ロイヤルホテル 様の導入事例

ロイヤルホテル

【業務内容】
ホテルの運営
【利用用途】
客室からの問合せ管理、HACCP(ハサップ)対応
  • 客室のリクエストを一元管理、業務分析から改善、人材配置の適正化を実現
  • kintoneとビジネスチャットでホテルの現場を劇的に改善

 全国11のホテルを展開するリーガロイヤルホテルグループを運営する株式会社ロイヤルホテルでは、ご宿泊のお客様の対応を受け付ける窓口をゲストサービス課内に設置している。宿泊客から寄せられる各種要望を記録したうえでチャットツールを用いて各部署に指示を行っているが、情報を記録するための基盤としてkintoneおよびビジネスチャットdirectを採用している。その経緯について、リーガロイヤルホテル(大阪) 宿泊部 部長代理 磯田 英也氏および同部 ゲストサービス課 木久 恵梨香氏にお話を伺った。

【課題】フロントに集中する問い合わせで対応遅れが懸念、急務だった組織改革

客室関連業務に関する問い合わせ窓口の一元化を実施

 賓客のための近代的ホテルを大阪に、という大阪政財界からの要望を受けて1935年に誕生した「新大阪ホテル」が前身となり、現在はリーガロイヤルホテルグループに所属する8つのホテルと3つのリーガアソシエイトホテルズを展開している株式会社ロイヤルホテル。なかでも大阪にあるリーガロイヤルホテルは開業以来、国内外の国賓クラスのVIPを迎えるべく質の高いサービスを提供しており、“大阪の迎賓館”とも呼ばれるほど格式の高い歴史あるホテルとして有名だ。地上30階、地下2階に1000を超える部屋数を有する大規模ホテルとして、訪れる人に感動と満足を提供し続けている。

リーガロイヤルホテル(大阪) 宿泊部 部長代理 磯田 英也氏

 そんな同ホテルでは、かつては清掃や故障修繕などを担当する部署をはじめ、ルームサービスを提供する部署やそれ以外の業務を担当する部署など、客室に関わる業務が複数の部署に分かれており、それぞれ宿泊客が求める要件によって問い合わせ先が異なっていたという。宿泊客からすればどこにかけていいのか迷うことになり、結果としてフロントに問い合わせが集中してしまうことに。チェックイン業務でフロントが多忙の際には、電話での応対が遅れてしまう状況が続いていた。そこで、客室に関する担当組織を統合し、同時に宿泊客の問い合わせ窓口も1本化する組織改革を実施したという。

客室からのリクエスト内容の可視化と現場へ情報提供できる仕組みが必要に

 新たな組織づくりに合わせて実施したのが、問い合わせ内容をしっかりと記録するための基盤づくりだった。「組織再編の結果、問い合わせ窓口を1本化することで間口が広がり、さまざまなリクエストが一か所に集中します。そこで、リクエスト内容をきちんと記録しながら、現場対応する部署にその内容を伝え、そのタスクがきちんと行われたかどうか確認できる基盤を構築することが求められたのです」と磯田氏は当時を振り返る。

【選定】現場での立ち仕事でも指示から作業完了まで報告が容易、情報一元化で業務分析や品質改善に大きく役立つ

スマートフォンなら現場からの情報も収集しやすい

 新たな基盤として求められたのは、客室からのリクエスト内容を記録する基盤、そしてリクエスト内容を現場に伝えるためのコミュニケーションの仕組みだった。そこで注目されたのが、サイボウズが提供するkintoneだった。「今回の仕組みづくりでは、お客さまからのリクエストに対応できる基盤だけでなく、さまざまな業務課題の解決に役立つ仕組みが構築できる汎用的な基盤であることが大前提でした。同時に、現場で情報を入力することも考慮すると、スマートフォンで利用できるものが最適だと考えたのです」と磯田氏は語る。その要件に適していたのがkintoneだったわけだ。

 同時に、現場に対して作業を指示したうえで、きちんと対応できたかどうか報告しやすい仕組みとして選ばれたのがビジネスチャット「direct」だ。「必要な担当者に直接指示できるだけでなく、作業完了の報告をボタン一つで行うことができます。現場で立ったままでも作業指示が受けやすく、使い慣れたSNSに近い画面で負担なく操作できる点を評価しました」と磯田氏は語る。

ホテルグループ内での導入実績と現場主導で改善可能な使い勝手のよさを評価

 また新たな基盤として求められたのは、使い勝手のよさだった。「ITに慣れていない現場の人であっても使いやすい仕組みであることはもちろん、現場主導で改善していけるという操作性の高いものを検討しました」と磯田氏。

他の製品も検討したというが、インターフェースがとても簡単で、誰にでも使ってもらいやすいということが大きな選定要因の1つになっている。さらに、kitnoneであれば業務内容が容易に蓄積でき、業務分析や品質改善のための活動にも活かせる点を高く評価。バックオフィスでの使いやすさも高く評価されたという。

 実はグループ内の他ホテルでkintoneを利用した実績があった点も見逃せない。「我々のグループホテルの1つで、営業支援ツールを検討したことがあったのです。ツール導入を検討していた営業部署の人数は数人規模だったため、大規模向けのSFAを導入するのは現実的ではなかった。そこで、簡単に営業履歴が管理できる仕組みとして、情報システム部門にあたる業務チームがkintoneを選択し、営業支援の仕組みを構築した経験があったのです。今回の仕組みでも、早い段階からkintoneが候補に挙がっていました」とその実績について説明する。

