
お掃除でつくるやさしい未来
- 【業務内容】
- マンションやアパートの共用部分の清掃やハウスクリーニング、チャイルドシートクリーニングなど
- 【利用用途】
- 案件管理、日報・報告書、コミュニケーション、企業間のやりとり
マンションやアパートの共用部分の清掃やハウスクリーニング、チャイルドシートクリーニングなど掃除に関する事業を展開している株式会社お掃除でつくるやさしい未来では、1人で現場の清掃を行うスタッフのモチベーション維持をはじめ、作業報告書の負担を減らし、たとえ拠点のない遠隔地であっても雇用を生み出すための重要な基盤としてkintoneを活用している。全国のスタッフを支援するためにkintoneをどう活用しているのか、代表取締役の前田 雅史氏にお話を伺った。
福岡県春日市にある拠点を中心に、 “清掃”に関連した事業を展開している株式会社お掃除でつくるやさしい未来。地域に拠点を持たずに事業展開を行っており、本社のある福岡だけでなく、北は東北・仙台、南は九州・熊本まで、日本全国11の都市部に事業エリアを拡大させている。「清掃業だと思われがちですが、我々は“やさしい未来”をつくっていく製造業。自分たちが暮らす街で子育てしたくなるような安心安全で優しい街を、世代を超えてつくり上げていくことを目指しています」と前田氏は創業の思いを語る。
代表取締役 前田 雅史 氏
現在は全国で700棟ほどのマンションやアパート内にある、エントランスや通路、ごみ 置き場といった共用部分を中心に清掃を請け負っている同社だが、その背景にあるのが在籍しているスタッフにある。実はスタッフの97%が女性で、かつ新卒で入社した数名以外は子育てしているお母さんばかり。「子育てをしていると、仕事の時間を厳密に縛ることは難しいものです。ただ、お母さんたちに支えられているという会社の特徴こそが、我々の強みでもあります。お客さまに我々が合わせるのではなく、我々の強みにサービスを合わせるために、時間の縛りが少ないマンションの共用部分に関するお掃除に特化した事業を展開しているのです」と前田氏は会社の特徴を説明する。
当初は少人数で事業をスタートさせた同社も、時間に縛られずに働ける点が多くのお母さんの共感を呼び、一緒に働くことを希望するスタッフは年々増えていった。しかも、未来をつくっていくという社会的な意義に共感して集まったメンバーだけに、仕事に対するモチベーションが高く、顧客からの評価が口コミで広がり、同社への清掃依頼も急増していった。
そんな折、福岡の拠点から2時間ほど離れたマンションでの清掃依頼があったという。「移動だけで往復4時間もお母さんの時間を拘束するのはそもそも難しく、なんらかの対策が必要となりました。そこで、福岡から現場へ向かうことが現実的でないのであれば、清掃依頼のあった地域にいるお母さんを中心に、空き時間だけでも働いてもらえる方を募集しようと考えました」。
SNSを通じて募集を開始したところ、スタッフの採用には成功したものの、課題になったのは、普段顔を合わすことのない、距離の離れたお母さんのモチベーションをどう維持していくかだったという。「どんな仕事でもそうですが、モチベーションと仕事の仕上がりはリンクするものです。地元に拠点がなく同僚とも顔を合わす機会がないなかで、どうモチベーションを維持していくのかが大きな課題でした」と前田氏は当時を振り返る。
そこで前田氏は、当時福岡県が実施していたテレワーク導入支援事業に相談を持ち掛けたところ、紹介された企業からお勧めされたのがサイボウズのサービスだった。「たとえ距離が離れていても、一人じゃないことを実感してもらえる環境づくりに最適なものとして、サイボウズ Officeを紹介いただきました」と前田氏。結果としてサイボウズ Officeを導入し、スタッフ全員と情報共有しながら離れた拠点でも仕事ができる環境を整備できたという。
しかし、事業がさらに拡大しメンバーが増えていくなかで、スタッフのモチベーションをさらに高めていく方法が必要だと考えた前田氏。「モチベーションを高めるためには、 “感謝”されることが大切です。ただしお母さんの場合、日々の子育てに奮闘するなかで子どもから感謝されることはなかなかありませんし、旦那さんから感謝の言葉をかけてもらうこともそう多くない。多くのお母さんが、どんなに尽くしても“いつもありがとう”と周囲から言われない時期を長く経験しているのです。だからこそ、周りからの感謝が大きなモチベーションに代わっていくのです」。そう考えた前田氏は、清掃を依頼してくれる顧客も巻き込むことを考えたという。そのためには、外部の人とのコミュニケーションや情報共有が容易な環境が必要不可欠だった。そこで登場したのがkintoneだった。
「kintoneを通じてスタッフとお客さまがダイレクトにつながることで、一生懸命掃除をしているスタッフに自然と親しみを感じてもらいやすくなると考えたのです。実際に導入してみると、“掃除のおばちゃん”から“○○さん”という名前でスタッフを呼んでもらえるようになり、なかには“いつもありがとう”と感謝の気持ちをkintoneで伝えてくれる方も。そこで初めて、スタッフは価値のあることに自分が携わっていると実感できます。その積み重ねによって、自分の住んでいる街を汚したくないという気持ちが芽生え、子育てしたくなるような街づくり、ひいては子どもたちに誇れる“やさしい未来”をつくることにつながっていくのです」と前田氏は力説する。
