サエラ 様の導入事例

サエラ

【業務内容】
保険薬局チェーンの運営、健康関連事業
【利用用途】
採用管理、イベント管理、報告書、データ集計、コミュニケーション
  • 採用管理だけにしか使えない専用ツールはもういらない
  • エクセル管理から脱却し、独自の採用プロセスのシステム化をkintoneで実現

関西を中心に調剤薬局チェーンを展開している株式会社サエラでは、薬剤師を目指す6年制の薬学生の採用管理の基盤として運用してきたExcelからの脱却を決意。情報共有やコミュニケーションの円滑化に貢献するサイボウズのkintoneを新たに採用し、徐々に採用以外にもkintone活用の幅を広げている。そんなkintone導入経緯や実際の運用状況について、総務部 係長 田中 良和氏および人事部 主任 西川 智美氏にお話を伺った。

【課題】調剤薬局チェーン独特の採用管理に用いていたExcel運用が限界を迎える

調剤薬局チェーンにおける独特な採用管理に対応した基盤づくり

1997年に兵庫県神戸市にて調剤薬局をオープンしたのを皮切りに、現在は関西を中心に72店舗を展開している株式会社サエラ(サエラ薬局グループ)。関西エリアのみならず、東京や埼玉、千葉、神奈川など関東エリアへも積極的に展開しており、東海、北陸、中国エリアにも出店しているなど、広いエリアで調剤薬局の輪の拡大を進めている。医薬分業における地域医療の一端を担う存在として、患者と密接な関係作りを行う『かかりつけ薬局』や地域の健康増進の旗振りを担う『健康サポート薬局』として、薬局という場を通じて心と体のケアにつながる真心を込めたサービスを提供している。

 そんな同社では、薬学部に所属する学生を対象として採用活動を行っているが、他の学部とは異なる特殊な採用プロセスになっているため、他学部とは異なり、学生との接触歴を長期にわたって管理する必要があるという。「薬剤師になるためには6年制過程を経たのちに国家試験に合格する必要があります。国家試験対策に集中できる時間を確保するために4年生頃から就職を意識した動きを開始するケースも見かけます。だからこそ、学生が参加したイベントや説明会などの接触歴をしっかり把握しておかなければならないのです」と西川氏は薬局業界ならではの特殊性について説明する。

長期にわたる膨大な情報管理によって“お化けExcel”が情報活用を困難に

そんな事情から学生との接触歴管理は重要になってくるのだが、以前からExcelを中心に情報管理が行われており、事業規模が拡大するなかで課題が顕在化してきたのだという。「卒業年度ごとに膨大なデータ量のExcelファイルが作られますが、そこに集められている情報の活用がうまくできていませんでした。また、Excelファイルでは同時編集が難しく、ファイルが壊れてしまった場合は復旧するまでに時間がとられてしまう。Excelファイルを無理に大きく拡張したことで処理が遅くなるなど、不便な状況が続いていたのです」と西川氏。実際には、毎年1000人ほどのエントリーを受け付けており、その管理項目も250を超えるほどにまで拡張されていた。ある意味“お化けExcelファイル”が毎年生まれている状況が続いていたのだ。

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もちろん、Excelファイルを使いやすくするために項目ごとに色分けしたりフィルターをかけたりなど工夫はしていたものの、入力するメンバーごとに扱い方がばらばらで、属人化した管理となってしまっていた。それにより、イベント単位での効果検証や採用業務全般の前年度の振り返りを行う際などに、必要な情報の集計に非常に手間がかかる・データが存在はしているのに全く“次”に活かせない等の問題をかかえていた。結局Excelのデータを活かせず、実施したメンバーの記憶と感触を基に実施時期や内容・反響の善し悪しの判断をせざるを得ないことも。

確かに、実施担当者の感覚も大切です。しかし、それだけを頼りにしていては、必ず限界を迎えてしまいます。データによる裏付けがないと、そこまで遠くない将来に厳しくなると危惧していたのです」と西川氏は課題について吐露する。

人事部 主任 西川 智美 氏

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【選定】採用管理にとどまらない、属人的な業務が吸収できる基盤づくりを目指す

