
埼玉県庁
- 【業務内容】
- 自治体業務
- 【利用用途】
- 照会業務/庁内からの業務依頼/全庁的な情報共有基盤


「埼玉県デジタルトランスフォーメーション推進計画」に基づき、段階的なデジタル化を進めている埼玉県庁では、行政・デジタル改革課が中心となって全庁的なDX推進に取り組んでいる。なかでも、デジタルを活用し付加価値の高い業務に人的リソースを注力するTX(タスク・トランスフォーメーション)を実現するべく、全職員1万3000人の業務を下支えする部局を越えた業務基盤としてkintoneを採用している。その経緯について、行政・デジタル改革課 DX推進担当 主任 砂川 里帆氏および主事 平田 敦也氏にお話を伺った。
2022年度から県政運営の基礎となる総合計画「埼玉県5か年計画~日本一暮らしやすい埼玉へ~」を掲げ、「安心・安全の追究」や「誰もが輝く社会」、「持続可能な成長」という3つの将来像の実現に向けた社会づくりを進めている埼玉県。加えて2021年に策定した基本的な方針や施策を定める「埼玉県デジタルトランスフォーメーション推進計画」では、企業や行政のデジタル化を前提とした社会全体のDXの実現を目指しており、その実現に向けた「DXビジョン・ロードマップ」において、DXを強力に推進している。
現在は、DX実現に向けて設定している3つのステップ*のうち、『デジタライゼーション(第2ステップ)』の段階にある。この段階では、埼玉県独自の取組であるTXを中心に、ノーコードツールや生成AIを積極的に活用しながら、職員自らが業務改革を進めている。「人にしかできない業務に注力するTXでは、業務を単に置き換えるのではなくプロセスそのものの変革を進めています。その上で、県庁内の業務改善だけでなく、県全体のDXを推進していくことで社会全体のDXを目指しています」と全庁的な業務改革に取り組む行政・デジタル改革課の砂川氏は説明する。
*①デジタイゼーション(アナログからデジタルへ)、②デジタライゼーション(業務プロセス改革・県民サービスの向上)、③デジタルトランスフォーメーション(デジタル連携・新たな価値の創造)を指す。
行政・デジタル改革課 DX推進担当 主任 砂川 里帆 氏
砂川氏が県庁内の業務改善に取り組むきっかけとなったのが、かつて在籍していた産業振興関連の部署において、情報共有の必要性を痛感したことだった。「各課それぞれが個別に企業訪問する機会があったのですが、その訪問履歴や状況は各課が管理するExcel内に閉じており、お伺いして初めて他職員の動きを知る機会も少なくなかった。課を越えた情報共有ができていないことを痛感しつつ、企業DBのような情報基盤の必要性を感じたのです」と砂川氏は当時を振り返る。民間企業出身の職員からも、共通の情報共有基盤がない点が懸念として挙げられるなど、組織的な情報基盤の欠如が浮き彫りとなっていた。
また、200を超える課所がExcelのバケツリレーで情報をやり取りする照会回答業務についても、全庁的な課題として顕在化していた。「必要な情報を他の課から取り寄せる際に、回答用のExcelをメールに添付し依頼する、照会回答業務が年間で数百件規模発生します。その業務では、直接回答を集めるのではなく、間に課や部などいくつかの階層を経て回答を得ます。これらは効率的な業務フローではないと感じていました」と砂川氏は当時を振り返る。
情報共有に課題を感じていた砂川氏が情報収集を重ねるなかで、インサイダー情報やプライバシー情報以外は全ての情報が社内で公開されているというサイボウズの企業方針に興味を持ったという。「そもそも本当にそんなことができるのか、どうやって情報を共有しているのかといった、具体的なアプローチに興味を持ったのです」と砂川氏。そんな折、サイボウズへの1年間の出向に関する取り組みを聞きつけ、そのプログラムに参加する機会を得た砂川氏。そこで出会ったのが、庁内で行われているさまざまな照会回答業務に活用可能性を秘めたプラットフォームとしてのkintoneだった。「Excelが何度もやり取りされる照会回答業務の課題に対して、kintoneであれば効率的に運用できるのではと考えたのです」と砂川氏。
通常であれば社内の情報収集の際は、Webフォームを作成して必要な情報を持つ課に直接回答してもらえばいいと考えがちだが、この情報提供の過程で上長や関連部署の承認を経る必要があるなど、県庁ならではのプロセスに適合する必要もあった。
こうしたプロセスに対応するために、砂川氏がkintoneを最も評価したのが詳細なアクセス権付与が可能なことだった。「スプレッドシートの共有で照会回答業務を動かすことも可能ですが、200以上ある課所において、誰もが他の課の情報を編集できてしまうことはさすがに厳しい。kintoneなら閲覧権や編集権などが詳細に設定できるため、まさに照会回答業務には最適だと考えたのです」。レコードごとにコミュニケーションできるコメント機能も照会回答業務に適した機能として評価したと砂川氏は力説する。
1年間の出向を経て行政・デジタル改革課に赴任したタイミングで、kintoneの全庁的な導入の実現を目指した砂川氏だが、いきなり全庁導入は難しく、まずは成功事例で実績を作ることが求められた。「照会回答業務は全ての部署が関係してくるため、全庁的に導入しないと大きな効果は得られません。当初は500ライセンスほど導入してkintoneでの実績を作り、そこから全庁展開を進めていく計画を立てたのです」。
入札段階では、業務基盤としてkintoneに限定したわけではなく、情報共有可能なDBとして利用できるもので、ノーコード開発が可能な、そして柔軟なアクセス制御が実現できる環境を希望。プロポーザル方式での募集を経て、照会回答業務を中心とした庁内業務におけるTX推進の中核的なプラットフォームとして、最終的にkintoneが採用されることになったのだ。
