埼玉大学教育学部附属中学校 様の導入事例

埼玉大学教育学部附属中学校

【業務内容】
教育
【利用用途】
通知表、指導要録、欠席連絡、出席簿、健康診断票、生徒名簿
  • 出席簿、通知表、成績管理、生徒名簿など学校内の業務を次々とシステム化
  • 費用は10分の1に抑えながら、セキュアな環境で情報共有できる校務支援システムをkintoneで実現

大学と連携しながら先進的な研究に基づく授業を展開している埼玉大学教育学部附属中学校では、従来利用してきた校務支援システムの刷新に伴って、出席簿などとのデータ連動によって効率的な校務を可能にするべく、kintoneをベースに校務支援システムを構築することに成功している。その経緯について、副校長 二瓶 剛氏および教務部 家庭科担当かつkintone担当でもある大関 さわ子氏にお話を伺った。

【課題】入力のために順番待ちも。校務支援システムの効率的な運用が求められていた

埼玉大学教育学部附属中学校は、1947年に埼玉師範学校附属中学校として開校。正しい判断力とたくましい実践力を持った自主的人間の形成を教育目標に据えている。公立中学校同様の中等普通教育を行いながら、教育学部の附属中学校としての役割も担っており、教育実習生が行う実習環境の提供はもちろん、埼玉県唯一の国立中学校として大学と連携しながら研究を推進している。

そんな同校では、10年以上前からパッケージ化された校務支援システムを活用し、通知表や調査書、指導要録などの作成に必要な校務を行ってきたが、長年利用するなかでシステム上の不具合も散見されるようになり、メーカーからの支援体制も十分なものとは言えない状況が続いていたという。「特に出席簿と校務支援システムが連動していないことは問題でした。例えば学期末には紙の出席簿から手作業でシステムに情報を打ち込む必要があるなど、効率的な環境とは言えなかった。不具合を改善してもらうにも、その都度費用が発生するなど、何らかの対応が求められていたのです」と二瓶氏は当時を振り返る。

 

また、成績処理室に設置されているPC上でしか稼働しないオンプレミスの仕組みだったため、入力や集計作業においても教員の負担が大きかったという。「わざわざ成績処理室に赴いて入力や集計を行う必要があり、タイミングによっては順番待ちが必要でした。人がいない時間を見計らって入力するなど、効率的な環境とは言えなかったのです」と大関氏。そこで、従来の校務支援システムに代わる新たな環境づくりに向けて検討を始めることになったのだ。

左:大関 さわ子氏 右:二瓶 剛氏

【選定】パッケージを使わず、新たな校務支援システムをkintoneで構築することを決断

高額な費用捻出が難しいなか、附属小学校でも実績のあるkintoneに注目

新たな仕組みについては、当初は同じ埼玉県下の別の地域で採用されていた校務支援システムを導入する計画を進めていたものの、導入費用が高額だった。「その校務支援システムで運用できているという話を聞き、導入するつもりでいました。しかし、高額な投資が必要で予算確保は正直難しい。実は他の地域で導入した校務支援システムは、市の小中学校全体で導入していたため、1校あたりの値段は押さえられていたかもしれませんが、我々1校だけでその費用を捻出するわけにはいかなかったのです」と二瓶氏は語る。

そこで大学側とも相談を重ねるなかでいくつか案が提示され、他の校務支援システムの紹介も行われることに。そのなかで注目したのがサイボウズが提供するkintoneだった。「大学ではサイボウズのGaroonを利用していました。その流れでkintoneを知り、パッケージでなくても校務支援システムが構築できるというアイデアをいただいたのです。同じタイミングで、附属小学校でkintoneを校務の一部に活用しているという話を聞きつけ、我々にとってはまさに渡りに船だったのです」と二瓶氏は説明する。

サイボウズの協力体制が、校務支援システムを1から構築することに対する不安解消に

ただし、kintoneで1から校務支援システムを構築することに関しては、さすがに躊躇した面もあったと振り返る。「実績のある附属小学校の使い方は、kintoneを保護者とのコミュニケーション基盤や教員間のデータのやり取りに使っていると話でした。その意味では、kintoneを成績管理など校務の中心的な仕組みに活用するのは、初めての試みだったのです。正直に言えば、自分たちで構築できるか不安も大きかった」と二瓶氏。 

それでも、大学や附属小学校におけるサイボウズのソリューションに対する実績を高く評価したという。また、サイボウズが支援していく協力体制が確立できたことで、新たな校務支援システムをkintoneで構築するプロジェクトがスタートすることになったのだ。