採用活動だけにしか使えない専用のツールでは柔軟性や拡張性に欠ける

業務改善に向けた仕組みづくりに向けて、前職でシステム周りを経験していた田中氏が役員からの要請を受け、業務改善に向けて動き出すことに。「実際に話を聞いてみると、Excelファイルによる管理に課題が顕在化していながら、その代替え手段の存在に思い至っていない状況でした。」と田中氏。そこで、田中氏を中心に新たな仕組みづくりを検討することになったのだ。

新たな仕組みでは、採用管理という枠組みだけでなく、患者情報を取り扱うような基幹システム以外の周辺業務、具体的にはコミュニケーションやタスク管理、進捗管理といった部署ごとに属人化していた環境を統一することも視野に入れていたという。「部署ごとに部分最適化された環境となりつつあり、複数のツールを使うようになるとセキュリティ的にも対応が難しく、従業員にとって異なるインターフェースのシステムを業務別に使いこなしていくことはストレスの大きな作業になりうる。最終的には多くとも2~3の環境に統合することで現場にとって最適な環境を構築したい」と田中氏。

総務部 係長 田中 良和 氏

当初は採用管理業務の専用パッケージも案として挙がったが、専用ツールだと人事部門だけに閉じた仕組みとなってしまい、他部署への広がりは期待できないと判断した。「採用活動だけに閉じた仕組みでは、せっかく集まってきた情報を人事管理や研修管理、そして配属先の店舗管理などに生かすことが難しい。また、業界の特殊性に対応できるような業務フローが専用システムでは整備できません。我々の運用にシステム側が柔軟に合わせられることが重要だと考えたのです」と田中氏。

現場主導で内製化できる採用管理の仕組みづくりに最適だったkintone


 そこで注目したのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「項目を追加するだけでコストがかかるような仕組みを導入してしまうと、本業をこなしながらシステムの予算取りをせざるを得ないなど、現場主導での運用は難しい。ある程度内製化できる環境が必要で、そんな要件に合致したのがノーコードでカスタマイズ可能なkintoneだったのです」と田中氏は説明する。

 またkintoneであれば、Excelの情報をそのまま取り込み可能なだけでなく、情報の更新履歴も残すことで業務品質の改善にも大きく役立てることができると考えたという。機能としても、スレッドやコメント機能によってコミュニケーション基盤として活用できるだけでなく、業務の進捗管理などもkintoneであれば十分可能だと判断。「例えば会議の議事録に対してコメントを残すなど、口頭ではなく文字に残すということが当たり前になる環境を整備したいという考えもありました。kintoneであれば、採用管理だけでなく、さまざまな業務基盤として拡張していけると考えたのです」と田中氏。

結果として、Excelでの採用管理から脱却するための基盤として、サイボウズのkintoneを中心に業務基盤を整備することになった。

【効果】自社に合わせた採用管理の仕組みを整備、情報管理基盤としての拡張も進む

属人的な管理から解放され、長期的な採用活動に大きく貢献

現在は、人事部門も含めた複数の部門でトータル30名ほどがkintoneを活用しており、情報共有や進捗管理の基盤としてだけでなく、コメント機能やスレッド機能を活用するなどコミュニケーションの基盤としてもkintoneを有効活用している状況だ。

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全体共有スペースのスレッドで、kintoneの使用法だけでなく
『各種業務に関すること』『ちょっとしたライフハック』などを自由にコミュニケーションしている

採用管理については、薬学生向けと事務職向けそれぞれのアプリを作成、薬学部のある大学名や店舗といった各種マスターアプリも含めて、140ほどのアプリが運用されている。年度ごとに採用管理アプリが2~3ほど作成されており、すでに5年後に卒業する薬学生の採用活動に必要なアプリまで用意されているなど、長期的な採用活動に欠かせない情報管理基盤となっている。採用管理アプリの基本的な活用としては、選考フローに沿った情報管理とともに、インターンシップや店舗見学、会社説明会、イベント参加、個別フォローなど自社との接触歴とともに、アンケート結果のPDFや具体的なやり取りも含めてきめ細かな情報がkintone上で管理されている。

