資判断が難しい側面があった。運用の立ち上げやカスタマイズに専門のITエンジニアも必要で、中小規模の海外拠点では導入・運用のハードルが高い。 

検討の結果、kintoneを導入。特に評価されたのは、自社の業務に合わせてスピーディーに作り込める柔軟性と、CRMにとどまらず幅広い業務に展開できる汎用性、そして海外拠点でも負担なく導入できるコストとUIのわかりやすさだった。専門のITエンジニアがいなくても、営業部門やサポート部門の担当者自身が必要なアプリをすぐに作成でき、Excelで使っていた項目や管理方法をそのまま移しながら改善を重ねていける。案件管理アプリを起点に、顧客情報・見積・活動記録・プロジェクト工程管理販売ライセンス管理などにも横展開しやすく、特化型CRMとは違い、業務全体を支える基盤として育てていける点も大きかった。 

さらに、特化型 CRM比べ初期投資を抑えられ、日本製でUIがわかりやすくナショナルスタッフにも馴染みやすい点も決め手となった。こうして「属人化した業務を抜本的に見直しながら、現場主導で運用できる仕組みを作れる」という理由から、kintoneが採用された。 

島津マレーシア Business Support Division(経営企画)山崎 明子 氏

【効果】案件管理を起点に、短期間で様々な業務を脱Excel化

kintoneの導入にあたって最初に手を付けたのは、営業部門の中核となる案件管理アプリだった。島津マレーシアには分析計測機器の販売部門と医療機器の販売部門があり、同じ「営業」といっても扱う製品も顧客層も大きく異なる。そこで、それぞれの業務プロセスに合わせて2種類の案件管理アプリを作成。加えて、案件管理に必要となる顧客マスタ、製品マスタ、活動履歴など、関連アプリも短期間で次々に構築された。 

これらのアプリはすべて、吉岡氏が中心となって開発したものだ。ドラッグ&ドロップで項目を配置できるkintoneの特性を活かし、「業務プロセスを知っていれば、そのまま画面に落とせる」スピード感で開発が進んでいった。 案件管理を起点として、さまざまな業務をExcelからkintoneアプリへ移行。ポータル画面によく使うアプリを表示して、誰でも迷わずアクセスできるようにした。 

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ポータル画面には、よく使うアプリをアイコンで配置し迷わない設計に。

さらに、タブ表示や検索拡張など多くのプラグインを活用して入力・閲覧を効率化。ERPのデータも週次でkintoneに取り込み、案件の進捗から受注後のステータスまで一元的に追える運用を実現している。案件の装置種別・数量・金額・ステータス、受注確率、受注見込時期、顧客属性情報などを多角的に管理し、決着時は「受注」「失注」「キャンセル」を選択して理由・経緯を入力。案件後追いのレビューがしやすくなった点も、現場から評価されている。 

ShimadzuMY_02_3.png案件管理アプリ。検索やタブ表示のプラグインを活用し、より使いやすくカスタマイズしている。

浸透のポイント“体験ファースト”、入力設計とアジャイル改善で定着 

導入前には「管理されすぎるのでは」といった不安の声もあったという。これに対し吉岡氏は、「上司のためではなく、皆のコミュニケーションを良くして、業務を楽にするための仕組み」だと繰り返し説明。属人化が減って確認の手間も減り、評価も正しく届くようになる。そのイメージを丁寧に共有し続けたことで不安は和らぎ、実際に導入する際にはスタッフの抵抗感はほとんどなく、「仕事がやりやすくなる」という前向きな反応が多かったという。 

また、入力負担への配慮も徹底していた。入力しやすいシンプルなテキストボックスを中心に設計し、必要最低限の項目だけを必須化。マスターデータの自動入力で入力の手間を減らすなど、“使いやすさ”を最優先したことも現場の受け入れを後押しした。 島津マレーシアでkintoneがスムーズに浸透した背景には、「まず触って体験してもらう」というシンプルな方針がある。吉岡氏は導入当初、あえてkintoneの操作説明会や研修は行わず、完成度の高いアプリを先に用意し、「見ればわかるので、まず使ってみてください」と現場に渡したという。 

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入力画面はシンプルにして登録しやすく。自動入力で、入力の手間を減らす工夫も。 