【効果】高額なパッケージを導入せずとも、校務支援システムが構築できるkintone

日々入力する出席簿の情報を通知表などに反映できる、新たな校務支援システムを整備

プロジェクトについては、まずはプロトタイプとなるアプリを作成し、その都度要望を通じて機能改善していき、1年ほどかけて検証を行ったうえで現場への展開を進めていった。現在は、校務支援システムとして必要な各種機能をkintoneにて実装し、IPアドレス制限によって学校内からのアクセスに限定するなどセキュアな環境が整備されている。

従来の仕組みで実装していた通知表や指導要録作成に関するアプリはもちろん、出席簿や保健日誌、受験高校管理といった校務に欠かせない各種アプリをその都度新たに実装している状況だ。この校務支援システムを利用する30名弱の教員全員がkintoneアカウントを持っており、日々の出席簿の記録などを行うことで、学期末の通知表などにデータ反映できるような仕組みが構築されている。

具体的なアプリについては、生徒の個人情報を管理する生徒名簿や受験校一覧などマスター系のアプリをはじめ、日々の出席情報を記録する「出席簿アプリ」や欠席事由を記載する「欠席管理アプリ」、保健室での利用状況を管理する「来室記録アプリ」、水質検査の情報を日々記録する「保健日誌アプリ」、生徒の学習および健康の状況を記録した指導要録やその情報を高校に通知する際の「調査書アプリ」、「通知表アプリ」、「健康診断・発育測定の結果を記録するアプリ」などが用意されている。生徒指導報告会議などに必要な生徒ごとの状況を報告してもらう生徒指導管理アプリなども構築済みだ。

また各種アプリはグレープシティ社が提供する「krewData」で連携。「krewSheet」で入力しやすいようなインターフェースを実装しており、教員が楽に入力できる工夫をしている。

通知表など生徒に提示するものはソウルウェア社が提供する「RepotoneU Pro」を利用して帳票印刷できるようになっている。「指導要録など公文書としてきちんと作成、保管する文書も多くありますが、出席簿や通知表、欠席事由など各種アプリに記載された情報が自動的に計算、記録されるようになったことで記載ミスも減らせるようになるなど、負担のかかっていた作成業務が大幅に削減できています」と二瓶氏は評価する。

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「通知表アプリ」:kintoneアプリ内のボタンをクリックすると、通知表が出力できる

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費用は10分の1以下におさえながら、セキュアな環境で自席からでも入力できる効率的な校務環境を実現

書類を学期ごとに手作業で集計する手間から解放され、順番待ちして入力する環境からも脱却できたことは大きいと二瓶氏は評価する。「クラウドながらセキュアな環境で情報共有ができて、ハードディスク破損による業務停止を心配する必要もなくなりました」と二瓶氏。

大関氏も「手計算でミスをするたびにやり直す以前の状況は本当に大変でした。今は情報の一元管理ができており、1度入力した情報を他のアプリにも展開しやすい。また安心して個人情報をやり取りできるようになったのは何よりの効果だと考えています」と評価する。

費用の面では、導入候補であった校務支援システムへの刷新に比べて、およそ10分の1程度の費用で済んでいるという。以前のシステムと比べても情報が連動できるなど、校務の効率的な運用が可能になっている状況だ。

一方で、教員への啓蒙活動が不十分な点もあり、以前の教務支援システムに慣れた教員からの戸惑いの声が寄せられるケースも。「現時点では、出席簿の運用や通知表の出力まで一通りの運用をkintoneで構築した段階にあります。教員全体への周知徹底を進め、新たなシステムの魅力に気づいてもらえるようにしたい」と大関氏は語る。 

kintoneについては、ちょっとした変更や項目追加ができる点が大きな魅力だという。「COVID-19によりオンライン授業があったため、文科省から指導要録に内容を追加するように通達がありましたが、そんな時であっても、その日のうちに変更が反映できるなど、変化の激しい時代に最適なツールだと実感しています」と大関氏は評価する。

教員以外の事務職員への展開はもちろん、保護者との情報連携も視野に入れたい

今後についてはkintoneの利用を定着させながら、これまで以上に便利に活用できる環境づくりに取り組みたいという。「教員だけでなく事務職員向けのアカウントも用意したため、公文書の発番業務や現在Excelで行っている収支簿作成など、紙面で行っている日常業務を効率化できるように環境整備を進めていく予定です」と大関氏。

保護者や生徒とのやりとりに関しては、「保護者や生徒から直接情報を入力してもらうために外部フォーム連携についてもできる範囲で実装していきたい」と二瓶氏。今後の意気込みについて語っていただいた。