オプテックス 様の導入事例

オプテックス

【業務内容】
防犯用センサや自動ドアセンサなどセンシングソリューションの提供
【利用用途】
IoT、タスク依頼、バグ管理、デバイス管理
  • 全社的なIoT化推進に向けた強力な基盤づくりにAWSとkintoneを採用。わずか1か月あまりでプロトタイプ作成を実現したハイスピードSI

遠赤外線を活用した自動ドアセンサを世界で初めて開発するなどセンシングに関する高度な技術力を武器に、世界13ヶ国に拠点を展開、80ヶ国以上で防犯用センサや自動ドアセンサなどセンシングソリューションを提供しているオプテックス株式会社。そんな同社では、企業の営業車向けの安全運転支援サービス「セーフメーター」において、収集したデータの可視化やデバイス管理の仕組みにkintoneを採用している。kintoneを採用した背景について、エントランス事業本部 開発部 開発3課 宮原 大輔氏および戦略本部 開発センター R&D課 テクニカルリーダー 辻 久美穂氏に話を伺った。

IoT化に向けた基盤構築に必要だった可視化への挑戦

セーフメーターのIoT化プロジェクトを推し進めることに

世界30%を超えるシェアを誇る自動ドアセンサをはじめ、防犯用センサや濁水・水質センサ、FA用センサなどさまざまなセンシングソリューションを提供しているオプテックス株式会社では、昨今、センシング技術を活用したIoT領域でのソリューション事業に積極的にも乗り出しており、センサを組み込むメーカーを中心とした従来の顧客だけでなく、不動産や流通・サービス企業などをはじめとした非顧客に対して、ビジネス開発を行なっている。

オプテックス株式会社 エントランス 滋賀県大津市 琵琶湖に面した場所にオフィスは位置する

そんな同社が手掛けるサービスの1つに、企業が利用する営業車にセンサを設置して安全運転を支援するサービス「セーフメーター」がある。このセーフメーターは、ドライブレコーダーのような危険運転や事故時の記録、運行管理ツールとは異なり、事故のきっかけとなる急ブレーキや急発進・急ハンドルなどの状況を加速度センサによって記録し、得られた情報を見える化することで安全運転への気づきを与えるサービスだ。既存製品はスタンドアロンで動作し、急発進などの情報に基づいてスコアリングされた数字をデバイス上に表示する仕様となっていたが、セーフメーターをIoT化したうえで、収集した情報をさまざまなデバイスで活用できるように新たなプロジェクトが企画されたと宮原氏は説明する。
「現在は既存ソリューションをIoT化することで、新たな価値を提供するIoS(Internet of Sensing Solution)化が全社的に進められています。その1つがセーフメーターのIoT化プロジェクトだったのです」。

安全運転支援サービス セーフメーター

情報の可視化に向けた基盤整備が必要に

IoT化を進めるにあたって、まずはセーフメーターからデータを収集、蓄積する環境をゼロから構築する必要があった。そこで、最小限のコストで小さく始めることができるクラウド環境を選択し、豊富な実績とエコシステムが整備されているAmazon Web Services(以下、AWS)を基盤として採用することを決断。そこで、AWSから提供される技術トレーニングを経て、開発パートナーとともにセーフメーターのIoT化に向けたプロジェクトをスタートさせた宮原氏。そのなかで課題として浮上したのが、収集したデータを可視化するための仕組みづくりだった。

オプテックス株式会社 エントランス事業本部 開発部 開発3課 宮原 大輔氏

AWSとの連携に最適なkintoneという選択肢

AWSから可視化ツールとして勧められたkintone

実際には、IoTに関連した展示会に出展することを前提にプロジェクトがスタートしたため、AWSを含めた全体サービスを短期間のうちに開発することが求められていた。
「Bluetoothに対応した次期セーフメーターから抽出した情報をいったんAWS上に蓄積し、その情報をグラフなどの形で容易に可視化できる環境づくりを急ピッチで進める必要がありました」と宮原氏。そこで同社が注目したのが、サイボウズが提供するビジネスアプリ作成プラットフォーム「kintone」だった。「実はAWS開発を委託したデベロッパーがkintoneをよく知っていたこと、そしてAWSから可視化ツールとして勧められたのがkintoneだったのが大きな理由です」と宮原氏。

また、そもそものプロジェクトが短期間での開発が求められていたこともあり、ハイスピードSIによる高速なインテグレーションが求められていたのだ。「初期のプロトタイプを作り上げるのに1か月程度しかなく、何よりもスピードを重視しました」と辻氏。kintoneであれば短期間での開発に向いているので、PoC環境を短期間に整備するには最適だと考えたという。

システム構成図

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可視化はもちろんデータベース的な用途にも応用が利く点を評価

辻氏自身は、kintoneに関する有志勉強会「kintone Café」に参加したことがあり、このプロジェクトが始まる前からkintone自体を知っていたという。
「以前、偶然女性エンジニア向けをターゲットにしたkintoneの勉強会に参加したことがあったのです。その時から、しっかりとしたUIでありながら、非常に分かりやすいという印象を受けていました。kintoneであれば、ITに詳しくない、苦手意識を持つ人にも負担なく使ってもらえるのではと考えていたのです」とkintoneの印象を語る。

