サンキョー 様の導入事例

サンキョー

【業務内容】
遊技場やボウリング場、飲食店などの運営
【利用用途】
パチンコの景品の受発注管理、帳票出力
  • 発注業務のEDI化で劇的な業務改善。一品管理の徹底により月次決算の早期化(15日以上短縮)を実現

パチンコをはじめとするアミューズメント事業を行っているサンキョー株式会社では、月次決算の早期化に向けた仕組みづくりの一環として、各店舗と景品卸業者との間でやり取りされる発注業務を電子化するプロジェクトを推進しているが、この発注業務を行うためのEDIシステムにkintoneが採用されている。kintoneを使ってEDIシステムを構築することになった背景について、常務取締役 営業本部長 生駒 繁氏および総務部 次長 田中 克己氏、総務部 情報システムグループ 伊東 純氏にお話を伺った。

【課題】月次決算の早期化によって、経営判断の迅速化を目指す

月次の数字確定に20日ほどを費やす

アミューズメント事業を展開しているサンキョー株式会社。パチンコホールなどの遊技場やボウリング場を運営するアミューズメント事業をはじめ、飲食事業や子供・高齢者を対象にした福祉事業、不動産事業などを多角的に展開しており、グループの総合力を結集し、社会に貢献する企業を目指して活動を続けている。業界の魅力を伝えながら活力ある企業を作り上げるべく人材育成にも注力しており、社員の成長を支援するための活動にも積極的に取り組んでいる。

最近では、月次決算によって財政状態を明確化しつつ経営判断を迅速に行うための環境づくりを行っている企業が増えており、決算の早期化は一般的な流れと言える。しかし、同社では月次の締めに多くの時間がかかっており、実際には20日ごろにならないと数字の確定が難しい状況が続いていたという。

「経営層は財務の数字をベースに経営判断を行うことも多いのですが、なかなか月次の数字が確定しない状況が続いてきました。この状況を何とか打開する必要があると常々考えていたのです」と生駒氏は当時の状況を振り返る。

常務取締役 営業本部長 生駒 繁氏

長年の商習慣からの脱却を目指す

その主だった原因は、長い商習慣の中で行ってきた、パチンコ店舗で取り扱う景品の処理にあった。

「店舗では5000種類を超える景品を扱っていますが、商品そのものの単価が発注する業者によって異なっており、数量単価ではなく“120円のお菓子を発注する”といった売単価をベースに景品を発注するのが一般的。しかも商品の名前が実物と違うケースもあれば、120円の商品の中には仕入単価の違うものが複数紛れているケースもあるなど、店舗での在庫管理そのものが難しい状況だったのです」と田中氏はその課題を語る。

総務部 次長 田中 克己氏

発注業務は店舗ごとに個別に行われており、なかには発注していないものも売単価に応じて卸業者が店舗に置きに来るケースもあるほどだ。

その結果、卸業者から月末に請求書が来た時点で、店舗側で景品として出たものと実在庫とを付け合わせて確認した段階で、経理に請求書が回ってくることになる。「経理では請求書ベースでしか仕入れ計上できないため、結局月次の確定ができなかったのです」と田中氏。そこで、一品管理を徹底するべくプロジェクトをスタートさせ、全社的な体制を整えていったという。

「店舗では電話やFAX、メールなどで景品を発注し、その管理はExcelで行うなど、属人化した方法で行われてきました。属人化してしまうと人が動かせないばかりか、業務も引き継げない。組織として仕事ができない状況にあったわけです。これを抜本的に改善していく必要がありました」と田中氏。

【導入】容易な改善とセキュアなクラウドな環境で、コスト的にも最適なkintoneを選択

クラウド利用で自社構築も可能なkintoneに注目

卸業者と景品単価などを調整していきながらデータベースを整備していくことになるが、店舗側の負担を増やしてしまっては意味がない。そこで、煩雑な発注業務にならないような仕組み作りが必要だった。

「一品ごとに発注業務を行うという風習がパチンコ業界になかったこともあり、いろいろ探したもののフィットするものがありませんでした。そこで、自分たちで短期間に構築できるものが必要だと考えたのです」と田中氏。

目指したのは、発注したデータがWebを通じて仕入れ先にも見え、そのデータが最終的に請求データとして活用できるような仕組みづくりだった。

その基盤として注目したのが、kintoneだった。「kintoneが活用できそうだと話を聞き、30日間の無料お試しの期間に簡単なアプリを作成、景品管理や店舗の責任者、経理部門、そして卸業者などに見てもらったところ、これならいけそうだという意見をいただいたのです」と田中氏。

また、セキュアな環境を負担なく維持管理するためにも、自社でサーバを持たないクラウド環境はうってつけだったという。

DB設計が容易、コミュニティサイトが大きな後押しに

最終的には卸業者にkintoneのアカウント料金を負担してもらう前提だったため、これまで伝票にかかっていたコスト程度で利用できるものが必要だった。「kintoneであれば月額費用も安価に押さえることができます。コスト面でも十分運用に乗ると判断しました」と田中氏。