スマホで全国のスタッフやお客様とつながる
現在は、スタッフとの連絡やスケジュール調整など社内の情報共有はサイボウズ Officeで行い、作業報告や顧客との情報共有はkintoneを使用。用途に応じてサイボウズのサービスを使い分けている。
kintone自体の使い方はシンプルで、「物件一覧」「スタッフ一覧」「不動産一覧」といったマスター系のアプリとともに、マンションの共用部分に入るためのオートロック番号を管理する「物件暗証番号」アプリ、そして清掃を行う前後にスマートフォンで写真撮影したうえで清掃後にテキストで作業内容を報告する「作業報告」アプリが用意されている。
この作業報告アプリを中心に顧客との情報共有を行っており、清掃時にkintoneにログインすると作業開始時間が自動打刻され、作業報告とともに終了時刻を入力する運用となっている。ほぼすべてのお客さまにkintoneアカウントを付与しており、気になることがあれば作業報告アプリのコメント欄に書き込んでもらえるようになっている。操作性もよく、スマートフォンからでも簡単にアクセスでき、負担なく作業報告できることにスタッフからも驚きの声が上がっているという。
「掃除の会社といえば肉体労働で、アナログのイメージが強い方が多いようです。kintoneで業務を遂行していくため、初めて参加するスタッフは衝撃を受けることが多いです」と前田氏。また、アカウントごとにアクセスできる情報が詳細に制御されており、顧客も自分の物件情報にしかアクセスできない形となっている。
kintoneを導入したことで、作業報告書の作成から顧客への提出までの時間は大幅に短縮された。
「以前は報告されたものをExcelに落とし込み、プリントアウトしたうえで郵送していました。今では作業報告アプリで情報共有されるため、必要であれば印字ボタンをお客さんのほうで押してもらうだけです。郵送にかかる手間やプリントアウトする紙も削減できています。おそらく報告に関連した仕事量は3分の1ほどに削減できており、とても大きな効果です。また、以前は報告書のお届けに1か月ぐらいかかってしまい、現場への対策が後手に回ることもありましたが、今では報告がスムーズになり、課題があればすぐにオーナー側で手が打てるようになっています」と前田氏は評価する。
なお、不動産業界では重要事項説明などのペーパーレス化も一部進んでいるが、紙を使わない仕組みづくりという意味では同社が先行しており、ある意味アドバンテージになっていると評価する。
事業については、当初は100棟あまりだった物件が、今では700棟まで拡大するなど順調そのもの。しかし、前田氏が目指す姿は事業を拡大することに本質があるわけではない。「確かに売上は増えましたが、それ自体がうれしいわけではありません。私がうれしいのは、福岡にある中小企業の僕らでも東北に新たな雇用を生み出せたことです。しかも、時間の制約で働きたいのに働けない人たちにも働く場が提供できたことが何よりもうれしいです」と熱く語る。しかも、たとえ遠隔地で営業所などに出社しない人でも、現場で高いクオリティーを維持して清掃してもらえる環境づくりが整備できたのは大きな自信になっていると前田氏は語る。
今後については、kintone上で掃除に関するマニュアルや現場でのノウハウをうまく集約したナレッジ基盤として活用していきながら、複数の現場を効率的に移動できるよう、地図情報と連携させた活動支援の機能なども実装してみたいという。「現場からは、勤怠管理のアプリや掃除道具など備品の調達アプリなどが欲しいという声も出てきています。仙台にいるスタッフのなかには、こちらでアプリをつくりましょうか?と積極的に関わってくれる人も出てきました。kintoneアプリのつくりやすさがあるからこそだと思います。」と前田氏。
また、将来的にはクラウド上の営業所的な役割としてkintoneを機能させていきたいと意気込みを語る。「例えばアフリカのある国では、すでにドローンが社会実装されており、医薬品配送のために道路を整備するという従来の発想はありません。つまり、物理的に営業所を設置するという発想そのものが、テクノロジーの進歩で次の段階へ向かうための足かせにもなるのです。kintoneがあるからこそ遠隔地であっても仕事が成り立っているという意味では、もっと業務に必要な機能を実装していき、クラウド上に仮想営業所がある世界を当たり前にしていきたい」と前田氏は力説する。
最後に、日本天台宗の開祖である最澄が語ったとされる「一燈照隅 万燈照国(いっとうしょうぐう ばんとうしょうこう)」という言葉を引用し、「最初は一隅を照らすような小さな灯火でも、その灯火が集まれば国中を明るく照らす存在になる。お掃除は小さなことかもしれませんが、それが日本中に広がることで、地域を照らしていくことにつながると信じています。kintoneをはじめさまざまなテクノロジーを駆使して、日本中のお母さんと理念やビジョンを共有し、一隅を照らしてくれる素晴らしいスタッフをこれからも生み出していきたい」と熱く語っていただいた。(2019年2月取材)
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