
プロサス
- 【業務内容】
- 消防設備点検・工事・資材販売
- 【利用用途】
- 点検・工事の案件管理、点検報告書・見積書の作成



株式会社プロサスは、消火器や火災報知機、避難器具などの販売から点検・工事までを手がける防災・消防設備の専門商社だ。1975年の創業以来、消防設備一筋に歩んできた老舗企業でありながら、2020年から業務のDX化を本格的に推進。業界初の本格的なBtoB向けオンラインショップの開設など、新しい挑戦を続けてきた。そんな同社でも、社内の一部業務には非効率な習慣が色濃く残っていた。特に設備部では、20年以上にわたるExcel運用が業務の属人化を招き、事務担当と現場のリアルタイムな情報連携を阻んでいた。
こうした課題を抱えていた同社は、2023年にkintoneを導入。設備部での案件管理という小さな一歩から始まり、やがて全社導入へと発展させ、設備部の売上2倍・年間110万円のコスト削減・残業の大幅削減を実現した。この変革を牽引したEC事業部/事業戦略室DX推進チーム複属 部長 黒田 章太氏、チームメンバーの小田 凪波氏に話を伺った。
黒田氏は、設備部における当時の状況について「属人的なExcel、紙の書類、古い習慣が揃った、いかにもアナログな企業でした」と振り返る。社内には場当たり的に導入された複数の業務改善ツールが乱立し、情報共有には15年以上前の旧式システムがそのまま使われていた。
2021年に入社し販売部から設備部へ異動した小田氏を待ち受けていたのは、20年以上にわたり使い続けられてきた膨大なExcelファイル群だった。しかも、前任者が独自に組んだ関数やマクロは解読が困難で、過去のデータも一部破損していた。「Excelと紙しかない状態で、この人(=前任者)じゃないと解読できないようなマクロが組まれていました。解読するところから始めないといけなかった」と小田氏は語る。

EC事業部/事業戦略室DX推進チーム複属 部長 黒田 章太氏
設備部では、消防設備士一人ひとりの点検・工事スケジュールをExcelのカレンダーで管理していた。点検・工事など案件の種類ごとに別々のカレンダーが存在し、それらは統合されていなかった。案件リストに情報を入力し、カレンダーに日程を反映し、作業内容の一覧表をさらに別のExcelで作成する。この多重管理を小田氏が一人で担っていた。
「私が管理しているから、私が全部『これはこうですよ』と教えてあげないと、結局誰もわからない状態でした」と小田氏は当時を振り返る。Excelを誰かが開いていれば他の人は編集できず、現場の作業員はスケジュールの変更があっても外から確認する手段がない。変更の伝達漏れが原因で顧客からクレームが入ることもあったという。
残業も常態化していた。毎日のスケジュール確認と更新作業だけで夜遅くまでかかることも珍しくなく、繁忙期にはさらに負荷が膨れ上がった。事務全般を一人で抱えていた小田氏には代わりの担当者もおらず、休みすら取りにくい状況だった。
約1年間のExcel運用に限界を感じた小田氏は、業務改善ツールの検索に乗り出した。「業務改善ツール」で検索した際、最初に見つけたのがkintoneだった。
一般的なカレンダーツールも検討したが、消防設備の点検業務には不向きだった。「カレンダーのツールだけでは、案件の中身まで紐づけられません。お客様情報や点検内容など細かい情報を全部書き込めるものが必要でした」と小田氏は説明する。単なるスケジュール管理ではなく、案件情報を一元的に管理できるプラットフォームが求められていたのだ。

EC事業部/事業戦略室DX推進チーム複属 小田 凪波氏
小田氏はサイボウズに問い合わせ、設備部の業務要件を一つひとつ伝えた。カレンダー形式での案件管理、チャットによるコミュニケーション、書類の添付と現場での確認。すべての質問に対して「kintoneならできます」と回答を得たことが導入の決め手となった。当時の部長に相談すると「楽になるなら使いましょう」と、導入は比較的スムーズに決まったという。最初は設備部の人数分だけの契約でスタートした。
