西武鉄道 様の導入事例

西武鉄道

【業務内容】
鉄道事業、新規事業創出やイベント開催などの沿線価値創造事業
【利用用途】
協力会社との作業管理、教育受講者管理等のExcel管理簿の置き換え、市⺠開発の推進 など
  • つくる裾野を広げ、運用の安心を守る 全従業員約3,600名の市民開発を支えるkintoneワイドコース

1日160万人以上の乗客を運ぶ鉄道事業や沿線価値創造事業を展開する西武鉄道株式会社。DX推進の第一歩としてデジタイゼーションを推進するため、紙による業務運用からの脱却を目指し、ノーコードで業務アプリを開発できるkintoneを導入。ワイドコースを活用してアプリの利用状況を可視化し、データに基づく活用促進とガバナンスの徹底を両立している。この取り組みについて、情報システム部 課長 新井 慎二氏、黒須 哲也氏にお話を伺った。

■お話を伺った方
・株式会社西武ホールディングス 情報システム部 課長 兼 西武鉄道株式会社 情報システム部 課長 新井 慎二氏
・株式会社西武ホールディングス 情報システム部(西武鉄道担当) 黒須 哲也氏

【課題】DX推進の第一歩としてのデジタイゼーションを推し進めるプロジェクトが始動

1912年に武蔵野鉄道として設立された西武鉄道株式会社。池袋線・新宿線を中心とした鉄道事業に加え、沿線自治体や地域社会と連携した新規事業やイベントを推進。沿線価値創造を重要な事業領域として位置付けている。「住みたい沿線」「訪れたい沿線」の実現に向け、安全・快適な輸送を提供するとともに、地域の魅力向上にも取り組んでいる。

同社で社内基盤の整備を担う情報システム部では、「デジタルネイティブ企業への転進」を長期ビジョンに掲げる。デジタルツールの導入だけでなく、活用を通じた業務効率化や付加価値創造を重視し、質にこだわった育成・支援を通じてDXを推進している。「業務効率化や新しい価値創造の実現に向けては、ツールを提供するだけでなく、現場での活用を促進し、組織的にマネジメントしていくことが不可欠だと考えています」と新井氏は説明する。

株式会社西武ホールディングス 情報システム部 課長 兼 西武鉄道(株) 情報システム部 課長 新井 慎二氏

DX推進に向けた第一歩として、まずは現場に残っている紙での運用をデジタル化する「デジタイゼーション」の徹底を図ることから始めたという。社内公募で情報システム部に異動してきた黒須氏は、かつては運輸部で運転士として活躍していたという異色の経歴の持ち主。10年以上現場で運転士を務めていた経験から、日々の業務に紙を使う場面が少なくなかったと当時を振り返る。「確かに基幹システムやグループウェアのような情報系のツールは導入されていましたが、現場ではExcelで作成したものを出力して業務に活用するケースが少なくありません。まずは紙の運用をデジタルに変えていくための業務基盤を整備していくことが必要だと考えていました」と現場を経験した黒須氏は振り返る。

株式会社西武ホールディングス 情報システム部(西武鉄道担当) 黒須 哲也氏

同社はすでに、ペーパーレス化を目的にパソコンを持たない現場の従業員向けにiPadを導入し、Excelデータをタブレットで閲覧・編集できる環境を整えていた。ただ、Excelは同時編集がしづらいといった課題も顕在化し、タブレットにも適したインターフェースを備えた仕組みが求められていた。

【選定】市民開発プラットフォームとしてのkintoneに注目

新たな環境づくりに際しては、現場に使い勝手の良いシステムを導入することを重視した。「使い勝手の良いシステムは、他から与えられるものではなく、自分たち自身で開発し、自ら改善していけるものだと考えました。たとえシステム未経験者であっても、自分たちで開発し、業務改善できるという意識を現場に醸成していけるよう、ノーコードでアプリ開発が可能なソリューションに注目しました」と黒須氏。

そこで注目したのが、すでに別部署が一部導入を進めていたサイボウズのkintoneだった。使い勝手はもちろん、その部署では名刺管理システムをはじめとした外部システムとの連携を行っており、kintone自体がさまざまなシステムと連携できることも実証済みで、今後全社に展開する際には各部に求められる幅広い業務に適応できると考えた。

実際にkintoneに実証実験的に触れる機会があったことも大きかった。同社では、全社的なDX人材の育成を目的に鉄道本部を中心として「DX課題解決プログラム」を開催。そのなかでkintoneを題材としたプログラムも実施した。参加した従業員はフレームワークを用いた業務分析からアプリ開発までをkintoneで実践。その取り組みを通じて、情報システム部も現場主導でのアプリ開発と業務改善の実現に手応えを得たという。

現場の要望に応えるかたちでシステムを導入していきたい情報システム部の想いと、全社的にDXを推進していく会社の方針が一致。スピード感を持って開発・改善を回せる環境を構築するため、ノーコードで柔軟にアプリ開発できるkintoneが、デジタイゼーションに向けた業務基盤として全社的に展開されることになったのだ。

【効果】全従業員が利用する市民開発プラットフォームとして広がるkintone

大規模向けの機能が提供されるワイドコースを選択、全社利用開始から約1年で1,600を超えるアプリを開発

現在は、西武鉄道全従業員と協力会社合わせて3,900ほどのkintoneアカウントを契約し、大規模利用向けのワイドコースを選択している。開発・試行中のアプリが約1,400、本番で利用中のアプリが約200にのぼる。アプリ開発に役立つプラグインについては、60を超えるプラグインが選択できるようになっており、各部からの要望を受けてプラグインの有効性と安全性の確認を情報システム部で行い、リリースする運用となっている。外部との連携に関しては、アカウントのマスター情報を持つ外部システムとのCSV連携や名刺管理を行うSaaSとの連携などを行っている。