当初500人からスタートしたkintoneだが、現在は1万3000人在籍している全職員にkintoneライセンスおよびアプリ開発権限を付与しており、アプリ数は200を超えるなど全庁的なTX基盤として広がっている。アプリ自体は各課担当者が作成して砂川氏および平田氏が全てレビューする方式を採用しており、現場の課題に応えるアプリが日々作成されている状況だ。「作成する前に事前に申請をいただいた上で、アプリを自由に作成できるスペースにて開発を行ってもらっています。kintoneに関する基本情報から開発に役立つ動画など学びに関するさまざまな情報もkintone上に掲載しています。現場自ら業務改善に向けた環境が整備できるのも、ノーコード開発が可能なkintoneだからこそ」と語る平田氏。
なお、埼玉県では自治体情報システム強靭性向上モデルにおいてクラウド利用が容易な「β'(ベータダッシュ)モデル」のインフラがkintone導入前から整備されており、kintoneをはじめクラウドサービスには自席のインターネット接続端末から直接アクセスできるネットワーク構成が採用されている。「先人たちの英断でβ'モデルが整備されており、クラウド利用が進んでいます。この環境がなければkintone導入の流れもなかった」と砂川氏。
実際の展開については、当初は500ユーザーを契約していくつかのアプリを展開しながら成功事例を積み上げ、最終的に全庁への展開を実現している。当初はkintoneを活用したい部署に手を挙げてもらい、kintoneに適した業務かどうかを一件ずつ精査。ExcelやAccessなどで構築されていた課内に閉じたQ&Aといった仕組みをはじめ、国への報告業務に必要な実績記録のアプリ、地域機関から報告を受けるDBなど、県庁内に広く関係する横断的な業務を中心にアプリを展開している。「日々測定する環境データを収集してkintoneでDB化し、外部に情報公開するためにプラグインを活用するといった使い方もあります」と平田氏は説明する。
特に複数部署にまたがる情報共有、例えば福祉に関わる情報は複数の部署同士の連携が欠かせないため、現場からは評価の声が寄せられたという。また、職員から寄せられる各種相談を記録するアプリでは、情報共有することで同様の問い合わせが発生したときに対応しやすく、省力化できた時間を勉強会などに充てることで対応の質を向上させることに成功するなど大きな効果を得たという。これら初期のアプリ展開で効率化としての実績を積み上げたことで、全庁的な基盤として広げることに成功したわけだ。
行政・デジタル改革課 DX推進担当 主事 平田 敦也 氏
全庁的なTX基盤としてのkintone活用について語る両氏
全庁的なアプリ展開となっているのが、必要な情報を各課から収集するための照会回答業務だ。照会回答業務の代表的事例である、埼玉県5か年計画における施策の進捗管理をするアプリでは、各課が定期的に実績を報告する。照会回答業務の一部のプロセスに関しては、各課が回答内容を提出し、その後に部局を主管する課が確認するといったチェックフローを設けている。
さらに5か年計画だけでなく、同じような計画の進捗管理が作成され、横展開もされている。「行政・デジタル改革課では、DX推進計画に関するロードマップ取り組み管理アプリを用意しており、中項目ごとにどんな事業が取り組みとして設定されているのかの項目を管理しながら、進捗状況が把握できるようにしています」と平田氏。
他にも、次年度の新たな事業を提案するためのアプリでは、企画部門から各課に対して提案事業に関する情報を収集している。「5か年計画と違うのは、各課から収集した情報は、取りまとめの企画部門だけでなく、財政部門も含めて確認する必要がある点です。企画部門と財政部門が同じ情報を確認できるなど、情報共有が容易なkintoneの良さが出ている活用例です」と砂川氏。県が進めるTX推進の全庁的なプラットフォームとしてkintoneが活用されたことで、各課の情報共有が大きく進み、同じ情報をベースにコミュニケーションが図れるようになっている。
今では全庁的に実施されているTX取組のコンテストでも半分以上はkintoneを活用した事例となっているなど、業務改善に向けた基盤として広がっていることが大きな効果の1つだと砂川氏は力説する。「kintoneが全庁に導入されていることで、業務改善のアイデアがきちんと形にできる環境となったことも大きな効果の1つ。業務改善の基盤として広がり、さらにさまざまな情報を蓄積してDB化することで、情報共有の基盤としても浸透する。その結果、過去の情報を参考にできるなどデータ活用も進み、業務の質が向上するようになるはずです」。
現在は各課横断的に利用する照会回答業務のすべてがkintoneアプリ化できているわけではないため、Excelのままの方が効率的な照会は残しつつも、できる限りkintoneに集約していきたいという。「いずれは第3ステップ(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを本格化させていく段階がやってきます。それに向けて、今後もkintoneをうまく活用しながら、さらに業務効率化を加速させていきたい」と砂川氏は意欲的だ。
特に照会回答業務含めてkintone内に情報が蓄積されることで、EBPMをはじめとしたデータに基づく政策立案が可能な環境になると踏んでいるが、データ活用については職員ごとに温度差があるのが現実だ。「照会回答業務によって得られたデータは宝の山だと考えていますが、まだその価値が十分広まっていない部分も。情報共有で蓄積されたデータの有用性をさらに伝えていきたい」と砂川氏は期待を寄せている。
今後も生成AIも含めた新たなテクノロジー活用への挑戦を続けていくことになるが、サイボウズのように徹底した情報共有が当たり前にできる環境整備を志向している砂川氏。県庁の全職員がワンチームとしてDXへの歩みを着実に進めていけるよう、現場自ら改善活動を進めていける環境づくりを今後も推し進めていきたいと最後に語っていただいた。
(2026年1月取材)
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