kintoneの画面上でパーツ(フィールド)をドラッグ&ドロップして配置するアプリ構築は、小田氏にとって馴染み深いものだった。「あまり共感されないんですけど、kintoneのUIが、私が使っていたゲーム制作ソフトにすごく似ていたんです」と小田氏は笑う。メニューからパーツを選んで配置し、紐づけていくという操作感がゲーム制作の経験と重なり、最初のアプリ構築で大きな苦労はなかったという。
一方で、アプリ間の連携、関連レコードやルックアップ(他のアプリからデータを参照・取得する機能)の設定には苦戦し、サイボウズのカスタマーサポートに何度も電話をかけた。「最初はたくさん電話をしました。でも一回覚えると便利で、感動しました」と小田氏は振り返る。
小田氏は最初に、最も負荷が大きかった「点検・工事スケジュールの案件管理」をkintoneへ置き換えることにした。
既存のExcelから項目名を変更せず、CSV形式でデータを移行。kintoneのレコードをカレンダー形式で表示できるカレンダーPlusを導入し、点検・工事・現場調査といった案件の種類ごとに色分け表示する仕組みを構築した。自社作業と外注作業も色を分けて表示することで、一目でスケジュール全体を把握できるようになった。
カレンダーを見れば一目で案件を確認できる(インタビューを元に作成したイメージ画像)
案件管理アプリのレコードには、物件情報、作業内容、担当作業員、進捗ステータスなどが集約されている。住所を入力すると地図が自動表示されるようJavaScriptでカスタマイズし、着工届の作成に必要な地図のスクリーンショットもその場で取得できるようにした。作業員が点検を完了すると作業記録を更新し、事務担当に通知が飛ぶ仕組みも整えた。「作業終了の通知が来たら請求処理に進む、というフローがスムーズに進むようになりました」と小田氏は説明する。
消防設備の点検は法令で定期実施が義務づけられており、次回の点検スケジュールを管理するのも重要な業務である。小田氏はレコードを定期的に自動複製できるくりかえしPlusを活用し、点検完了時に半年後・1年後の案件レコードを自動生成する運用を構築した。次回点検月の1日に仮登録しておき、3か月前から顧客と日程調整を行ってカレンダーに確定日を反映していく。未確定の案件や請求未処理のレコードにはアラート通知が飛ぶ設定にしており、対応漏れを防いでいる。
設備部の業務はスケジュール管理だけでは完結しない。点検現場での写真記録と報告書作成も大きな負荷となっていた。
従来、写真報告書はWordで作成していた。点検現場で撮影した写真をスマートフォンやデジカメから取り込み、所定の枠に収まるようサイズを調整し、コメントを添えて整形する。写真のサイズがバラバラで枠に収まらないケースも多く、マクロで自動調整を試みたが「動かない」という声が現場から上がることもあった。
小田氏はこの課題を、kintoneのテーブル機能を活用してシンプルに解決した。写真を添付する欄とコメント記入欄を組み合わせた表形式のレイアウト(テーブルフィールド)を作成し、写真を貼って説明文を書き、行を追加していくだけで報告書が完成する構造にしたのだ。写真のサイズに関係なくレイアウトが崩れないため、現場から直接スマートフォンで写真を撮影・登録することも可能になった。kintoneから帳票を作成・出力できるk-Reportを使用し、表紙に物件情報、2ページ目以降に写真と所見を配置したPDFを生成している。
帳票業務の改善は報告書にとどまらない。見積書の作成もkintone化を進めた。従来、見積書はExcelで作成しており、計算式が横にメモ書きされている状態。限られた担当者しか作成できなかった。小田氏は見積書作成アプリを構築し、商品情報に加え、機器の廃棄費用を自動計算する機能なども組み込んだ。k-Reportで整形された見積書をPDF出力できるようになったことで、「今まで数名しか作れなかった見積書が、kintoneなら誰でも作れるようになった」と小田氏は手応えを語る。現在は設備部だけでなく営業部の担当者も利用を始めている。
見積作成アプリの情報を会社指定のフォーマットへ反映できる(インタビューを元に作成したイメージ画像)
設備部でのkintone活用が進むにつれ、小田氏は社内での「孤立」を感じるようになる。kintone特有の用語が飛び交う設備部は、他部署から見れば異質な存在になりつつあった。一方、古巣の販売部を見れば、手書き伝票のFAX送信、複数ツールの乱立、15年以上前の情報共有システムがそのまま稼働という旧態依然の光景が広がっていた。