実は別のプロジェクトでは他のツールを用いて可視化のための環境を構築した経験を持つ辻氏だが、今後必要になるであろうデバイス管理や顧客管理といった、データベース(以後DB)的な用途には不向きなツールだったと指摘する。「kintoneであれば管理業務に活用できるだけでなく、APIを含めて外部サービスとの連携も柔軟です。今後の広がりを考慮したうえで、kintoneが最適だと判断したのです」と辻氏。

さらに、開発系の情報がインターネットから取得しやすい点もkintoneを選定したポイントの1つに挙げている。「提供元のサイボウズだけでなく、開発デベロッパーからもkintoneに関する多くの情報が発信されています。開発サイドにとっても容易に開発関連の情報が得られる環境はとても助かります」と辻氏は評価する。

結果として、PoC環境においてAWSに蓄積された情報を可視化するためのツールとして、また、デバイス管理および顧客管理の基盤としてもkintoneが活用されている。

オプテックス株式会社 戦略本部 開発センター R&D課 テクニカルリーダー 辻 久美穂氏

AWSとkintoneを駆使した環境づくりを可能にしたハイスピードSIの実力

わずか1か月あまりでプロトタイプ作成を実現

現在は、加速度センサにて検知された急ブレーキや急発進などの情報をセーフメーターに蓄積し、その情報をBluetooth経由でスマートフォンのアプリを使ってAWS側に送信する。AWS上に蓄積された情報は、APIを通じてセーフメーターの販売代理店となるパートナーに提供され、パートナー自身の各種サービスに組み込まれて可視化できるような形となっている。

AWS上の情報

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kintone上でグラフにして可視化した情報

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また、どのセーフメーターがどのパートナーに出荷されたのかのデバイス管理の基盤としてkintoneが活用されており、セーフメーターの利用状況をもとに請求時のエビデンスとして活用する稼働実績管理としても利用されている状況だ。なお、AWSおよびkintoneの開発は、kintoneデベロッパーであるアールスリーインスティテュートが担当しており、依頼してから1か月あまりという短期間のうちに、さまざまな仕組みを組み合わせて作り上げる複雑なIoT環境のプロトタイプ構築に成功している。まさに宮原氏が望んだハイスピードSIを実現することに、kintoneが大きく貢献していると評価する。

「デバイス管理」アプリ

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「既存の販売管理システムや生産管理システムの改修を行うことは、事業部サイドでは難しい。kintoneのおかげで、我々だけでハンドリングできる領域でデバイス管理が可能な環境が整備できました」と宮原氏は評価する。なお、AWS側にある情報との同期もkintone上からボタン1つで簡単に行えるようになっている。

ボタン一つでAWS側の情報をkintoneに同期

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コミュニケーションやプロジェクト管理の基盤としても活用

デベロッパーとのコミュニケーションツールとしてもkintoneを活用しており、定期的なメンテナンスのお知らせといった情報共有がkintoneを通じて行われている。「タスクの依頼をはじめ、バグが出たときにチケットシステムとしても活用しています。以前はオープンソースのプロジェクト管理ツールであるRedmineを活用していましたが、今はそのプロセスもkintone上で実施しています。導入前には想定しなかった活用方法ですが、とても便利です」と宮原氏は評価する。

デベロッパーへのタスク依頼やバグ管理としてもkintoneを活用

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「タスク管理」アプリ

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全社的なIoTプロジェクトのひな型として強力支援

今回kintoneを活用したことで、ミッションクリティカルなIoTを実現するための課題になりがちな“物の管理”がAWSと柔軟に連携しながら実現できるようになった。他の事業部のIoT化にもkintoneが手軽に活用されている。「例えば加速度センサ付きのタグをRaspberry Piと組み合わせ、名札(タグ)を裏返すことで出退勤管理に活用できるといったデモを作ったのですが、そんな試作時の可視化ツールとしてもkintoneが活用できます。今後もIoTを活用したさまざまなプロジェクトで利用できるはず」と宮原氏。

全社的なIoT化に向けたプロジェクト推進のひな型となる基盤が構築できたことが一番の成果だと辻氏は評価する。「実際に動くものがすぐに見せられるとことで、プロジェクトとしても納得感を与えやすい」。また、今回のようにPoC段階で仕様が定まりにくい状況でも、アジャイル的なスタイルで開発を進めていける基盤としてもkintoneを評価しているという。

社内のExcel業務をkintoneに置き換え活用を広げたい

今後については、いったん同社が進めているIoS化に向けたプロジェクトのひな型ができたことで、他のプロジェクトの弾みになることが期待されている。また、社内インフラを管理する情報システム部門との調整が必要なものの、全体のプロジェクトでの進捗を管理する仕組みやIT資産管理、Excelなどで行われている管理業務の置き換えにもkintoneが活用できるのではと期待を寄せている。

「個別のExcelで管理されている業務が多く、ファイル同士の連携も行われていません。それらをkintone上で共有しながら進捗管理できるような基盤が整備できればうれしい」と宮原氏。kintoneによる業務改善への取り組みも支援していきたいと最後に語っていただいた。(2018年3月取材)