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新卒採用管理アプリ

また、メンバーと共有したい情報については、リマインダー機能を活用して通知するといった運用も行われている。学生とのやり取りについてはメールワイズを活用しており、メールワイズとkintoneを連携させることで学生ごとにやり取りした情報が簡単に閲覧できるようになっている。なお、内定が決定した学生は、ボタンを押すだけで内定者アプリに必要な情報がコピーされるようになっている。

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リマインダー機能を用いて、選考案内の連絡や交通費支給などの対応漏れを防いでいる

採用管理だけにとどまらない、さまざまな業務への展開が進む

採用管理以外のアプリでは、合同企業説明会などのイベント管理アプリ、会議議事録の共有アプリ、福利厚生の一環で誕生日に親御さんにプレゼントを贈る際のバースデーリストを管理するアプリ、店舗から寄せられるホームページ掲載依頼アプリ、Twitterへのツイート依頼アプリなど、さまざまな業務に利用されている。なお、テレワークへの対応として、就業管理アプリも運用している。

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試行錯誤のしやすさが“より良いものに変えられる”という好循環を生む


現場からは、情報が集約したことで複数のファイルを参照せずレコード単位での確認で済むようになり、同時編集が可能になったことも高く評価されている。また、試行錯誤のしやすさがkintoneの大きな魅力だと評価の声が寄せられている。「自分の裁量で管理項目の追加がすぐに実現できます。試してうまくいくと便利になるという好循環が、もっと変えられるかもしれないという思いにつながっています」と西川氏は評価する。さらに、kintoneが持つリマインダー機能にて担当者に通知できるようになり、対応の抜け漏れがなくなっている点も大きなメリットだと評価する。

 セキュリティ面では、担当者のPC内にあるExcelファイルでの管理に比べてセキュアな情報管理が実現できており、情報がオープンになったことで業務の透明性が高まっている点も見逃せない。「複数部署で同じようなことをやっている業務があれば、まとめたら効率ができるのではといった気づきにもつながっています。情報をオープンにすることで得られるメリットを感じてくれる人が徐々に増えてきており、意識改革にも大きくつながっているはず。個人が情報を発信し共有することに対して喜びを感じてくれる環境をさらに作っていきたい」と田中氏は評価する。

 サイボウズについては、定期的に開催されているワークショップなどに参加した際の丁寧な対応に感謝しているという。「開発経験のない私に対しても、絶対にうまくいくので一緒に変えていきましょうと励ましていただくなど、温かく支援いただけました」と西川氏は評価する。さらに田中氏は、他社では体験したことのないサポートセンターの対応に驚きを隠せない。

「一度回答いただいたにもかかわらず、開発の方に改めて確認いただいたうえで追っかけて再度お電話いただいたときには非常にびっくりしました。こんな親身になっていただいたことは他にはありません」。

情報管理基盤として“フードコート”のような環境を目指す

今後については、kintone上に蓄えられた情報を周辺システムに展開することも視野に、さらなる情報活用に生かしていきたい考えだ。「主に給与計算に利用されている人事システムの刷新が計画されているため、ここ1~2年の間に入社したメンバーの情報であれば、うまく連携させることができるはず」と田中氏。将来的には、人事に関する情報管理の基盤として拡張していくなど、kintoneに対する期待は高い。

また、新卒や中途にかかわらず採用管理アプリを各店舗のマネージャに展開することで、店舗として欲しい具体的な人材像や面接時にヒアリングしてほしい項目などを収集し、人事と店舗マネージャが一緒になって採用に関わるような環境も整備してきたいという。最終的には、本部と店舗におけるコミュニケーション基盤としてもkintoneを拡張していきたいと期待を寄せている。

社内への展開について、田中氏が所属する総務部では業務プロセスを詳細に分解してkintoneにて実装できるかどうかの模索が進められているという。また、店舗開発部では医療モールにクリニックを誘致する活動も行っているが、そのプロセス管理にkintoneが生かせるかどうか検討している状況だ。さらに経理部門から、経理が持つ情報を他部門に共有していくためのプラットフォームとしてkintoneの運用が検討されている。「専門店ではなく、欲しい情報が自分たちで自由に取り出せる“フードコート”のような環境をkintoneで作っていけたらと考えています。もちろん、情報を得るためには自分たちの情報もオープンしてもらう相利共生の形で運用していくのが理想です」と田中氏に今後について語っていただいた。(2020年12月取材)