 結果として、リクエスト内容を蓄積して情報の見える化を実現する基盤として「kintone」が、そしてリクエスト内容を現場に伝えて作業完了報告までのプロセスを管理するツールとしてチャットツール「direct」が導入されることになった。

リーガロイヤルホテル(大阪) 宿泊部 ゲストサービス課 木久 恵梨香氏

【効果】業務分析によってkintoneがホテルの現場を変える業務改善の強力なツールに

客室からのリクエストの可視化によって最適な人員配置や現場オペレーションの改善に寄与

 現状は、客室からのさまざまなリクエストに対する窓口をゲストサービス課にて1本化し、ヘッドセットを用いて電話の応対をバックエンドで実施。24時間体制でリクエストに対応しており、1日あたり多いときで300件ほどのリクエストが寄せられる状況にある。 具体的には、電話に表示されている部屋番号や宿泊者名、そして実際のリクエスト内容をその場でkintoneに記録。リクエスト内容は、大きく「オーダー」「問い合わせ」「センター内処理」に振り分けられ、他部署に依頼が必要なオーダーであれば、kintoneに記録した内容をチャットツールにコピー&ペーストしたうえで適切な部署に指示を行う。その指示を受け取った現場のメンバーがチャットツールでオーダー内容を確認、客室にタオルやルームサービスを届けるといった作業を実施する。作業完了した時点でチャットツールにて完了報告ボタンを押すことでタスク完了の報告が行われるといった運用フローだ。

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 kintone上に記録されたオーダーは、3時間ごとに集計され業務日誌として報告されており、人員配置時の基礎情報や現場オペレーションの改善につなげるなどさまざまな形で利用されている。「アイロンセットやスマートフォンの充電器といったよくリクエストされるものは、kintone上でプルダウンメニューから選択できるなど、入力の手間を減らすよう工夫されています。同じお客様がご利用の際には、以前の情報を確認し、例えばズボンプレッサーを事前に設置しておくといった対応も。お客さまが満足していただけるよう、リクエストへの迅速な対応を実現しています」と木久氏。

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通勤手段の管理や予算管理、HACCP対応など新たな業務にも拡張を続ける

 当初は宿泊者からのリクエスト情報を蓄積するために導入したkintoneだが、今では他の部署でも利用されており、全体で15名ほどがkintoneにてアプリの作成、利用に関わっている。具体的には、従業員が通勤に利用する自動車や自転車の管理をはじめ、予算管理、従業員向けにスマートデバイスをキッティングするためのワークフローなどもkintoneにて構築しているという。

「食事を提供するホテルでは、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程を管理する、食品衛生管理の国際基準であるHACCP(ハサップ)への対応が2020年までに必要です。すでに工程検査の記録や報告書をkintoneにて作成しており、いち早くHACCP対応することができました」と木久氏は説明する。

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効率的なオペレーションで顧客満足度向上に貢献

 kintoneについては、基本的には業務改善を手掛ける業務チームが開発を行っているが、実はITの専門家は一人もいない。現場の木久氏であっても、必要な項目の追加など、現場レベルで改善できる環境にあるという。「とても使いやすいというのが率直な感想です。自分たちでもアレンジできるので、好きなように作ることができるのは大きい」と評価する。

導入した効果について木久氏は「事務所はフロントとバックエンドにありますが、紙のメモでやり取りせずともアプリを開けばどこからでも確認できます。お客さまがチェックアウトした後でも、履歴を見ながらリクエストへの対応方法など振り返りがしやすくなっています」と語る。

磯田氏が実感しているのは、人的な配置での効果だという。「これまでは履歴が管理できておらず、忙しい時期や業務については経験やイメージでとらえていた部分も。今ではきちんと数字で判断できるようになり、人材の最適配置が可能になっています」と高く評価する。お客様のご要望に対し瞬時に対応できるようになったことで、顧客満足度にもつながっているはずと磯田氏は説明する。

今後はkintoneとdirectの連携や、ホテル業務全般に用途を拡張していきたい

 今後については、kintone上に入力した情報がそのままチャットツール「direct」に連携できるような仕組みを検討したいという。また、客室のメンテナス状態を記録していく“客室カルテ”をkintone上で作成したいと磯田氏は力説する。「棟によって建物が完成した時期が異なりますし、客室も使われる頻度が異なるため、痛み具合も千差万別です。そこで客室の状態をカルテとして管理、分析するなど、適切なメンテナンスが行えるような形にしていきたいです」

<kintoneとdirectの連携イメージ。チャット「direct」に書き込んだ情報を元に、kintoneレコードの自動登録・検索が可能になる>

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 また、現場のスタッフがゲストサービス以外の指示で動いていることも含めて全てkintone上で記録できるような業務記録アプリも現在検討している状況にある。「現場のスタッフは、何かあれば振り返って確認・報告できるよう、業務内容を個人的に手書きでメモしています。そういった我々には見えていない業務も可視化することで、さらなる改善につなげていきたい」と磯田氏。また木久氏は「宿泊部には、私が所属するゲストサービス課以外にも、予約課など電話を受け付ける部署が数多くあります。そんな問い合わせも全てkintone上に集めて管理していくことで、自分たちで情報を活用して改善していけるようになるはず。そんな基盤としてkintoneをさらに広めていきたい」と今後について語っていただいた。(2018年9月取材)