運用体制としては、開発パートナーである関東情報サービス株式会社が窓口としてサポートデスクを運営しており、各部からの問い合わせ対応やアプリ開発支援、利用状況の把握など、さまざまな伴走支援を行っている。また、部署によってはkintone推進者として数名を選定し、活用促進に向けて情報システム部が主催する講習会に参加してもらい、現場への浸透を促す活動にも取り組んでいる。「講習会については、各部の要望に応じたレベル別の講習会を開催しており、1か月に4~5回実施するなど短期集中型のパターンもあります。直近ではプラグインの機能紹介をテーマに開催予定です」と黒須氏は語る。

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実際の運用では、20前後ある各部で開発と本番それぞれのスペースを設けたうえで、開発スペースでは自由にアプリを開発できるようにしている。本番で使う段階になったら申請を受けた後、情報システム部において、アプリの入力項目や管理権限の設定が運用ルールに則り適切に構築されているかのチェックを行い、本番スペースへアプリを移動させている。「基本的には自由にノーコードでアプリ開発が可能になっています。プラグインは自由に使っていいものと申請が必要なものがあり、プラグイン提供元との契約主体は、情報システム部となっています」と黒須氏は説明する。

kintoneの具体的な活用例としては、ゲストアカウントを付与した協力会社が工事内容をレコード登録し、受け付けた社内部署が作業の注意事項を追記、ステータスを移行させながら作業完了までのプロセスを管理する「作業打合票アプリ」などがある。以前はFAXで行っていた作業完了までのプロセスがkintoneで管理できるようになったと好評だ。また、全従業員が対象となっている、輸送の安全教育に関する講座などの受講者管理を行う「輸送の安全教育受講者管理アプリ」では、以前はExcelやメールを通じて行っていた受講者とのやりとりをkintoneに集約している。担当者の負担軽減や受講前のリマインドメール送信などで受講忘れの防止にも役立っているという。

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作業打合票アプリの画面イメージ

kintoneの活用促進とマネジメントの強化に役立つアプリ分析機能を活用

同社のkintone活用における特徴の1つが、的確な現場支援を行うために、ワイドコースの「アプリ分析機能」でアプリの利用状況を可視化している点だ。「活用促進とガバナンスを両立するために、ワイドコースが提供しているアプリ分析機能を活用しています」と黒須氏。毎月パートナー企業が分析結果をもとにレポートを作成、各部でどんなアプリが使われているのかを可視化したうえで状況に応じて現場にアドバイスしている。また、利用状況を軸にアプリの棚卸しを実施するといった用途にも役立てており、たとえば半年間、アプリの更新やレコードの作成がないことを基準に、現場に確認したうえで削除などの対応を行っている。「最終ログイン日やアクセス頻度などから利用状況を確認し、十分に利用できていない部署に対しては講習会の参加を打診するといった使い方です。部署内で特に活用しているメンバーには、kintoneを広げていくためのキーマンとして活動してもらえるような施策を立案する場面でもアプリ分析機能は活用しています」と黒須氏は説明する。

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ワイドコース「アプリ分析」の画面イメージ

業務の効率化はもちろん、デジタル化に向けた意識の醸成が大きな効果を生む

市民開発のプラットフォームとしてkintoneを全社展開したことで、紙の削減によるデジタイゼーションは確実に実現できており、DX推進として設定した目標値も着実に達成しつつある。具体的には、1人の作成者がつくったアプリを使うと1日5分の削減効果があると仮定した場合、20人のチームで利用することで1日あたり100分の業務効率化につながる「1:20理論」という指標を掲げている。全員がアプリ開発者でなくとも、組織全体で大きな成果を出すための挑戦を続けている。

定性的には、アプリ開発の心理的ハードルを下げることで自ら業務を変えられるという意識が根付いたことが何よりも大きな効果だと黒須氏は力説する。「各部にヒアリングを実施してみると、部署によって温度差はあるものの、kintoneを利活用している部署からは実施したいことのアイデアや要望が数多く寄せられています。デジタル化に向けた意識が着実に醸成されつつあり、kintoneが市民開発の鍵となっています」と新井氏は評価する。

アプリ分析機能を活用しながら、質にこだわった育成・支援を続けていく

全社的なkintone活用の輪が広がるなか、複数のアプリを開発できる熟練者もいれば、さわりはじめたばかりの初心者もいる。情報システム部は今後、それぞれの習熟段階に合わせた支援に力を入れていく予定だ。「社内コミュニティでのインタビュー記事やアプリ紹介など、コンテンツ発信を強化する予定です。また、ナレッジシェア会での事例共有を通じて、横展開を加速させていきます」と黒須氏は意欲的だ。現場の習熟度を判断する材料としても、ワイドコースのアプリ分析機能が引き続き役立つと期待を寄せている。

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西武鉄道デジタルシステムユーザーコミュニティ「デジチャン」

kintoneが実装しているAIの活用についても、検索を含めた情報アクセスの迅速化など現場の業務に役立つ場面があれば積極的に使っていきたいという。

今後も業務プロセスの効率化および新たな価値創造につなげるメインツールとしてkintoneを活用していくことで、デジタルネイティブ企業への転進に向けた歩みを加速させていきたいと黒須氏に語っていただいた。

(2026年7月取材)