社会福祉法人 山寿会 様の導入事例

社会福祉法人 山寿会

【業務内容】
地域に暮らす高齢者の健康維持、支援業務
【利用用途】
コミュニケーション、事務管理
  • kintoneでの徹底的な情報共有で事務作業時間が大幅に削減
  • より良い福祉サービスの提供をしながらも、スタッフの負担は軽減し連続休暇がさらに取得しやすい環境に

高知県高知市、市内中心部から車で約15分、緑に囲まれた閑静な場所に社会福祉法人山寿会(以下、山寿会)がある。山寿会は平成9年4月に「特別養護老人ホーム湯の里」を開設した。以来、ケアハウス、デイサービス(小規模含む)、在宅介護支援センター、介護ヘルパーステーションなどのサービスも開始し、地域に根差した福祉サービスを提供している。山寿会では現場の介護ヘルパーと事務局の業務コミュニケーションツールとしてkintoneが使われている。kintoneの導入経緯について、法人本部長兼施設長 山口廣志氏、事務長 高野隆彦氏、事務係長の岡田淳氏にお話を伺った。

メール・FAX・郵送での拠点間コミュニケーションに限界を感じた

山寿会では高知市内はもとより神奈川県、埼玉県にも事業所を展開する。同法人では在宅介護支援や介護ヘルパーステーションなどの活動を通じて、地域に開かれた施設として地域福祉に貢献し、地域から愛される施設を目指している。しかしその一方でこれまで拠点間のコミュニケーションにはメール、FAX、郵送、電話を利用しており、FAXでは送付先の番号間違いが発生したり、メールではアドレスの入力ミスや容量制限による受信エラーが起きていたりした。それぞれの施設内で管理する情報や書類・介護サービスの訪問記録や伝達事項はエクセル・ワードや手書きのメモを利用していたため、その点でも情報共有ツールの改善の余地があると本部長の山口氏は感じていた。

法人本部長兼施設長 山口廣志氏

また、以前から利用していた介護請求や財務管理などの専門のパッケージ製品についても課題があったという。「基本的な対応内容や請求内容、財務の数字は把握でき運用は安定していました。しかし、現場の運用にあわせた帳票や集計結果などが標準機能に不足しているので、現場の方が手作業で作成する苦労がみえました。」と事務係長の岡田氏は当時を振り返る。

開発期間が短く低コストで誰でも気軽に扱うことができる点を評価

前職で岡田氏は基幹システム開発・業務改善改革・経理財務責任者を担当しながらも、現場からの基幹システムでは対応できない細やかなニーズを仕組化するために、サイボウズのパッケージ版製品「デヂエ」も活用していた。その当時から現場の視点で必要な情報を活用できるという理由でkintoneへの期待があったそうだ。「システム構築の場合、要件定義を行い構築するのですが要件定義には時間もコストもかかりますし、なにより要望への対応が遅くなる時があります。その点kintoneは要望を即アプリ設計し、それを見せ、また要望を確認し改良するといったスタイルで構築できるのが魅力です。しかも安価で出来る事がありがたいです」と導入担当の岡田氏は話す。また、「データの保全・容量管理・瞬電対策なども考え、自社サーバー導入ではなくクラウド(kintone)導入を提案しました。」と導入当時を振り返る。

事務長 高野隆彦氏

事務係長 岡田淳氏

法人本部長の山口氏は「正直クラウドというものに抵抗がなかったわけではありません。ただ、遠距離他拠点でのコミュニケーション問題は以前から法人としての課題で、その課題を解決するツールとしての手軽さもあり、まずは導入してみることにしました。」と話す。kintone 導入に際しては、一般利用者には岡田氏がお手製の手順書を作成し、また当初は岡田氏のみが管理者であったが、後任の育成にも取り組み、アプリ作成時に横について操作レクチャーを数名に実施したそうだ。

岡田氏お手製の手順書。手順書冒頭ではまずkintoneをどういった用途で使っていくのか、kintoneを使うことでどのようなメリットがあるのか分かりやすく説明されている。

                    

手順書は10ページで作成されている。操作毎にアプリのキャプチャを取り入れ、重要なポイントは赤枠で囲んだりワンポイントアドバイスを入れたりすることで初心者であってもマニュアルを見ればすぐに操作が行えるようになっている。

業務負担を軽減し実現した連続休暇の取得増加、そしてサービスの向上

従来、拠点や担当者ごとに電話、メール、FAXで行っていた連絡もkintoneを利用することで1度で広く周知できるようになったという。例えば紙運用の稟議もkintoneを活用することで県外拠点ともスムーズにやり取りできるようになったそうだ。またデータが蓄積できるため過去に遡って情報を確認し傾向を把握したり、紙では確認しづらかった情報を素早く確認できたりすることでより手続き時間が短縮できるメリットも生まれてきたという。「元々は拠点間のコミュニケーション課題を解決するための目的でしたが、今となっては稟議、固定資産棚卸、業務報告、Q&Aなどニーズに合せて色々な用途が日々できています」と岡田氏は話す。

