埼玉大学教育学部附属小学校
- 【業務内容】
- 教育
- 【利用用途】
- 学校から保護者へのお知らせ、保護者の学校評価アンケート、会議録共有、学校日誌、行事管理
埼玉大学教育学部附属小学校では、教職員同士および保護者との情報共有にkintoneを活用している。その結果、印刷費用を年間189,000円、印刷や配布、集計作業、連絡対応などにかかる時間を年間587時間削減するなど、大きな効果を得ている。kintone選定の経緯や実際の活動内容について、副校長 森田 哲史氏および同校の運営委員であり理科主任を務める教諭 塩盛 秀雄氏にお話を伺った。
1874年に埼玉県師範学校内の附属小学校として開設。創立140年を超える歴史ある教育施設として「勤労をいとわない自主的精神の旺盛な、人間性豊かなよき社会人を育成する」を学校教育目標に掲げている埼玉大学教育学部附属小学校。初等普通教育を行うだけでなく、大学の教育学部附属としての顔をもつ同校では、年間100名ほどの大学生が行う教育実習の場となっており、教育指導法の改善を含めた研究・実験学校の役割も果たしている。
同校では、大学のように各教科に研究室が設置されているものの、全員が一堂に会するいわゆる職員室が存在しない。そのため、全校的な情報共有に課題をもっていたと森田氏は説明する。「これまで2週間に1度のペースで放課後に職員会議を実施し、場合によっては4時間もの時間をかけていました。会議時間は短くしたいものの、決定事項のプロセスを共有する、会議録を業務の引き継ぎに生かすなど、教職員同士の情報共有は強化したい気持ちがありました」。
また、保護者との情報共有にも課題感があった。「これまでは各家庭にお知らせをする場合、全校児童約630人それぞれにプリントを配布していました。教職員は印刷作業から子どもたちへの配布だけで30分から1時間はかかっていました」。さらに、毎年保護者に記入してもらう「学校評価アンケート」では、紙のアンケート配布から回収、そこから各担任が正の字を書いて数をカウントするなど、大きな負担になっていた。
こうした理由から、学校内で使える情報共有の仕組みを探していたが、当初導入を検討していた校務支援ソフトでは金銭面で折り合いがつかず、プロジェクトが進んでいなかった。そんな状況下で出会ったのが、業務改善プラットフォームのkintoneだった。
「一般的にシステムはすでに提供された機能を活用するものだと考えていたこともあり、自らアプリが作成できるkintoneに衝撃を受けました。簡単にアプリ作成ができそうな印象でしたが、こうしたシステムを使ったことがなかったので、自分たちで開発していけるのかどうか不安な面もあったのが正直なところです」と森田氏は当時の印象を語る。実際にお試し環境で触ってみたことで柔軟性の高いツールであることが実感でき、うまく導入できれば抱えている課題解決に大きく役に立つと考えた。
その後いくつかツールを検討するなかで、kintoneであれば校内の予算で運用していけそうな費用感だったことも手伝って、導入を決断することに。「大掛かりな予算では導入までに年単位の時間が必要です。ちょうどその頃、新型コロナウイルス感染症との戦いも始まっていたので、情報共有が喫緊の課題となっていました。すぐに改善できる環境とともに、金銭面でも何とか対応できるめどが立ったことが大きかった」と森田氏。
同校のkintoneには学校と保護者のやりとりに使える「学校からのお知らせアプリ」と「学校評価アンケートアプリ」が実装され、日々の連絡に役立てている。教職員が通知したお知らせはパソコンのみならずスマートフォンでも閲覧が可能となっている。
「学校からのお知らせアプリ」:教職員から各家庭に直接お知らせができる仕組みに
「パソコンをお持ちでないご家庭もあるため、スマートフォンの普及率を考えると確実な情報共有に手ごたえを感じています」と森田氏。実際に保護者からも「紙の削減もでき、過去分も検索できるのでとてもよいと感じている」「各手続きや諸連絡の閲覧が便利かつ迅速になり、家庭の負担も軽減できた」などの声が寄せられている。