「kintoneで社内全体の業務改善ができるのではないか」と考えた小田氏は、設備部での実績をもとに40ページ超の提案書を作成し、経営陣に直談判した。営業部の顧客管理や旧来システムの置き換えについて次々と懸念が示されたが、「kintoneならできます。なんならもう準備ができています」とすべてに即答。全社導入が決定した。
kintoneの浸透にあたっては、各部署に推進担当者を配置した。小田氏はその担当者だけを集めてレクチャー会を2-3回実施。まずはスペースの作り方から始め、特に自身が苦戦した関連レコードとルックアップの設定に重点を置いた。「部署内でアプリをどんどん作って情報を紐づけていくには、関連レコードの理解が絶対に必要だと感じていたので、そこだけは必ず覚えてもらうようにしました」と、小田氏は熱く語る。
マニュアルもkintoneのアプリで作成した。写真報告書アプリの構造からヒントを得て、テーブルに画像フィールドと説明テキストを配置し、スクリーンショットに手書きの丸や矢印で注釈を加えたビジュアル重視のマニュアルに仕上げた。「テキストだけのマニュアルでは、うちのメンバーには難しいかなと思って」と小田氏は工夫の背景を語る。
一つひとつの手順をスクリーンショット付きで丁寧に解説
各部署のkintoneスペースには、担当者がAIで生成したイラストや独自のデザインを施したポータル画面が設けられ、部署ごとに個性が表れている。「業務システムの堅さをどうにか消したかった。遊び心がないとみんな使ってくれないので」と黒田氏。この意識が社内への浸透を後押しした。
全社浸透の成果を象徴するエピソードがある。購買部では従来、メーカーからの商品値上げや型番変更の連絡をチャットで受け取っていた。連絡を受けた購買部が基幹システムのデータを修正し、ECサイト「THE PROSUS SHOP」の商品情報更新はEC部へ依頼するという流れだ。チャットでは対応状況の追跡が難しく、月に100件近い依頼が流れていく中で抜け漏れが生じるリスクがあった。
この課題に対し、購買部の担当者が自発的にkintoneアプリを構築した。メーカー情報、型番、商品コードなどを入力して保存すると、購買部への修正依頼が通知される。購買部が基幹システムのデータを更新し完了チェックを入れると、次はEC部の担当者にサイト情報の修正依頼が自動で通知される。すべての対応が完了すると、依頼者に完了通知が届くという部署横断のワークフローが、小田氏の手を借りずに実現したのだ。
「チャットでやっていた頃は、対応したかどうかを遡って確認しなければならなかった。今は一目で状況がわかります」と小田氏はこの変化に手応えを感じている。運用開始からわずか1-2か月で180件のレコードが登録されており、現場からの利用は着実に進んでいる。購買部の担当者が自らアプリを開発したことは、小田氏にとって特に嬉しい出来事だったという。
導入の効果は数字にも明確に表れている。設備部では、業務効率化により部門売上を2倍に伸ばした。kintoneの全社導入により6つの有償ツールを集約し、年間110万円のコスト削減を実現している。小田氏自身の働き方も劇的に変化した。「毎日Excelのカレンダーを全部手作業で更新していたので、残業が多かったんです。kintoneでデータが自動連携するようになってからは、定時で帰れる日が増えました」と小田氏は語る。繁忙期でも、以前のような慢性的な残業は解消されたという。
今後の展望として、黒田氏と小田氏は営業部でのkintone活用拡大に取り組んでいる。過去にSFA(営業支援システム)を導入したものの定着しなかった経験を踏まえ、タスク管理のできるKANBANを活用した営業管理アプリを構築中だ。設備部の案件管理で培った関連レコードの設計経験が、顧客マスタや案件ステータスの構築にそのまま活きているという。「最先端の老舗企業」を掲げるプロサスの挑戦は、まだ道半ばでありながら、着実に前進を続けている。
(2026年2月取材)
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