また、kintoneであれば、いちからデータベース設計をする必要がないという点も選択の大きな理由の1つだ。

総務部 情報システムグループ 伊東 純氏

「仕組みを構築する際には、データベース設計が一番大変です。kintoneであれば、あとから要望が出てきても首が回らなくなるような事態を避けることができると考えました」と田中氏。店舗や卸業者の要望に柔軟に対応するためにも、改善しやすい仕組みが必要だったのだ。

実際にJavaScriptで開発を行った伊東氏は、「私自身、少しJavaScriptをかじった程度で、本格的に業務システムを作ったことはありません。それでも、初めて見たときから簡単にアプリ作成できそうな感覚がありました」とその印象を語る。

実際の開発段階では、開発者向けのコミュニティサイトである「cybozu developer network」が大いに役立ったという。「必要なプラグインやJavaScriptなどは使わせていただいてます。迷ったときに非常に助かっています。これがなければ構築できなかったかもしれません」と伊東氏。

【効果】kintoneによるEDI化により発注業務を効率化
月次決算の早期化で経営判断の迅速化に寄与

発注業務におけるEDI化をkintoneで実現

現在は、およそパチンコ店舗の取引先20社と18ある店舗との間で行われている景品の発注業務にkintoneが活用されており、kintoneで作ったマスター管理アプリにすべての景品が登録、管理されている状況だ。また、kintoneのスペース上でマニュアルを共有しているが、今後は卸業者との連絡事項があればkintone上で連絡できるような基盤にしていきたいと田中氏は語る。

実際の運用では、まず店舗側から発注入力アプリを活用して発注したい景品を選択し、必要な個数と希望の納品日を選んだうえで発注処理を行う。卸業者は、受注管理アプリにて受注残のアイテムが一覧で確認できるようになり、内容を確認したうえで卸業者が注文受付のチェックを実施。もし同一注文のなかで分納がある場合は、分納データが個別に作成される。

店舗からの発注を行う発注入力アプリの画面

受注残数が一覧でわかる受注データアプリの画面

納品する際には、株式会社ケーピーエスが提供するプラグイン「ReportsConnect for kintone」を活用し、発注伝票をベースにPDFにて物品受領書と納品書を出力し、景品と一緒に納品する。店舗側では物品受領書に押印して卸業者に渡し、納品書に書いている発注情報をベースに現品との付け合わせを行うことになる。きちんと納品されていれば、検品アプリにて検品処理を行うことで、きちんと納品されたことが確認できる。そのデータが最終的に請求書データとして活用されることになるわけだ。

ただしこの段階では、店舗への景品入荷管理は可能だが、出荷管理はできていない。出荷の管理については、パチンコ業界特有の景品管理システムのほうで行っており、kintone上で確定した仕入れ情報をDataSpider Servistaを介して特定の共有フォルダーに格納し、景品管理システムがその情報を吸い上げることで景品在庫の管理が行われるようになっている。その時点で仕入れが確定し、DataSpider Servistaにて自動仕訳のための加工が行われ、会計側にデータが受け渡されることになる。

20日かかっていた数字確定がわずか1日に

マニュアルを渡しただけで入力できるなど直感的に活用できると利用者の評価も高い。「これまで発注業務はメールや電話、手書きのFAXなどそれぞれ属人化した方法で行われてきました。今後はkintoneに統一できるため、納品不備による機会損失やコミュニケーションコストも軽減されます。最終的には業務の効率化に大きく貢献するはず」と田中氏。

当初課題だった月次決算の早期化についても、「検品処理自体は店舗で毎日行う必要があるため、31日に仕入れたものはその日のうちに検品することに。つまり、月初には確定数字が自動仕訳されて経理に届くことになり、翌月の1日には処理が完了します。月次決算の早期化に大きく貢献します」と田中氏はその効果に期待を寄せる。

さらに、本社にて店舗と卸業者のやり取りが適宜確認できるようになり、ガバナンス強化にも大いに役立つという。「以前は請求書が来るまで状況が分かりませんでしたが、今は日々本社でも判断可能になっています。社内監査の部分にも役立つようになればさらなるメリットが得られる。企業コンプライアンス的にも大きい」と生駒氏。

既存Excelでの業務を置き換えながら、複雑な台管理にも応用したい

業務内でExcel管理しているものをできる限りkintoneに移行していきたい考えだ。「Excelでは、自分の業務に使いやすいように加工されてしまい、違う帳票が現場に出回って属人化した業務になってしまうことが多い。そういったものをなるべくシステム化していくことが組織として重要であり、そこでkintoneが活用できると考えています」と田中氏は語る。

また将来的には、償却資産として重要なパチンコ台の管理も行っていきたいという。「台のIDは管理していますが、細かく分けると“枠”と“基盤”と“板”で構成されており、資産上は1つでも店舗間移動やオークションでの売買時にはその3つを様々な組み合わせで移動することも。財務上はシンプルでも、管理会計上は複雑な処理を行っているため、いろいろな見方をして管理すべきものです。公的な手続きに必要な書類も多く、管理が複雑になりがち。これをkintoneで一元管理できるようにしたい」と田中氏に今後について語っていただいた。