「学校評価アンケートアプリ」:アンケート回収から集計作業まで、教職員の作業はほとんどゼロに
また、kintone利用のメリットとして、情報の閲覧範囲を選べる点も挙げている。例えば、同校では授業や学校の様子を動画で保護者に公開しているが、必要な人のみにURLが通知できるようになっている。「運用していた一斉通知のメールにURLを張り付けることができず、HP上に動画のURLを張り付けてお知らせしていましたが、不特定多数の方が閲覧できてしまう状況にありました。今はkintoneを通じてURLを通知することで、kintoneアカウントを持つ保護者の方だけに適切にお知らせできるようになっています」と森田氏。
さらに保護者のみならず、教職員間での情報共有にも「学校日誌アプリ」や「行事管理アプリ」などを運用している。「まずは校内にkintoneを使うメリットを感じてもらうため、教職員同士の情報共有に使えるアプリを作成しました。その後保護者との情報共有アプリを作成するなど、少しずつ協力者を増やしながら環境を整えてきました」と塩盛氏。
ほかにも、学年や担当校務ごとにやりとりのスペースを用意して、会議の議事録を共有するなど、過去の経緯も含めたさまざまな情報が確認できるように。全体会議で決定したことが変更した場合でも、最新情報が入手しやすくなったと評価している。「急な変更が発生しても、kintoneのおかげで全教職員が共通認識を持てるようになりました。その場にいなくても、教職員それぞれのタイミングで議論のプロセスを確認できるようになったのは大きな変化です」と塩盛氏は語る。
kintoneのコミュニケーションスペースでは会議の内容が写真付きで共有される
日頃の授業の相談などもkintoneで行うことで、議論の経緯が残せるように
なお、教育現場における働き方改革の進捗については、数年前から教職員に対してアンケートを実施してその進捗状況を確認しているが、全体的に進んでいるという声が多く寄せられているという。「kintoneという情報共有できる環境が整備されたことで、業務改善につながる現場の声も集まりやすくなっていると感じます。何気ない情報はもちろん、研究に関する情報が蓄積しやすくなっています」。
今後は、保護者から児童の欠席や遅刻、早退を連絡できるアプリや、「家庭調査票アプリ」、「保健調査票アプリ」などの運用も予定しており、学校現場のニーズに応じて新たなアプリを次々に追加していく予定だ。
また、現状は保護者同士がやり取りできる環境を提供していないが、いずれはスペースやアプリを用意して情報共有にも活用したいと森田氏は期待を寄せている。「まずは、学級内の代表理事を務める保護者の方や、PTA役員の方だけに限定してやり取りできる場づくりなどを検討しています。そのなかで情報が集まれば、次年度の引継ぎ時に過去のプロセスが共有できるようになるはずです」。現在はUSBのやり取りを保護者間で行っているケースもあるようで、それらの情報共有の場としてもkintoneを活用していきたいという。
さらに、今後は柔軟な発想をもつ若手の教職員を中心にkintone管理を担当する校務担当を新設することも視野に入れている。「最終的には自分たちで運用できる環境づくりも必要ですし、我々がやっていることを後任に託せる環境として組織作りは必要不可欠です。立ち上げたメンバーが人事異動などでいなくなっても、kintoneは運用し続けてほしい。そのための環境をこれから整えていきたい」と森田氏に今後について語っていただいた。
(2021年3月 取材)
写真提供:栃久保 誠(フォトグラファー)
本動画に関する著作権をはじめとする一切の知的財産権は、サイボウズ株式会社に帰属します。
kintoneを学習する際、個人や社内での勉強会のコンテンツとしてご利用ください。
データを変形 ・加工せず、そのままご使用ください。
禁止事項
ビジネス資料や広告・販促資料での利用など
商用での利用は許可しておりません。