運用が始まると、現場から「この項目を追加したい」「選択肢を増やしてほしい」といった要望が多数寄せられた。吉岡氏はこのフィードバックをその場で反映し、迅速にアップデートするスタイルを徹底。「まず作って使ってもらい、改善点があれば即修正する」というアジャイル的な進め方で完成度を高めていった。月次ミーティングでの要望はもちろん、日常の雑談レベルの会話からも改善を取り込み、現場起点の改修がルーティン化していったことが、短期間での浸透と定着につながっている。 顧客登録や伝票変更など、これまでExcelをメール添付で回していた申請業務もkintoneに統合した。

プロセス管理の電子化により、承認の手間が減って申請の見逃しや履歴の追跡といった課題も解消されました。承認作業が非常に楽になりました」(山崎氏) 

営業生産性が30%向上、売り上げも2倍に。業務の見える化で事業判断のスピードが向上 

島津マレーシアでは案件管理からkintoneの運用を開始したが、その後はマネジメント、実績管理、申請フローなど用途が大きく広がり、今では経営層・現場双方に欠かせない基盤となっている。吉岡氏のポジションを引き継いで着任した佐々木氏は、kintone上のアプリ群を見ながら短期間で現場の状況を把握できたと話す。「細分化された業務や案件の状況を短時間で理解できました。これは本当に助かりました」と、その効果を語る。 

マネージャーとしては、受注実績や見込み案件、代理店別の状況、製品別の販売実績、前年との比較などが一覧化され、事業判断に必要な情報を即座に確認できる状態に整備されたことをリットに感じている kintone導入以前は、案件の状況を把握するたびに一から確認する必要があり、やり取りの負担が大きかった。導入後は、全員が同じデータを見話ができるようになり、「基礎情報を理解したうえで話せるので、質問も回答も的確になりました」と吉岡氏は語る。佐々木氏も「まず自分で把握できるのが大きい。漠然とした質問ではなく、個別案件の具体的な内容について議論できる」と実感している。 

特に週次・月次のレビューでは、“状況を聞く時間”から“ポイントを深掘りする時間”へとシフトし、マネジメントの負荷が大幅に軽減された。導入前、営業部門では「今月の数字」のみに意識が向きがちだったが、データが整理されて以降、3か月先、半年先を見て行動するように変化したという。「見込み精度が上がり、中期視点で考える文化が根づいたのは大きな成果です」(吉岡氏)、「今の状況→今期の着地→不足なら対策、といった議論がしやすくなりました」(佐々木氏)と、それぞれ手応えを語る。

島津マレーシア Managing Director 佐々木 大輔 氏

案件状況を確認できるダッシュボード。プラグインを活用して、マネージャーが確認したい数字をすぐに把握できるようにレイアウトしている。

【今後の展望】既存基盤の強化と、ERP連携・AI活用による次のステージへ 

島津マレーシアでは、既存アプリ群の活用をより深めながら、業務プロセスの自動化とAI活用を検討している。kintoneや社内システムを扱えるナショナルスタッフの育成にも取り組み、既存の仕組みを継続して改善できる体制づくりを強化している。 

「見積作成〜プロジェクト管理〜受注後のERP登録までの一連の流れを部分的に自動化する取り組みも始まっており、手入力や誤入力を減らすことで担当者の負担軽減を目指しています」(角田氏) 

さらに、今後の大きなテーマとして位置づけられているのがAI活用である。島津マレーシアでは、営業の活動記録やサービスエンジニアの作業データなど、多様な業務データがkintoneに蓄積されており、これらをAIで解析することで、顧客分析や事業機会の発見など、人の目では捉えにくい示唆を得られる可能性に期待している。 

面談記録をAIを使って要約し、全文を読まなくても要点がつかめるようになりました。今後はさらに広範囲で活用したい。本社でもAIに取り組んでおり、生成AIだけでなくAIエージェントの流れが来ています。kintone上でAIをエージェントとしてどう使うか、営業プロセスにどこまで組み込めるかを探っています。」(吉岡氏) 

kintoneとAIの活用を通じて、さらなる業務効率化を目指していく。 

(2025年11月取材)

島津マレーシア Analytical Measurement Instruments(分析計測機器)営業 角田 久美子 氏