それらの一例として『固定資産管理アプリ』について詳細な話を聞いた。「社会福祉法人は公的な補助金・助成金を利用して物品を一部購入する場合があるため、見方によれば企業以上に資産を適正にかつ細やかに管理していく必要があります。資産は介護機器や備品など高額なものから細々としたものまで様々ですが、従来は紙の台帳で管理していたので一目で分かりづらいものでした。kintone であれば設置場所や画像も添付できるので、名称だけではパッと分からなかったものもすぐに分かるようになりました。またkintoneのレコードは変更履歴も残るため、いつどのような経緯で備品の増減があったのか確認することができるのも便利だと思います」と事務長の高野氏は語る。

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固定資産管理アプリの一覧画面。資産の種類によって分類したり、資産の場所を記載することで現場と本部の双方で管理がしやすくなっている。

施設長でもある山口氏は「現場視点では登録時に場所の記載や画像の添付があれば次回以降の棚卸作業がスムーズになります。また廃棄時に本部でも廃棄物の場所が管理しやすくなり、双方でメリットがありました。」と振り返る。また、本部には閲覧のアクセス権を付与し、必要に応じて各拠点は情報へのアクセスを制限するなどkintoneの運用面でのガバナンス体制も考えられていた。

また現場で起きた事故の報告には、これまでエクセルや手書きの事故報告書を使用していた。当時は複数名が数日かけて件数や内容を手集計したり、エクセルに入力しグラフ化したりする作業を行っていたが、自動集計機能のあるkintoneで事故報告書を入力することで前述の作業時間が激減できそうだという。さらに、蓄積した情報から発生部署・事故種類・事故原因などの切り口で傾向を分析し、対策も検討できる環境作りができたそうだ。

事故報告書アプリの入力画面

事故報告書集計結果

事故報告書アプリではグラフ化することで事故の発生場所や内容、回数などが一目で分かるようになっている。

大きな基幹システムでは体感できないkintoneの魅力

kintoneの活用が進む中、山寿会では新たな試みも出てきたという。それが介護ヘルパーの業務の実績管理だ。以前までは約8名の介護ヘルパーの訪問実績を1名の管理者がエクセルに記録していた。さらに、訪問実績は日毎の集計や介護ヘルパー毎の集計、提供サービス毎の集計など集計方法が多岐に渡っているため、エクセルを複数の別エクセルに転記したり、計算式を都度修正し項目毎の実績を作成している。それを締め日までに再度セルフチェックし、それが終わると本部に紙に出力して提出。最後に本部の担当者がもう一度同様のチェックをするというものであった。そのため、管理者は締日が近くなると訪問先から戻ってきて遅くまで作業することもあった。

しかし現在では、管理者がkintoneアプリに各自の作業時間を登録するだけで、本部に業務実績データを提供できるようになったという。 アプリ作成の過程について「複数のエクセルが何のために必要なのか、どういう用途で使っているのか、などを管理者に聞きながら試行を重ね作成しました。こうやって試行を繰り返しながら進める手法は大きな基幹システムでは容易に出来ない部分であり、kintoneの良さです」と岡田氏は語る。

実績管理アプリ一覧画面

実績管理の集計結果

「こうした取り組みの結果、”事務作業時間が大幅に削減し締日に余裕ができた”、”訪問回数を増やすことができた”、”まとまった連休を取得しやすくなった”という嬉しい報告も聞けるようになりました」と山口氏、高野氏、岡田氏は笑みをこぼした。

今後の課題は、法人としてセキュアな運用体制の構築

岡田氏は「便利な部分は見えてきています。ただ、便利だからと言って何でもkintoneに置き換えるわけではなく、本当に必要なことなのか、本当にkintoneが最適なツールなのか、運用面でのガバナンスは大丈夫なのかなどを含めて検討しています」と話す。同じく山口氏も「kintone導入をきっかけに、セキュリティ対策や運用方法を法人としてより一層考えながら取り組んでいく必要があると考えています」と今後の課題について述べた。

グループをつなぎより連携の取れた事業へ

今後について、kintoneを活用し事務的作業時間を減らすことで、利用者さまにさらに満足していただけるサービスを提供し、職員にとってもより働きやすい環境づくりに貢献できるのではないかと期待を寄せている。「夢でもありますが、いずれはグループ関連病院との情報共有にもkintoneを活用し、広域での業務改善につながればと願っています」と岡田氏に語っていただいた。